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2012/01/30

arret:民訴教材:不熱心訴訟追行で控訴取り下げ擬制

名古屋高判平成23年10月27日PDF判決全文

事案は、どうでもよいのだが、一応記しておくと、不倫された奥さんが不倫相手に慰藉料500万円を請求したというもので、1審は50万円しか慰藉料を認めなかったため、奥さん側が控訴した。

ところが、控訴審で控訴代理人が第1回口頭弁論期日にも、控訴代理人の期日指定申立によって開かれた第2回口頭弁論期日にも、欠席したのだった。

民事訴訟法
(訴えの取下げの擬制)

第263条  当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。

この規定は293条により、控訴の取り下げにも準用されているので、連続して2回口頭弁論期日に出頭しなかった控訴代理人は、控訴取り下げを擬制されてしまったのだ。

これに慌てて、再度の期日指定申立をし、それが認められるかどうかが本判決の対象であり、結果は取り下げ擬制により訴訟は終了しているという宣言を判決したのである。

控訴代理人の言い分は、アデノウィルスの感染症(感染予防法では指定感染症となっており, 学校保健法では熱が下がっても2日間は登校禁止となっている。)で38度前後の熱もあったのだからやむを得ない事情があり、出頭しなかったのではなくて出頭できなかったのだという。

ちなみに第2回期日の当日朝9時35分には、事務員が「弁護士が体調不良だから期日変更をして欲しい」と裁判所に電話連絡し、相手方代理人にも伝えた上で、10時17分頃にファックスで期日変更申立書を提出した。しかし相手方は同意しないと答えている。

裁判所は、出頭できなかったのだから出頭しなかったとはいえないという控訴代理人の主張を独自見解として一蹴し、期日変更申立には「控訴人代理人は、感染症に罹患しており、同期日に出頭することが著しく困難である」とか、「復代理人を選任した上、同期日に出頭させたり、控訴人本人に出頭を要請することも著しく困難である」等の事由を明らかにはしていないので、この申し立てを認めなかったことに違法はないとした。

要するに風邪を引いても感染症にかかっても、期日には出頭しろということである。もしどうしてもダメなら、復代理人を選任して出頭させたり、本人に出頭を要請したりすることもできるというわけだ。
現実的には本人に出頭を要請するということもほとんど考えられないだろうから、日頃の付き合いで復代理人を頼めそうな人をキープしておくことが最低限必要ということになる。

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