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2010/10/08

arret:民訴新判例:遺産確認の利益

最判平成22年10月8日PDF判決全文

定額郵便貯金債権が遺産に属することの確認を共同相続人間で争われている場合、確認の訴えを起こす利益があるという判断である。

一見すると当たり前のようにも見える。
特に遺産確認の訴えの利益については、既に最判昭和61年3月13日民集40巻2号389頁(PDF)が以下のように認めていた。

遺産確認の訴えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであつて、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもつて確定し、したがつて、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もつて、原告の前記意思によりかなつた紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである。

この事件では、原告が被相続人の不動産について共有持分を有することの確認請求が可能であるにもかかわらず、あえて遺産確認の訴えの利益があるというために上記のように言っている。

これに対して本判決は、定額郵便貯金債権に関するもので、不動産とは異なる。そして債権については当然に分割して各相続人に帰属するというのがこれまでの原則的な理解であった。仮に相続によって分割されて各相続人に帰属するということなら、相続と同時に各相続人に帰属するのであるから、もはや遺産として共有している状態にはならず、従って遺産確認の訴えの対象となり得ないということになる。
このことは、判決文中でも引用されている最高裁判決が以下のように判示している。

相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする

ところが、定額郵便貯金については、郵便貯金法が「一定の据置期間を定め,分割払戻しをしないとの条件で一定の金額を一時に預入するものと定め(7条1項3号)」ている。従って法律上分割払い戻しが否定されているので、相続によって分割帰属することもないというわけである。

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コメント

しかし、どうする気か。郵便局の定額貯金なら不可分債権だから遺産分割の対象になり、民間銀行の預金は可分なので当然分割されるとするのか。それでは、民営化されたゆうちょ銀行の定額貯金はどうなるのかねー。
それに、定額貯金はなぜ「定額」と言うかというと、千円、5千円、1万円、5万円、十万円、5十万円、百万円、3百万円の8種類の「定額」額面の整数倍で預けるからだが、遺産の定額貯金が「百万円×10口」となっているとき、相続分が50%なら、死亡の時に当然5口相続したという話になるのではないか。この判決が出ても、矛盾は何も解決していない。

被相続人の預金取引履歴を相続人の一人が開示請求できるかという話の時もそうだったし、この件もそうだが、最高裁昭和27年(オ)1119号が、金融機関における相続トラブルの大半を引き起こしている。さっさと判例変更してほしい。民法907条には「その協議で、遺産の分割をすることができる。」とあるのだから、協議なしに分割されるというのは、おかしいでしょう。

投稿: こんにちは | 2010/10/17 01:34

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