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藻谷浩介 その7 『デフレの正体』角川oneテーマ21

藻谷浩介 その7 『デフレの正体』角川oneテーマ21

 この本は、平成22年7月4日『読売新聞』書評欄に、公認会計士の山田真哉氏によって「統計から真実を読み取れ」と題して、紹介されました。同欄では、「統計を読みとることで様々な思い込みを排除することに成功している」とされていたので、読んでみました。

 結論ですが、著者が「私は無精者で、経済書やビジネス書は本当に数冊しか読んだことがないのですがp125」と述べている通りです。

 経済学的バックボーンがないと、全体像が歪んでしまいます

 経済学と、同書で述べられるような経済現象は全く別物です。前者は、後者がなぜ生じるか(メカニズム)を述べます。経済現象だけに目を奪われると、本質をつかむことができません

以下、解説します。

<勝った・負けたって何?>

P46-47
…無敵の商品力をむしりとっていく、もっと凄腕の宝石屋が世界にはいます。
フランスとイタリアは、近年一貫して対日貿易黒字なのです。…スイスが貿易、所得、金融サービス、特許料と、すべての分野で対日黒字です。

P204
…たとえばスイスは…日本から貿易収支でも、金融収支でも、観光収支でも、すべての分野で黒字を挙げています。

P50
 だって、ハイテク分野では日本にかないっこないフランスやイタリアが、人口でも日本の半分ほどしかない彼らが、ブランドの食料品と繊維と比較工芸品を作ることで、、日本から貿易黒字を稼いでいるんですよ。東北地方と大差ない人口のスイスなんか、医薬品に高級時計なんかもあって、人口比で見ればはるかに大きな黒字を稼いでいます。

P47
『フランス、イタリア、スイスに勝てるか』

P48
フランス、イタリア、スイス…彼らが買ってくれる日本のハイテク製品の代金よりも、日本人が喜んで買っている向こうの軽工業製品の代金のほうが高いので、日本が赤字になるのです。


<勝った、負けたで見てみると>

「貿易黒字はもうけ」の誤りは、このブログカテゴリ:藻谷浩介 日本政策投資銀行 その1・その2・その4で指摘したとおりです。

 その上で、藻谷さんのいう、勝ち負けにこだわってみましょう。  

数字出典 JETRO 2010年1-5月貿易統計

貿易赤字1

 くやしいですね、マレーシアに負けてしまいました。一人当たりGDPで日本の10分の1以下のベトナムや25分の1のミャンマーにも負けています。

グラフ出典:世界経済 ネタ帳[世] [画像] - 一人当たりの購買力平価ベースのGDP(USドル)の推移(2005~2010年)の比較(日本、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、ジンバブエ)


貿易赤字2

 くやしいですね。石油を輸入させてもらっている中東の国には、全敗ですね。経済制裁を受けているイランにさえ、負けました。彼らは、われわれに石油を輸出するくせに、われわれから工業製品を買ってくれません。


 でも、ちょっと待って下さい。次の国には勝っています。良かったですね。

貿易黒字1

[世] [画像] - 一人当たりの購買力平価ベースのGDP(USドル)の推移(2005~2010年)の比較(日本、ネパール、モルディブ、ブータン、パラグアイ、コンゴ(旧ザイール)、コートジボワール、カメルーン)

 勝ち負けで言うと、このようになります。馬鹿らしくて、お話になりません。

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

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