「ウクライナに於ける北朝鮮軍兵士の脅威」は米国の情報キャンペーンに基付いている(抄訳)
Ukraine - Threat Of North Korean Soldiers Is Based on U.S. Info Campaign
DPRK派兵の主張はナンセンス
2024/10/15、私は数千人のDPRK兵士達が間も無くロシアの味方をしてウクライナと戦うことになると主張する、ウクライナ(とROK、米国)のプロパガンダ・キャンペーンを指摘した。
「DPRK軍がロシアでクルスクへのウクライナ軍の侵入に対して戦うと云うのは、殆ど意味を成さない。侵入作戦は既に殆ど敗北している。
それに加えて、言語と文化の問題から、そうした部隊をロシア軍の作戦に組み込むことは略不可能だろう。ロシア軍はこれに強く反対するだろうと私は確信している。
ゼレンスキーの主張は、様々な代理勢力やメディア出演を通じて増幅された。
………私は、DPRK軍がロシアに居ると云う主張全体がフェイクニュースだと見做しているが、殆どの専門家もその判断に同意見だろうと確信している。
しかし今日、米国のメディアは、ワシントン・ポストの様に、このナンセンスを大々的に宣伝することに成功している。
西洋の政治家や軍人で、ウクライナ軍諜報機関の主張にのみ基付くこのナンセンスを信じる人が居るとは思えない。
だがこの問題を定着させようとするウクライナ政府のキャンペーンは明らかだ。」
アイディアはランド研究所発
上記の記事を書いた時点では知らなかったのだが、このキャンペーンのアイディアは、戦略的アイディアを頻繁に提案するペンタゴンのシンクタンクであるランド研究所から来たものだった。
ゼレンスキーのキャンペーン開始の3日前の10/11に発表されたロシア/DPRK及び中国の協力に関する論説「ロシアと北朝鮮の同盟が進行中? 確信は持てない」で、ランドのアナリストはこう書いている。
「米国は何をすべきか?
ロシア、中国、北朝鮮の目的の違いを考慮すると、米国はこれら3ヵ国に対して大規模な情報作戦を展開し、その違いを浮き彫りにして不信感を煽るべきである。
そうすれば、少なくとも一部のパートナーシップが断絶する可能性が高まる。潜在的な情報作戦の例は明らかである様に思われる。
………ロシアと北朝鮮に対しても情報作戦は可能である。
………米国は、北朝鮮の軍事顧問団がロシアによるウクライナ占領地域での北朝鮮の軍事物資の使用を支援していることを認識すべきである。
………韓国国防相は、北朝鮮がロシア支援の為、恐らく戦場で更に多くの部隊を派遣するだろうと述べている。ロシアの態度を考慮すると、それらの部隊は砲弾の餌食になる可能性が高い。北朝鮮のエリート層は、金正恩が自分達の息子に何をするつもりなのかを聞く必要が有る。
………ロシアと北朝鮮のこの新たな協力は、長期的な同盟が芽生えつつあることを示す兆候とは到底言えず、米国の情報作戦は同盟の崩壊を早めることが出来るだろう。」
フェイクニュースの常連達が話を広める
この論説が発表された僅か3日後、ブダノフ将軍率いるウクライナ軍の軍諜報部は、ロシアに駐留するDPRK軍に関する主張をウクライナの報道機関に「リーク」し始めた。これが何処から来たのかは明らかだ。
因みに2024/02/26のニューヨーク・タイムズの報道に拠ると、ブダノフはCIAの訓練を受けたウクライナ諜報局のエリート部隊2245のメンバーだった。
ロシアにDPRK軍兵が1,500人、その後3,000人居るという最初の噂を流して以来、ブダノフは着実に話を膨らませており、10/18には、「11,000人の北朝鮮軍が11/01までにウクライナで『戦闘準備完了』」になると主張している。
DPRKに関するフェイクニュースを流すことで知られるROKの聯合ニュースは、同様のROK「諜報部」の主張を繰り返し、10/18には「北朝鮮がウクライナ戦争でロシアを支援する為に約1万人の兵士を派遣することを決定」と報じている。
米国のメディアも至る所でこのテーマを取り上げている。ワシントン・ポストがウクライナからの噂を流布した後、10/16にはニューヨーク・タイムズも飛び付いている。
エビデンスは無い
NYTの報道は一部で困惑を招いた。
An entire NYT article https://t.co/KMnUM4iySk based on the premise that North Korean troops are fighting in Ukraine. Not until the 15th paragraph does the reader learn there’s no evidence for this whatsoever. pic.twitter.com/hkDxXB2nkO
— Left I on the News 🇨🇺🏳️⚧️ (@leftiblog) October 16, 2024
「NYTの記事全体が、DPRK軍がウクライナで戦っていると云う前提に基付いている。15段落目まで読まないと、読者はこれについて何のエビデンスも無いことに気が付かない。」
NATOもこれと同意見だ。
「NATO事務総長マーク・ルッテはこう述べた:同盟は『北朝鮮の兵士が戦闘に関与していると云うエビデンスを持っていません。ですが北朝鮮がロシアを武器供給、技術供給、イノヴェーション等、多くの方法で支援し、戦争努力を支援していることは分かっています。そしてそれは非常に憂慮すべきことです。』」
政治利用
現在の選挙シーズンは、このプロパガンダのテーマが直ちに政治の領域に拡大することを確信させた。10/19のウクライナ・プラウダの記事はこう報じている。
「米下院諜報委員会のマイク・ターナー委員長は、北朝鮮部隊がロシア側でウクライナに対する敵対行為に関与している可能性が有るとの報道が為される中、ホワイトハウスに『即時』のブリーフィングを要求した。
………『北朝鮮軍がロシア領からウクライナを攻撃するか、ウクライナ領に侵入するかは、米国とNATOにとってのレッドラインでなければなりません。貴政権はそれを絶対に明確且つ断固としたものにしなければなりません』とターナーはバイデンに書いた。」
毎度の様に………フェイク動画
それでもDPRK軍がウクライナでの戦争を準備していると云う主張はエビデンスを欠いていた為、ウクライナ諜報機関は証拠を捏造しなければならなかった。
🇺🇦🇷🇺🇰🇵 BREAKING STUPIDITY: Ukraine shows a North Korean POW! The problem is he speaks Ukrainian, LMAO.
— Lord Bebo (@MyLordBebo) October 18, 2024
They explain it, that Koreans live close to the border with russia so they learn Russian, ok ... sure but he speaks UKRAINIAN ... LMAO
They took some student from Kiev or… pic.twitter.com/fL3V5GTLcn
「与太話速報:ウクライナが北朝鮮の捕虜を公開! 問題は、彼がウクライナ語を話すことだ、クソワロタ。
この朝鮮人はロシアとの国境近くに住んでいてロシア語を学んでいると説明している、OK………だが彼はウクライナ語を話している………クソワロタ。
連中はキエフか何処かから適当に学生を連れて来て、無理矢理この動画を作らせたんだ!
彼はウクライナ語でヴォロディミル・ソシウラのウクライナの詩『ウクライナを愛せ』を暗唱し、発音も非常に良い。彼がたった10分でそれを覚えたなんて有り得ない、人間業じゃない。」
また、DPRKの兵士達がロシアの装備を着け、それを使って訓練している様子を映したとされる動画も2本有る。
🚨🚨 North Korean soldiers receiving weapons nd ammunition from the Russian command centre to fight against Ukraine in russia Ukraine border... #KIMGOEUN is in full war mode.... #UkraineRussiaWar #Ukraine #NorthKorea . pic.twitter.com/ea5wvz3hSk
— Geography🌏🏞️ (@GeoStatics7372) October 19, 2024
「ウクライナ政府機関であるウクライナ戦略コミュニケーション・情報セキュリティ・センターがCNNに公開した動画には、軍服を受け取る為に長い列を作っている兵士達の姿が映っている。兵士達は朝鮮語で話していると思われるが、音声の質が悪く、会話の内容を完全に理解することは出来ない。」
しかし情報筋に拠ると、この動画はラオスとロシアの軍隊が軍事演習を行う毎年恒例のLAROS演習のひとつで撮影されたそうだ。
ウクライナが提供したCNNの動画で兵士達が被っている帽子は、ラオス兵の帽子に似ている。
結論
ランド研究所がロシアに居るDPRK兵をテーマにした米国の情報作戦キャンペーンを提案した直後、CIA訓練生のブダノフ率いるウクライナ軍諜報部は、DPRKの兵士達が間も無くロシア側に付いて戦うと云う噂を広め始めた。
ブダノフが主張する数字はその後着実に増加している。
これまたCIAと繋がるROKの諜報機関と米国のメディアもキャンペーンに参加している。
下院情報委員会の委員長は、政治的な主張をする為にキャンペーンを利用している。
主張を裏付ける筈のエビデンスはフェイクであることが暴露された。
従ってこの話全体は、ランドが提案した筋書きに従った「諜報」の噂だけに基付いている。騙されないように。
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