資料集の間違い(10) 帝国書院『アクセス現代社会2009』
帝国書院『アクセス現代社会2009』H21年2月5日発行 p101
18世紀後半の産業革命以降、 技術革新(イノベーション)が次々と行われ、経済は発展していった。オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)は技術革新によってまったく新しい生産方法や販売方法などが生み出されることが、経済発展の原動力だと説いた。
説明が誤り です。
正しいのは、「イノベーションは、改革とか、革新とか、5類型の新機軸のこと(技術革新を含んでもかまわないのですが)」です。
吉川 智教『イノベーションとは―技術革新という訳は誤訳―』早稲田大学オピニオンno.58
…21世紀の高度に経済が発達した先進国の日本で、未だに、イノベーションに技術革新という訳が使われていることに私は、当惑を覚えます。なぜならば、技術革新以外にも、イノベーション、革新は存在するからです。もしも、イノベーションを技術革新としか考えないとすると、これは、大変にミスリーディングなことと言わざるを得ません。このミスリーディングな誤訳が現在の日本の経済にも大きく影響を与えているのではないか、と思います。
イノベーションとは、そもそも、人々に新しい価値をもたらす行為です。その目的を達成するためには、科学的な進歩が必要なこともあれば、既存の製品とは異なった新製品開発が必要な場合もあるし、経営システムの革新が必要な場合もあるし、販売や制度的な革新が必要なこともあります。
「イノベーション=技術革新」とされたのは、1958年の経済白書と言われています。正確さを期すなら、「新結合」「革新」が正しい訳になります。
「経済発展の理論」1912シュンペーター 東畑精一など訳
新結合(注イノベーションのこと)…は次の5つの場合を含んでいる。1新しい財貨(筆者注:モノ・サービスのこと)、すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産。2新しい生産方法、…3新しい販路の開拓、…4原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得。…5新しい組織の実現…
このように、シュンペーターは「5類型」を示しています。1新しい財貨の生産 2新しい生産方法の導入 3新しい販売先の開拓 4新しい仕入れ先の獲得 5新組織の実現です。「新しく結合する」ということが,本来の意味です。「新(違い)を追求するのが,原動力」ということですね。
ですから、帝国書院『アクセス現代社会2009』の以下の文は、次のようになります。
<訂正前>
18世紀後半の産業革命以降、技術革新(イノベーション)が次々と行われ、経済は発展していった。オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)は技術革新によってまったく新しい生産方法や販売方法などが生み出されることが、経済発展の原動力だと説いた。
↓
<訂正後>
18世紀後半の産業革命以降、技術革新が次々と行われ、経済は発展していった。
オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)はイノベーション(革新、新機軸とも訳される)によって技術革新や、まったく新しい生産方法や販売方法などが生み出されることが、経済発展の原動力だと説いた。
このようになります。間違ったまま覚えると、以下のように、間違った授業が展開されます。
同資料集を出版している、帝国書院教員向け資料『2009年1学期号 現代社会へのとびら』で、ある学校の先生が、授業実践として報告した内容です。
「企業の役割と責任」という単元について、以下のように教えています。
…企業は、利潤獲得のために、競争相手(ライバル)の企業の商品よりも、より良い商品を生産したり、新製品を生産するために技術革新(イノベーションを生み出す)や生産性を向上させることになる。
このように、技術革新・イノベーションについて、的外れな説明をしています。こうなるのは参考資料の同社資料集の説明が誤りだから です。
薬師寺泰蔵『再考-厚労省分割論議 政策もイノベーションを』日本経済新聞 H21.6.4
これを、現場の先生は、どう教えるのでしょう? 「政策も技術革新を」でしょうか?
18世紀後半の産業革命以降、 技術革新(イノベーション)が次々と行われ、経済は発展していった。オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)は技術革新によってまったく新しい生産方法や販売方法などが生み出されることが、経済発展の原動力だと説いた。
説明が誤り です。
正しいのは、「イノベーションは、改革とか、革新とか、5類型の新機軸のこと(技術革新を含んでもかまわないのですが)」です。
吉川 智教『イノベーションとは―技術革新という訳は誤訳―』早稲田大学オピニオンno.58
…21世紀の高度に経済が発達した先進国の日本で、未だに、イノベーションに技術革新という訳が使われていることに私は、当惑を覚えます。なぜならば、技術革新以外にも、イノベーション、革新は存在するからです。もしも、イノベーションを技術革新としか考えないとすると、これは、大変にミスリーディングなことと言わざるを得ません。このミスリーディングな誤訳が現在の日本の経済にも大きく影響を与えているのではないか、と思います。
イノベーションとは、そもそも、人々に新しい価値をもたらす行為です。その目的を達成するためには、科学的な進歩が必要なこともあれば、既存の製品とは異なった新製品開発が必要な場合もあるし、経営システムの革新が必要な場合もあるし、販売や制度的な革新が必要なこともあります。
「イノベーション=技術革新」とされたのは、1958年の経済白書と言われています。正確さを期すなら、「新結合」「革新」が正しい訳になります。
「経済発展の理論」1912シュンペーター 東畑精一など訳
新結合(注イノベーションのこと)…は次の5つの場合を含んでいる。1新しい財貨(筆者注:モノ・サービスのこと)、すなわち消費者の間でまだ知られていない財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産。2新しい生産方法、…3新しい販路の開拓、…4原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得。…5新しい組織の実現…
このように、シュンペーターは「5類型」を示しています。1新しい財貨の生産 2新しい生産方法の導入 3新しい販売先の開拓 4新しい仕入れ先の獲得 5新組織の実現です。「新しく結合する」ということが,本来の意味です。「新(違い)を追求するのが,原動力」ということですね。
ですから、帝国書院『アクセス現代社会2009』の以下の文は、次のようになります。
<訂正前>
18世紀後半の産業革命以降、技術革新(イノベーション)が次々と行われ、経済は発展していった。オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)は技術革新によってまったく新しい生産方法や販売方法などが生み出されることが、経済発展の原動力だと説いた。
↓
<訂正後>
18世紀後半の産業革命以降、技術革新が次々と行われ、経済は発展していった。
オーストリア出身の経済学者シュンペーター(1883~1950)はイノベーション(革新、新機軸とも訳される)によって技術革新や、まったく新しい生産方法や販売方法などが生み出されることが、経済発展の原動力だと説いた。
このようになります。間違ったまま覚えると、以下のように、間違った授業が展開されます。
同資料集を出版している、帝国書院教員向け資料『2009年1学期号 現代社会へのとびら』で、ある学校の先生が、授業実践として報告した内容です。
「企業の役割と責任」という単元について、以下のように教えています。
…企業は、利潤獲得のために、競争相手(ライバル)の企業の商品よりも、より良い商品を生産したり、新製品を生産するために技術革新(イノベーションを生み出す)や生産性を向上させることになる。
このように、技術革新・イノベーションについて、的外れな説明をしています。こうなるのは参考資料の同社資料集の説明が誤りだから です。
薬師寺泰蔵『再考-厚労省分割論議 政策もイノベーションを』日本経済新聞 H21.6.4
これを、現場の先生は、どう教えるのでしょう? 「政策も技術革新を」でしょうか?