調査や設計などの業務に適用される準委任契約では、下請けに外注する「再委託」は原則として禁止だ。発注者の承諾を得れば再委託は可能だが、そこには明確なルールが定められている。ただ、受発注者共にルールへの意識が乏しく、守っていないことも多い。
愛媛県発注の調査業務で2022年7月、受注者が無断で再委託していたことが発覚した。発注者への承認申請を怠っただけでなく、再委託先の社員に対して、元請け会社の社員であるように立場を偽らせていた。県は、こうした行為が悪質だと判断。元請けの愛媛県補償コンサルタント(松山市)に、比較的長い4カ月の指名停止措置を講じた(資料1)。
本来、受注者が他社に業務を再委託する場合には、再委託先の名前や契約金額、契約期間などを記載した再委託履行承認申請書を発注者に提出する必要がある。
再委託にこうしたルールを定めているのは、調査や設計などの業務は準委任契約との考え方があるからだ。準委任では、専門的な知識や技術を持つ人に対し、その能力を信頼して業務を委託する。勝手に再委託されては、その能力が担保されない。この点で、契約内容に沿った成果物の完成を目的とする、工事の請負契約とは異なる。
再委託には、責任の所在が不明確になる、下請けに安値で発注すると品質低下を起こしやすい、といった側面もある。これらは、工事にも共通する問題だ。
設計などの業務における再委託のルールは、公共土木設計業務等標準委託契約約款に示されている。契約約款では、「主たる業務」の再委託を禁止。再委託できる業務でも、「軽微な部分」以外は発注者の承諾が必要だと規定している(資料2)。
国土交通省などの共通仕様書では、主たる業務と軽微な部分について、それぞれ具体例を示している。設計の場合は総合的企画や業務遂行管理など、解析業務では手法の決定や技術的判断などが、主たる業務に当たる。軽微な部分は、コピーやデータ入力、資料の収集といった単純作業だ。
特に受注者の技術力が重視されるプロポーザル方式の発注案件では、再委託への規制を強化している。同方式は、価格競争入札を経ないので随意契約に分類される。そこで共通仕様書では、随意契約で発注した業務について、再委託できる分量を原則として業務委託料の3分の1までと定めている。