若手エンジニアたちが今、面白い。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)やAI(人工知能)、スパコン、暗号、自動運転、デジタルコンクリート、データセンシング――といった各分野でニューウェーブを巻き起こしている。
本連載は日経クロステックが注目する若手技術者・研究者を取り上げる。最新技術だけでなく、それを生み出す、もしくは支える人物像に迫る。
動画配信サービスYouTubeで活動するバーチャルタレント「VTuber(ブイチューバー)」。3DCGなどのアバターを動かすVTuberに欠かせないのが、仮想空間上で体の動きを再現するモーションキャプチャー技術である。同技術において、VTuber関係者の間で人気を博し、8000以上のライセンスを提供するソフトウエアがある。SHOWROOM 事業部 アライアンス部 プロダクトG 兼 ラペットテクノロジーズ 代表の根岸匠が開発する、「Luppet(ラペット)」だ。
Luppetは、アバターを通して、顔の動きや身ぶり手ぶりなどを伝えられるソフトウエアである。主な特徴は、指の動きを安価でありながら、高い精度で再現できることだ(動画1)。
指の動きを再現するには、これまで多くの機材や設定が必要でコストが高かった。根岸は、英Ultraleap(ウルトラリープ)の小型赤外線センサー「Leap Motion」に着目することで、コストを従来の1/6へと大幅に抑えた。19年にはラペットテクノロジーズという企業を設立し、ライブ配信サービスを手がけるSHOWROOMで働きながら、副業としてLuppetの開発を進めている。
指の動きは「人間らしさ」
VTuberにとって指の動きを正確に再現することは、表現の幅を広げられる利点がある*1。「バーチャルタレント」であるVTuberが人気を獲得するには、3DCGや2DCGのアバターに配信者の声や動作を連動させることで、視聴者の目の前に存在するかのように感じさせることが重要となるからだ。
指を動かしてピアノなどの楽器を演奏したり、ピースサインをつくったりすることで、「人間らしさが加わる」(根岸)と力を込める。
根岸がLuppetを提供開始したのは、19年2月。低価格で高精度という特徴から、VTuber関係者の間で瞬く間に広がっていった。「21年6月時点では個人向けライセンス数で8000程度、法人向けライセンスでテレビ東京などに90程度提供している」(根岸)と胸を張る。