図1●栗本ホールディングスが東広島市に建設するメガソーラーの起工式
(出所:栗本ホールディングス)
[画像のクリックで拡大表示]

 2014年1月14日、広島県東広島市で出力約2MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の起工式が開催された(図1)。事業主(スポンサー)は、広島市に本社を構える建設会社、栗本ホールディングス(以下、栗本HD)だ。このメガソーラーは、資金調達面で画期的な手法を採用した。総事業費9億円のうち、6億9000万円を「プロジェクトボンド」を発行することにより、機関投資家から調達した。同社の平野訓相取締役事業統括部長は、「米国などでは優良なインフラ事業を債券化して、建設費を投資家から調達する仕組みが進んでいる。優良なメガソーラー事業ならば、日本でもこうした仕組みを応用できる」と話す。

 「プロジェクトボンド」とは、プロジェクトに必要な事業費のうち、負債部分を金融機関からの借り入れでなく、債券化して投資家から調達する金融手法だ。この特集の第1回で取り上げた「プロジェクトファインナス」は、プロジェクト自体が生み出すキャッシュフローを返済原資として銀行が融資するのに対し、プロジェクトボンドはプロジェクトが生み出すキャッシュフローを償還の原資として複数の投資家に債券を販売して資金調達する。プロジェクトファイナンスとプロジェクトボンドは、資金提供者が金融機関なのか、投資家なのか、つまり間接金融か直接金融かという違いを除けば、プロジェクトに潜むリスクを洗い出して対処し、責任分担を明確にして最小化する作業は同じだ(図2)。

図2●プロジェクトボンドの仕組み
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

アレンジャーがスポンサーと投資家を仲介

 プロジェクトファイナンスの場合、こうした作業をメガソーラー事業に詳しい金融機関と出資者であるスポンサーが二人三脚で進めていく。一方、プロジェクトボンドの場合、証券会社が投資家とスポンサーを結ぶ「アレンジャー(金融仲介者)」として、スポンサーをサポートしつつ、プロジェクトの組成から債券の販売まで一連のプロセスを取り仕切る。栗本HDのメガソーラーでは、ゴールドマン・サックス証券がアレンジャーとなった。

 プロジェクトファイナンスとプロジェクトボンドのもう1つの大きな違いが、債券に対する「格付け」が必要になる点だ。プロジェクトファイナンスの場合、プロジェクトのリスクを評価できる銀行の専門家が、融資するか否かを判断する。メガソーラーの場合、太陽光発電の技術や事業についての専門家を銀行内に育成して融資案件を審査している。一方、プロジェクトボンドの場合、債券を購入する投資家は必ずしもプロジェクトに関する専門知識を持たないため、リスクなどの評価は容易でない。そこで、格付け機関が第3者の立場で、プロジェクトの事業リスクなどを評価して「格付け」として公表する。投資家は、格付けを参考にしながらリスクなどを判断し、プロジェクトボンドを購入できるわけだ。