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2011/02/26

consumer:独立行政法人国民生活センター

今日は独立行政法人国民生活センターで、同センターの存続可能性をめぐる状況について説明を受けた。

国センの名で知られる同センターは、数ある独立行政法人の中でも屈指の知名度を誇る。野村総研が調査したところによれば、国民の認知度上位に並ぶのが造幣局、大学入試センター、そして国センであり、その下には国立美術館や国立科学博物館、JAXAなどが続いている。

このように知名度としては抜群の国センだが、実は何度も廃止の対象に挙げられていて、今もまた、そのあり方が見直されようとしている。

平成22年12月7日の「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」という閣議決定(PDF)では、相模原の研修施設について廃止を前提に見直しが求められるとともに、その他の事業についても「消費者庁と国民生活センターの役割分担についての抜本的な見直し及びそれに沿った業務の再編・整理」が講ずべき措置とされ、これを受けて消費者庁と国民生活センターとが構成員となった「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」というのが設置されている。

そもそも国センの機能は、認知度が高い割りにはよく知られていないかもしれないが、以下の6機能がある。
・相談機能
・相談情報の収集・分析・提供
・商品テスト
・広報・普及啓発
・研修
・裁判外紛争解決手続(ADR)

このうち、消費者相談機能は随分前の国セン廃止の議論の際も問題となり、基本的には基礎自治体ないし都道府県の役割だとされたが、国センの消費者トラブルのアンテナ機能を維持するためにも直接相談を行っていくことが必要だとされた。その結果、現在では各地の消費者センターからの経由相談と呼ばれる二次的な相談受付と、直接相談、特に日曜祝日の相談窓口が中心となっている。

また、相談情報の収集分析提供は、いわゆるPIO-NET情報である。

さらに商品テストだが、この部分は他の商品テスト機関と機能が重複しているとしてやり玉に挙げられているところである。
しかしながら、今日の話では、企業が行う商品テストとか、あるいは他の機関での取扱説明書に沿ったテスト、さらには行政機関が処分を行う前提としてのテストとは異なる機能が、国センの商品テストにはあるという。それは、実際使ってみての安全性、必ずしも取扱説明書通りではないが消費者が使うであろう使い方をしたときの安全性などをテストする。それはそのやり方をしたときに危険が顕在化しても、必ずしも行政処分には結びつかないかもしれないが、消費者の安全を守るためには重要なテストなのである。
こうしたことは、国センの現在の体制でしかできないというわけである。

研修事業については、特に地方での相談員や担当者の研修を熱心に行っており、これが重要である。相模原の研修事業はいるのかというのは確かに問題だが、あの施設があることによって希望者をすべて請けいけることが可能になっているという点も忘れるべきではない。

ADRについては議論の焦点で、なぜ国サイドでADRをやるのかという疑問が向けられている。しかし、実際のところ民間では無理ではないか、国センのように事務局がしっかりしていて、法律により結果の概要を公表することとなっていて、それによって後の紛争解決の指針ともなり得る、そのような機能を果たすのは民間のADR機関では困難である。また純然たる行政機関や裁判所によることも、法に基づく確実な解決を外れた、しかし妥当な解決を紡ぎ出すということがなかなか出来かねるという問題がある。

そういうわけで、国センの現在になっている機能は、他に代え難いところがあるし、そもそもこのタスクフォースは消費者行政をいかにして強化するかということを検討するのが任務なのだから、国センの役割をもっと強化する仕組みを追及すべきであろう。

独立行政法人という形態が最善かどうかは疑問の余地がある。しかし、行政そのものが担うには障害がある。例えば今日の参加者の中からは、雑談の席ではあるが、消費者委員会の下に直属する機関としてはどうかというアイディアも出されている。

そもそもこういう消費者行政のグランドデザインを考えるのは、消費者委員会の役割ではなかったか?

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» 国民生活センターを廃止へ [時々時事爺]
そうかも知れんなぁ [うんうん/]商品回収、無償修理、リコールの情報は役に立ってたし、商品テストだって消費者のためになってたけどさ。独法にしては珍しく割と評価すべき仕事はしてきたと思うし、存在価値、存...... [続きを読む]

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