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2009/01/16

arret:情報公開訴訟のincamera審理

最高裁がインカメラ審理を明文なく認めた原決定を破棄して、インカメラ審理を求める申立を却下したと報じられている。
毎日jp:情報公開訴訟:「インカメラ審理」を却下 最高裁が初判断

インカメラというのは、写真機のことではなく、ラテン語で部屋の中、つまりは法廷ではなく裁判官室で見るということから来ている。英語で言うならin Chamberとなろう。
(追記:もちろん、写真機のカメラも、部屋から来た言葉なので、インカメラと写真機はなんというのか、叔父甥の関係とでもいうべきか。)

最決平成21年1月15日(PDF決定全文)

上記記事では、民訴法等に規定があると紹介されているが、その条文は以下の223条6項。

裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。

で、民訴法上の文書提出命令と秘密保護のいずれを優先するかという審理では認められているのだから、情報公開と秘密保護とのいずれを優先するかという審理でも認められるべきだというのが、原審の見解であろう。
しかし、民訴法上の制度は証拠として使えるかどうかという局面で裁判官だけが見るものであり、裁判官が当該文書を提示させて見ても、秘密保護を優先するとなれば、その文書の内容は証拠とならないし、裁判官の心証にも影響を与えない(ことになっている)。両当事者が反論する機会のない証拠とするわけではないのだ。
ところが情報公開訴訟で公開の可否を決める証拠資料として当該情報の内容を見るということになると、その内容について当事者が弁論し評価する機会のない証拠を使って、本案である情報公開の可否を決めるということになる。これでは当事者の弁論権侵害になるというのが最高裁の見解であろう。

しかしながら、証拠として心証に影響を与える当該情報記載文書の内容について、弁論して評価する機会がないのは、当該情報記載文書のインカメラ審理を求める側であり、相手方である情報保持者は当該文書の内容を知っているのであるから、弁論しようと思えばできる。このような非対称的な関係を民事訴訟の両当事者に生じてしまうのは好ましいことではないが、その中で不利を被る当事者がそれでも良いといっているのであれば、それでも良いのかもしれない。

そういうわけで、少なくとも立法論としては、情報公開訴訟にインカメラ手続を導入することも考えられてよいように思われる。

なお、原決定は紙媒体で見ることができる。
福岡高決平成20年5月12日判時2017号28頁

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