jugement:著作権存在確認の訴え
民訴新判決例といってもよい。
どういうことかというと、原告があるコンピュータプログラムの著作権が自分にあることの確認を求めた請求について、訴えの利益があるかないかを判断するよりも先に、請求に理由があるかないかを審理判断してよいと判示しているのである。
被告は原告主張のプログラムは被告と関係がなく(1)、仮に被告が使用中のプログラムのことを指しているのだとすれば、それは被告の命令により職務として原告が作ったものだから職務著作物で原告に著作権はない(2)と主張している。
本判決は、(1)が認められれば訴え却下、(2)が認められれば請求棄却になるとして、次のように判示している。
「まず,訴訟要件の審理と本案訴訟の審理との先後関係については,特に前者を先行させる必要性はない。また,確かに,訴訟要件の存否が不確定なのに,その点の審理をしないで請求棄却の本案判決をすることは,原則として許されないというべきであるが,本件のような訴えの利益(確認の利益)については,本案の主張と重複する点が少なくなく,また,公益的要請のある他の訴訟要件とは異なるものであるから,訴訟要件の判断をせず,請求棄却の判決をすることも許されると解するのが相当である。したがって,被告の上記両主張の判断順序に制約があると解すべき根拠はない。」
こうした考え方は、鈴木正裕、新堂幸司、竹下守夫、高橋宏志といった民訴学者により提唱されてきたところだが、なお通説的な見解とはならず、有力説とされている。
通説に立つものとして、以下の文献139頁以下参照。
ついでに、原告のもう一つの請求である開発寄与分の確認を求める訴えは、以下のように、過去の事実の確認を求める訴えだとして却下されている。
過去の「事実の確認」でもそれが現在の紛争の抜本的解決につながるのであれば、確認の利益があるとつつ、本件ではそうではないという。しかしそれに続けて、開発寄与分の確認というのは著作権の共有持分確認とも解され、そうだとすると上記の著作権確認に包含されるから、この観点からも訴えの利益がないという。しかしこの観点からすれば、そもそも独立の訴訟物ではなかったというべきであり、訴訟要件がないとすること自体が不適法ということにならないか?
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コメント
確認の訴えでは,確認の内容と訴えの利益(確認の利益)の二つが(二つだけが)請求原因事実になりますよね。この点で,他の審判形式より特殊だとは言えないでしょうか?
投稿: kisslegg | 2008/07/29 11:40
いや~(^_^;)
PDFをテキスト読み上げソフトで聞きました。
とても、プログラム説明書でありました。
投稿: 酔うぞ | 2008/07/29 13:35
確認の訴えが他と違うのはその通りだけれども、訴えの利益は請求原因事実ではありませんね。
それから確認の内容というのも、確認の対象たる法律関係を指しているなら、それは訴訟物であって請求原因事実ではありません。
少なくとも請求原因事実は、積極的確認の訴えでも給付の訴えでも、あまり変わらないでしょ。
債務不存在確認のような消極的確認ではずいぶん違ってきますが。
投稿: 町村 | 2008/07/29 13:42
著作権訴訟は未だ日が浅く裁判所も手探り状態 傍聴人の多さもあり慎重な進行である 控訴人は意外な展開に嬉しさを隠さなかった
http://suihanmuzai.web.infoseek.co.jp/2154kyushakumei001.jpg.html
投稿: 確信犯の冤罪主張 | 2009/01/30 09:53