Franceではセクハラが曖昧すぎて違憲、モラハラも停止中
フランス刑法はセクシャルハラスメントを処罰する規定があるが、フランスの憲法院は2012年5月4日、この規定を「曖昧すぎる」として違憲と判断した。
→Le Mondeの記事:Tollé contre l'abrogation de la loi sur le harcèlement sexuel
この憲法院の判断を受けて、今度はモラルハラスメントに関する係属中の訴訟も、停止されることになったという。
→Le Mondeの記事:Après le harcèlement sexuel, le harcèlement moral suspendu à une QPC
セクシャルハラスメントとモラルハラスメントに関する処罰規定は、いずれも同一の2002年1月17日の法律に由来するのであり、セクハラが曖昧なら同じようにモラハラも曖昧だというわけである。
ちなみに条文は以下のとおり。
フランス刑法典222-33条
Le fait de harceler autrui dans le but d'obtenir des faveurs de nature sexuelle est puni d'un an d'emprisonnement et de 15 000 euros d'amende
他人に対して、性的な利益を得る目的で嫌がらせをした者は、一年の拘禁および15000ユーロの罰金に処す。
この規定は、憲法院判決の翌日、5月5日に削除された。
同法典222-33-2条
Le fait de harceler autrui par des agissements répétés ayant pour objet ou pour effet une dégradation des conditions de travail susceptible de porter atteinte à ses droits et à sa dignité, d'altérer sa santé physique ou mentale ou de compromettre son avenir professionnel, est puni d'un an d'emprisonnement et de 15000 euros d'amende.
他人に対して、その権利もしくは尊厳を傷つけ、肉体的もしくは精神的健康を損ない、または職業的将来を破壊するに足る労働条件劣悪化を目的として、またはそのような結果をもたらすように、嫌がらせをした者は、一年の拘禁および15000ユーロの罰金に処す。
222-33条と比較すると、効果ないし目的の面では、性的な利益に対してかなり詳細な効果や目的を規定しているが、行為態様としては「harceler嫌がらせ」というだけであり、一方が曖昧であれば、確かにこちらも曖昧であろう。
オランド次期大統領とその政府が緊急に着手しなければならないのが、このハラスメントの具体化・明確化というわけである。
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