arret:携帯電話の火傷でPL責任肯定
左大腿部に熱傷を負った控訴人が,その原因は当時ズボンのポケットに収納していた携帯電話機の異常発熱であるとして,当該携帯電話機の製造業者に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づいて損害賠償を求めた事案について,携帯電話機の異常発熱が原因となって低温熱傷を受傷したと認定し,製造物責任法2条2項にいう欠陥があったことを認めた事例
争点としては、火傷が携帯電話に起因するかどうかがまず争われた。
裁判所は、①8時過ぎに帰宅後、11時ころに入浴して就寝した後に火傷が発見されたので、入浴就寝中には火傷の原因がないことから、8時から11時までの間に火傷を負ったといえること、②火傷の形は本件携帯電話に一致することから、本件携帯電話が原因で火傷を負ったと認定した。
そして本件の火傷が低温熱傷であること、携帯電話端末は低温熱傷を引き起こす程度に発熱することがあり得ること、他にも同様の事故例があること、こたつの中に入ってポケットに入れてあったことから45度程度まで達することもあり得ること、火傷の原因は他に考えられないことなど詳細に認定して、本件携帯電話による火傷だと認定した。
欠陥について、具体的な機序などを明らかにすることはできないとしつつも、そのような特定をすべき責任は原告にはないとして、以下のように判示した。
本件では,欠陥の箇所,欠陥を生じた原因,その科学的機序についてはいまだ解明されないものであっても,本件携帯電話が本件熱傷の発生源であり,本件携帯電話が通常予定される方法により使用されていた間に本件熱傷が生じたことさえ,控訴人が立証すれば,携帯電話機使用中に使用者に熱傷を負わせるような携帯電話機は,通信手段として通常有すべき安全性を欠いており,明らかに欠陥があるということができるから,欠陥に関する具体化の要請も十分に満たすものといえる。
本件で、ポケットに入れたままこたつに入ることが問題とされているが、それも通常予想される使用形態であって危険を警告する表示が必要だったという。
なお、損害算定において、携帯電話による発熱と火傷の可能性について調査分析を原告側で行うことを余儀なくされたことを認め、その費用については少なくとも150万円は被告が負担すべきだとしている点は注目される。
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