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2012/09/14

現在提案中のFRANCE安楽死法案

フランス上院に、安楽死法案が現在提案されている。

Proposition de loi relative à l'assistance médicalisée pour mourir

その提案理由が背景事情を綺麗にまとめている。

それによれば、フランスで安楽死法案 proposition de loi relative au droit de vivre sa mort が初めて上程されたのが1978年4月、それから30年以上の間に生じた状況の変化としては、メディアで取り上げられた様々な事件があり、2005年の人生末期の患者の権利に関する法律 loi du 22 avril 2005 relative aux droits des patients en fin de vie が、状況を大きく変化させた。この法律は患者が死を迎える権利を認め、延命治療許否の意思を表明する権利を認めた。

その核心的な規定は、同法により改正された公衆衛生法典L.1111-10条である。
« Art. L. 1111-10. - Lorsqu'une personne, en phase avancée ou terminale d'une affection grave et incurable, quelle qu'en soit la cause, décide de limiter ou d'arrêter tout traitement, le médecin respecte sa volonté après l'avoir informée des conséquences de son choix. La décision du malade est inscrite dans son dossier médical.
仮訳: ある人が、原因はともかく、重篤かつ不治の状態が進み、またはそれが末期に至った段階で、医学的処置を制限または停止すべきことを決定した場合には、医師は、その人の選択の結果を説明した後で示されたその意思を尊重する。患者の決定は医療記録に記される。

しかし、このレオネッティ法と呼ばれる法律は正しく理解されておらず、積極治療の禁止を定める法律の存在は2/3のフランス人が知らず、いわゆるターミナルケアの研修を受けた医師や看護師はわずかであり、緩和医療も普及していない。また延命治療、とりわけ人工栄養供給の中止は医師の倫理観に反し拒絶されるらしい。
その一方で、鎮痛剤の大量処方による事実上の安楽死が密かに行われて、患者の意思を確認しているかどうか、コントロールがなされていないという現状もある。

こうした状況を背景に、苦痛に満ちた死期の近い患者が、医療の助けを得て尊厳ある死を迎える権利を認めるという法案提出に至ったというわけである。

具体的には、回復不能な状態にある患者が医師に、死を迎えるための医療的補助を希望すると、第三者的立場の医師による意思確認手続を経て、その意思を尊重する措置を行うというものである。事後的なコントロール機関として全国レベルと地方レベルの委員会が設立され、またこの死を迎える医療補助を行いたくない医師のためにも、そのことを直ちに患者に伝えて別の医師に担当を代わるべきことが定められている。

これがすんなり立法されるのかどうかは定かで無いが、注目の法案のようである。

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