潟端ふれあい薪能2024
潟端ふれあい薪能2024 ※クリックで再生
今年も佐渡市潟端の諏訪神社の能舞台で津村禮次郎師率いる一橋観世会と二松学舎観世会の学生が合宿を行い、お世話になった集落の人達に成果の披露を兼ねてふれあい薪能を行いました。
ふれあい薪能の歴史はかれこれ30年も前のことだそうですが、「諏訪神社にせっかく立派な能舞台があるのに使わないのは勿体ないどうにかして生かしたい」という集落の人達の思いと、「世阿弥が関わる古い歴史を持つ能の本場佐渡の能舞台で学生たちを学ばせたい」という一橋観世会の津村禮次郎師の思いがふれあって始まったという説と、身近に能をふれあってもらいたいという説があるようですが、どちらにしても30年も続けて来たということは素晴らしいことだと思いながら私も楽しませてもらっています。
プログラムはまだ日が残る午後6時から二松学舎大と一橋大学の学生による仕舞が演じられました。津村師の紹介ではコロナ禍のブランクがあり2年前に新メンバーで佐渡(合宿)に来て日が浅いので、まだまだ稽古の余地があるとのことでしたがなかなかどうして堂々とした能を演じていたと思いました。
日が落ちて鎮守の森の蝉しぐれも心なしか静かになり能舞台の下にある薪に火がつけられると学生の鼓や笛が入って舞囃子「鞍馬天狗」が演じられました。
学生の演目が終わるといよいよ中所宣夫師による番外仕舞「天鼓」です。中所師は名古屋市生まれの観世流能楽師で重要無形文化財保持者(能楽総合)一橋観世会において津村禮次郎師より指導を受け、その後観世善之に師事、観世流九皐会・緑泉会を中心に活動しているそうです(潟端ふれあい薪能パンフより引用)。佐渡でも中所師のファンは多く、私も彼のキレッキレ舞姿にいつの間にかファンになっていました。
「天鼓」 中所宣夫師
「巴」 津村禮次郎師
今年の潟端ふれあい薪能の演目は巴(ともえ)。あらすじは木曽の僧が都に上がる途中、琵琶湖のほとりの粟津が原の神前で涙を流している女性と出会う。僧が理由を尋ねると、女は古歌を引き神前で涙を流すのは不思議なことではないと述べ、逆に僧が木曽の出だと知ると粟津が原の祭神は木曽義仲だと教えて供養を勧めた。
その後女性は自分が亡者だと明かし消えてしまう。僧はお参りに来た近在の者から義仲と巴の物語を聞かされ先の女性が巴だと確信する。夜になり義仲が経を読み亡者の供養をしていると先程の女性が武者姿で現れ、義仲との合戦の日々や最期を共に出来なかった恨みを打ち明けると執心を弔うよう僧に願って去っていくというもの(潟端ふれあい薪能パンフより引用)。
今回の薪能ではその一場面を披露してくれたが、能の演目にはこのような筋書のものが多いなあと思いながら蝉しぐれがの降り注ぐ諏訪神社の境内で巴の冬物語に思いを馳せるのであった。
執心を弔うよう僧に願って去っていく巴