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2007/12/04

arret:銀行の貸出先区分に関する文書の提出を命じた事例

最決平成19年11月30日(PDF全文)

金融検査マニュアルで立ち入り調査の時に検査される文書は、自己専用文書にならないとするものである。

要旨は以下の通り。
「本件文書は,相手方が,融資先であるAについて,前記検査マニュアルに沿って,同社に対して有する債権の資産査定を行う前提となる債務者区分を行うために作成し,事後的検証に備える目的もあって保存した資料であり,このことからすると,本件文書は,前記資産査定のために必要な資料であり,監督官庁による資産査定に関する前記検査において,資産査定の正確性を裏付ける資料として必要とされているものであるから,相手方自身による利用にとどまらず,相手方以外の者による利用が予定されているものということができる。そうすると,本件文書は,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていない文書であるということはできず,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない」

この理屈でいくと、例えば内部統制に関する文書で監督官庁が調査権限を有する文書については、文書提出命令の対象となることを免れないということになる。


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コメント

すごいですね。自己査定関係の文書は、公務員の守秘義務を信頼して作っているのに。「公務員が見るから」と言い出したら、税金関係の書類とかどうなるのでしょう。
所得税法234条
「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、所得税に関する調査について必要があるときは、次に掲げる者に質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類(略)その他の物件を検査することができる。」
「その他の物件」で引っ掛ければ、何でも文書提出命令の対象ですね。

ちなみに問題になった銀行法25条は
「内閣総理大臣は、銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該職員に銀行(略)に立ち入らせ、その業務若しくは財産の状況に関し質問させ、又は帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」
所得税法とほとんど同じですね。

投稿: 金融 | 2007/12/04 16:33

銀行の貸出稟議書は自己使用文書にあたる、という判例との整理をどうつけるのか良く分かりません。

稟議書も検査の対象ですよね、確か。

投稿: ひげ小山 | 2007/12/05 00:20

いや全く。貸出稟議書も検査の対象であるならば、「相手方(金融機関)自身による利用にとどまらず,相手方(金融機関)以外の者による利用が予定されているものということができる」ように思います。

ただ、貸出稟議書については一般に、金融機関内部の意思形成過程で作成された文書であって、その開示が自由な意思形成の妨げとなるものという性格付けがされていますから、その点で本件文書とは異なるということなのでしょう。

最高裁の論理構造からすると、まずは外部に開示することが予定されているかどうかを判定し、外部に開示することが予定されていないものについて実質的な秘密としての要保護性みたいな性格が認められるかどうかという判断構造なので、本決定のように初めに検査対象となる文書は外部に開示することが予定されてしまうとなって、じゃあ稟議書も一緒ではないかとなりそうです。

統一的に理解するとすれば、そのような論理構造ではないということになるのでしょう。

投稿: 町村 | 2007/12/05 09:43

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