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教科書の間違い(9) 帝国書院『高校生の新現代社会』H22年度用見本

教科書の間違い 帝国書院『高校生の新現代社会』H22年度用見本 p72 p74
 
 賃金の安い中国、東南アジアの追い上げによって国内外の企業を巻き込んだ激しい競争が起こり、それに打ち勝つために生産拠点を海外に移転する動きが加速し、国内では産業の空洞化を招きました

P148-149
…中国は世界最大の外国投資受入国となっているのです。日本からも食品、繊維などの軽工業をはじめ、自動車、電機、鉄鋼などの各種企業が進出し、日本国内の産業の空洞化はいっそう懸念されるようになっています。…日本は産業の空洞化を乗り越えるためにも、成長著しい中国をよきライバルとし、良好な関係を形成しながら、ともに高めあっていけるやり方を考えていく必要があります。


産業の空洞化はあったのか。答え「なかった」。

国内生産・GDP(国内総生産)は減少ではなく、一貫して上昇しています。
(除く1974年石油危機、1998年山一證券・拓銀倒産・消費税UPの翌年)
とうほう『政治・経済資料2009』p222
経済成長グラフ
②雇用ですが、雇用は、比較劣位産業から、比較優位産業に移転し、全体として雇用者数は、極端には変化しないのです。同年の雇用者数推移のグラフです(数字出典:総務省統計)。(もちろん、不況時には失業率が増加するなど、一時的な雇用の流動は起こります)
雇用者数 推移グラフ
日本経済新聞H21年5月6日
産業別就業者数

日本の産業別の就業は、年々変化しています。就業者数が減っている業界があれば、増えている業界があります。第2次産業の雇用者比率低下は、70年代から始まっているのです。

 このように、「産業の空洞化」は実際には、存在しないのです。

 次に、「生産拠点を海外に移転する動きが加速」という部分です。これは、対外投資額の増加を示しています。海外での合弁会社の設立やM&Aのことです。「対外直接投 資は、01年を底に増加に転じ、03年と04年は多少減額しましたが、05年は急増」(岩田規久男『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書 2008 p98)しているのです。

 対外直接投資は増えているということは、「生産拠点を海外に移転する動きが加速」することですが、それにより「国内生産・雇用・GDP(国内総生産)が減少する」のではなく、逆に「増えて」います

 GDP拡大は,国内生産量拡大のことです。国内生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化する」=「比較劣位産業縮小」ということなのです。

比較劣位産業 → 労働力を集める → 特化し,生産量拡大
       ↓               ↓
       生産量減少   →    セット
 

 ただし、「製造業からサービス業へのシフト」は存在します。製造業雇用者低下→サービス業雇用者増加です。これを、「産業構造の高度化」といいます。とうほう『政治・経済資料2009』p230
産業構造の変化 新
 地方の製造業都市が衰退し、大都市圏の人口が増えるので、これをあえて「地方製造業の空洞化」と言うことはできるでしょう。実際に、都市部と地方の格差は、あります。
1人あたり県民所得差 帝国書院アクセス現代社会2009
(ただし、高度経済成長以後、格差は少なくなっています。日本は、均等に豊かになってきたのです)
帝国書院『アクセス現代社会2009』
地域間所得格差 帝国書院『アクセス現代社会2009』

日本全体としては、「GDP(GNI)は伸びている=産業は確保されている」というのが、現状です。
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