arret:権利能力なき社団と執行文付与
なかなか民訴的には興味をそそられる表題である。
権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者は,当該社団の構成員全員の総有に属し第三者を登記名義人とする不動産に対して強制執行をしようとする場合,上記不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の確定判決等を添付して当該社団を債務者とする強制執行の申立てをすべきであり,上記登記名義人を債務者として執行文の付与を求めることはできない
民事執行規則は添付書類について以下のように定める。
第二十三条 不動産に対する強制競売の申立書には、執行力のある債務名義の正本のほか、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 登記がされた不動産については、登記事項証明書及び登記記録の表題部に債務者以外の者が所有者として記録されている場合にあつては、債務者の所有に属することを証する文書
(2号以下略)
従来、学説は、権利能力なき社団の構成員が総有する不動産に対して社団の債権者が強制執行する場合に、不動産登記名義人に対する承継執行文の付与を受けて行うことができると解していたが、本判決はこれを物の引渡しに関する規定の不当な拡張であるとして排し、添付書類で総有に属することを明らかにすれば足りるとした。
なお、田原裁判官が分かりやすく補足意見をつけているので、必見である。
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