き‐のぼり【木登り】
木登り
『木のぼり男爵』(カルヴィーノ) 「わたし」の兄コジモは、12歳の時、父男爵から叱責されたことがきっかけで、庭の木に登り、それ以来、地面に降りることなく、ずっと木々の上で暮らした。周辺は森林地帯であり、渓流の上の2叉(ふたまた)の枝に座れば、排泄も快適だった。コジモは枝から枝を伝わって方々へ出かけ、有名人となり、ナポレオンが彼に会いに来たこともあった。月日が流れ、65歳になったコジモは、重病で死に瀕していたが、飛んで来た気球の綱につかまって、海の方へ去って行った。
★2.木登り名人。
『徒然草』第109段 「高名の木のぼり」と言われた男が、人を指図して、高い木の梢を切らせた。危険な作業をしている間は何も言わず、家の軒ほどまで降りて来た時に、「気をつけて降りよ」と声をかけた。高い木の上にいる間は、誰でも気をつける。もう安全だという所まで来た時に、あやまちはおかすものなのだ。
『鸚鵡七十話』第37話 夫が妻の不貞を疑い、樹に登って監視する。その下へ、妻が情夫と来て交わるので、夫は怒って樹から降りて来る。妻は気づいて、情夫を去らせる。夫「お前と一緒にいた男は誰だ?」。妻「それがこの樹の特徴です。この樹に登って下を見ると、1人でいても2人に見えるのです」。妻は、夫1人を地上に残して樹に登り、夫を見下ろして言う。「貴方だって、よその女と色事をしているじゃありませんか」。
『デカメロン』第7日第9話 老貴族と奥方が梨の木の下に坐っていた時、召使の青年が木に登り、「旦那様と奥様、なぜそんなみだらなことをなさるのですか?」と咎める。木から見下ろすと、2人の性交が見えるのだという。老貴族は、梨の木の不思議な作用を自分の目で確かめようと、召使と交代して木に登る。召使と奥方は、さっそく横になって性交を始める。老貴族は木の上からそれを見て驚くが、「なるほど。こういう幻が見えるのか」と納得する。
『カンタベリー物語』「貿易商人の話」 老騎士が失明したので、彼の若妻は、「少し離れた場所なら、夫にはわかるまい」と考え、庭の梨の木に登って情夫と交わる。その時、神の加護によって老騎士の眼が開き、彼は若妻と情夫の性交を見て怒る。若妻は「誰でも、眼をさましてすぐの時は日の光に慣れず、はっきり見えないものです。それと同様に、貴方は長い間盲目だったので、眼が開いても、はじめのうちは見間違いをするのです」と言いくるめ、老騎士は怒ったことを詫びる。
*木登りする女の陰部を、下から見る→〔死の起源〕4の『南島の神話』(後藤明)第3章「死の起源と死後の世界」。
『武道伝来記』巻4-3「無分別は見越の木登」 肥後の国の武士・安森戸左衛門が非番の日に、奥の間を開け放して、昼間から夫婦の交わりをする。隣の大壁源五左衛門家の中間(ちゅうげん)が、庭木に登って作業をしていてこれに目をとめ、「心地よくあそばさるるよ」と、眺めていた。安森戸左衛門は見られていることに気づき、鉄砲を取り出して、中間を射殺した〔*これがもとで両家の争いとなり、安森が大壁を斬り殺して行方をくらます。大壁の子・小八郎が成長後、仇討ちの旅に出て安森を討つ〕。
*屋根の上で働く職人が、ホテルの情事を見る→〔屋根〕2aの『屋根を歩む』(三島由紀夫)。
『しまつの極意』(落語) ケチで有名な男に、ある人が倹約の極意伝授を請う。ケチな男はその人を庭の松の木に登らせ、まず「左手を離せ」と命ずる。ついで、右手の小指、薬指、中指を順々に離させる。懸命にぶらさがる人がたまりかねて、「これ以上は離せない」と言うと、ケチな男は親指と人差し指で丸を作り、「離すなよ。これを離さぬのが、しまつの極意だ」と教える。
『無門関』(慧開)5「香厳上樹」 人が木に登り、口で枝をくわえ両手両脚を離す。その時木の下に人が来て「祖師西来意(禅の根本義)」を問う。答えねば禅者として失格であるし、答えれば木から落ちて死んでしまう。
『仙人』(芥川龍之介) 田舎者権助が仙人になろうとして、医者の家で20年間ただ働きをする。医者の女房が「仙術を伝授しよう」と言って権助を高い松に登らせ、「両手を離せ」と命ずる。離せば落ちて死ぬし、離さなければもう20年働かせようと、女房はたくらんでいた。権助が両手を離すと身体が宙に浮き、権助は「仙人になれました」と礼を述べ、雲の中へ昇って行った。
『古事記』中巻 香坂王(かごさかのみこ)・忍熊王(おしくまのみこ)兄弟が、神功皇后を討とうとして、事の成否を占ううけひ狩りをする。香坂王が櫟(くぬぎ)の木に登っていると、猪が現れ、櫟を掘って倒し、香坂王を喰い殺した。これは凶兆だったが、忍熊王は畏れず軍を進めた〔*『日本書紀』巻9神功皇后摂政元年2月の類話では、木ではなく桟敷の上で、猪に喰い殺される〕。
『古事記』下巻 ある時、雄略天皇が葛城山に登った。大きな猪が出て来たので、天皇は鳴鏑(なりかぶら)の矢で射る。猪は怒り、うなり声を上げて襲いかかった。天皇は恐れ、逃げて榛(はりのき)に登った。天皇は、「・・・病猪(やみしし=手負い猪)の うたき(=うなり声)畏み わが逃げ登りし ありを(=丘)の榛の枝」と歌った。
木登り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/02 12:00 UTC 版)
木登り(きのぼり)は、樹木を昇降する位置移動である。
- ^ ただし、木登りののちに別の木に飛行する(遠くへの移動を目的とした木登りをする)モモンガ等、必ずしも同じ木から降りるとは限らない。
- ^ 人間でも獣から逃げるため、高い木に登る話は古代から見られ、一例として、『古事記』には、雄略天皇が弓で射たイノシシが唸りながら迫って来たため、おびえて木に登った話が記述されている。
- ^ a b 酒井欣 著 『日本遊戯史』 第一書房 1983年10月 p.446
- ^ 例えば、木登りできる生物とできない生物では戦術的有利に差があることを表現した物語として、『さるかに合戦』があげられる。蟹は信用していた猿に種を落とされ、圧死するが、人であれば、投石で有利な状況に例えられる。
- ^ 宮川信一「きのぼりようきぐ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p145-146 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行
- ^ Corporation, 株式会社テレビ東京-TV TOKYO. “命懸けのギャンブル!空師の日常に迫る:運命の日~ニッポンの挑戦者たち~|テレ東プラス”. 2022年11月12日閲覧。
木登り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 04:02 UTC 版)
「スカンソリオプテリクス」の記事における「木登り」の解説
スカンソリオプテリクスの記載において、CzerkasおよびYuanは樹上性であったという証拠を挙げている。現在の全ての鳥類の雛とことなり、スカンソリオプテリクスの前肢が後肢よりも長いことに注目している。そして、筆者らはこの一般的でない特徴は成長の最初期においても移動に関して重要な役割を持っていたことを示していると主張した。化石には足の構造がよく保存されており、筆者は第一趾が対向している、つまり現在の鳥の樹上性の鳥類の多くに見られるように後を向いた状態であったと解釈した。さらに筆者らは標本の短く、硬直した尾は木登りに適応したものだと指摘した。尾は現在のキツツキのものに良く似た支柱として使われた可能性もある。またイグアナ科のトカゲのような細長い第三指を持つ現在の木登りをする種の比較からもスカンソリオプテリクスが木登りをしたとする仮説が支持される。実際、スカンソリオプテリクスの手は雛が木登りをする現在の鳥類であるツメバケイのものよりはるかに木登りに適応している。 エピデンドロサウルスもまた細長い手と特異な足に基づいて樹上性であると解釈されている。記載者は長い手と曲がった鉤爪は木によじ登り枝の中を移動するの適応していると言及している。筆者らの意見では鳥類の翼の進化の初期段階において、前肢が木登りのためによく発達した状態になり、この発達がのちに飛行を可能とする翼の進化へとつながったとしている。飛ぶことの出来る鳥の手は比較的短いため、長く、ものをつかめる手は飛ぶことより木に登ることに適していると言及している。 Zhang et al.はまたエピデンドロサウルスの足は非鳥恐竜の中では特異であることに注目した。エピデンドロサウルスの標本には現在の木にとまる鳥類の持つ後を向いた趾のような第一趾は保存されていなかったものの、エピデンドロサウルスの足はカタイオルニス(英語版)やロンギプテリクス(英語版)のような原始的な木にとまる鳥類のものと非常に似た構造をしていた。四肢すべてにものをつかむ能力がある適応からエピデンドロサウルスが顕著に樹上性であった可能性が高い。
※この「木登り」の解説は、「スカンソリオプテリクス」の解説の一部です。
「木登り」を含む「スカンソリオプテリクス」の記事については、「スカンソリオプテリクス」の概要を参照ください。
「木登り」の例文・使い方・用例・文例
- このサルは長いしっぽを使ってじょうずに木登りができる
- 彼女は木登りが得意である。
- 子供たちは木登りが好きです。
- これらの動物は皆木登りが上手である.
- 子どもの頃僕は木登りが好きだった.
- 猿のように木登りする
- 木登りしてころがり落ちた
- 木登りしてころげ落ちる
- 猿は木登りが上手だ
- 猿に木登りを教える
- たいてい、木に穴をあける強力なくちばしを持つ、非常に多くの非スズメ類の食虫性木登り鳥類各種
- 木登り用の強い爪と固い尾を持ち、昆虫を捕るために木に穴をあけるノミのように固いくちばしを持つ鳥
- 長い毛のふさふさした尾を持つ一種の木登り齧歯動物
- インドネシア・フィリピン産の巨大な眼と木登りを容易にする肉趾が指先にある夜行性・樹上性の霊長類の動物
- 木登りカンガルーという動物
- 木登りをさせる
- 木登り魚という魚
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