範疇
はん‐ちゅう〔‐チウ〕【範×疇】
読み方:はんちゅう
1 《「書経」洪範の「天乃ち禹に洪範九疇を錫(たま)う」から》同じような性質のものが含まれる範囲。カテゴリー。「コメディーの—に属する映画」「趣味の—を出ていない」
2 哲学で、あらゆる事象をそれ以上に分類できないところで包括する一般的な基本概念。
㋐アリストテレスで、あらゆる存在者がその下に包摂される最高類概念。実体・量・質・関係・場所・時間・位置・状態・能動・受動の10項目。
㋑カントで、純粋理性概念(理念)から区別された純粋悟性概念。思惟能力としての悟性の先天的形式で、これによって悟性は対象を認識へと構成する。量(単一性、数多性、総体性)、質(実在性、否定性、制限性)、関係(付属性‐自存性、原因性‐依存性、相互性)、様相(可能性‐不可能性、現存在‐非存在、必然性‐偶然性)の4項12目。
カテゴリ
カテゴリ(独: Kategorie、英: Category、仏: Catégorie)は、事柄の性質を区分する上でのもっとも基本的な分類のことである。カテゴリーとも表記する。語源はギリシア語の κατηγορια。漢訳語では範疇(はんちゅう)であり、洪範九疇に由来する[1]。
概説
アリストテレスによって哲学用語として採用された。アリストテレスにおいてカテゴリは存在のもつ10の基本的性質をあらわし、存在論における基本概念のひとつであったが、イマヌエル・カントは人間認識を基礎付ける超越論的制約のひとつ、純粋悟性概念をカテゴリと呼び、その意味を認識論的意味へと転換した。
哲学用語としての「基本範疇」の意味から発展して、各種分類学などでもカテゴリの用語が用いられることがある。また最近ではウェブディレクトリなどで、範疇という漢訳語を用いずに、英仏独語の音訳であるカテゴリの語が用いられている。
歴史
古代
ギリシア哲学において、カテゴリは単に物質の基礎的な元素(土、水、風、火など)を表す。認識問題そして存在と意識の相互関係について高まる関心とともに、哲学的なカテゴリ体系は決定的に発展した。
プラトンにおけるカテゴリ
プラトンは以下の五つのカテゴリを区別した。
であり、これらをプラトンは魂のあかし(Zeugnisse der Seele)とみなした。
カテゴリの本来的な創設者としてのアリストテレス
哲学的なカテゴリの本当の創設者はアリストテレスである。彼は最初にカテゴリを体系的に研究した。彼は、論理学を研究をするための基礎であり、道具であるとして、まず、述語(命題「PはQである」というときの「Qである」にあたる)の種類を以下のように10に区分する[2]。彼は、次いで、形而上学において、存在者を多義的なものであるとして、存在をカテゴリに従って10に分類した。彼によれば、個物を「第一実体」であるが、カテゴリにおける「実体」は、述語として用いられ「類」や「種」をあらわすが、普遍者であるゆえ「第二実体」とした。それによって、'Aussageweise'から'Seinsweise'への移行がおこる。
実体以外の残りのカテゴリは、実体のより詳細な特徴付けに資する。彼は対象の分類としてカテゴリを解する。
カテゴリは、少なくとも以下の二種の条件を満たすべきである。
- 形式上:分類(Klasse)の数は無限であり、その分割は空虚であり、その統合は多様性(Universum)を束ねる。
- 実質上:分類からのどの個物もひとつの分類に属さねばならない。すなわち、決して他の分類に入れられえない。
この条件は、しかし、アリストテレスも抱えていたカテゴリの境界付けに関する困難へと導く。「関係」と「質」についての、そして「量」についての境界付けは、分類に際して連続のうちに現れる「場所」と「時間」をもっては明らかにならない。アリストテレスの範疇論は、哲学の発展上に広範囲の影響をもち、現在の哲学においてもなお部分的には及んでいる。
中世
聖トマス
トマス・アクィナスは、アリストテレスの10の範疇に、以下の六つの超範疇的概念を加えた。
近世
哲学的範疇論に対する重大な貢献を、古典的ドイツ哲学、取り分けイマヌエル・カントとG.W.F.ヘーゲルが果たした。
カント
カントは、その著書『純粋理性批判』において、カテゴリを客観的実在の反映とはみなさず、純粋悟性の真の主要概念とみなした。
カントに従えば、カテゴリはすべての経験の前提条件であり自然法則をアプリオリに定める。
カントはカテゴリを以下の四つのグループに分けた。
ヘーゲル
ヘーゲルは、ドイツ哲学の包括的なカテゴリ体系にまで発展させた。彼はとりわけ―たとえ観念論的形式においても―異なった哲学的カテゴリの間に弁証法的観点を際立たせた。
脚注
- ^ 範疇(はんちゅう)の意味 - goo国語辞書
- ^ 『カテゴリー論』第4章
関連項目
- プロトタイプ理論
- カテゴリー錯誤 - 錯誤
- 定義
- 概念
- 判別 - 判別分析
- 弁別 - 丁度可知差異 - 差異
- 命名 - レッテル - ラベリング理論
- Open Directory Project
- コレクション
外部リンク
- Categories (英語) - スタンフォード哲学百科事典「カテゴリ」の項目。
- Categorical Perception (英語) - スカラーペディア百科事典「カテゴリー認知」の項目。
- 範疇(はんちゅう)の意味 - goo国語辞書
範疇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 17:31 UTC 版)
至適増殖NaCl濃度の違いによって、以下4つの範疇に分けられる。ただし、この分け方はあくまで至適増殖NaCl濃度に基づいたものであり、自然環境中においては海洋細菌が淡水系で分離されるなど、数多くの例外が存在する。 非好塩菌…0-0.2 mol/dm3:ほとんどの土壌細菌が該当する。 低度好塩菌…0.2-0.5 mol/dm3:海洋細菌の多くが該当する。 中度好塩菌…0.5-2.5 mol/dm3:様々な含塩試料から分離される細菌が該当する。 高度好塩菌…2.5-5.2 mol/dm3:大半が高度好塩性古細菌に占められる(高度好塩古細菌のみを高度好塩菌とすることもある)。 高度好塩菌とされる生物には 古細菌ハロバクテリウム綱の古細菌(狭義の高度好塩菌。30属以上が含まれる) Methanohalbium evestigatum(メタン菌の一種) "Nanohaloarchaea"(未培養のユリアーキオータ) 真正細菌Actinopolyspora halophila Ecthiorhodosphira halophila Halobacteroides halobius Salinibacter ruber などがいる。 また、以下の分別法も提唱されている。 嫌塩菌…培地に塩を添加すると増殖が抑制される。(例:|Escherichia coli和名・大腸菌、) 耐塩菌…塩による抑制が弱く、10-20%の塩にも耐える。 好塩菌…塩を好む、塩の在る方が好きな菌。生理的食塩水程度の微量の塩で増殖するが、塩の添加により増殖が抑制される。(例:Vibrio parahaemolyticus、和名・腸炎ビブリオ) 高度好塩菌…高濃度の塩を好む菌。微量の塩でも増殖するが、10%程度以上の塩存在下で最適に増殖する。(例:Bacillus saliphilus、和名・バシラス属) 嗜塩菌…塩に依存する菌。微量の塩では増殖せず、少なくとも海水塩濃度(3-3.5%)以上の塩を要求する。(例:Kushneria indalinina) 極度嗜塩菌…塩中毒、塩耽溺菌とも。嗜塩菌の中でも特に塩依存度が強く、増殖に10%程度以上の高濃度の塩の添加を要求する。それ以下の濃度では瞬時に死滅するものが多い。(例:Natronobacterium gregoryi)
※この「範疇」の解説は、「好塩菌」の解説の一部です。
「範疇」を含む「好塩菌」の記事については、「好塩菌」の概要を参照ください。
範疇
出典:『Wiktionary』 (2021/07/26 12:00 UTC 版)
名詞
- (哲学) 最も基本的な、認識論上の概念のこと。人が物事を認識したり思考したりする上で、どうしてもそれに依存しなければならないような概念。「量」、「質」、「時間」、「関係」など。
- 分類上の特に大きな項目。分野。例:「生物学という範疇」。
- 任意に立てられた分類項目。種類。英語の class に相当する。(ほとんど誤用に近い用い方。)
発音(?)
- ハ↘ンチュー ハ↗ンチュー
語源
哲学用語 西洋哲学のcategory (en), Catégorie (fr), Kategorie (de) の訳語として、幕末から明治にかけての哲学者、西周が、『書経』「洪範」篇の「天乃ち禹に洪範九疇を錫う」から造語した。[1](「洪範」は天地の大法、「疇」は田畑を区切るあぜ道、の意)。
関連語
翻訳
「範疇」の例文・使い方・用例・文例
- 彼の音楽はどの範疇にも入らない
- その趣味は自己満足の範疇になり始めていると思われる。
- それは適正な範疇に入っている。
- あなたは充分可愛い女の子の範疇に入ると思います。部長のおめがねには余裕でかなってしまうでしょう。
- 彼らはその範疇に属さない。
- しかしながら、人間はなぜこれらの範疇に入ってしまうのか。
- 文法範疇 《性・数・格・人称など》.
- その問題は別の範疇(はんちゆう)に属する.
- 文法的範疇(はんちゆう) 《性・数・格・人称など》.
- どの範疇に属す
- 性は観念的な範疇であり、ジェンダーは文法的範疇である
- 1つの範疇の全てのものに共通する特質
- 種類や範疇に選り分ける基本的な認知過程
- ある事柄をより一般的な範疇に組み入れること
- 共通の特徴や質で区別されるものの範疇
- 実体の数に応じて使われる名詞、代名詞と動詞の形の文法的範疇(単数形、両数形、または複数形)
- 屈折言語の文法範疇で、名詞、代名詞、形容詞の間の一致を要求するもの
- 所定の統計の範疇における観測結果の数字
- 連歌や俳諧で,一巻中で,同じ範疇の句を続けて詠んでよい数
- その物事の範疇に属する
範畴と同じ種類の言葉
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