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2013/03/18

law:裁判による法形成、まざまざと。

先日の東京地裁判決で違憲とされた公職選挙法の成年被後見人に選挙権を認めない規定だが、立法府が素早く対応するようだ。

NHK:成年後見制度巡り“公選法改正”で一致

裁判による法形成とは、一般には判例の積み重ねでできる法のことをイメージするが、学生時代に学んだのは、むしろ今回のような、判決が立法を通じて法を形成するものだった。

判決の波及効という言われ方もしていて、これは小島武司先生の強調するところだったが、裁判による法形成という論文を書かれたのは田中成明先生だった。

判例法ということだと、一定の内容の判決が積み重なり、とりわけ最高裁判決が示されることで、その内容の取扱いが定着して規範と扱われる場合を示す。先例拘束性はとられておらず、判例変更も認められている日本法では、判例を法源とするわけではないのだが、にも関わらず、法の下の平等の原理から判例が法として機能することが存在しうる。

これに対して判決の波及効、あるいは裁判を通じた法形成という場合は、第一審判決であっても、その内容の政治的な影響が生じることを指す。もっというと、判決すら不要で、訴訟が起こされたという事自体がもつ政治的インパクトも法形成を促すことがありうる。
ただし、判決を契機とする法形成は、一審であれ最高であれ、ともかくも司法府において認められたというお墨付き効果と、その内容的な説得力と、あるいは当該訴訟の当事者に対する取扱いを一般化する必要などから、単に訴訟が提起されてクローズアップされたというだけでは得られない要因により促進される。

今回の成年被後見人の選挙権の場合は、与党と政府の協議会で取り上げられて選挙権を認める方向での改正がうちだされたわけだが、これと好対照なのが、最高裁判決も出されていた医薬品ネット販売規制違法判断だ。→justice:医薬品ネット販売規制の省令が違法との判決が維持されても法改正で対抗

このケースと成年被後見人の選挙権のケースとの違いは、行政府・立法府の判断が違うからというに尽きるかもしれないが、一定のクラスの人に選挙権を認めるかどうかという問題に比べて、医薬品をネットで販売できるかどうかは安全性の問題も絡んで、意見の違いは深刻になりやすいという事情もあろう。判決の中身も、選挙権を認めないことが憲法に反することを正面から認めたのに対して、医薬品ネット販売規制の方は法律による授権の範囲という手続論とも言うべき点が中心で、医薬品ネット販売が是か非かに正面から応えたものにはなっていない。この点が、行政府・立法府に改正へのアクションを促すかどうかの力の差となったのではなかろうか。

そういうわけで、判決の波及効とか裁判による法形成という問題は、民事訴訟法上の判決の効力論とは全く異なる、政治学的ないし法社会学的な問題である。

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