jugement:データ復旧サービスのウェブ広告と著作権侵害
データSOSという名称でパソコンのデータ復旧サービスを行っている会社が、ロジテックの同様のサービスに関するウェブページ広告について、自社のウェブページ広告を真似したものだと主張し、著作権侵害で訴えたという事件である。
ロジテック側代理人は、小倉秀夫弁護士。
原告側のウェブページは、おそらく現在も残っているのと同じだろうと思われるが、データ復旧とは何なのか、パソコンの修理とどう違うのかという基本的なところを説明したものになっていて、要するにQ&A方式での解説を行っている。
これに対して被告側のウェブページ広告は、判決で原告のウェブページの文章に依拠して作成されたものと考えられると認定されているが、半分くらいは似ていて、構造も似ていた様である。この文章は平成20年に掲載をやめているので、現在のページからは確認できない。
判決の結論は請求棄却であり、著作権侵害を認めなかった。
その理由は、要するに原告サイトの文章が創作的に表現されたものとは言えないというに尽きる。
そして、小見出しを付けて階層的に説明していることとか、小見出しの「データ復旧って何?」と被告の「データ復旧技術サービスとは?」とか、似ていても、それがなんだと言うことである。
判決文はそれでも丁寧に位置づけている。
ある程度の文章になっている部分についても、以下のような判断がされている。
原告文章の「このような非常事態に遭遇した場合の有効な回復策の一つとして,データ復旧サービスの利用を検討します。」と被告文章「このような非常事態に遭遇した場合の有効な回復策の一つとして,データ復旧技術サービスの利用をご検討ください。」というのも、共通性はあるが、文章自体がごく短いものであり,また,問題が生じた場合にその対応策を検討することを一般的に使用されるありふれた言葉で表現したものにすぎず,表現上の格別な工夫があるということはできないため,当該部分に作成者の個性が現れているということはできないと判断されている。
この他にもいくつかの文章について、表現上の創作性がないこと、あるいは単にアイディアに過ぎないことを理由に、著作権侵害ではないとしている。
「パソコンそのものはそれほど高価なものではなくなりました。しかし,パソコンに保存されているデータは一段と重要性を増しています。/パソコンに事故が起こった場合には,パソコンが大切なのか,データが大切なのかをよく見極めることが大切です。」という原告文章(スラッシュは判決文が改行の代わりに付けた記号)と、次の被告文章も同様である。
「パソコン・機器そのものはそれほど高価なものではなくなりました。しかし,パソコンに保存されているデータは」,「一段と重要性を増しています。/パソコンに事故が起こった場合には,パソコンが大切なのか,データが大切なのかをよく見極めることが大切です。」
ほとんどそっくりなのだが、判決は次のように評価する。
内容,表現,記述の順序のいずれにおいても,パソコンはそれほど高価なものではなくなりパソコンに保存されたデータの重要性が増加していること,パソコンに問題が生じた場合にパソコンと保存されたデータのどちらが大切なのかを見極めることが大切であることについて,一般的に使用されるありふれた言葉で表現したものであって,表現上の格別な工夫があるということはできず,当該部分に作成者の個性が現れているということはできない。
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コメント
原告側にちゃんと忠告してくれるひとはいなかったのかな、という判決内容ですねえ。
ジャンジャン復活します
ガンガン消したあとでも
とかいろいろやってたら創作性認められる表現になってたかなあ。
ロックンロール県庁所在地、創作性あるとおもいます?
投稿: madi | 2011/02/12 02:58
>ロックンロール県庁所在地、創作性あるとおもいます?
森高千里のですね?
所々に名物の名前が出てきますから、「あり」でしょう。
投稿: Enzo Romeo | 2011/02/14 09:18