TSMC

地元に根差しながら、多様な人材の力を結集

TSMC熊本工場がついに操業開始へ
日本での半導体製造のルネサンスに挑む

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世界をリードする台湾半導体ファウンドリー企業のTSMCが、満を持して熊本第一工場の操業を開始した。日本での半導体製造体制再興に向けた一連の取り組みの皮切りであり、さらに環境保全、雇用創出など、地域社会との多面的な共存共栄を目指した動向として注目を集めている。TSMCのSenior Vice Presidentであり人事関連を統括するローラ・ホ氏と、熊本工場の操業を担うJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)取締役社長の堀田祐一氏に詳細を聞いた。

2024年の状況はいかがでしたか。

 半導体産業は、生成AI関連の継続的な需要の増加によって成長が促進された年でした。AI関連チップの開発・製造には、最先端の半導体プロセス技術とパッケージング技術の適用が不可欠です。その実現には、高度な技術に対応できるエコシステムと、より大面積なチップを高い歩留まりで製造できる生産体制が必須。まさにTSMCの強みが発揮できる領域だと言えます。このため2024年は、AIの活用・応用拡大の推進役としてTSMCの存在感、社会的責任がより一層高まったと感じています。

 当社は、技術の互換性と持続可能性にコミットしており、あらゆるステイクホルダーと協力しながら、ロードマップに沿った先端技術の進化へ向けて共に繁栄・成長していくための様々な具体的施策を実践しています。同時にサステナビリティー戦略としても2050年までにバリューチェーン全体でのネットゼロ実現に向けて積極的に取り組み、さらにDE&I(ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平性、インクルージョン:包摂性)の文化も深めています。こうした活動が評価され、社会的責任投資の代表的な指標となるダウ・ジョーンズ・サステナビリティー・インデックス(DJSI)の構成銘柄に24年連続で選定されました。

熊本工場の操業開始へ

日本でのファブ立ち上げの進捗はいかがですか。

 現在、TSMCは世界的な需要に応えるため、積極的にグローバルへ生産拠点を拡大しています。日本では、熊本に建設したJASM第一工場は2024年12月に量産を開始しました。第二工場の土地造成も進めており、2027年までの本格稼働を目指しています。両工場への総投資額は200億米ドルを超えるプロジェクトになる見込みです。

 今後、熊本では3400名以上の専門職の雇用が創出される見込みです。その大半は地元の日本人人材となります。当社は日本の皆様と互いに協力し、学び、融合していくことで、日本の半導体産業の再興と、熊本の経済発展に貢献したいと考えています。

堀田 JASMにとって、2024年は「立ち上げ期」から「操業期」へと移行する大きな節目の年でした。2月の開所式には、TSMC創業者のモリス・チャンが登壇し、「日本における半導体製造のルネサンス(再興)の始まりだと信じている」とJASMへ大きな期待を寄せてくれました。それ以降にクリーンルームの生産ラインを立ち上げ、すべてのプロセス認証を得たあとに、12月に計画通りに量産を開始しました。これからは皆様の期待に応え、信頼できる技術と生産能力をお客様に提供すると共に、現地調達率(間接材)を2030年までに60%を目指し、日本、そして世界の半導体エコシステムに貢献してまいります。

 産業や経済の成長はもちろんのこと、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する目標も確実に達成していきます。「より良い社会の実現」というビジョンの下、地域社会との多面的な共存共栄を目指します。

環境面では、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

堀田 半導体製造に欠かせない水資源の管理については「熊本の宝」である地下水の、利用効率向上と地下水涵養の推進による環境保全を両輪として、持続可能な地下水利用に貢献しています。まず、JASMではTSMCが長年培ってきた、業界をリードする水管理の仕組みを導入しています。工場内で使う水の75%以上を回収水で充当し、1滴の水を平均4回以上繰り返し使うことを目指しています。その成果から、JASMでの水の使用量は、世界の半導体業界平均を大幅に下回っています。加えて、地下水の持続可能利用に向け、取水量以上の地下水涵養量を約束しており、行政や地元企業、農家と連携しながら取り組んでいます。

 さらにTSMCは、学術界での環境に関する研究を後押しし、社会にとって有益な研究を加速させるために、産学共同研究プロジェクト「グリーン・ジョイント・デベロップメント・プロジェクト(グリーンJDP)」を立ち上げました。世界での工場運営拠点を対象とした同プロジェクトにおいて、日本が初めて発足した場所です。

堀田 TSMCとJASMが連携し、熊本大学と熊本県立大学のそれぞれと地下水に関する研究を進めており、その研究成果やデータを産官学で共有・活用することで、経済活動と環境保全が両立した社会の実現の下支えを目指してまいります。

人材の多様化が革新を生む

日本でのビジネスの成長とその持続には人材も欠かせません。

堀田 その通りです。JASMの従業員は既に1700名を超えており、6割以上が日本で新規採用した人材です。職種は、プロセスエンジニア、装置エンジニアなどの製造部門から、購買や経営企画など多様です。新規採用した人材のうち、大学、高専、高校からの新卒者が約2割を占め、2024年に2期生を迎えました。

 今後の事業拡大を見据えて、新卒採用とキャリア採用を共に継続・拡大しています。JASMは、日本の半導体製造拠点の立ち上げに挑戦するプロジェクトです。謙虚さと向上心を持って、新たな知識の獲得を追求し、グローバルな環境でチャレンジしたい方に、ぜひ仲間に入っていただきたいです。

人材育成についてはいかがでしょうか。

 従業員一人ひとりが情熱を持ちながら、人としての成長もできる、多様で包括的な職場環境づくりを目指しています。イノベーション創出は半導体産業の魂であり、活力ある多様なチームこそが原動力です。

堀田 JASMでは、TSMCの「バディシステム」を導入しています。新入社員の「バディ」として先輩社員が付き、業務内容の指導と共に、企業文化や熊本での暮らしなど新しい環境に慣れるようにサポートします。また、Eラーニング教材も充実しており、電子工学専攻ではない社員でも安心して入社していただき、JASMで成長できる環境を整えています。

 また、JASMは外国人比率が約4割の国際的な職場です。TSMCの台湾拠点とのやり取りも多く、異なる文化や価値観を持つ同僚と共に業務を推進しています。異文化理解の研修や英語学習サポートなどのプログラムも提供しており、DE&Iが根付く職場の醸成に取り組んでいます。

最後にメッセージを。

 半導体は、様々な領域のテクノロジーの進化をけん引し、人々の生活の質を向上させ、持続可能な社会を実現するために欠かせない基盤物資です。当社は、ESGビジョンを実現し、「グリーン製造」「責任あるサプライチェーンの構築」「人材の育成」「多様で包括的な職場の実現」「恵まれない人々への配慮」という5つの観点から、より良い変化の推進を後押ししていきます。

堀田 JASMは、国内最高水準の半導体製造を実現すると共に、持続可能な環境と地域社会の発展に貢献できるよう努めてまいります。また、多様な人材が活躍できる職場のDE&Iを推進し、熊本からイノベーションの力を育んでまいります。

お問い合わせ

Japan Advanced Semiconductor
Manufacturing株式会社
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