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2009/10/09

jugement:出会い系サイト殺人事件

松山地判平成21年7月24日PDF判決全文

男が、出会い系で知り合った女に攻撃され、反撃して殺してしまったという事例である。

こういう死人に口なしの典型のようなケースは、さぞかし事実認定は難しいだろうと思われる。
本件では、被告人は女性から金を要求され、これを断ったら首を絞められたので、逆襲して首を絞めて殺してしまったと述べ、弁護人は過剰防衛だと主張した。

刑法の正当防衛に関する規定は次の通り。

(正当防衛) 第三十六条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。 2  防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

女性が男性を攻撃してきて、その攻撃をかわすために反撃するのであれば、一応不可罰だし、その程度を越えたものということなら、刑を軽くしたり免除したりという対象になるというわけだが、本件では被告人は次のように述べている。

(1) 何度も被害者から金を要求されて断った,(2) 下山中の車内で被害者から突然,ハンドルを握っていた左腕と左肩をつかまれ,車を停車した,(3) 被害者から車中で首を両手で絞められた,(4) 手を放させるため,被害者の首を両手で絞め返した,(5) 途中から,首を絞められたことなどに対する怒りが爆発し,殺意をもって首を絞めたところ,被害者が被告人の首を絞める力が弱まってきた,このときには被害者の手を首から外すことが目的ではなく,殺すことが目的になっていた,(6) 被害者を後ろ向きにし,背後から右腕を回して首を絞めたところ,被害者は必死に両手で被告人の右腕を外そうとしていたが,腕を外されることはなかった,(7) 車内にあった被害者のマフラーで5分から10分間首を絞め続けた,このときに被害者から抵抗されたという記憶はない

既にこの(5)の時点で防衛の意思はなくなって殺意に基づいて行動しており、(6)に至っては防衛の必要はまるでない状況だったわけである。

過剰防衛を認めなかった裁判所の判断は妥当であろう。

しかし、出会い系サイトというのは一筋縄に評価しづらい存在である。
一時期の出会い系サイト問題というのは、青少年問題で、要するに子どもたちが出会い系サイトで売春するなど悪に染まるのが問題だったから、フィルタリングなり青少年保護立法なりで多少なりとも問題解決を図ることができた。
ところが、問題は青少年だけではなかった。大人であっても、出会い系サイトを通じて知り合った相手に殺されたり、美人局のような罠にはまって恐喝されたりという事件がしばしば出てくる。本件判決の事件も、まさにその一つである。殺されたりされないまでも、裸の写真を撮られたり、濡れ場を隠し撮りされたりして、罠にはまる被害も考えられる。

他方、出会い系サイトで生じる消費者問題もある。サクラばかりの出会い系に大金をつぎ込み、気が付いたら思わせぶりのメールに振り回されて100万円前後も浪費していたというケースが多く発生しているようである。

そして、これらのトラブルの相談を受け付けるサイトというのがまた沢山ある。
いかにもアブなさそうである。

では出会い系は全く詐欺とサクラの無意味な存在かというと、どうもそうではないらしい。上記のような被害者は男性利用者も女性利用者も存在する。ということは、男性も女性も、運が良ければサクラではない参加者に出会えるし、そのすべてが殺人犯というわけでもない。素敵な交際相手に出会える可能性がないわけではない。

しかし、見ず知らずの人に、あとで恐喝されたら確実に困るようなネタを提供するということ自体、リスクが大きすぎて手を出さないのが普通だとは思うが、そのあたりのリスク評価基準は人によって違うのかもしれない。悲惨な目に遭うことを想像できない場合もあるだろうし、失うものはない(少ない)と思い込んでいる場合もあるだろう。

このように考えていくと、出会い系サイト問題というのはなかなかなくならないと思われる。

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