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2010/04/21

jugement:時機に後れた攻撃防御方法

東京地判平成22年3月24日PDF判決全文

民事訴訟では、第1審と控訴審とを通じて、主張立証を口頭弁論で提出する時期を限定していないが、理想的には第一審の前半で行われる争点整理手続(中でも弁論準備手続)で主張するべき事実は主張し、証拠の提出予定も固めておき、その後の証拠調べ期日で一挙に証拠、特に証人と本人の尋問をやってしまう。
ところが中にはそうも行かない場合もあり、相手の主張によりこちらの主張内容を変えたり、証言内容から主張の組み直しを余儀なくされたり、新たな事実が判明したり、訴訟の傍らで新たな事実が発生したりするので、訴訟の後半で新しい事実主張をしなければならなくなることもある。

しかし、そのような事情がないのに、わざと後出ししたというような場合には、それで訴訟が遅れることになるのは裁判所にとっても相手方当事者にとっても不都合なので、ひどい場合は制限する。つまり、遅く出した主張立証を却下するということが出来ることになっている。

この制度を時機に後れた攻撃防御方法といい、本判決はこの制度が適用された珍しい例である。

訴訟経過と時機に後れたと判断された部分のみ取り出す。

本件訴訟は,平成20年10月20日に第1回口頭弁論期日が実施されて弁論準備手続に付され,その後も,同年12月5日の第1回弁論準備手続期日以降,平成21年5月25日の第10回弁論準備手続期日まで,弁論準備手続期日が実施された。 原告は,同年3月25日の第8回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(6)においては,「訴状,原告準備書面(1)~(6)(各訂正書を含む)及び反訴答弁書にて,本件本訴・本件反訴により,主張・立証を尽くした。」旨を記載(同準備書面27頁)し,また,同年5月25日の第10回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(7)においても,本件訴訟の争点を「SHIが反対を表明したにもかかわらず,SPCOの取締役会…において強行採決された,役員人事等の議案が,全員一致を要する事項か否か」であるとした上,本件訴訟の争点については,「原告準備書面⑹の全部,原告準備書面(5)の全部,原告準備書面(4)の全部,原告準備書面(3)の全部,原告準備書面⑵の全部,原告準備書面(1)の第1~第4において,SHI(原告)の主張を尽くしている。」旨を記載した(同準備書面1頁)。 ウ 争いのない事実等(17)エのとおり,平成21年5月25日の本件第10回弁論準備手続期日において,原告は,「裁判所の話を踏まえて今後の進行を検討」する旨を述べ,同年6月12日の第11回弁論準備手続期日以降,同年10月21日の第16回弁論準備手続期日までは,和解についての検討を行った。この間,原告は,原告の準備書面(7-2),(8)~(11)を提出し,甲80~97を準備した。上記第16回弁論準備手続期日において,和解協議は打ち切られ,弁論準備手続が終結された。 エ 争いのない事実等(17)オのとおり,平成21年11月13日には,本件第2回口頭弁論期日が実施された。当事者双方は,原告の準備書面(7-2),(8)~(12)及び最終準備書面,被告JFEの第4準備書面,被告日立の準備書面(4),被告プランテックの第5~第13準備書面及び反訴原告準備書面(3)をそれぞれ陳述したが,その際,裁判所は,いずれの準備書面も,当事者双方にこれ以上の主張立証がないことを確認した後,和解の可能性を検討する期日において提出されたものであることを述べた。また,同期日において,甲80~97及び戊30~47がそれぞれ提出され,弁論が終結された。 (3) 以上の認定事実によると,原告は,平成21年3月25日の第8回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(6)及び同年5月25日の第10回弁論準備手続期日で陳述された原告準備書面(7)において,本件訴訟における争点を整理した上,主張立証を尽くしたとしており,上記第10回弁論準備手続期日における経過を踏まえて,同年6月12日の第11回弁論準備手続期日以降は,和解について検討されたことが認められる。そうすると,上記第10回弁論準備手続期日までに陳述した準備書面及び提出した書証により,当事者双方の主張立証活動は完了していたというべきであり(上記の原告準備書面の記載からすれば,原告自身もそのように認識していたと認められる。),被告の申立てにかかる上記原告準備書面(8),同(9),同(7-2),同(10),同(11),最終準備書面,及び準備書面(12)各記載の主張,並びに,甲80~97については,いずれも,第10回弁論準備手続期日以前に主張又は提出することができなかった特段の理由はないものと認められる。そして,上記(1)アないしオの各主張は,いずれも従前は争点になっていなかった事項につき,新たに主張するものであって,このような主張を審理すると,訴訟の完結を遅延させることになるから,時機に後れた攻撃防御方法(民事訴訟法157条1項)に該当するというべきである。

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