litigation:和解判事になるなかれ
昔、裁判官の間での戒めとしてこのように言われていたが、昭和末期ころから和解の効能が再評価されるようになった。
という歴史を後戻りさせたくなるようなニュース記事がある。
「訴状読まない」「和解せよと脅迫」……地雷裁判官に当たったらどうする?
今どきの裁判官の多くは、ろくに訴状も読まずに和解に持っていこうとする。原告・被告を別々に呼んで、両方に「あなた、負けますよ」「○○万円なら和解できますよ」など持ちかけるのが常套手段
弁護士の質が低下しているというのは司法制度改革に伴う法曹増員のせいだ、いや法科大学院の教育のせいだなどと散々言われているが、弁護士からはチョロチョロと裁判官の質が(も)落ちているという声がでている。上記記事はその一つの例だ。
それにしても、上記記事に書かれていることは、要するに裁判官は忙しすぎるから手を抜くために判決を書かなくていい和解が好まれる、それが勤務評定に良い影響となるという話に終始している。
表題に掲げた「和解判事になるなかれ」と言われていた頃の浅薄な議論を一歩も出ていないのに、むしろ笑ってしまいそうだ。
訴訟上の和解については考えるべきポイントが沢山ありすぎて難しいが、最低限、第一審判決を下すことと訴訟上の和解になることとの紛争解決機能の違いとか、当事者の納得感とかの可能性も考慮してくれないと、子供が不満を爆発させているのと大差がない。
それと、裁判官が忙しすぎるということも、昔からずっと言われていることではあるが、最近の事件数の減少などを考慮した形跡はない。
実務家の個人的経験とか、あるいは実務の実感とかは、それ自体貴重なお話で良いのだが、それをもとに「今どきの裁判官の多くは、ろくに訴状も読まずに和解に持っていこうとする」と断定されてもなー、と思うわけだ。
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