老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

袴田事件の58年とは「何」か

2024-11-30 13:37:45 | 民主主義・人権
1,前回に続いて、袴田事件の再審無罪判決の「問題」を考察する。

実は袴田被告が58年もかかってようやく無罪となった問題には、日本の刑事司法の「闇」が存在している。本稿では、その概略を述べる。概略に止まるのは、その真相を書くと1冊の書物になってしまうからだ。

始めに明らかにするのは、日本の戦前の刑事司法が、大正デモクラシーの成果である「陪審制」を採用していて、昭和18年までは陪審制の国であった。

しかし、憲法の制定があり、刑事司法は、憲法31条以下で被告人などの人身の自由は具体的に保障されたのである。ここから、GHQの起草に基づく憲法規定と刑事訴訟の改革が要請されて、「陪審制」が復活されたはずであった。

ところが、憲法を受けて制定された「刑事訴訟法」は、英米法(特にアメリカ法)に基づいたと学者の本では書かれているが、陪審制ではなく、刑訴法の規定も憲法規定とは「構造的」に違いがあり、以下に言及するように、憲法38条(自白法則と言われる規定)とは異なり、自白の強制の禁止規定に「例外」を設けているのである。法務官僚の巧緻と言う他はない。実際の起草者は東大法学部教授、團藤重光氏であった。

2,それでは、憲法38条の自白法則(例外は存在しない)に対し、刑事法がどのように「例外規定」を規定しているのか。次に条文を引用しよう。

刑訴法第198条がそれである。
(被疑者の出頭要求・取り調べ)
「(第1項)検察官・・、または司法警察職員は犯罪の捜査をするについて必要がある時は被疑者の出頭を求めこれを取り調べることができる。但し、被疑者は逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、または、出頭後、何時でも退去することができる。」
続く(2項)と(3項)では、憲法38条と同様の規定がある。

問題なのは、「逮捕、または、勾留されている場合を除いては」という「例外規定」である。
袴田巌被告は1日10時間に及ぶ取り調べを受けていたというから、この「例外規定」によって、拷問に近い長時間の取り調べを受けていたことになる。

3,こうして、刑訴法の例外規定と捜査の違法な取り調べ(規定では長時間の取り調べは禁止されている)によって、「自白」を強制され、状況証拠も存在せず、1年半後に出てきた「捏造証拠」によって、袴田死刑囚は58年にも及ぶ拘禁生活とその後の再審期間で、その青春を奪われることになった。

今後は、憲法規定に沿った刑訴法の改正と、袴田巌さんの違法で違憲な裁判に対しての国賠訴訟の提起が、絶対に必要不可欠と考える。国賠訴訟が認められないと、日本の刑事司法の違法はなくならないからである。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

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