event:よりそいホットライン事業報告会
「分団からつながりへ」と題し、平成24年度のよりそいホットライン事業報告会が、札幌のアスティ45で開催された。
よりそいホットラインとは24時間何でも電話相談を行う事業であり、2011年から一般社団法人社会的包摂サポートセンターが行っている。
事務局長の遠藤さんは、DVのシェルターネットの事務局長でもあった方だ。その遠藤さんが24年度の活動報告をされている。
24年度は、なんと1000万件もの電話がかかってきたという。一日にならすと4万件。当然全部はとることができない。30回線しかない。
接続率は、被災三県だけ19%、その他の全国は1.9%しかない。それでも38万件の相談に応じた。
対応する相談員は、多様な領域から2,433人で、特定の専門領域に偏っていることはない。多様な分野から満遍なく参加している。
かけてくる相談者は40代がトップであり、生活上の困難は働かざかりの40代(男女は同じくらい)に降りかかっている。そして、男性の相談者は一人ぼっちが多い。
相談で多いのは、家族内の不和、暴力、職場内トラブル、そして障害である。
ひとりぼっちの相談者が多いので、つなぐ支援(同行・伴走型)に心がけている。電話ごしでも、福祉機関や支援団体への橋渡しや、既につながっている場合でも不信・不安を取り除くということをやっている。
よりそいホットラインとしてできることは限られているが、その参加者がさらに進んで同行支援や就労支援、居場所作りにまで手を伸ばしていく。
概ねそのようなお話であった。
プログラムでは二番目に、コーディネータと実際の相談により生活再建につながったという体験者との対談が行われた。相談体験のリアルな姿が示されていた。
熊坂さんの話は、よりそいホットラインの意義を伝えるものだった。東日本大震災の被災者の問題、自殺予防の問題など盛りだくさんで消化不良だが、天災は誰にでも振りかかる、被災者は明日の自分だということは伝わった。
なお、よりそいホットラインの電話がつながって相談を受けたことは自殺の数を減らす上で有意な相関関係があるということだ。
上田さんの話は、北海道障がい者条例について。
北海道の施策は、差別・虐待に対する対応を中心しつつ、その周辺問題のくらしづらさも含めて対応しようというものである。
基本的な施策は基礎自治体において行うが、北海道も14の圏域にある地域づくり委員会が関与する。地域づくり委員会の申立て相談事例は、障害を理由とする差別虐待などだが、バリアフリーが十分でないというところの改善が主たる任務となっているようだ。交通関係、消費者関係、労働関係などの所管横断的な取組が可能となっている。
民間NPOの日置さんは、北海道障害者条例の最大のポイントを地域づくりコーディネータの設置にあるという。その彼女がやっている暮らしクリエーションプロジェクトは、様々な方面で支援をしている人たちのつながりを日常的に維持しておく、つながっておくことを重視している。
これからの支援体制で重要なことは、予防的な支援で、困る前に、敷居の低い場を設けること、専門性のある、しかし総合的な取組ができるソーシャルワーカが重要で予算が必要だという。
最後に、「社会を変えていかない支援は支援ではない」という言葉を紹介して終わった。
最後の北大公共政策大学院の石井教授は、つながりホットラインということの存在を全然知らない者として感想を述べよという依頼に応じたということ。ただし、石井先生の関心分野から救急の件数が極めて多くなっている現象と、ここでの日本社会が壊れていると言われる現状とが共通して見えてくる。加えて雇用の不安定化も要因の一つとして指摘される。
よりそいホットラインの1000万コールについて、生活困難が多様な原因によってもたらされていること、それに対して総合的な窓口としてよりそいホットラインが重要な役割を持っていること、社会福祉が申請主義に引きこもって弱者を自分から見ようとはしていないのに対し、よりそいホットラインが一つのカウンターとなりうるのではないかなどを注目点として指摘された。他方、課題としては、電話による相談窓口が社会的な居場所づくりにどうつなげていくのか、居場所作りという点では高齢者も役に立つ場をどう実現するか、こうした点があるという。余談的に、女性の社会進出という視点も忘れるべきでないとも指摘された。
討論で、過疎地域の問題が提起されたが、これについては既存の様々な支援のための資源を活用していくこと、専門機関へつなぐこと、そして生活支援ができるところへもつなげていくことなど、横のつながりを作っていくことが重要だというお答えであった。
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