lawyer弁護士による被疑者国選詐欺
毎日jp:国選弁護:報酬過大請求、制度の根幹揺るがす…法テラス
被疑者国選に就いた弁護士が、接見回数を過大に報告し、過大に報酬を受け取ったというものである。
本人は「記載に一部誤りがあるが故意ではない」と説明し、水増し分を返金する意向を明らかにしているというが、何回もやっているのである。
この弁護士は「受任した7件の報酬のすべてで水増し請求し、計24回しか容疑者と接見していないのに47回と報告。総額34万1700円を過大に請求し、うち約20万円は既に受領しているという。」
報酬の仕組みは、逮捕から起訴まで20日間かかる通常の事件の場合、接見回数が1回なら報酬は2万4000円、接見5回までは2回目以降を1回2万円として増額する。6回目以降は増額幅が減り8回で頭打ちになる。
そしてこの弁護士は、実際には3回の接見だけなのに、8回接見したと報告して最大の報酬を請求したというのだ。
この事件を見るに、弁護士の職業倫理に過大な期待をすることはできないと改めて思う。また、こういう事件が最近現れると、「だから法科大学院による法曹養成はダメなんだ、最近はこんな事件が多発するようになってしまった」という人が必ず出てくるが、この弁護士さんはおそらくロースクールを出ていないので、弁護士倫理の機能低下とロースクールとは関係ないのである。
そして、報酬をごまかすのは子供じみた悪いことだが、上記のような報酬に「実費」が適切に反映されていないという現実も指摘すべきである。被疑者国選も国選弁護も、接見だけでなく、記録の謄写などが不可欠であり、きちんとした証拠の閲覧評価がなされなければ弁護は無理である。にもかかわらず、その費用は支給されないか、かなり低い限度内に押さえられているというのである。
全く考えがたい話であり、そういうところで費用をけちっているから、せこいゴマカシ弁護士しか引き受けなくなっているのではないか。
ということで、接見回数に応じた報酬というのであればそれを裏付ける資料を提出させることが当然だが、その一方で、必要な費用はきちんと支払うというように制度的に見直すべきだ。
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コメント
この方は,そもそも司法修習を経ているのでしょうか?
http://mainichi.jp/select/today/news/20081010k0000m040147000c.html
投稿: 小倉秀夫 | 2008/10/11 01:03
黒瀬弁護士は早稲田大大学院を修了後の77年、愛知学院大助教授(商法)に就任。91年に副検事、95年に検事任官した。全国初の大学から検察官への転身で、名古屋区検、法務省法務総合研究所に勤務。97年退官し、00年弁護士登録した。
ということなので、修習は受けていなさそうな感じがしますが。
投稿: 町村 | 2008/10/11 09:24
ということで,この方に関しては,旧試験がどうだ,ロースクールはどうだという話の範疇外だと思います。
感覚的なお話をすると,弁護士の活動を横目で見つつ過ごされた上で途中から弁護士になられた方の中に,生粋の弁護士とは異なる金銭感覚の持ち主が多いような気がします。
投稿: 小倉秀夫 | 2008/10/11 10:56
それはまたずいぶんな感覚的なお話で、別名は偏見という奴でしょうか。
懲戒事例を対象弁護士の経歴で分析すると、答えは出るかもしれません。
投稿: 町村 | 2008/10/11 11:38
懲戒事例を分析してもわからないと思いますけどね。
でも,生粋の弁護士だと,1000万円のご祝儀とかって,想像を絶する世界です。
投稿: 小倉秀夫 | 2008/10/11 12:40
1000万円を国選弁護費用で「ご祝儀」で詐取したら、一種の才能(悪い意味で)でしょうね。常識的にはあり得ないですから。
投稿: ハスカップ | 2008/10/12 02:07