France同性婚を認めない民法典は合憲
2011年1月28日、フランス憲法院は注目すべき判決を下した。
フランス民法典が同性間の婚姻を認めていないことについて、憲法違反との訴えを退けたのである。
フランスのニュースTF1のVideocastでは、1月18日の放送でこの問題を取り上げていた。
(ちなみに今日のニュースの最後には日本の霧島・新燃岳噴火のニュースがでていた。)
それによれば、ヨーロッパの多くの国で同性婚を認める判決が相次いでいるのだが、フランスではどうかと注目されていた。
ちなみに、憲法違反だと訴えられた条項は、民法典75条と144条。
75条は、婚姻の手順を規定しているが、その最後の項の第1文に以下のように規定している。
Il recevra de chaque partie, l'une apres l'autre, la declaration qu'elles veulent se prendre pour mari et femme.
私訳「身分担当官は、夫と妻になりたいという申告を、両者それぞれから受け取る。」
また144条は婚姻年齢を定めたものだが、以下のように書かれている。
L'homme et la femme ne peuvent contracter mariage avant dix-huit ans revolus.
私訳「男性と女性は、18歳になる前に結婚することはできない。」
いずれも、同性間の婚姻を禁止したものではないが、結婚は異性間で行われることを当然の前提にしている。
破毀院は、2007年3月13日の第一民事部判決で、フランスにおける婚姻とは男女の結合をいうと宣言していた。
この事件は、ボルドー近くの男性カップルがベーグル市の市役所に婚姻届を出して受理されたのに、検察官の訴えで取り消されたため、婚姻の自由を侵害されたといって取消の取消を求めて訴えたというものだが、そのときに原判決(ボルドー控訴院)は民法75条と144条が異性間であることを前提にしていると解したようで、上告理由でその点は法解釈を誤っていると主張されていた。しかし破毀院はその点に全く触れていなかった。
今回の憲法院に対する訴えは、民法75条と144条の違憲を主張したものだが、その根拠はフランス憲法66条と、婚姻の自由、さらに参加した公益団体の主張によれば家族生活を送る権利と法の下の平等にも反するという。
憲法院は、まず66条の個人の自由に対する恣意的拘禁の禁止に婚姻の自由が関係するものではないと退けた。
次いで婚姻の自由は、婚姻の条件を立法者が定めることについて、制約とはならないという。
さらに家族生活を送る権利は1946年憲法前文に根拠があるが、法律婚の条件が異性間となっていても同性カップルが家族生活を送ることの妨げとはならない。なぜなら同棲することもPacsの可能性もあるからという。
さらに、1789年人権宣言第6条の法の下の平等は、異なる条件の下で異なる規定を設けることを禁じておらず、異性間にのみ法律婚関係を認める立法は許されるという。
以上の理由により異性間の婚姻を前提とする民法75条と144条は合憲だというわけである。
さて、日本ではどうか。
日本では、そもそも憲法24条が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と定めているので、同性婚を禁じる法令があったとしても憲法違反ということはできないであろう。
もちろん、憲法14条の法の下の平等は、同性カップルであっても異性カップルと同等の扱いを求めているということができようが、こと法律婚については憲法が予定するのも異性間のカップルと解釈されるであろう。
さらにいえば、同性婚を認める立法があっても憲法違反となるわけではない。立法者の裁量である。
ついでだか、フランス破毀院のサイトでは、外国語による情報提供が進んでいるが、なんと、日本語による情報提供もなされていた。破毀院の主要判決のリストが日本語でみられるのは凄い。さすがに判決文そのものが日本語になっているわけではないが。
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