菅原 秀幸 北海学園大学教授 「北海道学」という、TV講座
菅原 秀幸(すがわら ひでゆき)北海学園大学経営学部 教授
「北海道学」という、TV講座で、「グローバル化の波に乗れ~北海道経済の可能性と課題~」と題して、講義を行いました。http://manabi.hotnet.co.jp/prg06_cp.html 参照(写真も)
ISバランス=貯蓄投資差額
(1)モノ・サービス面から見る
TV講義では、北海道は輸入が多く、輸出が少ないから「お金が出ていく」と話をしていました。
そこで、北海道のISバランスを見てみます。北海道の場合は、北海道の道内総生産(GRP:上記グラフではGDPで表記)では、北海道の需要をまかない切れていない実態が分かります。道内総生産<道内総消費です。北海道民が必要としているモノ・サービスを、北海道民だけで、生産しきれていません。
これは、2000年の実態でもそうですし、2030年の予測でも同様です。
(2)お金の貸し借りから見る
上記の三面等価の図から、次のことがわかります。
<貯蓄が足りないと、貿易赤字になる>
北海道人の貯蓄についてです。私たちが,給料をもらったら,何に使うでしょうか。これには3つの使い道しかありません。「使うか,貯めるか,税金か」です。高校生がアルバイト代を1万円もらいます。6000円で服を買います。消費税は,5%なので,300円です。残り3700円は,預(貯)金します。ものすごく単純な例ですが,これですべてです。
ここで,「貯める」というのは,使わなかったお金すべてを示します。それは,財布の中にあろうと,銀行預金になろうと,誰かに貸そうと,要するに,「使わなかったお金全部」のことを言います。
会社が使っても同じです。「モノを作るために,原材料を買ったり(飲食店のようなサービス業なら,食材を購入したり,従業員の服をそろえたり)するか,法人税や,消費税などの税を払うか,残るか」です。
分配(所得)が,会社に回っても,個人に回っても,あるいは,北海道や札幌市のような地方自治体に回っても,すべて同じ結果になります。「使うか,貯めるか,税金か」です。この「使うか,貯めるか,税金か」を難しく言うと,「消費・貯蓄・税金」と言います。
「消費・貯蓄・税金」=「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると、「C+S+T」という式になります。
この貯蓄が、企業に貸し出され、政府に貸し出され、外国に貸し出される原資です。日本国の、三面等価の図を見て下さい。
国民の貯蓄超過がなくならない限り、財政赤字(G-T)+外国への貸し出し(EX-IM)は必ずトータルプラスで発生します。
では、北海道の場合、どうでしょうか。
数字出典 日本経済新聞社編『北海道2030年の未来像』日本経済新聞社 2006 p202
北海道の場合、S(道民の貯蓄)が足りません(原因はGDPが足りない)。Sで、I(企業投資)+(G-T:政府投資・消費)+(EX-IM:外国投資・消費)をまかない切れません。
ISバランスは、S+(ex-im)=(G-T)+(I)です。つまり、道民の貯蓄+道外からの資本(カネ)=北海道の公債+北海道の企業の投資金となります。
S+(ex-im)=(G-T)+(I)
↓(ex-im)を右辺に移項
S=(G-T)+(I)-(ex-im)
(ex-im)は、輸出-輸入ですから、輸出が多いと黒字、輸入が多いと赤字です。-(ex-im)ですから、貿易赤字=道外からの資本流入額(資本収支黒字)となります。(アメリカの貿易赤字=資本収支黒字と同じ構図です)
北海道は、道外からの資本流入(北海道から見たら資本の借り入れ)で、道内企業の投資を行い、道債・市町村債をまかなっているのです。
北海道の道内総生産額(GDP)=北海道の道内総所得(GNI)ですが、所得が低く、道内で必要なお金をまかなえません。ですから、貿易赤字(道内への資本流入)が必要なのです。
道内への資本流入とはどういうことでしょうか。例えば、「ヤマダ電気」や「ケーズ電気」といった、道外資本の家電量販店が北海道に進出することです。「セブンイレブン」や「イトーヨーカドー」「ユニクロ」の進出も、北海道への出資=北海道の資本収支黒字=貿易赤字額になります。
また、北海道は税収が足りないので、「国庫支出金」や「地方交付税交付金」で道や市町村が予算を組んでいます。このカネも、北海道への資本流入=北海道の資本収支黒字=貿易赤字額になります。
<北海道の道民所得GDPアップと、輸出入は無関係>
以上から、北海道の道内所得(GDI)=道内総生産(GDP)が伸びる(道民の所得がアップする)のと、EX-IM(貿易黒字・赤字)は、関係がないことがわかります。
EX-IM(貿易黒字・赤字)は、お金の貸し借り(資本収支黒字)の結果生ずるもので、輸出を伸ばすとか、輸入を抑えるとか、人為的にどうこうして、変化させられるものではありません。
ISバランスがマイナスなので(北海道で使うお金を北海道で拠出していない)、貿易赤字が発生します。
TVで言うように、「輸出<輸入なので、お金が出ていく」のではなく、「お金(資本)が流入する」が正解です。
「北海道学」という、TV講座で、「グローバル化の波に乗れ~北海道経済の可能性と課題~」と題して、講義を行いました。http://manabi.hotnet.co.jp/prg06_cp.html 参照(写真も)
ISバランス=貯蓄投資差額
(1)モノ・サービス面から見る
TV講義では、北海道は輸入が多く、輸出が少ないから「お金が出ていく」と話をしていました。
そこで、北海道のISバランスを見てみます。北海道の場合は、北海道の道内総生産(GRP:上記グラフではGDPで表記)では、北海道の需要をまかない切れていない実態が分かります。道内総生産<道内総消費です。北海道民が必要としているモノ・サービスを、北海道民だけで、生産しきれていません。
これは、2000年の実態でもそうですし、2030年の予測でも同様です。
(2)お金の貸し借りから見る
上記の三面等価の図から、次のことがわかります。
<貯蓄が足りないと、貿易赤字になる>
北海道人の貯蓄についてです。私たちが,給料をもらったら,何に使うでしょうか。これには3つの使い道しかありません。「使うか,貯めるか,税金か」です。高校生がアルバイト代を1万円もらいます。6000円で服を買います。消費税は,5%なので,300円です。残り3700円は,預(貯)金します。ものすごく単純な例ですが,これですべてです。
ここで,「貯める」というのは,使わなかったお金すべてを示します。それは,財布の中にあろうと,銀行預金になろうと,誰かに貸そうと,要するに,「使わなかったお金全部」のことを言います。
会社が使っても同じです。「モノを作るために,原材料を買ったり(飲食店のようなサービス業なら,食材を購入したり,従業員の服をそろえたり)するか,法人税や,消費税などの税を払うか,残るか」です。
分配(所得)が,会社に回っても,個人に回っても,あるいは,北海道や札幌市のような地方自治体に回っても,すべて同じ結果になります。「使うか,貯めるか,税金か」です。この「使うか,貯めるか,税金か」を難しく言うと,「消費・貯蓄・税金」と言います。
「消費・貯蓄・税金」=「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると、「C+S+T」という式になります。
この貯蓄が、企業に貸し出され、政府に貸し出され、外国に貸し出される原資です。日本国の、三面等価の図を見て下さい。
国民の貯蓄超過がなくならない限り、財政赤字(G-T)+外国への貸し出し(EX-IM)は必ずトータルプラスで発生します。
では、北海道の場合、どうでしょうか。
数字出典 日本経済新聞社編『北海道2030年の未来像』日本経済新聞社 2006 p202
北海道の場合、S(道民の貯蓄)が足りません(原因はGDPが足りない)。Sで、I(企業投資)+(G-T:政府投資・消費)+(EX-IM:外国投資・消費)をまかない切れません。
ISバランスは、S+(ex-im)=(G-T)+(I)です。つまり、道民の貯蓄+道外からの資本(カネ)=北海道の公債+北海道の企業の投資金となります。
S+(ex-im)=(G-T)+(I)
↓(ex-im)を右辺に移項
S=(G-T)+(I)-(ex-im)
(ex-im)は、輸出-輸入ですから、輸出が多いと黒字、輸入が多いと赤字です。-(ex-im)ですから、貿易赤字=道外からの資本流入額(資本収支黒字)となります。(アメリカの貿易赤字=資本収支黒字と同じ構図です)
北海道は、道外からの資本流入(北海道から見たら資本の借り入れ)で、道内企業の投資を行い、道債・市町村債をまかなっているのです。
北海道の道内総生産額(GDP)=北海道の道内総所得(GNI)ですが、所得が低く、道内で必要なお金をまかなえません。ですから、貿易赤字(道内への資本流入)が必要なのです。
道内への資本流入とはどういうことでしょうか。例えば、「ヤマダ電気」や「ケーズ電気」といった、道外資本の家電量販店が北海道に進出することです。「セブンイレブン」や「イトーヨーカドー」「ユニクロ」の進出も、北海道への出資=北海道の資本収支黒字=貿易赤字額になります。
また、北海道は税収が足りないので、「国庫支出金」や「地方交付税交付金」で道や市町村が予算を組んでいます。このカネも、北海道への資本流入=北海道の資本収支黒字=貿易赤字額になります。
<北海道の道民所得GDPアップと、輸出入は無関係>
以上から、北海道の道内所得(GDI)=道内総生産(GDP)が伸びる(道民の所得がアップする)のと、EX-IM(貿易黒字・赤字)は、関係がないことがわかります。
EX-IM(貿易黒字・赤字)は、お金の貸し借り(資本収支黒字)の結果生ずるもので、輸出を伸ばすとか、輸入を抑えるとか、人為的にどうこうして、変化させられるものではありません。
ISバランスがマイナスなので(北海道で使うお金を北海道で拠出していない)、貿易赤字が発生します。
TVで言うように、「輸出<輸入なので、お金が出ていく」のではなく、「お金(資本)が流入する」が正解です。
theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育