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2012/08/01

jugement:いわゆるホームページリースのリース料支払い拒絶

大阪地判平成24年5月16日PDF判決全文

最近流行りらしいホームページリースについて、ホームページ作成役務が履行されない場合はリース会社に支払拒絶ができるとの判断を示した。

判決文に基づいて事案を簡略化すれば、サプライヤーであるE社がユーザー二名(原告ら)にホームページ作成を約束し、決済としてリース会社(被告)とのリース契約を結ばせたが、名目はソフトウェアのリースという書類にしていた。
E社は約束通りのホームページを作成しなかったため、原告らがその未払いのリース料支払いを拒んだという事案である。

リース契約がソフトウェアの提供を目的としていたが、それは名目的ないし架空であって、実態はホームページ作成という役務を対象とするものである点が問題視されているが、その点はいずれにしても被告が原告らに信用を供与するという点で有効な契約と認められるとした。

しかし、判決は以下の様な論理で役務提供不履行に対する抗弁をリース会社に対抗できるとした。
被告リース会社は、「訴外E社が,役務の提供を行う趣旨で,顧客にリース契約を締結させることを疑わせる事実が存するときは,この点を確認し,不適切なリース契約を締結しないこととする信義則上の義務を,顧客に対し負っているというべきである。」
本件でも、リース目的のソフトウェアは架空のものであることを被告リース会社は知り得たし、原告らは小規模事業者でプロ用のホームページ制作ソフトを購入する必要もなく、そもそも市価は非常に安いソフトであり、それを複数揃えるといった必要もないことを被告リース会社としても知り得た状況にあった。
「これらを総合すると,本件各契約を扱う被告としては, 訴外E社が,真実は役務の提供を目的としつつ,名目上本件ソフトを対象とするリース契約を利用しようとするものであることを,若干の注意を払えば了解可能であったのに,適切に調査確認せず,本件各契約を含む多数のリース契約を締結したことになるのであって,信義則上の注意義務違反が認められる。」

以上に基づいて、まとめとして以下のように判示した。
「上述のとおり,訴外E社が原告らに役務の提供を約し,その支払の方法としてリース契約である本件各契約を利用するという齟齬が生じた点について,原告らと被告双方の責任を検討するに,後者が前者を大きく上回っているといわざるを得ない。
 よって,原告らとの関係において,役務を提供すべき相手方は訴外E社であり,リース料債務の相手方は被告であって,本来,原告らは訴外E社に対する抗弁をもって被告に対抗することはできないが,本件の事実関係を前提とすると,原告らは,役務の提供がないことを理由とする訴外E社に対する抗弁を,信義則上,被告に対しても主張できると解するのが相当である。」

 さて、こうした論理展開で、結論としては履行されていないウェブページ制作の代金だけをリース料として支払わされるという理不尽な結果は避けられた。この結論は妥当と評価できる。
 しかし、上述した判決の論理展開は、やや論理の飛躍があるように思われる。
 被告リース会社が本件リース契約の目的をホームページ作成と認識できたということが事実として認定されており、これを前提とするとしても、そのことがどうして、「役務を提供すべき相手方は訴外E社であり,リース料債務の相手方は被告であって,本来,原告らは訴外E社に対する抗弁をもって被告に対抗することはできない」という関係を乗り越えて抗弁の接続を認めることになるのかが明らかではない。
 判決が指摘するのは、ソフトウェアのリースという名目とホームページ作成という役務のリースとで「齟齬」をきたしたことに対する責任が、原告らよりも被告に大きいということだ。しかしホームページ作成という役務を目的とするリース契約が成立するのだとすれば、その点は重要ではないということになるはずである。齟齬はあろうが契約は有効に成立しうるのであるから。

 判決が結論を導くところではっきり書いていないが、本件は被告リース会社と訴外E社とが提携関係にあり、E社の契約履行に被告リース会社も責任を負う程度に、本件契約の締結過程に関与していることが認められるからこそ、E社に対する抗弁をリース会社に対抗できるという結論になるはずである。
 その点の関与の程度は、リースの目的がソフトウェア販売ではなくホームページ作成であることを知り得たと認定されている諸事実の中から認められよう。そして、E社がホームページ作成を目的にリース契約を締結し、これを適切に履行できることについて被告リース会社も、「不適切なリース契約を締結しないこととする信義則上の義務」の中で管理責任を負うとされているのであろう。

 こうした論理展開であれば、E社不履行を被告リース会社に対抗できるという根拠となるように思われる。単にリース契約の目的に齟齬を生じさせた責任というだけでは不十分だ。

 というわけで、結論は妥当だが、理由は不十分な判決と評価したい。

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コメント

完全オリジナル、完全自作のホームページを、リースによる貸与を受けている、とする方とは、正常な方法でお話をしたくありません。
どこも珍しくもない地裁判決引用がその証拠。

投稿: 鹿島渡 | 2012/08/02 17:17

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