自己紹介
東京国際工科専門職大学デジタルエンタテインメント学科CGアニメーションコース三年の小松章人と申します。ゲーム業界のリギングアーティストを目指して勉強しています。
手付けのリギングを専門的に学び始め、約4ヶ月ほどになります。本書の第二版は、私がリギングを学ぶ上で参考にした書籍のひとつです。リギングの基本を学ぶ際に評価の高い本書ですが、新改訂版が出版されるということで、書評を書かせていただくこととなりました。
本書の全体構成
3rd editionでは、全編の文章見直しを含め、レイアウトの調整がなされたほか、Chapter20が【クイックリグ】→【リグの並列処理】へと変更されています。
Part I 基本コンセプト
Chapter 1 プロップ、ピボットポイント、階層
Chapter 2 デフォーマ
Chapter 3 ユーザコントローラ
Chapter 4 ユーティリティノードとカスタムアトリビュート
Chapter 5 ジョイント
Chapter 6 ブレンドシェイプとドリブンキーの設定
Part II 二足歩行
Chapter 7 スケルトン
Chapter 8 スキニング
Chapter 9 上半身、下半身、ルート
Chapter10 足とひざ
Chapter11 背骨と首
Chapter12 腕、肘、鎖骨
Chapter13 手
Chapter14 目、まばたき、表情
Chapter15 マスターコントローラとスケール機能の追加
Part III 高度なトピック
Chapter16 ジンバルロック
Chapter17 高度なコントローラ
Chapter18 伸縮性
Chapter19 ブロークンリグ
Chapter20 リグの並列処理
本書では、サンプルデータをダウンロードして実際にリグを組みながら進めていきます。
歯ブラシなどの小物やシンプルなキャラクターから基本を学び、二足歩行の鳥へと段階的にリギングを学んでいきます。データはセクションに分けて細かく用意されており、正しく実装できているかを確認しながらリギング作業に取り組むことができます。「扱いやすい単位に分割し、1つづつ克服する」という考え方の元、理解することに重点置かれています。
はじめにノードの基礎に関して記述されているほか、専門用語やツールのオプションについても詳しく説明されています。「なぜそれを選択したのか」といった理由についても丁寧に述べられており、手順を追うだけにならず、応用がしやすい知識が身に付きます。鳥のリギングでは、二足歩行の人型とも比較しながらアニメーションのパイプラインについても取り扱い、プロジェクトの進行についても学びます。
IKとFKの切り替えに関してはIKブレンドを用いたシングルチェーンでの実装が記述されています。個別に分けたIKとFK用のジョイントで制御するトリプルチェーン方式での実装手段が多く見られますが、こちらを丁寧に解説していることも特徴的だと感じます。
3rd editionについて
第二版において、Chapter20ではhumanIKに関して述べられていましたが、前述の通り【リグの並列処理】と題してリグの高速化がテーマとなっています。オフセット親行列を用いたコンストレイントや、コントローラーの評価のスキップ、プロファイラを用いたリグの評価などが扱われています。これまでの知識をベースに、プロジェクトでの実用を視野に入れたチャプターであると感じました。
また、Chapter 2 デフォーマ :エッジループ セクションでは、脚の関節を題材とした具体的な事例が追記されたほか、トポロジーについてより視覚的に理解するための参考教材が紹介されています。2ページ程度の変更ですが、人体の作成に関心のある学生にとって大きな変更であったように感じます。
視覚的により読みやすい書籍になったとも感じます。基本の文字ははっきりと、太字はより強調されそれぞれのトピックは色分けされるといったように変更がなされています。文章が多いリギングの書籍において、大きな利点だと感じました。画像やレイアウトも更新され、学習が進めやすくなったと感じます。
本書の対象読者は、リギングアーティストのみではありません。まえがきには著者の目標として「プロジェクトでちょっとしたリグを作成できるようにすること」「将来、キャラクターセットアップアーティストと一緒に仕事ができるようにすること」「リギングは難しい作業であり、上手くアニメートさせるには正しいセットアップが必要であると理解すること」とあります。前半ではキャラクターセットアップを理解したいモデラーやアニメーター、リギングの初学者に向けた内容を扱い、書籍の後半では高度なトピックと題してシンバルロックやスクリプトについても扱います。
新改訂版となり、より高度な学びに繋げやすい内容になったと感じます。キャラクターセットアップに興味を持つ方におすすめできる書籍です。この度は書評の機会をいただき、誠にありがとうございました。