election:参議院改革協議会の怠慢
一票の格差は、放置ということである。
参院各会派で構成する参院改革協議会は7日、国会内で選挙制度専門委員会(藤原正司委員長)を開き、今夏参院選での1票の格差是正を断念し、来年中に選挙区割りと定数についての具体案を盛り込んだ公職選挙法改正案をまとめる方向で調整を始めた。各党の論議が進まないなか、民主党の今夏参院選マニフェスト(政権公約)も、参院の定数是正の具体案など抜本改革の提示が難しくなりつつある。
宿題をやらない学生の言い訳のようで興味深いのが次のフレーズだ。
「参院として13年の次々回参院選に向けた改定を行うという強い決意を見せれば司法も有権者も納得する」
強い決意はこれまでも何度も見てきたような気がするが、既にオオカミ少年が力んで「今度からやります、今度こそです」と言っても説得力はない。
参議院の場合、総選挙とはならず半数改選なので、選挙無効判決を下したとしても、国政の停滞にはつながらないという仕組みになっていることを、議会も政府も思い出した方がよい。
先の平成21年9月大法廷判決では、藤田宙靖裁判官の補足意見において、参議院の真摯な努力が見えないとし、仮に,早期の結論を得ることが困難であるというならば,その具体的な理由と作業の現状とを絶えず国民に対して明確に説明することが不可欠なのであって,それを欠くままに徒らに現状を引き摺るようなことがあるとするならば,立法府自らの手による議員定数是正措置に向けての残された期待と信頼とが遂に消失してしまう事態を招くことも,避けられない」と指摘している。特に選挙制度についての専門部会が設置されたことは真摯な努力を伺わせるが、その第1回会合は設置後半年かかってようやく開かれ、しかも実質的な議論もなされないままだったという経緯は、藤田裁判官をして疑念を生じさせるものだったようである。
さらに、反対意見の最後には、こうも書かれている。
今後,国会が,抜本的改革に要する合理的期間経過後においても,改革しない場合は,将来提起された選挙無効請求事件において,当該選挙区選挙の結果について無効とすることがあり得ることを付言すべきものと考える。
選挙が近いから、今回は断念するということが認められるとしても、それで選挙後まで冬眠してよいと言うことにはならないのだ。
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