IDF法務監査分科会2009-3
昨晩、デジタル・フォレンジック研究会の2009年度第3回法務監査分科会が開かれた。
講師はUBIC社の守本社長で、アメリカにおける証拠開示・情報開示の現状を、技術担当者の視点から紹介された。
アメリカの証拠開示(ディスカバリ)といえば、この分科会のメンバーが中心になって以下の書籍を出版し、現在売り出し中である。
この本では、民事訴訟のeディスカバリ手続が主たる対象となっているが、守本氏は民事訴訟のルールを基本としつつも、他の分野(行政処分やM&A時のデューデリなど)でも同様にデジタルデータの開示が必要となると指摘され、その方面での経験も紹介された。
主に前半はtwitterでメモ。
講演前半では、eディスカバリ手続の基本的な解説であったが、後半は数テラバイトものデータの中から数メガバイトの関連情報を絞り込む実例を豊富に紹介された。
ちなみに、数ギガバイトのデータをティフ化する場合、費用は1300万円程度かかるという。従って、生データから効率的に必要なデータに絞り込む作業、それも迅速に正確に行う作業がコスト的にも必要だという。
紹介された事例の中で興味深かったのが、グローバルな企業である商品の製造中止を発表したところ、そのユーザー等から、適切な時期に情報を提供しないで突然製造中止としたことによる不利益を被ったとして多数の訴訟が提起されたケースである。
このケースでは、製造販売中止がいつの時点で決まっていて、それを公表すべきだったかが争われた。少し損害賠償請求権の筋が悪いような感じがあるが、ともかく報告では、製造販売中止を役員がいつ知ったかが争点となり、50台以上のPC、60以上のデータベース、社長を含む経営陣等の対象者40名以上のデジタルデータ(電子メール、PC内テキスト等データなど)合計1.5テラバイトの中から、必要な関連情報をすべて抽出して提出し、不当に発表を遅らせたわけではないことの立証に成功したという。
同じくいつの時点で欠陥を知っていたかがキーポイントとなりそうなトヨタの事例にも当てはまりそうなケースであった。
講演の最後には、トヨタが今後直面するであろうデジタルデータの開示の規模や、開示に必要なデータ収集・解析・抽出を自社内で行ったときのリスク、海外業者に丸投げしたときのリスクを具体的に説明されていた。
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