口頭で指示された契約外の仕事でミスをしたら責任を問われるのか、設計ミスや施工不良があった場合にいつまで賠償責任を負うのか──。設計や施工の仕事には、契約上の思わぬ落とし穴が潜んでいる。契約を巡るトラブルなどを基に、その法的な位置付けを解説する。

契約の落とし穴
目次
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「契約外なら責任なし」は本当か、設計ミス巡る判断に疑問も
発注者から口頭で指示された契約外の業務にミスがあった場合、受注者に損害賠償の責任は生じるのか──。こんな「微妙」な問題が、岡山市が発注した災害復旧工事の設計業務で発生した。市は損害賠償請求を断念したものの、その判断に疑問を持つ専門家もいる。
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設計ミスがなくてもなぜ損害賠償? 契約不適合の他にも責任あり
建設コンサルタント会社に6億円を超える損害賠償を命じた阪神高速大和川線工事を巡る訴訟。実は判決で、設計ミスはなかったと認定されている。それでも、専門家として説明義務を果たさなかったことが不法行為とされ、賠償責任が生じた。
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成果物を出せずに「報酬ゼロ」の例も、準委任契約に「成果完成型」
契約が途中で解除された場合に、報酬をどれだけ得られるのかは、多くの受注者にとって気になる問題だ。民法には、発注者が受けた利益の割合に応じて部分的に報酬を支払う規定がある。ただ、発注者が利益を得なければ、報酬ゼロもあり得る。
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原則禁止の再委託4割が経験、受発注者共に乏しい問題意識
調査や設計などの業務に適用される準委任契約では、下請けに外注する「再委託」は原則として禁止だ。発注者の承諾を得れば再委託は可能だが、そこには明確なルールが定められている。ただ、受発注者共にルールへの意識が乏しく、守っていないことも多い。
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受注者に落ち度ないのに契約解除、賠償額でもめるケースも
公共工事標準請負契約約款では、発注者の任意解除権を設定している。発注者の都合でいつでも契約を解除できる規定だ。発注者の落ち度が理由でも解除できるので、受注者からは「納得いかない」との声も上がる。
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半数以上が資材高騰対応に不満、申請したが認められない例も
2021年から続く資材価格の高騰で、工事の契約金額の見直しを迫られるケースが増えてきた。民間と違い、公共の工事では価格高騰に伴う契約変更を認める「スライド条項」が普及している。ただ、制度に不慣れなためか、申請しても適用されないケースが目立つ。
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著しく短い工期は禁止されたが…、依然として多い不満の声
働き方改革を踏まえ、著しく短い工期の設定を禁じた改正建設業法が施行されてから3年近くたった。適正な工期設定のためのガイドラインが作成されるなど対策は進んでいるものの、受注者の間ではまだ不満がくすぶっている。