老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

終戦から79年目の広島・長崎「原爆の日」に・・・

2024-08-27 22:50:25 | 戦争・平和
8月もまもなく終わろうとしています。
今年も8月6日の広島と8月9日の長崎の「原爆の日」に、犠牲者追悼と核廃絶・恒久平和を誓う「平和祈念式典」が行われました。

その中で、今回特に注目を集めたのは、広島と長崎で対応が分かれた、「平和祈念式典」に駐日イスラエル大使を招待するか否か、という問題でした。

私自身は、終戦後生まれとはいえ、親や人生の先輩達から折に触れ戦争の悲惨と平和の有難さを聴いてきたせいか、毎年8月6日と8月9日にはテレビの前で、祈りにも似た気持ちと共に「平和祈念式典」をみつめてきましたが、ここにきて、戦争の悲惨は遠い過去のできごとではなく、今現在もウクライナやガザでは多くの人たちが、現在進行形で傷つき、命を落としているという事実を突き付けられていて、皆で神妙な面持ちで平和を祈るだけで良いのか、という疑問を拭えずにいました。

こうした状況下で、今回長崎市長が「イスラエルを招待しない」方針を示した時、アメリカをはじめとする先進7か国から日本を除いた6か国と、EUの駐日大使が式典をボイコットするという圧力をかけ、エマニュエル駐日アメリカ大使は繰り返し日本政府にイスラエル招待を働きかけたと聞いて、欧米諸国、とりわけアメリカにとって、「原爆の日・平和祈念式典」も、単なる政治バランス保持のための外交手段のひとつにすぎないのかと、失望せずにはいられませんでした。

結果として、鈴木史朗長崎市長はイスラエルを招待しない決断を貫き、未来を担う若い世代を中心に据えた誠意溢れる式典を挙行し、厳粛かつ平穏に終えたことを当日のX(旧ツイッター)で報告。それを見て私も安堵しつつ、深い感動と共感を覚えました。
https://x.com/suzuki46genki/status/1821869304515903932

その後私は、現在ガザでジェノサイドともいえる行為を続けているイスラエルの大使はどんな思いで「平和祈念式典」への参加を望んだのかを確かめたくて、大使のXを辿ってみたのですが、タイムラインには、広島式典後の「原爆犠牲者への哀悼の意」の表明、長崎市の不招待への「遺憾の意」の表明、イスラエル除外に反対することを選んだ国々への「感謝」の表明、東京で行われた追悼式典に米国、英国大使と共に参加した「報告」など、比較的無難なコメントが並んでいました。

その一方で、大使のXには、ハマスに拘束された人質解放の報告や、一刻も早い人質全員解放への願いと共に、『イスラエルはイランの支援を受けているテロ組織によるテロ攻撃に常に晒されている』との訴えと、『自衛権と道義的責任に基づいて、自国領土と国民の保護を続けている』との主張を展開。恒常的な不安と被害者意識で、自分たちが齎したガザの人々の悲惨な状態に思いを致すことができない精神的膠着状態に陥っている様が色濃く出ていて、現状打開、和平への道筋造りの難しさを改めて感じさせられました。

イスラエルの立場はそれとして、今回の「原爆の日」式典に対するエマニュエル大使の対応で図らずも表面化した、アメリカの日本に対する上から目線の押し付けがましさには、今更ながら不快感を禁じ得ません。

日本政府は今こそ不均衡な日米関係を見直し、アメリカの核の傘の下に安住し、日米軍事指揮連携の強化を目指すのではなく、アメリカが投下した原爆の被災当事国として、また、憲法9条を持つ平和国家として、自律的判断で平和外交に力を尽くしてもらいたい。そして、イスラエルによるパレスチナ侵攻についても、公正な立場で真の和平樹立に向けて尽力してもらいたい、と痛切に感じた、終戦から79年目の8月となりました。

「護憲+コラム」より
笹井明子
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雷雨と豪雨が、今までの予測・常識をはるかに超えて激甚化する社会

2024-08-26 14:10:14 | 環境問題
最近毎日のように、どこかで線状降水帯が発生したとの注意を喚起する情報が流される。
昨日は確か栃木あたりに発生していたと記憶する。

世界を見ても、豪雨による洪水被害の報道が多く為されている。ここ数日で見ても、例えばバングラデシュで現在洪水被害が発生している。

以前パプアニューギニアの地滑りに関連する記事を紹介したが、その際、それぞれの地域の地形というものは、その地域の従来の気象条件との間に微妙なバランスがあり、そのバランスの上に地域の地形は成立し、保全されており、もしこのバランスをとっている一方の要素の気象条件が従来と全く違った場合には、その変化した状況との間に新たなバランスを構築しようとする力が働き、パプアニューギニアの場合は地滑りが発生することに繋がったと紹介しました。

今回線状降水帯や雷雨・豪雨の背景にあるメカニズムを紹介する記事があり、紹介してみたいと思います。

参考にした記事は、次の2つになります。
1.過剰に充電された雷雨:気候変動により引き起こされる異常な降雨や洪水を甘く考えていないだろうか?(原題:Supercharged thunderstorms: have we underestimated how climate change drives extreme rain and floods?: The Conversation 2024 May 9 written by Andrew Dowdy et al)
2.致命的な洪水が発生し、バングラデシュで数百万人が孤立している(原題:Deadly floods leave millions stranded in Bangladesh: AlJazeera 2024 Aug 23・25)
記事の忠実な紹介ではなく、大意を伝えるものです。

先例を見ない洪水を紹介する記事の中に、気温が1℃上がるごとに大気の湿度は約7%増えるという記載を良く目にする。
この7%増加という数字は、丁度今から200年前にフランスの技術者Sadi Carnot氏が行った研究の中に記されているという。

そして現在我々は、Carnot氏が1℃上昇ごとに7%湿度が上がるという事実以上の情報を手にしている。それは大気中に蓄えられた気体の水蒸気が雨粒へと凝縮する際に熱が放出されるということであり、この放出された熱が原因して雷雲中に強い上昇気流が発生し、周辺から更に湿気に富んだ空気を取り込んでいくことにより、更にエネルギーを増していく構図が出来上がり、結果的に今までに経験したことのない強烈な豪雨が産み出されるというメカニズムである。

このメカニズムにより発生する降水量は、気温1℃上昇当たり7%の湿度増加から予測される降水量をはるかに超え、2倍から3倍の量になるとされている。即ち気温1℃上昇で14%~21%多い降水量になる、とされているのである。

最近の例で言うと、ブラジルの洪水被害(2023年11月)やドバイの飛行場の水害(2024年4月)がある。

オーストラリアでは、最新の気象科学情報を総合的に調査し、今後の洪水事象への対応指針を作成している。この指針によると、気温1℃上昇当たり、短時間に集中的に発生する雷雨の場合、降雨量が7~28%増大すること、1日以上にわたる降雨の場合には2~15%降水量が増大するとし、これらの予測降水量は既存の従来の洪水対策指針が想定している気温1℃上昇あたり5%の降雨量増大をはるかに超える降雨量が現実の実態を表している、と指摘している。

従って、現在発生している雷を伴った豪雨というものは、我々が従来の予測をもとに対策を取っている安全基準をはるかに超える降雨量を実際にはもたらしており、洪水や地滑り・山崩れが起こり得る状況の中で我々は暮らしている、との認識が求められるのである。

バングラデシュ西部地域で少なくとも13人が死亡し、450万人に影響がでる洪水が発生している。先週金曜の当局発表によると、19万人ほどが避難所に退避し、バングラデシュの64の行政地域の内の11に影響が出ているという。

主要港湾都市のチッタゴンの北西100kmにあるフェニ地区の被害が最も大きい。

日曜の当局発表によると、洪水の峠は越え、水は引き始めているとしているが、いまだに30万人が避難生活を続けている。

災害対策担当大臣のAzam氏は「現在被害地域の通信環境の回復と食糧配布を目指す取り組みをおこなっている。合わせて伝染病被害の拡大を防止する対応も行っている」と話している。

世界気候リスク指標(Global Climate Risk Index)によると、バングラデシュは気候変動に対し最も脆弱な国の一つとされており、毎年モンスーンによる降雨被害が発生し、近年は異常気象のパターンの変化や極端な気象異常の増大が指摘されていた。

バングラデシュはつい最近数週間の政治的混乱の末に、ハシナ首相(当時)がインドに逃れ、ハシナ氏に代わってノーベル平和賞受賞者のムハンマド・ユヌス氏が暫定政権を率い、近く行われる総選挙前の民主的改革計画を推進している最中の洪水被害の発生になっている。

二酸化炭素の排出を早急に削減できなければ、人新世時代という、人が引き起こし進行し続けている異常気象の高進が要因となり、我々の想定をはるかに超す被害の甚大化が避けられないことになる。世界で頻発する事態にもっと危機感を持たなければならないだろう。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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巴投げ、&父との思い出

2024-08-21 20:58:55 | オリンピック
パリ五輪と選手の躍動や大活躍を私たちは楽しんだ。関心、着眼点は、とりどりだったとしても。

柔道、体操、レスリング、フェンシング、など、国内も大童…。水泳などでも、男女混合何たらと種目を増やし、我らも大いに喜こんだ。日本の金メダル、銀メダル、銅メダル新記録などにも、大きく貢献したのではないか。
 
唯、地球の一半を排除した一面の貢献もあろう。排除の論理。軍事ブロック化…これは残念。為政者の責任!?

大会最終日頃の、日本伝統のマラソンのこと。コースが平坦でなく、登り坂、下り坂、坂が急で難コースと言われていた。メンバーにも、大迫以外はなじみが薄く(私には)、余り期待がなく、パリ市街が見られれば良いか程度で、見ていた。暑い暑い毎日に感け…。

普段、記録の出やすい、平坦なコースに慣れていたので、見通しは明るくなかった筈。いざ始まってみると、ご案内の通り、市街、街並みは期待に違わず、次々と名所ばかり、上から俯瞰できて、観光客では手に入らないシーンばかり。

唯、選手にすれば、長い長い上り坂、ゴール前の急な上り坂、有難くない!? 例外、アフリカなど除けば。日本人など、自己新記録更新6位入賞!当局の、平地の記録の出やすいコース執着が良かったのかどうか。

しかし、赤崎暁選手も、鈴木優花選手も、その見方を裏切った、見事に。 ゴール直前、坂を登り切ったゴール前では、ひょっとしたらメダルも期待した…本人からすれば、出来映えは良かったのではないか。

体操も、レスリングも、フェンシングも、卓球も、やり投げも、ドラマティックだったが、個人的には、元木咲良の反り投げ!&角田夏美の堂々たる流れるような『巴投げに腕ひしぎ十字固め』…。

これには、父の思い出も重なる、と言っても、彼の尋常小学校時代のこと。聞いただけのお話。当時、柔道をやっていたそうで、他校の悪ガキにも一目置かれていた。巴投げも得意だった。背丈はそうでもないが、腕、手の平は大きかった。僕のそれなど、半分程度。因みに、面相は、私とそっくり。

御陰で、私の為に生きた父を思い出すことが出来た。大学卒業前、グスグズしていた私を一押ししてくれた。それが役立ち、卒業後程なく、父が脳内出血を患い(54歳)、前非を悔いた私は、大部屋に入院した父の側で、簡便ベッドで一年間、寝食を共にした。その後、リハビリに精を出し、右麻痺特有の障害は残したものの、随分長生きしてくれた。

実は、発症時、3,4日眠った侭、救急病院の担当医は、症状から、脳梗塞と決めつけ、CTも取っていなかった。父が急に口を開き、「俺はこの病院が嫌だ」と言った。会話だけは、出来る状態だった。びっくりしたのが事の始まり…慌ててCTのある病院に連れて行き、更に手術の出来る福岡大学病院に回り、手術、治療を受け、件の民間医院に入院した。
 
軍事ブロック化は、避けたいもの。覇権国家は、どう御すれば良いものか。市民の課題は大きいが、裁かなければ。心を共にする仲間、人々と共に。いざ!

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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群像劇「獅子」8月23日~27日

2024-08-15 17:44:42 | お知らせ
8月14日の東京新聞に、『93歳の俳優・矢田稔さん 若い世代に戦争伝える』という見出しで、8月23日~27日に上演される群像劇「獅子」のことが紹介されていました。

『少年期に歌手として戦意高揚のための童謡を歌い、戦後は俳優・声優として活躍したきた矢田稔さん(93)が、5年ぶりに舞台に立つ。出演するのは、戦時期の映画界を描く演劇で、戦争体験や長い俳優キャリアから白羽の矢が立った。・・・』

***
「獅子」(作・演出 砂川仁成)
・2024年8月23日(金)~8月27日(火)
 13:30~ 18:30~
・渋谷 伝承ホール
・2グループ(飛翔班(A)と熱闘班(B))のダブルキャストで、矢田さんは(A)班
・チケット代金:指定席4900円 自由席4600円 中高生3600円
・申し込み:カルテット https://www.quartet-online.net/ticket/sisi
***
http://www.ypro.co.jp/2024/07/28/y%e3%83%97%e3%83%ad%e3%82%b8%e3%82%a7%e3%82%af%e3%83%88xpropaganda-stage%e5%90%88%e5%90%8c%e4%bc%81%e7%94%bb%e3%80%8e%e7%8d%85%e5%ad%90%e3%80%8f2024-8-23-27/

「護憲+」とのお付き合いも長い矢田稔さんが、93歳の今もお元気で、現役として活躍されていることは、本当に嬉しく、頼もしい限りです。
お時間の取れる方は、是非見にいかれませんか?

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
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エムポックス(mpox)とはなにか? WHOが世界に健康緊急事態宣言を発した理由は?

2024-08-15 10:44:10 | 医療・介護
エムポックス(mpox)とはなにか? WHOが世界に健康緊急事態宣言を発した理由は?
(原題:What is mpox and why has WHO declared it a global health emergency)
aljazeera.com 2024 Aug 14 Areesha Lodhi氏記す

アフリカでウイルス性疾患が急速に拡大しているとして、WHOは最高レベルの警告を発表。

エムポックスに対する緊急宣言が発せられたのは、2022年以降今回で2回目となる。
WHOが水曜に発した宣言によると、今年度のアフリカにおける感染者数は14000人を超えており、死者数は524人とされ、2023年の数値を既に越しているという。
WHOの宣言は、前日のアフリカ疾病管理予防センター(the Centers for Disease Control and Prevention in Africa;アフリカCDC)の宣言に次いでのことになる。

エムポックスとはなにか? 感染はどのように伝わるのか? 以前の流行に比べて今回の症状はどの位危険なのか?等心得ておくべきことを以下に紹介する。

(エムポックスとは何か?)
主に人と動物が罹患するウイルス性疾患。エムポックスウイルスは「オルソポックスウイルス属(Orthopoxvirus genus)」に属し、通常皮膚に隆起や水泡を伴う発疹を含む水泡様疾患を起こす。皮膚の隆起は液体や膿で満たされており、最終的にはかさぶたとなり、治癒する。
エムポックスは、現在根絶している天然痘や牛痘に類似している。

1958年にサルで初めて確認されたことから、当初は「サル痘(monkeypox)」と名付けられ、デンマークの研究所で飼育されたサルを用いて研究が行われていた。
1970年、最初の人への感染例がコンゴ民主共和国(Democratic Republic of Congo)の9カ月の乳児で確認された。

2022年にWHOは、サルに限定される懸念から現在のエムポックス(mpox)への名称変更を推奨した。

(どのように感染が拡がっていくのか?)
感染している動物や人との接触を通じて感染が拡大していく。
動物から人への感染は、感染した動物に咬まれる、引っ掻かれる、あるいは感染動物の血液・体液または傷口に直接触れることから起こる。
人から人へは、感染者の皮膚病変や体液の直接接触や、感染者の呼吸器からの飛沫を直接に受けること・感染者との長時間の対面接触・感染者が使用の寝具や衣類等の汚染されたものへの接触、といった3つの経路が有るが、最後の感染経路はまれに起こるとされる。

ウイルスは、皮膚の傷口・呼吸器器官・目や鼻や口といった粘膜から侵入する。

(どんな症状か?)
発熱・頭痛・筋肉痛・顔手足その他の部位に現れる特徴的な発疹が主な症状。
膿庖は大きな白または黄色のニキビのように見えるが、膿が詰まっており小さな隆起物状を呈する。

免疫システムの両脇の下や首の側面や後ろにあるリンパ節もウイルスとの争いで腫れることが有る。
感染により致命的となる場合がまれにあるとされる。

感染は2~4週間継続し、症状の発現は感染後3~21日とされる。他の人へ感染させる可能性は、症状が発現する1~4日前からであり、無自覚での伝染が起こることになる。
エムポックスは発疹のサンプリング検査で特定できる。

(WHOが世界に緊急事態を宣言した理由)
エムポックスの新たな変異株が確認されたこと、そしてこの変異株による感染例がケニアやルワンダといった幾つかの国で初めて確認される事態となっており、アフリカ大陸内および海を超えて他の地域への拡大の恐れがあると判断したことが、宣言を出した一つの理由。

この宣言の発表により、各国及び各支援機関・団体は行動を起こすこととなる。
ジョン・ホプキンス大学医学部のアミタ・グプタ氏は「資源を動員する試みが現在真剣に進められており、この行動の促進を狙っての今回の緊急事態の呼びかけだ」と指摘している。

(エムポックスが拡大している地域)
先週アフリカCDCは、少なくとも13のアフリカ諸国でエムポックスが確認されたとしている。この状況は昨年同時期と比べて、症例数は160%増、死者数は19%増という。
現在までの所、症例の96%以上はコンゴとなっている。

今年初めに症状は軽く、性器の損傷を引き起こす新しい型のウイルスを研究者らが発見しており、この型のウイルス感染は発見が難しく、自覚なく他人を感染させる可能性があるとしている。
グプタ氏は「コンゴ民主共和国への出入りは少なく、現状のリスクは低いが、他のアフリカ諸国へ拡大すると、世界的な感染拡大の恐れが出てくる」と指摘する。

2022年7月の前回の緊急事態宣言時(2023年5月に緊急事態を解除)は、MPOXの系統IIにより引き起こされたが、現在の流行はより致死性の大きいとされる系統Iにより引き起こされている。

(ワクチンはあるのか?)
エムポックス向けの承認された治療法とワクチンはない。

天然痘の治療薬の抗ウイルス薬テコビリマット(TPOXX)がエムポックス治療薬として研究が行われている。アメリカFDAは、18歳以上の重症多発性硬化症患者向けの天然痘ワクチン(イムバムンまたはイムバネックスの名で知られる)JYNNEOSの承認も行っているが、しかし現状では発症者の60%は18歳未満とされている。

当局はエムポックス感染者と接触した人のワクチン接種を推奨している。

グプタ氏は「コロナ禍で多くのことを学び、世界では感染監視体制は向上しているが、エムポックスが拡大するアフリカでの迅速診断や治療へのアクセスはまだまだ不足している」と指摘する。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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常に危機的状況?

2024-08-13 05:53:59 | 災害
お盆休みだというのに気が休まらず、気を張り詰めた状態で過ごしている。災害が発生する可能性が高まっているのに、本来市民を守るはずの人たちが注意喚起しかせず、具体的な対策も起きた場合の対応も丸投げにされるのだから、不安になって当然ではないだろうか。

規模が大きい地震の後に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」なるものが発表された。地震発生後、気象庁がただちに検討会を開催したことは評価すべきだが、該当する地域で生活する人たちが具体的に今何をしないといけないのかを、政府や自治体が目立つようには呼びかけていない。

災害発生の可能性が高まっている主旨の注意情報を出されても、防災・減災のために発生前にしておくべきこと、発生後にしないといけないことを優先順位とともに示さないと、仮に災害が起きたときに無策のまま被害をもろに受けることになる。

何も起きなければ無策でも問題がない、それどころか対策を洗い出して呼びかける手間暇がもったいないと考えるのかもしれないが、事前にできるだけの手を打っておいて、結果としては何も起きなくて安心した、というほうがむしろ信頼されるのではないだろうか。

身の安全を確保する方法がわからないうえに、何かが起きても誰も守ってくれないから、花火大会を中止したり海水浴場を閉鎖したりするといった方策をとらざるをえないのだろう。大地震発生の可能性が高まっているとされる地域の宿泊施設では、予約のキャンセルが相次いでいるようだが、補償などはないようである。少し前に似たような話を聞いたばかりである。

台風も上陸したが、こちらも該当する地域の人に身の安全を確保するようにとは連呼するものの、今すぐすべきことを呼びかけないので、ただ不安をあおるだけである。警戒情報を発表しても、警戒するだけでは何も変わらない。さらには、移動を「自粛」するように依頼するのではなく、「連休・お盆の移動は柔軟に」というこれまで以上にぼんやりとした呼びかけしかできなくなっているようだ。

漠然とした注意喚起やお願いであっても、市民がそれらを無視してリスクを恐れず好き勝手に振る舞うようになったらどうするのだろうか。リスクを回避して損失が出ても、リスクを顧みずに行動して被害を受けても、すべては自己責任と切り捨てるのだろうか。いずれにせよ、具体的な策を提示せずに漠然とした呼びかけをするのがもっとも都合がいいのだろう。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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「お隣さんはヒトラー?」これも傷跡

2024-08-12 17:07:36 | 戦争・平和
出演は初老の男性2人、小品であまり話題になっていませんし、映画館も限られていますが、ヒューマンドラマがお好きな方には、ことにお勧めです。

「お隣さんはヒトラー?」
https://hitler-movie.com/

1960年5月、南米アルゼンチンに潜んでいたナチスのアイヒマンが、イスラエルのモサドに拘束されました。アイヒマンはゲシュタポのユダヤ人移送局長で、ユダヤ人数百万人を強制収容所へ移送しました。

ホロコーストで家族全員を失ったユダヤ人のポルスキー(デビッド・ヘイマン)は、南米コロンビアの町はずれの家で家族の思い出の黒薔薇を大事に育てながらひっそり暮らしていて、アイヒマン逮捕のニュースを目にします。

その彼の隣家に、ドイツ人ヘルツォーク(ウド・キア)が引っ越してきました。ポルスキーは、彼はヒトラーだと確信、ユダヤ人団体に訴えますが、ヒトラーは1945年に死んでいると相手にされません。

それなら証拠を掴んでやると、ポルスキーは監視を始めます。しかしバッタリ顔を合わせてしまったり、挨拶されたり。ヘルツォークの敷地内になってしまった黒薔薇の水やりに忍び込んで、ジャーマンシェパードに追われたり。

何度も遭遇したために顔なじみとなり、やがてチェスに誘われたり、絵が趣味のヘルツォークがポルスキーの肖像画を描くなど、2人は仲良くなります。

しかしある日、ポルスキーは、ヘルツォークの友人が「ハイル・ヒトラー」と挨拶をするのを目撃。実はヘルツォークは本当に“ヒトラー”だったのです(史実ではないようです)。監督のレオン・プルドフスキーは、ロシア生まれのイスラエル人です。

南米にはアイヒマン、メンゲレ等も逃亡していました。なぜ南米が彼らの地になったかは、以下に書かれていますが、ロシア系のHPですから、そこを知ったうえでお読みください。
https://sputniknews.jp/20231007/17329135.html

政治的な背景はあるにせよ、南米で出会ったユダヤ人とドイツ人の老人2人の出会い、友情、そして…ほのぼのとしながら、戦争にもてあそばれた2人の悲哀が滲みます。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
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農業と食の問題を通して世界の潮流を考える(3-2)

2024-08-12 12:59:37 | 環境問題
前回の(3-1)では、ブラジルを例として、遺伝子組み換え作物(GM作物)普及に誘導するシステムが、農業向け化学薬剤の使用量を低減化するのでなく、逆に拡大する可能性があることを示す情報を紹介して締めくくった。このブラジルの例を紹介した2024年1月13日の情報の序論部分の紹介から始めます。逐語的な訳でなく、大意を伝えることを念頭に置いています。

(序論)
ブラジルは、世界最大の食糧生産を誇る国の一つ。それに合わせて殺虫剤等農業向け化学薬剤の外部資源投入を拡大しており、2014年の殺虫剤市場規模は122億米ドルという。
2000~2012年の期間で、単位面積当たりの農業向け薬剤量は2倍以上に拡大している。

これら化学薬剤が環境及び人の健康に対し悪影響を及ぼすとする研究例は数多くあり、かかる観点からすると、ブラジルの化学薬剤拡大の方向性は懸念すべき問題である。

「世界の農業薬剤の使用量の増大傾向」と「遺伝子工学的に除草剤耐性を付与した作物の利用拡大」との間に正比例の関係が存在することを、数多くの研究報告が示している。
米国の研究では、1996~2011年の期間、GM作物の利用により農業向け薬剤が18.3万t増大している(この量は全作物への農業向け薬剤使用量の7%に相当している)。
代表的なGM作物である「グリフォサート耐性形質を付与した大豆」の栽培に限ると、除草剤「グリフォサート」の利用は1995年に年2500トンだったのが、2002年には年3万トン(12倍)へと急増している。

除草剤、2,4-Dへの耐性形質を付与した種子の開発過程で、2,4-D耐性GM種子が実現した場合、2,4-Dの使用が3~7倍に拡大するだろうとの予測がなされている。

ブラジルのGM作物は1990年代末に当初違法に導入され、2003年に正式に承認された。6種類のGM作物が承認されたが、利用されているのは3種(大豆・トウモロコシ・綿花)。

遺伝子工学的に導入されている形質は、可能性としては数多くあるが、現在組み込まれている形質は、「除草剤耐性」と「殺虫剤耐性」と「除草剤・殺虫剤の両方に対する耐性」である。

GM作物の作付面積の観点からブラジルにおけるGM作物の状況を見てみると、興味深いことが見えてくる。
即ち、今回調査した期間の最初の2003年のGM作物の作付面積は300万haであったのが、最後の2014年時点ではGM作物耕作面積が13倍以上の4220万haにまで拡大している。ブラジルの耕作可能面積は、2017年ブラジル政府発表データによると6340万haとされていることから計算すると、2003年時点ではGM作物は全耕作地の5%弱だったのが、2014年に66%を超えるまでに拡大したことになる。
一方ブラジルには、耕作面積が2ha以下の小規模農家の耕作地が全耕地の23%存在しているとされ、これら小規模農家はGM作物の採用・普及は難しいとされており、この23%分を除外して計算し直すと、GM作物は導入が容易であり可能な全耕作地の86.5%に既に浸透していることになる。
【ブラジルの耕作可能面積(ブラジル政府データ):2017年時点で6340万ha
小規模農家数:390万、小規模農家の占める耕作地面積割合:23%】

極めて強烈な浸透・拡散力がGM作物にあったことが判る。

ここに浮かび上がるGM作物が持つブラジル国内への浸透力・伝播力・拡散力というものに注目することが重要と考える。
即ち、グリフォサート耐性GM種子を開発したモンサント社のビジネスモデルの訴求力が極めて大きかったこと、並びにこのビジネスモデルを受け入れる作物生産者側の思惑が上手く合致したことの相乗効果が働いたと思われる。

次にグリフォサート耐性GM種子を開発したモンサント社のビジネスモデルの現状を紹介する情報を基に、遺伝子工学を育種に応用するビジネスモデルの功罪を見てみたい。

紹介する情報は、『グリフォサート耐性作物(GR作物)の歴史と今後の行方(原題:History and Outlook for Glyphosate-Resistant Crops; Reviews of Environmental Contamination and Toxicology,2021 June 10)』になります。要約部分の紹介です。

1996年のグリフォサート耐性作物(Glyphosate-resistant, GR作物)の登場により、バイオ技術を作物に適用する研究開発の流れが開始された。
穀物栽培等を行う生産者らが、可能な限りGR作物を受け入れたことから、農耕史上最も急速に新規技術の利用が推進され、拡大化した事例となっている。

この技術の利用は、雑草対策としてグリフォサート[N-(phosphonomethyl) glycine]利用に依存することを要件としており、グリフォサートの継続的利用により、グリフォサート耐性の雑草が経年的に発現してくることは、当然の成り行きである。
近年、広範囲に拡大しているグリフォサート耐性雑草(GR-weeds)は、グリフォサートとは別の作用機序の除草剤に対しても耐性を発現してきており、GR作物を採用し栽培している生産者らは雑草の管理方法の変更に迫られてきている。
しかし、北米と南米の生産者らは6種の主要穀物栽培に、この技術(GR作物)の利用を継続しているのである。

農業向け化学薬剤製造会社や種子開発企業らは、グリフォサートを利用する耕作法の延命を図っており、その方策としてグリフォサートと他の除草剤との組み合わせ使用の拡大策が有る。
他の組み合わせ除草剤として、グルフォシネート[4-(hydroxy-methyl-phosphinoyl)-DL- homoalanine]、ジカンバ(3,6-dichloro-2-methoxybenzoic acid)、2,4-D [2-(2,4-dichloro-phenoxy)acetic acid]、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸2酸素添加酵素阻害剤(4-hydroxyphenyl pyruvate dioxygenase inhibitors)、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ阻害剤(acetyl coenzyme A carboxylase inhibitors)や他の除草剤がある。

しかしながら除草剤製造会社はここ30年以上にわたり、新しい作用機序を持つ別種の除草剤の商品化は出来ておらず、現在販売中の薬剤の能力をほぼ最大限に使い果たしてしまっているというのが、現在のGR作物栽培者らの行っている雑草管理の状況と言える。
GR作物の栽培は今日でも主流であり、雑草管理はグリフォサートに相変わらずに依存しているけれども、抵抗性を拡大している雑草の能力には追い付いていないのである。

従って栽培者らは新しい技術を切望しているものの、かかる新たな技術は見えてはいない。
GR作物の利用が進んでいない地域への利用の拡大や、6種の主要GR作物以外の例えばGR小麦やGRサトウキビを開発し利用していく方策は残されており、それなりの可能性はあるものの、モンサント社の敷いたRoundup Ready(モンサント社の登録商標名)の革新的なビジネスモデルは終了したと言える状況である。

GR作物が利用され、そしてグリフォサートで雑草対策は万全だとする農業システムにはいくつかの問題点が存在していると考える。
その一つは今見たように、栽培に不可欠な除草剤を使用することにより雑草に薬剤耐性が必然的に発生するという問題である〈雑草だけでなく害虫や植物病原菌にも耐性が起こる)。
2番目の点は、例えばモンサント社のビジネスモデルの構築には、地域農業従事者らの考えや希望が全く組み込まれないシステムで研究・開発が進行されるという事実である。当然ながら、そこには大企業の利益最大化の思想のみが反映されているのである。
更に3番目の問題点として、ビル&メリンダ ゲーツ財団に代表される慈善基金や国際開発金融機関等の存在が世界のGM作物推進の背景に有るのであり、これら組織はその大きな資金力とともに世論を形成し左右していくことが可能な情報発信力をも持っているのである。

換言すると、巨大企業は世界の小規模農家や先住民等が暮らす地域社会の声を聞かずに無視する形で革新技術を創出し、そのビジネスモデルを慈善団体や国際開発金融機関が有する資金力と情報発信力にモノを言わせて、世界に進めていく構図が浮かび上がるのであり、このビジネスモデルの浸透力と展開力の大きさは、始めに紹介したブラジルにおけるGM作物の浸透力と展開力をみれば驚異的だと言えるのである。

現在の農業には、少なくとも2つの耕作上の哲学が有ると考えている。
1つは大企業中心の革新技術の開発が先行し(革新技術開発競争主義)、それを契機にその開発されたビジネスモデルの拡大化を、国際開発金融機関や慈善財団が資金力と広告力を背景にトップダウン式に各国政府に押し付けていくシステムであり、アフリカの例でいえばAGRA的システムである。
もう一つは、AFSA的・ラ ビア カンペシーナ的なシステムであり、そこでは地域に密着し、その地域条件に適った種子を含めて農耕法全般の提案を、小規模農家や地域先住民等と地域の大学や組織の農業専門家とが協働して考案・採用していくというボトムアップ式システムである。
現在は、前者のトップダウンシステムのみが優先されている状況の存在の大きさが、我々に突き付けられている課題だと考えている。
少なくとも後者のボトムアップ式システムにも充分な資金が提供される仕組みを考えていくことが重要な視点と考える。

『遺伝子という山を越えた先にあるもの:アフリカの遺伝子組み換え作物の実態と遺伝子編集技術の暗示するもの(原題Beyond the Genome: Genetically Modified Crops in Africa and the Implications for Genome Editing; Development and Change 2023年1月5日 J.Sean Rock et al)』という報告がある。
この報告では、アフリカにおける農業の今後の向かうべき方向と遺伝子技術の利用の向かうべき方向との指針となる事柄が議論されている。興味深い情報なので 次に紹介します。

この情報は、遺伝子操作技術の中でも特に最新の技法である『遺伝子編集技術Genome Editing、GE技術』が出現した現時点において、アフリカの人々が、この技術に純粋に期待をかけている実態を指摘するとともに、一方では最新GE技術に先立つ数十年前に現われたGM(Genetically Modified)技術が辿った道程の轍を、今回のGE技術が繰り返すことのないような方策を指摘することを狙っているものになります。

(要旨)ゲノム編集技術(GE技術:遺伝形質の改変を促進する植物育種技術の一種)が、アフリカの農業技術開発に従事する研究者や専門家の想像力を膨らませている。遺伝子組み換え作物(GM作物)が数十年前に世の中に登場した時分を彷彿させるものがあり、ゲノム編集は、「高い精密さ・低コスト・短期間で結果が判る」ことから育種の常識を変革する可能性のある技術として歓迎されている。

この論文では2つの事柄を取り扱っている。1つ目はゲノム編集GE技術と以前の遺伝子組み換えGM技術との関係性を考察すること、2つ目は遺伝子組み換え技術の経験から学んだ教訓を、ゲノム編集技術の今後の方向性にどのように活かしていったら良いか、に関する一連の推奨事項を提示することである。

著者らの結論は、技術開発者・開発企業や政策担当者および科学者が、地域農民たちと共同してゲノム編集技術を開発していくシステムを優先することが大切であること、そしてシステムを全体として一体的に構築していくことの重要性を意識して進めていく必要があると考えており、1990年代当時のGMシステム開発の際の『遺伝子の開発・改変のみに焦点を当てたシステム組み立て』にならないよう注意を喚起している。

換言すると、知的所有権によって使用・利用に制約と利権が発生する作物を開発対象とするのでなく、地域ごとに特有の様々な作物を開発対象として選択し、利用することで資源保有の面で劣る地域共同体の農民らにも利用可能なシステムの構築を目指すことである。

複雑であり絶えずダイナミックに変化しているアグロエコロジー型農耕システムの中で、様々な種子が重要な構成要素の一つであることを認識してシステムを構築する必要がある。
これらの考え方が組み込まれない形式での開発システムになるのであれば、そのゲノム編集技術プロジェクトは過去に起こった失敗を再度繰り返す危険が出てくるであろう。

(序論)
2018年、Foreign Affairs 誌上で慈善事業家ビル・ゲーツがゲノム編集の有用性について熱烈メッセージを述べている。
即ち「生命に宿る遺伝形質の改変操作を高速化できる植物育種技術であるゲノム編集技術(GE技術)は、従来最も脆弱な状況にある世界の農民たちを貧困から救い出す武器として有効だ。この技術の持つ可能性を失ってしまうのであれば、それは悲劇だ」と発言している。
政治家たちや政策担当者たちも同様の興奮に包まれていた。例えば前英国環境担当のMichael Gove氏はゲノム編集作物(genome-edited crops)が次に来る農業革命の推進力となるだろう、と発言している。

ゲノム編集技術が注目された事情には、2020年のノーベル化学賞がゲノム編集手段であるCRISPR-Cas9の開発者(E.Charpentier とJ.Doudna)に贈られたことが挙げられる。
ゲノム編集技術はアフリカ農業の開発・推進および転換を目指す専門家らにも刺激を与え、アフリカ大陸の農業を革新する可能性を持つ非常に大きな技術が開発された、と称えている(Komen et al 2020, Tripathi et al 2022、Mudziwapasi et al 2018, Li 2020)。

以前の遺伝子組み換え技術(GM技術)に比べて、ゲノム編集技術(GE技術)が、作物の形質転換のスピードの速さと精密さの点において優れていると、アフリカのゲノム技術擁護者らは指摘している。

これらのゲノム編集にまつわる楽観情報の流され方を見ると、遺伝子組み換え作物(genetically modified crops,GM crops)がアフリカに到来した当時のGM作物を支持する言説の流され方、説明のされかた、物語の語られかたを思い出す。

2000年代の初期、「グリーン革命」の父といわれるNorman Borlaug氏が、遺伝子組み換え技術は増大する世界人口を養っていく上で基本的に重要な武器だと主張した。
アフリカにおける停滞する収穫量の低さを改善し、小規模農民らの飢えと貧困を解決する役割を、このGM作物が担うとして、アフリカの人々もBorlaug氏が説くような話に魅せられていたのである。

GM作物に対し1.7億ドルを超す投資をし、現在もGM作物システムへの最大出資者であるビル・ゲーツ氏は、「アフリカ農民らが抱える栄養上の課題・生産性の課題・作物の疾病の課題をGM技術が解決を約束している」と主張している(Gates,2015)。
これらBorlaug氏やGates氏が謳うビジョンを実現すべくここ30年ほどの時間を使って様々な努力が為されてきたが、アフリカにおけるGM作物の現実・実態は、謳われた宣伝文句程には成果を見せてはいない。

農業バイオ技術の取得に関する国際サービス機関(the International Service for the Acquisition of Agri-biotech Applications, ISAAA)のデータによると、アフリカにおけるGM作物の耕作面積は2%以下であり、南アを除くと僅か0.3%となる。

学者らや活動家らは、GM種子の様な新しい種子技術が、アフリカ農業を如何に工業型への転換を促進するか、そして多額の資本が必要とされる中で農家らの興味を如何に優先して取りつないでいくか、の視点の重要性を指摘している。そして学者らや活動家らは、特許で守られている種子を持続可能な形で利用していくことがアフリカの小規模農家達にとっては困難であると見ている (Juma,1989;Kloppenburg 2004)。

社会科学者らもまた、アフリカにおけるGM作物栽培の拡張が妨げられる政治的-経済的要因を指摘している。それは、購入して利用する種子がコストの高い外部投入資源(肥料や農薬や灌漑設備等)を要求することであり、制約条件の多い作物管理体制を要求するものであるからである。

そしてアフリカの科学者らや農民らの介在が、研究開発段階や育種プログラム検討の時点で制限されていること、確立されている官民協力体制のシステムが、アフリカ農民の利益を優先するのでなく、技術提供企業者の利益を優先していること、そしてGM種子技術と目指すべき農業システムの目標との間の両立性を評価する方法が、妥当性を欠き不適切であること等が問題だと指摘されている(Dowd-Uribe,2014;Adenle,2014;Muraguri, 2010;Rock& Schurman,2020;Luna&Dowd-Uribe,2020)。

これらの批判的な意見の存在を踏まえての推進派と懐疑派との意見の交換が、現在のゲノム編集に絡んでの話題に欠けていることが、目立っているのである。

現在までの状況を観察しているBartkowski氏ら(2018)は、ゲノム編集が抱えている潜在能力・可能性や課題を広範なそして社会科学的な立場から分析している情報はほとんどないとしている。
例外としては、Kuzma氏(2018)がGM作物の遺産から学ぶことが重要な視点だと議論している。Shah氏ら(2021)は、ゲノム編集に関わる言説・説明・物語が戦略的に狭められ、利用されている点の問題を取り上げている。そしてMontenegro de Wit氏(2020)はゲノム編集が「民主化された」技術であるとの概念に疑念を示している。

この論文で、我々は、言説的分析(discursive analysis)と経験上得ている証拠とを組み合わせるやり方でもって、これら批判的な考察に貢献しようと考えている。
即ちアフリカにおけるGM作物遺産のどのような教訓が、今後ゲノム編集技術を理解し、利用していく上で役立つか?

結論的に言えば、過去30年間にわたり近代農業にバイオ技術が介在してきたことで生じた歴史的教訓を我々が適切に評価することが、GM技術とGE技術を擁護する議論が継続したことによって妨げられてきた点を議論することになる。

以上が(要旨)と(序論)部分の紹介でした。
この研究情報は、この後に多くの情報が詰め込まれており、全ての紹介は無理になります。
焦点を絞った形で次回に紹介致します。
ポイントは、GE技術擁護者の訴える3つの特徴(精密さ・コスト面・スピード)に関する擁護側と懐疑派側の論点の整理、そしてGE技術を成功裏にアフリカに普及させたいのであれば、どのような条件が必要なのかの議論を展開すること、になると思います。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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未熟な自衛隊員を増やして制服組を甘やかす自民党政権

2024-08-05 09:59:42 | 自民党政治
昨今、自衛隊の歯車が狂い、軋み、悲鳴を上げている。

主な事件・事故・不祥事は最近4年間だけでも

・高知県沖合での海上自衛隊潜水艦と貨物船との衝突事故(2021年2月)
・陸上自衛隊員だった五ノ井里奈さんのセクハラ事件(2021年8月)
・曲技飛行チーム・ブルーインパルスによるスモーク剤噴射汚損事故(2021年8月)
・海上自衛隊幹部によるパワハラと隠ぺい事件(2022年12月)
・海上自衛隊による安全保障上の機密情報「特定秘密」の漏洩事件(2022年12月)
・沖縄県宮古島沖での陸上自衛隊視察ヘリ(幹部含む10名乗り)墜落事故(2023年4月)
・陸上自衛隊日野基本射撃場での自衛艦候補生による自動小銃乱射事件(2023年6月)
・陸上自衛隊幹部の靖国神社私的参拝での公用車乱用(2024年1月)
・夜間訓練中の海上自衛隊ヘリ2機の衝突墜落事故(2024年4月)

以上のように陸海空で起きていた。

特に、直近の自衛隊員の逮捕事案を防衛大臣に報告していなかった不祥事については各種メディアが報道し、検証・批判を行っている。つまり、「文民統制の形骸化」「自衛隊が国会・国民を軽視」している一大事であると。

◆木原稔防衛相、不祥事の釈明の機会なのに「原因」説明は避ける 辞任は否定 自衛隊「文民統制に問題」(東京新聞、2024年7月31日付)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/344031
◆(社説)自衛隊不祥事 国会への説明軽視だ(朝日新聞デジタル、2024年7月31日付)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15998369.html
◆自衛隊の不祥事 文民統制は保たれているのか(読売新聞、2024/07/31付)
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20240731-OYT1T50001/
◆自衛隊の不祥事はなぜ起きたのか、元幹部が事例を基にその原因を徹底解説(日本ビジネスプレスJBpress、2024.7.31付)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/82333

大平洋戦争の教訓から「暴走しない」自衛隊、その存在を正当化するために政府が文民統制(シビリアンコントロール)を担保してきた。今回の不祥事は“あの”読売新聞でさえ問題視している。

産経新聞だけは、いつもの逆張りで庇う“正論”を垂れ流しているが。
◆自衛隊めぐる「不適切事案」 誰が誰の信頼を裏切っているのか(産経新聞、2024/8/3付)
https://www.sankei.com/article/20240803-S6O2RM3EMJKF3GFQFNL4GOIC3A/

私は、この元凶を安倍晋三だと考える。「専守防衛に徹し、他国を侵略しない」自衛隊の存在意義を薄っぺらな閣議決定で捻じ曲げ、「集団的自衛権行使」を容認した第二次安倍政権以降、防衛予算は膨らみ続けてカードローンのようなFMSで米国から武器装備品を買いあさるようになった。

自衛隊が事故・事件・不祥事を起こしても国防を御旗にして徹底した原因究明を行わず、制服組には甘い処分しか行ってこなかった。その結果が文民統制の欠如ではないのか。

自衛隊へふんだんにカネを注ぎ込み、使えるか否かを考えずにモノを買い与える。しかし、それらを動かすのはヒトである。イージス艦を1隻、オスプレイを1機、戦車を1台運用・管理するのに何名の自衛隊員が必要なのか。熟練した隊員を育成するのに何年かかるのか。管理職の教育・研修・コンプライアンス遵守に注力しているのか。

「自衛力の強化」「積極的平和主義」などと都合のよい掛け声ばかりで自衛隊を振り回し、現場の隊員教育を軽視し、“あるべき姿”を自衛隊制服組に丸投げしてきた自民党政権。次の国政選挙では捻じれて偏った振り子を元に戻すため、私たちは積極的に投票しなければならない。

「護憲+コラム」より
猫家五六助
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「護憲+」は第二十二期に入りました

2024-08-01 14:25:13 | お知らせ
2003年6月に、「政治に責任を持ち、これからはだまされないぞ、と自覚をもって集まろう」という、なだいなださんの呼びかけで誕生した「バーチャル政党・老人党」の中で、当時の自民党政権が打ち出した、平和主義の否定、国家主義的色彩の濃い「自民党改憲草案」に危機感を抱いたメンバーが集って、2004年1月に「老人党リアルグループ・護憲+」は発足。2024年8月1日より第二十二期(*)に入りました。

この間私たちは、憲法の根本原理「立憲主義」と基本理念「国民主権・人権・平和」の視点に立って考え、判断し、行動することの大切さを広く伝え、憲法に則った政治・社会を実現したいと願って、ホームページやブログによる情報・メッセージ発信、学習会・意見交換会の開催・参加など、多岐に亘る活動を展開してきました。

この間の国内政治を振り返ると、2009年9月に誕生した民主党政権が、旧来の自公政権と変わらない政策に傾斜して、国民の失望、反発を招き、2012年の衆院選、2013年の参院選で大敗。自民・公明が、圧倒的多数を占める政権与党として返り咲きました。

こうして誕生した安倍自民党政権は、安倍氏の「改憲志向」を支える固定支持層の意向を後ろ盾に、多くの国民の反対を押し切って、「秘密保護法」、「安保関連法」、「共謀罪」など、現憲法の基本理念を空洞化させる法案を次々に成立させ、「改憲」への歩みを進めていきました。

また、当初期待された「アベノミクス」と称する経済政策の実態は、「社会福祉費の削減」「防衛費の拡大」「非正規雇用の促進」「消費税10%増税」と、経済を悪化させ、国民生活を圧迫し苦しめる政策であることが、明らかになりました。

2017年以降になると、「森友学園」「加計学園」「桜を見る会」等、安倍氏による政治の私物化が次々に明るみに出て、これ等の問題を取り繕うために、閣僚や官僚による隠蔽、虚偽発言、公文書改ざんが繰り返され、国民の間に深刻な政治不信が生まれました。

2020年以降日本を含む世界に広がったコロナ禍に於いて、安倍氏は、アベノマスクやコロナ禍さ中のGO-TOキャンペーンなど、支離滅裂な対策を繰り返した挙句、2020年9月、“体調不良”を理由に首相を退任。

退任後の2022年7月、安倍氏は参院選の応援演説中に銃撃され死去。「旧統一教会と自民党の癒着の露見」を置き土産に、安倍政治は終わりを迎えました。

安倍氏退任後、1年間の菅首相在任を経て、2021年9月に自民党総裁に就任した岸田首相は、安倍氏襲撃事件をきっかけに明らかになった「自民党と旧統一教会の深い関係」を「断ち切る」と宣言したものの、具体的な行動は各議員の判断に任せ、うやむやのまま蓋がされる形となっています。

更に、2022年11月の「しんぶん赤旗」報道をきっかけに、大学教授による東京地検への告発、2023年の東京地検特捜部による事情聴取・家宅捜索を経て、安倍派を中心とした自民党主要派閥による「裏金事件」(政治資金パーティーの収入を所属議員に還流しながら収支報告書に記載せず裏金化)が明るみに出ました。

しかし、東京地検は一部会計責任者や議員を除き、安倍派幹部を含むほとんどの議員の立件を見送り、司法による決着はつかずじまいで、国民からの大きな批判を受けた岸田首相は、「政治刷新本部」を設置し、再発防止や派閥のあり方を見直すとしたものの、この問題も、あいまい、うやむやのまま、国民があきらめて、忘れるのを待つ格好となっています。

岸田政権の政治全般について見てみると、財政引き締め政策と、結果としての経済悪化、物価高騰、防衛費の大幅増と防衛費増税、少子化対策にかこつけた高齢者向け社会保障歳出の削減、公的年金の引き下げ等、憲法で保障された「健康で文化的な生活」とは裏腹の、国民に苦しい生活を強いる政策を推し進めています。

また、安全保障政策については、2024年4月のバイデン大統領との日米の指揮統制の連携強化、7月28日の2+2に於ける在日米軍の機能強化合意により、非常時には自衛隊が米軍の指揮下に置かれる恐れも強まり、憲法の「平和主義」は置き去りにされようとしています。

長きにわたり続いた自民党による、国民生活の軽視、憲法の空洞化、嘘・隠蔽・改ざんの常態化、旧統一教会との癒着、裏金問題、数の力で押し切る強権政治。こうした政治を、私たちはこれ以上続けさせるわけにはいきません。この国に暮らす全ての世代の今と未来のために、国の在り方を問い直し、現政権の早期退場を求めたいと思います。

更に、世界全体に目を向けると、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ攻撃=ガザ地区住民の虐殺、激動する安全保障体制、頻発する大規模自然災害、過剰なデジタル化やAIによる社会の変容、等々、世界は、人々の生きる基盤が揺るがされる重大な共通課題に直面しています。

私たちは、こうした問題についても、世界の人々と情報を共有し、広い視野をもって考え、発信し、行動していきたいと思います。

以上の認識のもと「護憲+」は、第二十二期も以下の活動を行っていきます。

1.憲法誕生の歴史的背景と、「一人ひとりの暮らし・命を大切にする」という日常的視点に立って、憲法の根本原理「立憲主義」と、基本理念「国民主権・人権・平和」の意義を伝え、政治への関心を広く喚起する。

2.現在の自民党政治に代わる、立憲主義に則り、憲法秩序を守り、国民の暮らしや命を大切にする政党や政治家を応援、支援し、政権交代が早期に実現するよう、後押しをする。

3.貧困、環境、安全保障など、世界共通の問題に目を向け、国内外の人々との情報交換や交流を深め、広い視野に立った問題解決に努める。

4.翼賛体制を支えるメディアや、権力による言論規制の動きを指摘・批評し、改善を促す。国民に必要な情報や客観的視点に基づく情報を収集・分析・伝達する。

上記のために、掲示板・ブログでの発信を行う。また、主体的・積極的に行動し、意思表示を行う。

〔*第二十二期:2024年8月1日から2025年7月31日まで。当グループは、運営全般に関して一年ごとの見直しを行っています。詳しくは「運営」をご覧下さい。〕

当サイトへのご訪問有難うございます。趣旨に賛同された皆様のご参加を心から歓迎します。

「護憲+」HP:【趣旨】より
笹井明子
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