ばら積みピッキング向けに知能化した産業用ロボットコントローラーを開発して急成長しているのが、MUJIN(本社東京)だ。ここでいう知能化とは、人が動作プログラムを作成しなくても、ロボットコントローラーが最適なプログラムを自動生成すること。つまり、ロボットが自から考えて動く。
この技術に着目した大手企業が、ここ数年で生産ラインや物流センターで稼働する産業用ロボットにMUJINのコントローラーを相次いで導入している。例えば、自動車部品大手のアイシン・エィ・ダブリュは、物流センターで複数種の形状が異なる金属部品のピッキングに導入(図1)。バルブ製造大手のキッツもばら積み部品の生産工程への投入に採用している*1。
*1 物流分野でも2016年にアスクルが、2017年には中国の大手電子商取引(EC)事業者である京東商城(JD.com)がそれぞれ物流センターに導入した。2019年7月には、その実力に目をつけたアクセンチュアが、物流分野におけるAI・ロボットを活用したサービスの提供でMUJINとの協業を発表している。
MUJINの技術を支えているのは、同社共同創業者でロボットの動作計画(モーションプランニング)の権威でもあるデアンコウ・ロセン(DIANKOV Rosen)氏の技術を基にした「モーションプランニングAI」。一定の制約条件の下で始点から目的箇所までのロボットアームの最適な経路を高速で算出する。この独自技術と、アームの各関節の挙動を導出する解析的逆運動学を駆使して、瞬時にロボットの動作プログラムを生成する。
これら技術を搭載したロボットコントローラーと、ワークを認識するための3Dビジョンシステムを組み合わせ、自動化が難しいとされてきたばら積みピッキングや、複数種のワークのパレタイズ・デパレタイズのティーチングなし(ティーチレス)での自動化を実現した。
面倒なティーチングを不要に
通常、産業用ロボットの稼働には、アームの挙動の事前設定(ティーチング)が必要となる。これが非常に手間がかかり、ロボット導入の障壁となっている。特に、ばら積み部品や複数種のワークが混在するパレタイズ・デパレタイズ作業は、ワークの種類や置き場所が変わるたびにティーチングが必要で、ロボットによる自動化は困難とされてきた。同社の技術はモーションプランニングAIにより、ワークに応じて最適なアームの軌道を算出し、動作プログラムを自動生成する。
加えて、特定のロボットに依存しない汎用のコントローラーである点も特徴だ。ロボットメーカー各社の専用コントローラーに接続して使うが、ペンダントはMUJIN製だけで済む(図2)*2。複数メーカーのロボットが混在していても、操作性を統一できる。既にオムロン、川崎重工業、デンソーウェーブ、ファナック、三菱電機、安川電機など、国内の主要なロボットメーカーの産業用ロボットに対応している。
*2 ロボットへの電源供給などの機能はロボットメーカーの専用コントローラーの利用が必要な場合があり、MUJINのコントローラーで全てを代替できるとは限らないが、機能面ではそれらの役割を置き換えるものとなっている。