日本法の特徴に対するFrance人の関心事
ポアチエ大学でのセミナー講演第一弾として、日本法の歴史と現代というタイトルの報告を行った。
聴衆は10数人ほどの小グループだったが、その中に、ポアチエ控訴院の院長とか、大学の諸教授が半分含まれており、いやが上にも緊張させられた。しかし、ともかくも準備していったレジュメとパワポファイルを使って説明するしかない。
ともかく、日本法の歴史を日本の漢倭奴国王印から始まる日本史に即して、律令、武士法、明治法典編纂、戦後法改正、そして現代の諸問題に対する立法を順次説明していった。
フランス人が着目したのは、控訴院院長や商法の先生がおられたことから、調停について、特に日本人が裁判より調停を好むという点についてフランスでは調停がうまく言っていないという観点から興味を持たれた。なぜ調停はうまくいくのか、そもそも調停の組織はどうなっているのか、弁護士がやるのか、裁判上の和解はどうか、仲裁も同様に使われているのか、などなど。
続いて、戦後の法改革の中で刑事訴訟が糾問主義から転換したという例として予審判事制度を廃止したという点も興味を持たれた。というのも、フランスでは予審判事のあり方が、またしても最近クローズアップされているからである。私が以前留学していたころも、予審判事は独裁者か、などというヌーベルオプセルバトワールの特集があったのを記憶しているが、今もやはり予審判事のあり方が問われている。
しかし、日本で予審判事を廃止してしまったというのは奇異に思われた。つまり、検事は行政庁、特に法務省の下におかれているので、独立性が担保されていないが、予審判事は司法官であるから独立性が担保されているというわけで、予審判事なしでやっていけるのかというわけである。
一応、日本の検察官も法務省の下にはあるが、実質的には独立性が担保されており、実際にも元首相を逮捕するに至ったことがあると言ったが、しかし現在は検察に対する不信状況があるとも付け加えておいた。
総じて、私の報告は日本法が西洋法と大きく異なることはないし、実際にもそれを取り入れて、行為規範としても受け入れて生活しているという点を説明したのだが、残念ながら議論の中では、日仏が違うという点に興味が行くので、意に反して異質性を印象づけてしまったかもしれない。
次のセミナーは、ソーシャルネットと個人情報保護に関する日本の状況である。
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