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2012/05/26

justice:裁判所の判決や決定が公開される割合

一般に、裁判所の判決や決定はどれほど公開されているだろうか?

若手の同僚に聞いてみたら、5%くらいでは、と言う答だった。
ロースクールと研究大学院の学生に聞いてみると、50%程度から5%程度まで、様々な答えが返ってきた。

さてみなさんはどう思われるだろうか?

裁判所といっても、最高裁と下級審とで事情は異なる。
最高裁は、憲法判断や重要な法律判断をするというのが建前である一方、下級審はそうした法解釈上重要な判断がされるばかりでなく、むしろ事実判断が中心の事件が大多数を占める。

だとすると、最高裁くらいは100%と言わないまでも、それなりに多数の判決・決定が公開されてしかるべきと思われるし、下級審はもう少し少なくてもいいかという感じがする。

と言うことで調べてみた。データが揃っている平成22年(2010)年の一年間、民事・行政事件の既済件数合計は約215万件、うち最高裁の既済件数は約5000件ある。同じ年の刑事事件既済件数は約116万件、うち最高裁は約4000件だ。(実はこの数字は家事事件や少年事件を算入しておらず、低めに見積もっている。)

これに対して最高裁判所の公式判例集に掲載された同年の判決・決定は、民事が32件、刑事が13件、合計45件。全体が9000件として、0.5%である。
インターネット上の裁判所サイトには、公式判例集のみならず裁判集という準公式判例集に掲載されたものも掲載されており、それを含めると、約1.2%に上昇する。
さらに、民間データベース会社では、TKCのデータベースに249件の最高裁判決が、WestlawJPでは122件の最高裁判決が、それぞれ掲載されている。TKCには2.9%、Westlawには1.4%程度の最高裁判決が採録されている。

下級審ではどうかというと、裁判所サイトには1002件(約0.03%)、TKCには2767件(約0.08%)、WestlawJPには5447件(0.16%)掲載されている。

上で述べたように、裁判の重要性からして最高裁のほうが下級審よりも多く掲載されていることは確かだが、その割合は極めて小さいと言わざるをえない。
民間データベースの数字は、今もなお追加掲載されているため、動く可能性があるが、大まかな割合としては最高裁で1~2%程度、下級審では0.1%程度というところである。

そして、この裁判例公開が重要なものを網羅していて十分だというわけでもない。
というのも、最高裁判所で裁判官の意見が分かれる判決について、一切の判例集に掲載されていないという例も確実にあるし、下級審では、後に最高裁判決が公開されて注目される論点に判断されている事件であっても、その事件の下級審判決は公開されていないということが非常にしばしばある。
重要な論点に関わる裁判例でも、ほとんど公開されないと考えられる。

判決公開のプロセスが合理化され、少なくとも参考に値する裁判例は網羅して公開し、その他、統計的に裁判の趨勢を語れる程度に十分な量の裁判例がアクセスできるようになる必要がある。

裁判例は、公共財産を構成する重要な情報なのであり、裁判所の私物ではないのである。

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コメント

ご参考まで

家庭裁判所の手続きの多くが非公開のため、公開される家事事件の決定書等は特に貴重な資料であります。特に、最高裁刊行の「家庭裁判月報」に掲載される判例等は家事司法の動向を知る上で重要ですが、同時にどういう基準で選定されているかが不明です。この関係で、最高裁に対して同誌の編集方針等に関する行政文書開示請求を2-3年前にしてみましたが、最高裁の回答は「該当の行政文書なし」とのことでした。

投稿: CJ | 2012/05/28 15:58

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