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2010/12/03

prosecutor:この期に及んでまだ一部可視化を狙う

毎日jp:特捜:一部可視化へ 最高検が最終調整

そもそもが検察庁のお手盛り会議で、信頼できないとして別個にあり方検討会議が出来ているはずだが、それでも「最終調整」とか書かれると、もう決まったことに感じられる。

検察関係者によると、幹部の間では、取り調べの一部始終を記録する全面可視化については「容疑者の供述が得られなくなる」との理由で反対論が根強い。一方で、自白の任意性や信用性を立証するために、取り調べ過程の一部を可視化すべきだとの意見が強まっているという。 可視化の範囲については議論が続いているが、容疑者が自白した経過や取り調べ状況を供述する場面を記録したDVDを法廷で再生し自白の任意性の立証に役立てる裁判員裁判の手法を取り入れる案が有力視されている。

そもそもが、この記事自体、何処の誰とも分からぬ(取材源の秘匿)「検察関係者」が漏らした(リーク)ことに基づいて書かれていて、最初から公開の下で議論することはできないのに部分的にはリークする(もちろんリークする側の都合の良い部分に限る)という手法が貫かれている。

そのような基本的発想からも分かるように、取り調べ過程の一部の録画録音は、検察官の都合の良い部分で、自白は信用できるというところを証拠として残すという意味なのである。
そのことは、上で引用した検察関係者の話にも、いわば露骨に現れているところだ。

これでは、密室の中で真実と違うかもしれない内容の自白を取調官が強要し、20日間の外界との断絶状況で連日連夜「お前がやったんだろう、こういう経過だったんだろう」と、「認めないと罪が重くなるよ、反省してないと言われるよ、家族もさぞ迷惑だよね」などといわれ、「申し訳ありません、その通りです」というまで続き、調書にはあたかも被疑者が口述したかのような書き方で取調官のしゃべらせたい内容を書き、裁判官がそれを「迫真性がある」などといって鵜呑みにするという構図から生まれる冤罪を防ぐことはできない。「迫真性ある」自白調書に、さらに調書にサインしたり、読み聞かせされて反論する気力もなく頷いている場面がDVDに残され、さらに信用性を増すという仕組みである。

例えば菅谷さんの自白に至る過程を例にとって、検察官がどの部分を録画録音するのかをシミュレートし、それによって菅谷さんが有罪になることが防げるのか、それとももっと裁判官の調書信頼性を高めるのか、実証的に検討してみるとよい。
シミュレーションの素材は菅谷さんだけではなく、村木裁判における単独でやったといってるのに村木さんの指示だと言わされた部下の供述過程でもよいし、志布志湾事件の被告人達でもよいし、富山の冤罪で投獄された人の場合でも良い。

最近の事件でも素材は枚挙に暇がないくらいで、これらの事件で仮に最高検のいう部分可視化を実施していたら、冤罪を防げたのか、それとももっと冤罪を助長したのか、このあたりの実証研究を「あり方会議」の方でやってみることをお勧めする。

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