2016年10月22日に行われた、広島対日本ハムの日本シリーズ1回戦の試合結果
日本ハム 000 000 100|1
広 島 010 200 20×|5
勝 ジョンソン 1勝0敗
負 大谷 0勝1敗
S -
【本塁打】松山1号、エルドレッド1号
日中から降り続いている雨は、試合開始直前になっても止むことはなかった。
ただ、雨男ジョンソンにとっては、慣れ親しんだ状況といえなくもない。
そのジョンソンの立ち上がりは、サード前への緩い当たりとイレギュラーバウンドでのヒットという不運な当たり2つでピンチを招く。
大舞台の経験という意味では、安部にとって試練の2つの打球となったが、このピンチはジョンソンが救った。
1アウト2塁で、中田、陽を迎えるが、連続三振で無失点で切り抜けた。
一方のカープの攻撃では、2アウトから丸がセンター前ヒットで出塁し、ワイルドピッチで2アウト2塁。
そして大谷対策で4番に入った松山は、低めのフォークに何とかくらい付いていくものの、最後はアウトコースのストレートで空振り三振。
初回の両投手の状態を見ると、どちらも完全にいつも通りの投球という訳にはいっていないように思える。
2回のジョンソンのピッチングは、2アウトを簡単に取った後、大谷との対戦を迎える。
高めのストレートは球威があったように見えたが、それでも押し込んで左中間フェンス直撃の打球が飛ばせるのは、さすが大谷といったバッティングだった。
ただ、2アウト2塁というピンチは、大野をセカンドゴロに打ち取って無失点。
そして2回裏は、大谷の制球が若干乱れる。
先頭の鈴木がフルカウントから、最後の低めのスライダーを見極めて四球を選び、エルドレッドは3-0とボール先行。
1ストライク後のアウトコースのストレートを右方向へ打ち返すと、ライナー性の打球がライトの頭上を襲ったが、フェンスオーバーには至らず、ライトフライとなる。
ただ、この時点で簡単に凡退しないという、カープのいつも通りの攻撃は出来ているし、大谷の球速も150キロ中盤で、そこまで威力を感じる程でもない。
1アウトから安部が真ん中付近のストレートを引っ張ると、中田の足元を抜けていくライト前ヒットで、1アウト1、3塁とチャンスが広がる。
そして石原は初球セーフティスクイズを狙うが、一塁側へファールとなり、2-1のカウントからももう一度スクイズを狙うも、再びファール。
そして2-2のカウントからは、一塁ランナーの安部がスタートを切る。
石原は空振り三振となってしまうが、大野の二塁送球に対し、ベースカバーが遅れ、ショートが体勢を崩して捕球する間に、三塁ランナーの鈴木が本塁を陥れて先制点を奪う。
大谷が二塁送球をカットできなかったことで、ダブルスチールが決まった形となる。
1点をリードし、3回に入ると日本ハムの攻撃の起点の一つとも言える、中島卓のファール攻めが待っていた。
10球以上粘られ、四球を奪い取られると、ジョンソンは足元の状況をしきりに気にするような仕草を見せ、岡にはコントロールを乱したような投球で四球を与えてしまう。
しかし、1アウト1、2塁のピンチで中田を投ゴロ併殺打に打ち取って、少しリズムを取り戻せた。
ただ、大谷も3回裏のピッチングは、スライダーの制球がよみがえり、フォークの切れと相まって安定感が戻ってきた。
ところが、4回裏の大谷は再びストレート中心のピッチングに切り替える。
150キロ中盤が精一杯で、140キロ中盤から後半のボールが多くなり始めており、そのストレートをカープ打線が捉えた。
先頭の松山が、真ん中低めのストレートを右中間スタンドへ、そしてエルドレッドも真ん中低めのストレートをバックスクリーン右へ放り込んだ。
2人に挟まれた鈴木は、スライダーとフォークで打ち取られていただけに、時折甘くなるストレートを狙っていこうという意識は働いていたのだろう。
そうかと思えば、雨脚が強まった5回裏の大谷のストレートは、球速も球威も上がって田中、菊池は押し込まれてしまい、2アウトをとられてしまうが、丸、松山はフルカウントの後に四球を選んでチャンスを作っていく。
ただ、鈴木は3球連続スライダーで空振り三振となってしまい、攻め方に戸惑っているような、対大谷の3打席だった。
3回に中田を併殺に打ち取って以降は、いつも通りのピッチングが出来ているジョンソンだったが、ちょっとヒヤリとしたのが6回表の2アウトからの田中賢の打球。
ピッチャーライナーがジョンソンの顔の正面めがけて飛んでくる。
ライナーを捕球した後、帽子が飛んで倒れこんだがボールを離さず、6回まで無失点で切り抜けている。
そのジョンソンが捉まったのが7回表。
先頭のレアードに、アウトコースのストレートを捉えられ、バックスクリーンへの本塁打で1点を返される。
これまでの打席では、強引に引っ張っていたコースを、素直に打ち返したことが本塁打に繋がったといえる。
そして、大谷にファースト内野安打を打たれるものの、代打矢野を5-4-3のゲッツーに仕留め、ここまでは良かった。
しかし、西川、中島卓に連打を浴びて、今村に交代する。
決してこの2本のヒットは良い当たりではなかったが、結果的にピンチを背負ってしまったことで、球数が嵩み、流れを変える必要もあった。
その今村はボール先行というピッチングとなってしまったが、最後はインハイのストレートで詰まらせてレフトフライに討ち取ってピンチを凌いだ。
大谷が交代し、7回裏は石井裕がマウンドに上がってくるが、田中が右中間を破る二塁打で出塁し、菊池が初球送りバントを決め、丸が2球目のインコースのストレートをライト前にタイムリーを放って、すぐさまリードを再び3点に広げた。
これは、チームに勢いをもたらす点の奪い方。
代わったバースに対し、代打新井、鈴木が連続四球を選んで1アウト満塁とチャンスを広げると、エルドレッドはアウトコース高めに浮いたスライダーを、コースに逆らわないバッティングで、ライトへ犠牲フライを打ち上げ、4点差。
これで逃げ切り体勢が整った。
短期決戦ということで、4点差でも勝ちパターンの投手起用に躊躇いはない。
8回はジャクソンがマウンドに上がり、エルドレッドに代わって赤松が守備固めに入り、新井も代打からそのままファーストの守備に就く。
ジャクソンのピッチングは、先頭の中田を縦スラで空振り三振、陽を三球連続スライダーで空振り三振。
田中賢はストレートが高めに浮いてしまって、ショートの頭上を破るセンター前ヒットとなり、レアードには左肘付近への死球を与えてしまう。
代打近藤は、追い込んでからの縦スラがど真ん中へ入ってしまい、センターオーバーの大飛球を飛ばされてしまう。
丸が背走し、左中間方向へ切れながら落下してくる難しい打球に体勢が崩れてしまったが、バックハンドで掴み取ってジャクソンを救った。
そして9回は中崎の出番。
先頭の代打谷口には、粘られてフルカウントの末に四球を与えてしまう。
西川に対してもボール先行となってしまうが、石原が声をかけて落ち着きを取り戻させる。
ほぼストレートのみを投げ込み、最後の最後にスライダーを選択して見逃し三振を奪い、1アウト。
粘りが代名詞の中島卓を、三球三振で2アウト。
岡をアウトコースのスライダーでライトフライに打ち取って、3アウトとなり、日本シリーズの初戦を勝利で飾った。
今日の試合に関しては、やはり地の利を活かした勝利という一面はある。
グラウンドコンディションの良くない中、慣れ親しんだマウンドでいつも通りのピッチングを貫けたジョンソンのピッチング。
7回のピンチを断った今村のリリーフ。
丸の好守もあってジャクソン、中崎がランナーを出しながらも抑えきり、シーズン通りの勝利を決めた。
そして何より、大谷を攻略するために、足を使い、長打力を発揮し、チーム一丸で得点を奪っていった攻撃陣。
大谷対策として4番起用され、本塁打で応えた松山の一撃は見事だった。
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