情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

共謀罪はなくてもよい~条約の文言から明らかやねんパート2

2006-06-07 23:48:16 | å…±è¬€ç½ª
共謀罪新設の根拠とされている国際組織犯罪防止条約の立法ガイド(←ここ)でまたまた,面白い表現を発見した。その一つが“The second option is more consistent with the civil law legal tradition and countries with laws that do not recognize conspiracy or do not allow the criminalization of a mere agreement to commit an offence.”というもの。必要部分だけ訳すと,「2つめの選択(すなわち,参加罪)は,単に犯罪を行うことを合意しただけでは犯罪化することを許さない国に適している」となる。

つまり,日本のように共謀罪という犯罪になじまない国については,共謀罪を新設するのではなく,参加罪を設けるように指示しているのだ。


では,その参加罪とは,どういうものか?

法務省の和訳(ここ←)では,参加罪の定義は,次のようなものである(5条)。


ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)



では, 日本は,この)の犯罪を処罰する法律をすでに有しているだろうか,それとも新設しなければならないだろうか?

まず,)のaは,犯罪行為への参加なので,当然,日本でも犯罪とされている。

次に)のbは,犯罪以外の活動への参加行為なので,一見,日本では,犯罪とされておらず,新たな立法が必要なような感じもする。

しかし,その他の活動といったって,いかなる活動でも処罰されるわけではなく,処罰の必要のある行為に限定されることになるはずだ。

そういう観点から,検討すると,日本でも,一般的に犯罪といえない行為を犯罪として処罰しているものはありそうだ。

例えば,銃刀法や特殊解錠用具の所持の禁止等に関する法律,軽犯罪法は,ナイフなどの武器や解錠用具を持ち歩くことすら禁止している。銃天国アメリカなどをみれば明らかだが,銃やナイフ,凶器の携行がそれだけで犯罪とされるというのは,必ずしも国際基準ではない。

よって,この銃刀法,特殊解錠用具…法,軽犯罪法は,)のbでいう「その他の活動」を処罰する法律だと言える。

また,暴対法は,暴力団が寄付金を募る行為や,暴力団に加入するよう「勧誘」する行為を犯罪とし,また,事務所の使用を一定程度制限し,これに反する行為を犯罪としている。これらも,立派に「その他の活動」を処罰する法律だと言える。

また,破防法は,破壊的団体について,公開の集会を行う行為などをを犯罪として処罰しているし,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律も,寄付やメンバー勧誘を犯罪としている。

さらに,毒劇法は毒物の所持そのものを犯罪としている。

また,公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律は,テロ集団に対する資金援助を犯罪としている。

以上の犯罪は,それ自体が処罰されないにもかかわらず,物の性質自体に着目し,あるいは,関係団体の性格を考慮して,前倒しで犯罪として処罰されることになっているといえる。

これだけの行為を犯罪としていれば,十分,)のbの要件を満たしているのではないだろうか?

この点について,共謀罪・参加罪の新設は不要だという懸念があるのですが,法務省はいかがでしょうか?


本日,保坂議員は,ブログ(ここ←)で,

【国連が作成した立法ガイドの43パラグラフには、次のような興味深い言及がある。「各国の国内法の起草者は、単に条約テキストを翻訳したり、正確に言葉通りに条約の文言を新しい法律案または法改正案に含めるように試みるより、むしろ条約の意味と精神に集中しなければならない」「法的な防御や他の法律の原則を含む、新しい犯罪の創設とその実施は、各締約国に委ねられている」「国内法の起草者は、新しい法が彼らの国内の法的な伝統、原則と基本法と一致するよう確実にしなければならない」とされており、条約の文言をなぞる必要はなく、条約の精神に忠実であれば、かなり広範囲の裁量が認められていることがわかる。】

と主張されているが,まったく,そのとおりだと思う。条約は,各国の実状に応じて,適切な組織犯罪集団対策を行うよう求めているだけなのである。


共謀罪・参加罪の新設は実は不要だという懸念を最近あちこちのブログで見かけるのですが,法務省はその懸念について,HPで説明をしていただけるのでしょうか?



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STOP米原リゾート&合意してないプロジェクト~ご紹介

2006-06-07 06:21:20 | æœ‰äº‹æ³•åˆ¶é–¢é€£
STOP米原リゾート(ここ←)のご紹介。HPを見ると,すばらしい海中の様子が楽しめる…。こういう場所を強引に開発しようとしているところがあるということです。

■■署名用紙の引用開始■■


「森・海・サンゴ礁のつながり」を守り伝える聖地、沖縄県八重山諸島、石垣島の北部、米原に周辺の環境を一変させる大規模リゾートが計画されています。

「大和ハウス工業」「大和リゾート」「興ハウジング」「八重山興業」によるリゾート開発は当初の計画が変更され、建物は5階建て20m、客室数200と縮小されたものの、面積は農振農用地を含む8.2haに拡大され、今もって建物、敷地ともに自然環境と生活環境をまったく無視した開発と言わざるをえません。

現在、八重山観光ブームや離島移住ブームに沸く石垣島ですが、同時に大規模リゾート・レジャー施設の計画や分譲地の無秩序な開発が憂慮されています。石垣市は自然の保全と秩序ある開発の制度づくりを急いでいますが、現行法では乱開発を防ぐことができません。

桴海於茂登岳(ふかいおもとだけ)の豊かな森に抱かれた米原の海、サンゴ群落が数多くの生き物を育み、一歩足を踏み入れれば自然と触れ合える海、訪れた人が癒される海。そんなかけがえのない海を未来に残したいのです。

「米原の森・海・サンゴ礁」は私たち住民だけのものでなく、石垣市民の憩いの場、ひいては全国の八重山・石垣ファンの宝ものだと考えています。地球の遺産である米原の自然と生態系を守るため、署名の輪を全国に広めてゆきます。

「米原リゾート開発」反対住民の会  世話人 早川 始、勝見輝夫
〒907-0451 沖縄県石垣市桴海(ふかい)米原644-1
TEL/FAX 0980-88-2240

■■引用終了■■


もうひとつ,米軍再編についての日米政府による暴力的合意を拒否し、抵抗運動の思考を鍛える場を生み出す「合意してないプロジェクト」(ここ←)もご紹介します。わじっている(頭に来ている)ことを示すために,みんなでグーの写真を送りましょう。

■■「5.15アピール」の引用開始■■

日米軍事再編は、決して沖縄の負担軽減ではない
 日米両政府により、「沖縄の負担軽減」という虚偽の下で推進され合意された今回の在沖米軍再編問題は、沖縄県民を愚弄するものと言わざるをえない。私たちは、日米両政府に対して満腔の怒りをもって抗議し、以下の四点を総意として表明する。

一、今回の在沖米軍基地再編は決して沖縄の負担軽減にならない。
二、普天間基地を無条件に即時閉鎖し撤去すべきである。
三、辺野古沿岸新基地建設に断固反対し阻止する。
四、自衛隊の在沖米軍基地共同使用は、これを認めない。


 2005年10月、日米両政府は、在日米軍の抑止力維持と沖縄の負担軽減への取り組みを確認した在日米軍再編の中間報告に合意したと発表した。その後、在沖米軍基地に関しては、普天間基地の辺野古移設と本島中南部の米軍基地の整理縮小、そして海兵隊員約八千人のグアム移転とが一括して推進される、いわゆる「パッケージ論」の内容が沖縄の負担軽減の具体策として表明された。
その合意を受けて、2006年4月7日には、日本政府と名護市長との間で普天間基地の移設計画として、辺野古沿岸にV字型の二本の滑走路と港湾施設を備えた新たな米軍基地を建設することで合意をみたとの発表があった。
私たちは、沖縄住民の意思をまったく反映しないこれらの在沖米軍再編に関する「二つの合意」に対して批判し、全面的に反対の意思を表明する。

一、今回の在沖米軍基地再編は決して沖縄の負担軽減にならない。
 これらの二つの合意は、なによりも主権者たる住民の頭越しに行われ、民主主義的な手続きを著しく欠落させている。そのことは、沖縄県民の世論調査で辺野古沿岸の新基地建設に対して約70%が反対し、宜野座村議会や近隣市町村の漁協組合も反対決議を表明している点からも明白である。沖縄県民の大多数は、今回の在沖米軍再編案は、決して沖縄の負担軽減にならないと強く反発している。
 日本政府は、在沖米軍海兵隊員約8千人のグアム移転にかかる60億9千万ドル(約7千億円)の財政負担を説明する根拠として、「沖縄の負担軽減のため」という理由を強調している。つまり、財政難の状況下で巨額の支出を容認する説明理由として、沖縄の負担軽減が論拠にされている。
 しかし、沖縄住民からすると、辺野古への基地建設とパッケージとなった海兵隊のグアム移転は決して沖縄の負担軽減にならない。移転する海兵隊員はこれまで住民に被害を与えた実戦部隊ではなく司令部要員が中心であり、さらに辺野古への新たな基地建設によって沖縄本島北部地域は軍事要塞となり基地被害が増大することが容易に予想される。
 私たちは、今回の日米両政府による在沖米軍再編案が、なんら沖縄の負担軽減に貢献するものでなく、むしろ未来にわたって沖縄の基地負担の状況を固定化し強化する政策にほかならないと強く批判する。「沖縄の負担軽減」という日本政府の説明は、国民の目を欺くために沖縄を利用しているに過ぎないのである。巨額の財政負担を強いる米軍再編費用に関して言うならば、日本国民に限られないすべての納税者の権利としてそのような理不尽な政策に抗議し批判すべきだと考える。

二、普天間基地を無条件に即時閉鎖し撤去すべきである。
 市街地の真ん中に立地し老朽化の激しい普天間基地は、無条件に即時閉鎖し撤去すべきである。2004年の沖縄国際大学への軍用ヘリ墜落爆発事故を指摘するまでもなく、普天間基地の危険性の除去は火急の要件であり、地域住民の安全を守るためにも無条件に即時閉鎖し撤去するよう主張する。

三、辺野古沿岸新基地建設に断固反対し阻止する。
 沖縄戦後史における米軍基地建設は、沖縄戦の延長で米軍による「銃剣とブルドーザー」によって土地を強制的に接収され拡張された占領の歴史として現在に至っている。しかし、辺野古へ新たな基地建設を認めることは、米軍による強制的な土地接収というこれまでの経緯とはまったく異なるものとなる。二度と戦争に加担しないという沖縄戦の教訓や沖縄戦後史の遺産を生かすためにも、私たちは辺野古沿岸新基地に断固反対し、建設を阻止する。

四、自衛隊の在沖米軍基地共同使用は、これを認めない。
 今回の米軍再編は、日米両政府にとって軍事戦略上の効率性や機能強化の観点に基づく再編であり、日米の軍事一体化が最大の主眼である。そのことは、沖縄に負担増を強いる在沖米軍基地全体を自衛隊と共同使用する案が在日米軍再編の最終報告に盛り込まれた事実がそのことを裏付けている。米軍だけでも過重な負担を強いられているなかで、米軍基地を自衛隊が共同使用することはさらなる基地負担となる。沖縄戦のさなか住民の多くが米軍と日本軍に挟まれて逃げ回った経験は、いまだ忘れ去られた遠い過去の物語ではない。米軍であれ、今ふたたび日本軍となろうとする自衛隊であれ、私たちは、沖縄の地を再び軍靴が踏みしだくことに反対し、それを認めない。

 いま、沖縄だけでなく日本は、大きな転換期にある。

 私たちは、沖縄に暮らす有権者と将来の有権者として、または沖縄に心を寄せる者として、あるいは国家が規定するいかなる分断をも超えて、ただこの世界で平穏に暮らしていくことを望む者として、日本が再び戦争のできる国にならないために、この声明を発表し世界に訴えるものである。

■■引用終了■■



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共謀罪はなくても構わない?~条約の立法ガイドに明記?

2006-06-07 01:48:56 | å…±è¬€ç½ª
共謀罪はすでに軽犯罪法で規定されているから,改めてつくる必要なし(ここ←参照)…というのはそれなりに説得力あるかなぁと思っていますが,本日の保坂議員のブログをみてあっと驚いた。「適切な法的な概念を持たない国においては、共謀罪又は結社罪という名の制度を導入することなしに、組織犯罪に対して効果的な措置を講ずるという選択肢は許容されている」…。ということは,暴対法や破防法,組織犯罪処罰法などがきちんと定められている日本においては,効果的な措置が講じられているため,共謀罪や結社罪を新設する必要はない…ということになる。

原文にあたってみよう。確かに,条約の立法ガイド(ここ←)の43/534に次のような一文がある。

The options allow for effective action against organized criminal groups, without requiring the introduction of either notion — conspiracy or criminal association — in States that do not have the relevant legal concept.


私の訳では,

「共謀又は犯罪結社に関連する法的な概念を持たない国においては、共謀又は犯罪結社という概念を導入することなしに、組織犯罪集団に対して効果的な措置を講ずるという選択肢は許容されている」

という感じかな。


つまり,共謀罪とか犯罪結社罪という概念をもともと持っていない国に対しては,強制的にその概念に基づく犯罪化を求めるのではなく,そのほかのやり方による組織犯罪対策をすればよいということだ。

どっひゃー。国会での答弁は,この解釈を無視したもので,国民に対する裏切り行為というほかない…。


※といったんは、書いたのですが、落ち着いて読むと、共謀罪とか犯罪結社罪という概念のどちらか一方を持っていない国は、持っていない概念について導入する必要がない…というようにも読めそう。そうだとすると、必ずしも、第3のオプションを認めているとはいえなさそうだ。ただし、条約がすべての国が共謀罪か犯罪結社罪か、少なくともどちらかの犯罪類型を有していることを前提としているとすれば、それは必ずしもそうではなく…。ということで、見出しも弱めに訂正しました。


法務省に問い合わせませんか?

※いずれにせよ、両方の犯罪類型を有していない場合は、どうするのか、条約制定過程でいかなる議論があったのか、法務省に問い合わせてみたいところです。軽犯罪法の件と併せて…。




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