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2009/06/15

jugement:小室哲哉事件判決

関西の寛刑傾向の象徴的な事件であろうか。

大阪地判平成21年5月11日(PDF判決全文)

著名な音楽プロデューサーである被告人が,共犯者らと共謀の上,資産家の被害者に対し,自己の音楽作品の大半の著作権が音楽出版社等に譲渡等されていた事実を隠し,未だに全著作権を自ら所有しているかのように装って,これを買い取るように持ちかけ,譲渡代金の一部として5億円を騙し取ったという高額の詐欺の事案につき,被害弁償が全額なされ,極めて多額の慰謝料も支払われていることや被告人の反省状況・更生環境等を考慮して,懲役3年・執行猶予5年の判決が言い渡された事例

内容については特に興味はないが、著作権のような無形の権利について二重売買が詐欺として成立するかどうかと言う問題は、以前としてあり得るような気がする。

例えば、債権の二重譲渡は、第1譲渡の時点では第2譲渡がないので詐欺にはならず、第2譲渡の段階では詐欺可能性があるが、そちらに対抗要件を備えさせてしまえば第2譲渡は詐欺ではない。
はじめからそのつもりで第1譲渡をすればもう第1譲渡の時点で詐欺になるのかも知れないが、どうかな?

という方向での頭の体操をしたい方は、上記の判決を読んで、こういう問題が成り立ちうる事案だったのかどうか、そうでなければどういう事実経過だと上記のようなことになるのかなど、考えてみよう。

それとは別に、本件被害者が実害を弁償された以外に、慰藉料として2億5千万円ももらっているという事実は驚くべきことである。
判決文でもこの慰藉料を「法外な」と表現している。

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コメント

 この判決のあと、数人の一審実刑の被告人から「がばっと弁弁償すればわしも執行猶予になりまへんか?」みたいな相談がありました。
 他の弁護士にもあるようです。
 何でもお金で解決できる、執行猶予判決も金で買えるという発想はまずいので、「全部の事件がこうなるとは限らない」と答えます。
 詐欺・恐喝・強盗という財産犯+αの事件で、本来金銭的評価ができない+αの部分の弁償をどこまでするかとか、それをどこまで量刑上評価してくれるかというのは、悩ましいところです。

投稿: 奥村徹(大阪弁護士会) | 2009/06/15 17:59

「小室哲哉事件以降そういうことになったのかどうか,実践例が少ないので,やってみないとわからない。」と伝えるよりないのではないでしょうか。

投稿: 小倉秀夫 | 2009/06/15 21:44

 被害弁償のほかに,手口が単純であること,更生環境環境が整備されていること,前科前歴のないこと,実刑により葬るには惜しい才能であることも大きいでしょう。

投稿: キメイラ | 2009/06/16 04:49

またしても12万円請求されました(笑)

ITに詳しい弁護士に相談したいのですが、どこに行けば良いですか(笑)

投稿: Toshimitsu Dan | 2009/06/16 17:10

この事件、冷静に見れば単純な財産犯ですし、損害、遅延損害金に加えて、純粋な慰謝の措置だけで1億円支払っているという事情がありますから、執行猶予というのは、驚くようなものとまでは思わないです。

規模が大きいので比較する事案が見つかりませんが

投稿: Toshimitsu Dan | 2009/06/16 17:29

分かっていながらクリックしてしまう人は、払うべきではないでしょうか?

それはともかく、裁判所が示談の金額について「法外な」と表現していることについて、驚くべきだと思います。

また金さえ払えば許されるというのも、いくら財産犯でもどうかと思います。キメイラさんのご指摘に加え、騙されたという相手の問題も、あるいは共犯者とされている唆し犯の問題もあって、あのような結論になったのでしょう。

こんなことを書くと、また、被害者がネットで誹謗されていると騒ぐかもしれませんが。

投稿: 町村 | 2009/06/16 19:49

厳しい指摘を頂きありがとうございます。
さすがにワンパターンは駄目ですね。

私見ですが、判決は、「法外」という表現のなかで、被害者の問題を含めた評価を述べたのかもしれません。

なお、判決が驚くようなものではないというのは、検察が控訴を断念したことからもそうだったりします。

それが一般人の感覚に合致するかは別で、今後、法益論を含め、議論されるべきとは思いますが。

投稿: Toshimitsu Dan | 2009/06/16 22:43

すごい人生の学びしてますね小室さん。目立ちたくなかった子供の頃から、大金持ち、そして挫折。
お金とかが嫌いになれたことでしょう。それで人生、相殺。

投稿: sib | 2009/06/21 14:52

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