三洋電機は,ビデオ・カメラ「Xacti」シリーズの新製品として,フルHD対応の上位機種を2種類と防水機種を2種類,入門機を1種類の合計5種類を発表した(ニュース・リリース)。防水機種を含めて全機種でHD動画の撮影を可能とし,上位機種と防水機種には従来の縦型品に加えて,他社のビデオ・カメラに多い横型品を追加した。2009年2月から4月にかけて,順次発売する。
Xactiはこれまで,片手で縦に本体を握りこむという縦型の形状を特徴としてきたが,今回はビデオ・カメラとして一般的な横型を追加した。海外では,さらに入門機でも横型品(「VPC-TH1」)を販売する。「欧州や北米などの地域では,縦型はビデオ・カメラに見られず,手にとってもらえない傾向があった。今回は誰にでも受け入れられる形状を用意するために横型を加えた」(三洋電機)とする。2009年は国内で年間20万台,海外で年間80万台の販売を目指す。
上位機種は,1920×1080画素(フルHD),60フレーム/秒のプログレッシブ方式(いわゆる60p)での撮影に対応した。従来機種(「DMX-HD1000」「DMX-HD-1010」)の後継機と位置付ける「DMX-HD2000」と,追加した横型の「DMX-FH11」の2機種を用意する。フルHDでの60pを実現するため,自社で新たに開発した画像処理LSI「プラチナΣ-EXエンジン」と,高速読み出しが可能な1/2.5型で約810万画素のCMOSセンサを採用した。
今回の製品では,従来のインタレース方式からプログレッシブ方式を採用したことで,画像処理LSIのデータ処理量は2倍になるため,従来に比べて消費電力が上がり,機器の駆動時間が短くなる恐れがあった。そこで,(1)半導体製造プロセスを従来の90nmから65nm世代へと微細化した,(2)データ処理能力は1.7~1.8倍に向上しながら2倍のデータ量を処理できるよう,アルゴリズムを工夫した,(3)外付けのメモリにアクセスする回数を抑え,できるだけ画像処理LSI内部だけで処理できるようにした,といった対策によって従来品と同等の消費電力を実現した。
このほか新たな動画撮影の機能として,フルHD動画撮影時のズームとして「16倍・アドバンストズーム」を搭載した。これは,光学10倍ズームに約500万画素分のCMOSセンサの撮像領域を組み合わせることで,16倍ズームを実現するというもの。フルHDに相当する200万画素分ではなく,あらかじめ500万画素の領域を使って動画を撮影しフルHD相当に画素変換するため,通常の電子式ズームとは違い,映像が粗くならないのが特徴である。画素変換について,画像処理LSIに専用回路を搭載した。
1秒間に多くのコマを撮影して60フレーム/秒で再生する「スローモーションムービー」機能は,1秒間当たりの撮影コマ数を2種類用意した。448×336画素の画像であれば240フレーム/秒で,192×108画素の画像であれば600フレーム/秒で撮影する。
防水でもHD
防水2機種は,新たに1280×720画素のHD対応としつつ,従来機同じく,防水保護等級「JIS IPX5/IPX8」を実現した。HD対応で消費電力を従来品同等に抑えた画像処理LSI「プラチナΣ-IIエンジン」を採用する。従来機「DMX-CA8」の後継機種である「DMX-CA9」は900万画素の静止画が撮影可能となった。
新たに加えた「DMX-WH1」は横型の形状を採用することで,DMX-CA9とは異なる特徴が二つある。一つは,防水しやすく耐圧を高められたこと。筐体の接続部分が平面的であるため,2次元のパッキンで防水できる。縦型のDMX-CA9は水深1.5mまでだが,DMX-WH1は3mまで利用可能とする。もう一つは比較的スペースに余裕があり,電池容量を大きくして撮影時間を長くできたこと。DMX-CA9は動画撮影時間が従来機同等の約70分であるのに対して,DMX-WH1は200分である。なお,DMX-WH1はビデオ・カメラとしての機能に特化した。静止画撮影時の画素数を約110万画素に落とし,代わりに光学30倍ズームを搭載している。
入門機は高画素でより小型軽量に
入門機と位置付ける「DMX-CG10」は,1/2.33型のCMOSセンサを搭載し,従来機種「DMX-CG9」に比べて100万画素多い1000万画素の静止画が撮影できる。体積は従来機種に比べて約2.3%小さい約167mL,質量は同5%軽い171g(本体のみ,電池やSDメモリーカードは除く)である。
全機種とも,静止画撮影機能として「リバース連写」機能,動画撮影機能として「3次元デジタルノイズリダクション(3D-DNR)」を新たに搭載した。リバース連写機能では,撮影ボタンを押下した後,ボタンから指を離した瞬間直前の写真を記録する。例えば上位機種のDMX-HD2000とDMX-FH11の場合,800万画素で1秒間に6枚,最大9枚分記録する。3D-DNRは,フレームごとに比較することで時間的に変化するランダム・ノイズを削減するというもの。符号化前に3D-DNRを行うことで,高画質化だけでなく10~15%の圧縮率向上にも寄与するという。