2chの管理人に対する債権の取立例
裁判で負けても払わなければ問題なしとうそぶく西村氏のことだと思うが、Twitter経由で取立に成功したという報告にたどり着いた。
私は,「2ちゃんねる」の管理人が,掲示板の書き込みを書籍にした出版社に対して有する印税債権を差押え,出版社に印税の支払いを求めました。出版社からは,印税債権を持っているのは管理人ではなく別の会社(A社)だとして支払いを拒否されました。そこで,その出版社に対して印税の支払いを求める訴訟を起こしました。 裁判所は,名目上印税債権を持っているのはA社とされているものの,実際に印税債権を持っているのは「2ちゃんねる」の管理人だとして(つまり,A社は「2ちゃんねる」のダミ-会社だということ),出版社に印税の支払いを勧め,出版社が当方に印税を支払うということで解決することとなりました。
ということで、2ちゃんねる管理人に対して債務名義を有する債権者が、掲示板書き込みを元にした出版(電車男のことかな?他にもあるかな?)の印税を2ちゃんねる管理人の債権だとして差押え、取立訴訟を提起したということであろう。
最後は裁判所が勧めたとおりに解決したというので、和解で終わったということかもしれない。
なんか、似たような債権差押え例を最近このブログでも紹介したような気がしていたが、検索しても出てこないので、紹介しそびれていたのかもしれない。
日弁連コンピュータ委員会の2010年シンポで報告した2009年サイバー法判例回顧、その中に次のような裁判例があった。
【101】東京地判平成21年4月27日WLJ 平成20年(ワ)20399号[間接強制金取立訴訟]
IPアドレス等の開示を命じた確定判決について間接強制決定を得ている原告が、同決定を新たな債務名義として、西村氏の被告(有限会社東京アクセス)に対する広告料債権を差し押さえ、その支払を求めた事案において、被告は、西村氏が唯一の無限責任社員として代表者を務めている会社であり、広告料債権差押手続においては、第三債務者の地位にあるとはいえ、その利害関係は西村氏とほぼ一体的なものであることなどから、被告と西村氏との広告代理店契約を裏付ける文書として計算書類等の提出命令を発したにもかかわらず提出しないことをもって、民事訴訟法224条3項により、被告がAとの間で広告代理店契約を締結していた事実を真実と認めて、請求を認容した事例
民訴の条文も出てきて、個人的にはなかなか面白いのだが、要は西村氏が代表者となっている会社が西村氏に負っている広告料債務を、西村氏に対する間接強制金債権の取立のために差し押さえて取立訴訟を提起し、その広告代理店契約を裏付ける文書の不提出をもって広告代理店契約があったと認定し、これに基づく債権の存在を認めて請求認容したというものだ。
書き換えてもちっとも分かりやすくならないが、債権差押えというのはもともと複雑なものである。
追記:J-CASTニュースによれば、書籍は『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』で、出版社は新潮社とのことである。
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コメント
法人格否認の法理(いわゆる「逆否認」(個人的に嫌いな言い方ですが・・・))
ってことなんでしょうか?
こんな感じが続くと
(第三者異議以外の)執行法でも法人格否認の法理が
認められそうで興味深いですね
投稿: 故元助手A.T. | 2010/02/18 12:03
これだけ手間をかけて、いくらの債権の取り立てに成功したんでしょう。
投稿: 井上 晃宏 | 2010/02/19 15:14
それは書かれていないわけですが、まだ足りないということで、他の書籍についても執行を考えているそうです。
投稿: 町村 | 2010/02/19 17:28