昨日コミュニティ除雪をしていた時、微笑ましいというか野鳥の世界にもこういうことってあるんだなぁ、という光景を目撃した。
それは担当している上横山地区の除雪を終えて長江集落に入ってしばらく行った処にある椿やウラジロなどの常緑樹が混在している雑木林の坂道を下っていた時のことだ。
その場所はコンクリート舗装に僅かに降り積もった雪が薄らと張り付いているという路面状態だった。その坂道をゆっくり降りていくと道の真ん中に何やら黒い物体が転がっていたので、枯葉か朽ちた枝の欠片が落ちているのかと思いそのまま通り過ぎようかと思ったがよく見ると2羽の小鳥だったので、踏みつけてしまうのは忍びないと除雪車を停めて小鳥が飛び立つのを待った。
ところがなかなか飛び立つ気配がないので、どうしたのかなと思ったら路面に横たわっている小鳥をもう1羽の小鳥が啄んでいた。茶褐色の鳥でヒヨドリよりちょっと小さく、横たわっている鳥より引っ張っている鳥の方がひと回り小さかった。
一見すると捕獲した獲物を啄んでいるかのように見えたが、そうではなくてなんらかの理由で墜落したパートナーをなんとか安全な場所に引き摺って行こうとしているようだった。しばらく眺めていたが埒が開かないので横たわっている鳥を道端の安全な場所に移すべく除雪車から降りて鳥のすぐ傍まで近付いても飛び立たず引っ張り続けていた。
それでも私が手を差し伸べるとようやくその場を離れたが、道端に置くとまたパートナーの元に降りてさっきと同じように首筋を突いていた。ちなみに横たわっている鳥はまだ息があり時々翼を震わせたり尾羽を僅かに広げようとしていた。
冬は野鳥にとっても厳しい季節なのだ。野鳥に詳しい人が餌も少なくなるし寒さと飢えで生命を落とす鳥が結構いると話していた。さっきまで一緒に居たパートナーの身に災いが降りかかるとなんとかしてあげたいと思うのは人間たちばかりではないのかもしれない。
家に帰ってカミさんにこのことを話すと「鳥にもそういう感情ってあるのかしら」と感想を述べていたが、あのあとどうなっているか気になって現場に行ってみることにした。
現場に着いて二羽の小鳥を置いた辺りを探したが、もうだいぶ時間が経っていたので二羽の小鳥の姿は無かった。息絶え絶えだった方の小鳥もなんとか息を吹き返しどこかへ飛んで行ったのならいいのだが、と思って足元をよく見るとそこには新しい小鳥の足跡と獣の足跡が残っていた。もしかしたらと忌まわしい光景を思い浮かべたが、それも自然界では至極普通に起きている出来事なのだと思い直し、その場を後にするのだった。