glasgowシェリフコート傍聴記
この日、審理を迎えたのは7人で、いずれも新件である。一日に新件が7人というのは、決して多いわけではなく、週明けなどは20人もの新件が扱われることがある。
被告人はいずれも身柄を拘束されており、地下の留置場から一人づつ法廷に階段を上って連れられてくる。階段を上がったところが法廷の真ん中にしつらえられた被告人ボックスということになっている。彼らは、通常ドックと読んでおり、20センチほどの厚さの手すりようなカウンターのようなもので、仕切られていた。
スコットランドのシェリフコートは、裁判官の法壇の前に書記官席があるところまで日本と同じだが、その前にラウンドテーブルで6人くらいが座る大テーブルがある。ここに裁判官から見て右手前に検察官が座り、残る席には思い思いに弁護人sollicitorが座る。そして担当の被告人の弁護をすると、帰って行く。座りきれない弁護人は後からやってくる。
審理は予定時間を30分ほど遅れて始まった。被告人を検察官側の指揮で連れてくるのに、いつも手間取るので、これくらいの遅れは常態だということだった。
一人目、二人目と、特に変わったこともなく、弁護人が被告人の耳元で罪を認めるかどうか確認し、罪を認めるなら書類にサインさせ、その旨を裁判官に弁論して保釈を求める。これに対して検察官が保釈条件を付けるよう求める。特に問題がなければ裁判官は被告人を起立させ、罪を認めるかどうかまず尋ねね、肯いたら保釈条件を言い渡す。この保釈条件は一般的な、証人に近づくなとか住所を変えるときは届け出るとかのほかに、2つのスペシャルコンディションが付けられていた。それは一定の時間にグラスゴーの特定の場所をうろついてはならないという条件と、被害者・申請人にいかなるアプローチも連絡もしてはならないという条件である。
3人目は女性の被告人であった。午前中の説明では男性が被害者となるケースも17%ほどあるということなので、7人もいれば一人くらいは女性が被告人となりうるわけだ。傍聴人に友人らしき4人連れが来ていて、女性の被告人に保釈が認められたということで親指立てサインを送っていた。しかしこの日の7人は全員保釈が認められていたのだ。
4人目は多少異なる経過をたどった。この被告人は保釈中に保釈条件を破ったということで再び逮捕されたのである。弁護人と検察官とのやりとりを重ねた裁判官が、被告人に、「あなたの場合は保釈条件を一度破っているので、今回に限り例外的に保釈を認めることにします」といって、特に厳重に保釈条件を遵守するよう言い渡していた。
残る3人のうち、一人は保釈条件のところで「子どもにも会えないのか」と質問し、判事が「第三者のコーディネートを求めて子どもと面会することができます」と説明していた。
また、子どもが関係している人に対しては、Child hesring の制度のSupervised を定期的に受けるようにという条件が付されていた。
以上のように、本日のDVコートの審理は、日本でいえば拘留理由開示公判と保釈決定を公判で行うような機能を果たしていた。各被告人の保釈が言い渡されると、書記官が次回公判を指定したが、短いもので1か月後、普通は3か月後のようである。
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