tag:blogger.com,1999:blog-58743245511182943602024-12-11T09:28:27.972+09:00IGDA日本アカデミック・ブログIGDA日本のアカデミックブログです。研究・教育・人材育成・学会動向といった学術系情報を発信・蓄積していきます。ゲーム産業における学から産の、風とおしのよい窓口になればと思います。学術活動の情報発信でIGDA日本に協力して頂ける方は、IGDA日本(academic(アットマーク)igda.jp)担当山根までご連絡ください。また、ゲーム関係者は、是非、ご講読して役立ててください。また気軽にコメントください。それでは、よろしくお願いします。 ※このサイトに書かれている内容は、各執筆者の個人的な意見・見解であり、IGDA日本の公式な意見ではありません。y_miyakehttp://www.blogger.com/profile/07521505108737797042[email protected]Blogger105125tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-84030351433587526632024-03-26T17:08:00.011+09:002024-03-30T18:34:23.159+09:00ゲームデベロッパーが地球温暖化に取り組む理由: 2022-2024<p> 主筆の山根です.私事ですが,この4年間はゲーム開発者の専門職大学の立ち上げに参画しました.そのためこの4年間は学術論文よりも,翻訳・対談・一般書を主にやってきましたが,最初の卒業生を送り出したことで,2024年度からはゲームの高度専門家人材育成を大学から日本全国へと広げていきたいと考えています.今回はその<b>次世代ゲーム開発者を待っている問題</b>の一つとして,2022年から起こっているゲームデベロッパーの環境問題への取り組みを,GDCなどの国際的な変化を中心に紹介します.&nbsp;</p><p><span></span></p><a name='more'></a><br /><p></p> <p> GDC(Game Developers Conference)は世界最大のゲーム開発者のカンファレンスで(2024年だけで<a href="https://gdconf.com/news/gdc-2024-saw-nearly-30000-attendees-game-industrys-premier-event" target="_blank">講演者1,000人,730セッション</a>に達する),その動向は国内各社が注目しており,開催後の情報交換も盛んに行われている.たとえば本ブログの本家である「NPO法人IGDA日本」でも,日本からの参加者による帰国報告会を開催してきた(<a href="https://www.igda.jp/2023/04/24/13735/" target="_blank">昨年の様子</a>),また過去には開発者向けだけでなく,<a href="https://old2014.igda.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&amp;storyid=734" target="_blank">学生向け報告会</a>やSIG-Audio(<a href="http://igdajaudio.blogspot.com/2012/04/sigaudio-pre0.html" target="_blank">2012</a>から <a href="https://www.igda.jp/2023/05/02/13745/" target="_blank">2023</a>まで継続中)など専門部会ごとの報告会も開催してきた.世界中のゲーム開発者が注目するイベントだといえる. </p> <p> さて,そのGDC主催者が近年力を入れているのが<b>ゲーム産業のサステナビリティへの取り組み</b>に関するセッションだ.昨年のGDC23でも,環境問題セッションが連日開催され,GDC主催者からの公式ニュースでも報じられた.以下に関連する公式英語ニュースを並べてみる. </p> <ul> <li><a href="https://gdconf.com/news/gdc-2023-session-guide-diversity-accessibility-sustainability-and-employee-advocacy" target="_blank">GDC 2023 Session Guide for Diversity, Accessibility, Sustainability, and Employee Advocacy</a>(February 3, 2023)<br /> GDCのセッションの中から「Sustainability and Accessibility Sessions」として気候クライシス,気候ゲームなどのセッションを案内. </li> <li><a href="https://gdconf.com/news/these-popular-community-spaces-are-returning-gdc-2023">These Popular Community Spaces Are Returning to GDC 2023</a>(March 1, 2023)<br /> 毎年ゲーセンコーナーやボードゲームラウンジを設置してきたコミュニティスペースに「Climate Resilience Through Game Technologies」コーナーを新設するという発表.(<a href="https://twitter.com/Official_GDC/status/1639053193262039043" target="_blank">期間中の写真</a>)</li> <li><a href="https://gdconf.com/news/gdc-loves-planet-look-our-ongoing-sustainability-efforts" target="_blank">GDC Loves the Planet! A Look at Our Ongoing Sustainability Efforts</a>(April 20, 2023)<br /> GDC終了の翌月4月の発表.GDC23での気候問題セッションの動画公開(日本語自動翻訳字幕付き)のお知らせ. </li> </ul> <p> こうしてGDC23では,気候変動ゲームや温室効果ガス排出量を減らすゲーム開発について連日セッションがあり,しかも教育サミット,ワークショップ,デザイントラック,ラウンドテーブルと異なるアプローチで展開された.講演者の顔ぶれも,大手スタジオUbisoftからインディーゲームスタジオまで幅広い立場での参加が報告されている.そうした講演がネットで無料公開されたのだからインパクトは大きい.しかし,ここまで立て続けに配信されると「うまくいきすぎる」「これは本当に各社独自の取り組みなのか?もしかして誰か(たとえば石油業界に敵対する勢力)が後ろから手をまわして仕組まれた運動なのではないか?」という<b>陰謀論めいた疑念</b>も湧いても不思議ではない.だがこの運動の背景やキーパーソンはGDC23終了後の海外ゲームメディアの報道によって明らかになっている.この記事にもとづいて背景を紹介したい. </p> <p> この解説記事は日本語訳もされており,David Lumb「<a href="https://japan.cnet.com/article/35204246/" target="_blank">ゲーム業界の目覚め: ゲームが気候変動のためにできること</a>」(CNET News,  2023年05月30日訳)として読むことができる.GDC23での同時多発発表を担った,ゲーム業界と国連機関とが連携した「Playing for the Planet Alliance」,IGDAに新しくできた気候変動SIG(専門部会)のキーパーソンに出てきて参考になった.なお本アカデミック・ブログの観点から興味深かったのは,記事の中でアカデミックなゲーム研究者が発言しているところだ.このままでは温室効果ガス削減の「目標は達成できない」,と指摘するスウェーデンのウプサラ大学のPatrick Prax准教授が登場するが,筆者は以前から彼の名前は知っていた.ICD-11にgaming disorderの項目が立てられることになったときの<a href="http://igdajac.blogspot.com/2022/11/blog-post.html" target="_blank">公開論争</a>で共同声明に加わった一人だ.彼はゲーミング障害と地球温暖化という異なる問題で積極的に発言しているが,それができるのは,彼が日常的に心理学や自然科学の専門家と交流しつつゲームを研究していることを意味している.これは専門職大学や単科大学ではなく,総合大学で学際研究をやっているゲームデザイン研究者の強みだろう(個人ベースでやっている日本の研究の弱いところでもある). </p> <h3>GDC23から見える日本の上場企業の課題</h3> <p> こうしたキーパーソンの活躍によりGDC23では気候変動についての講演やワークショップが連日開かれたが,開催当時は筆者も<b>自分のこととは考えられず,他人事としてしかとらえられなかった</b>.2023年時点では恥ずかしながら「世界的なゲーム企業に勤めながらグローバル問題を講演するのはすごいなあ」「カリフォルニアは山火事が続いているから旬の話題ではやっているのだろうなあ」「北欧はエコロジー意識高いなあ」といった漠然とした印象しか持っていなかった.気候変動が日本の産業にとっても重要な問題だと実感したのは2024年になってから,日本の上場企業の取り組みを知ってからのことだ. </p> <p>2024年,金融庁は東京証券取引所プライム上場企業を対象に<a href="https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240219/k10014363771000.html" target="_blank">温暖化ガス排出量の開示の義務づけを目指している</a>.このニュースで,ようやくGDC23で大手スタジオの現場トップが排出ガス削減に貢献しようとゲーム産業に呼びかける講演をしていたのか理解できた.日本のゲーム産業も大手企業は東証プライムに上場しており(gamebiz<a href="https://gamebiz.jp/news/341763" target="_blank">記事</a>参照),国際的な投資家の評価基準を受けいれるためにも地球温暖化対策への貢献を計量的に示す義務を避けて通ることはできないだろう.東証プライム上場をとりやめるという選択肢もあるが,ゲーム業界ではそれはないだろう.かつてビデオゲーム産業の歴史が浅く社会的な評価が高くなかった時代,東証1部に上場することがゲーム会社にとって社会的信用のステータスだった時期がある.個人的には東証プライム上場もこの再現になり,ゲーム会社は積極的に温暖化ガス排出量規制に率先して取り組んで社会的信用を高めようとするるだろうと予想している. </p><h3>ゲーム業界団体の変化</h3> <p> ここまではUbisoftやIGDA気候変動SIGの個別事例を見てきたが,ゲーム産業を代表する業界団体の取り組みはどうだろうか.これまで「ゲームは脳に悪い」と<a href="http://igdajac.blogspot.com/2010/03/blog-post.html" target="_blank">決めつけられてきた歴史</a>を持つビデオゲーム業界は,<b>今後「ゲームは環境に悪い」と叩かれるのは容易に予想できる</b>ので,ゲーム業界として具体的な代表例を示す取り組みが重要になる.この点でもっともデータを活用した情報発信を行っているのは,ヨーロッパ各国のゲーム産業団体があつまった<b>Video Games Europe</b>だ.GDC23でも登壇した国連プロジェクトPlaying for the Planetとも協力し,<a href="https://wedocs.unep.org/20.500.11822/45229" target="_blank">年次報告書</a>では任天堂やUbisoftやXboxの地球温暖化ガス排出量からゲームを使って世界をよりよくする試みまで,実例がわかりやすく報告されている.ヨーロッパのゲーム業界団体は,<b>ゲーム産業は地球温暖化に貢献できる</b>と主張している.この中には日本企業の海外法人も含まれており,この取り組みを日本国内でも展開することはゲーム産業の社会的信用を担う上で今後の重要課題になるだろう.&nbsp;</p><p> こうした企業団体が参加することで,<a href="https://www.playing4theplanet.org" target="_blank">国連プロジェクトPlaying for the Planet</a>は初心者にも参考になるウェブサイトをつくっている,プロのゲーム開発者やIGDA気候変動SIGによるゲームデザインといったGDCで発表された取り組みだけでなく,多数のゲーム活用の手引きの<a href="https://www.playing4theplanet.org/resources" target="_blank">集積地</a>になっている.こうした初心者向けのウェブサイトはこれまで業界向け情報を共有してきたゲーム業界だけでなく,より広い層に働きかける活動機関との協力で可能になる.そして情報共有からさらに進んで,気候変動<b>ゲームジャムの開催</b>もはじまった.いまはまだ英語だけだが,こうして参加の障壁も低くなっている.</p> <h3>シリアスゲーム参入の変化</h3> <p> ここまで見たように,上場企業の評価に温暖化ガス排出量が使われることで,ゲーム開発とサステナビリティの関係も大きく変化しはじめている.私自身も,GDC23では「Ubisoftの現場リーダーが気候変動ゲームのデザインを講演している,意識高いなあ」と思うだけだったが,いまでは「Ubisoftは開発者が社会に向けてサステナビリティに取り組むのを企業として後押ししているのだなあ」という違った見方をするようになった.つまり,これまでは「大企業は手を出さない」と思われていた領域に大企業が取り組むことを理解できるようになった.この変化は,いちはやく環境問題に取り組んできたインディーゲームやシリアスゲームのシーンにも変化をもたらすかもしれない. </p> <p> これまでシリアスゲームは「大企業がやらない分野」だからこそ,スモールビジネスや大学が大企業を出し抜ける分野だと言われてきた.たとえば十数年前の計算機学会ACMの会報特集序文 <a href="https://doi.org/10.1145/1272516.1272535" target="_blank">「ゲーム学の創造」(CACM日本語版 Vol.7, No.2, 2007)</a>では,ゲーム企業の経営者や株主代表者は,娯楽以外の儲からないゲームをつくることに反対していると指摘している.だからこそ,コンピュータ分野の学者は社会のためのゲームをつくるという社会的な責任を担っているのだと主張している.この主張はのちに「インディーゲームは,大企業がやらないテーマを追求できる」という形で,インディーゲームシーンともつながっていく.(そうしたゲーム開発者間の自己主張が一般にも知られるようになったのがテレビドラマ『<a href="https://www.su.cit.nihon-u.ac.jp/index.php/en/newsarticle/323-2022-the-child-of-atom.html" target="_blank">アトムの童</a> 』におけるシリアスゲーム回だろう.)だが,ここまで見てきたように,シリアスゲームの中でも地球環境問題については,もはや「大企業や株主代表は社会問題解決に取り組むインセンティブがない」とは言えなくなっている.そしてプロのゲーム開発者による気候変動ゲームを開発する手引きやワークショップも継続して開かれるようになり,大企業,大学,シリアスゲーム,インディーゲームのシーンが重なる領域が生まれている. </p> <h3>そしてGDC24以後の世界へ</h3> <p> ここまで,トップ企業のゲーム開発者が地球温暖化対策に取り組みはじめた背景を紹介した.これは<a href="https://gdconf.com/news/gdc-loves-planet-look-our-ongoing-sustainability-efforts" target="_blank">GDC</a>や有志による<a href="https://www.igdaclimatesig.org/" target="_blank">IGDA気候変動SIG</a>を舞台にして発展してきたために日本語での紹介記事は<a href="https://japan.cnet.com/article/35204246/" target="_blank">限られていた</a>が,業界団体や国連プロジェクトをはじめ産学民のゲーム開発者コミュニティを横断するグローバルな運動に成長したことがわかった.日本ではまだこの運動は知られておらず,SDGsはゲーム開発者の問題ではなくゲーム会社の経営者の問題でしょうという見方が根強い.(たとえば日本版GDCとも言えるCEDEC2024では,<a href="https://cedec.cesa.or.jp/2024/interview/detail/BP/" target="_blank">ビジネス&プロデュース分野の話題</a>にはなっているが,GDCのように複数の分野で活動が進んでいるわけではない.) 筆者はIGDA日本でも日本国内でのゲーム開発者の取り組みに貢献したいと考えているので,日本国内で情報共有を希望する方はぜひコンタクトしたり本記事で紹介したコミュニティに参加してほしい. </p> <p>&nbsp; 今月3月に開催されたGDC2024での環境問題セッションは以下のとおり.GDC23では(冒頭でも触れたように)開催後1ヶ月程度で講演動画がYouTubeで<a href="https://www.youtube.com/@Gdconf" target="_blank">公開</a>されたが,同様にGDC24でも4月に講演が公開されることを期待している.</p> <ul> <li>ワークショップ部門: <a href="https://schedule.gdconf.com/session/climate-crisis-workshop-use-your-game-developer-superpowers-to-fight-the-climate-crisis/902716" target="_blank">Climate Crisis Workshop: Use Your Game Developer Superpowers to Fight the Climate Crisis</a></li> <li>ゲーム教育サミット: <a href="https://schedule.gdconf.com/session/educators-summit-prototyping-afrofuturism-abolitionism-and-climate-justice-through-games-education/902418" target="_blank">Prototyping Afrofuturism, Abolitionism, and Climate Justice Through Games Education</a></li> <li>ラウンドテーブル部門: <a href="https://schedule.gdconf.com/session/building-a-climate-resilient-games-industry-roundtable-collaborations-between-developers-scientists-and-industry-partners-presented-by-the-igda/903254" target="_blank">Building a Climate Resilient Games Industry Roundtable: Collaborations Between Developers, Scientists, and Industry Partners</a> (IGDA提供)</li> <li>アドボカシー部門: <a href="https://schedule.gdconf.com/session/concrete-climate-action-in-the-games-industry-what-should-your-studio-do-today/899758" target="_blank">Concrete Climate Action in the Games Industry: What Should Your Studio Do Today?</a></li> </ul> 以上S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-13463616358431560222024-01-05T20:36:00.019+09:002024-01-20T18:14:04.956+09:00Global Game Jam 2024 プレビュー: オフィスで,学校で,民家で,病院でゲーム開発<p> あけましておめでとうございます.<br /> 2024年1月の「令和6年能登半島地震」で被災された方々にお見舞い申し上げます.北陸地域は個人ゲーム開発に縁がある地域で,国内でもいちはやくゲームジャムを開催した石川県の<a href="http://igdajac.blogspot.com/2010/04/global-game-jam-2010.html" target="_blank">Global Game Jam 2010</a> JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)会場や,富山県魚津市の「UOZUゲームジャム」「<a href="https://www.igda.jp/2021/12/22/12101/" target="_blank">デジタルからくり装置作りワークショップ</a>」,名物にちなんだ『カニノケンカ』eスポーツイベントで知られる富山県射水市の「ToyamaGamersDay」と,ゲーム関係者がいくつもの足跡を残しており,無事を祈っています.<br /> 本記事では,1月末のGlobal Game Jam2024を展望します.&nbsp;</p><a name='more'></a>&nbsp;<p></p> <h3>コロナ禍から復活したGlobal Game Jam国内会場</h3> <p> 世界同時多発ゲーム開発イベント,Global Game Jamが今年も開催される. Global Game JamはIGDA Education SIGが立ち上げたという歴史的経緯から,IGDA日本支部では<a href="https://ggj.igda.jp/" target="_blank">日本語サイト</a>をホストするとともに,<a href="http://igdajac.blogspot.com/search/label/GGJ" target="_blank">本アカデミックSIGブログ</a>ではGlobal Game Jamの情報を紹介してきた.その本ブログでは昨年のGGJ23報告で「<a href="http://igdajac.blogspot.com/2023/01/ggj23.html" target="_blank">対面会場が帰ってきた</a>」と書いたが,今年はさらに全国各地の会場が充実しているので本ブログでも紹介したい. </p><h3>GGJ24までの日程</h3> <a href="https://globalgamejam.org/important-dates" target="_blank">GGJ24の日程</a>を以下に示す(米国太平洋時間). <ul> <li>6 November 2023: サイト登録受付開始 </li><li>4 December 2023: 参加者のサイト登録受付開始 </li><li>15 January 2024: サイト登録受付終了(予定) </li><li>15 January - 19 January 2024: GGJ 直前週間(本部イベントが予定されている) </li><li>20 January 2024: 全世界同時テーマ発表(Twitch配信) </li><li>22 January 2024: GGJ開始.(会場ごとにこの週で48時間を使ってゲーム開発する) </li><li>28 January 2024 - 正午(現地時間)に参加者のサイト登録受付終了 </li><li>28 January 2024 - 夕方5時(現地時間)までにゲームアップロード終了 </li></ul> <h3>参加心得</h3> <p>GGJでは,誰もが安心してゲーム開発ができる場を目指している.そのために<a href="https://globalgamejam.org/ja/ggj-baokuoxinghorishitoxingdongguifan" target="_blank">インクルージョン・ポリシーと行動規範</a>を定めており,セクシズム,レイシズム,人種差別を含むあらゆる排除を容認していない.それらを含むゲームは削除される.また,開発中に許容されない行動の対象となったり,そのような行動を目撃したり,それらに関する懸念事項があったりした場合は通報することができる.そして会場運営者は許容されない行動をとったメンバーを排除することができる. こうした場作りのコードにみられるように,GGJは,初対面のメンバーとでも安心してゲーム開発ができることを強く意識している.こうしたコードは国内のゲームジャムにはあまり見られないので,忘れないようにしてほしい. </p> <h3>国内会場の紹介</h3> 以下では,国内の各会場を紹介する.IGDA日本の<a href="https://ggj.igda.jp/" target="_blank">公式日本語情報</a>とは別に,一言紹介を追加する. <dl> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/ggj-2024-okinawa" target="_blank">沖縄会場</a></dt> <dd>IGDAの学生チャプターであるIGDA琉球大学が主催する.学生主体だと数年でメンバーの入れ替わりが起こるが,その困難を乗り越えてきた.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/ggj-okutamaaoduomo-vol3" target="_blank">奥多摩会場</a></dt> <dd>奥多摩会場は秘境での開発をコンセプトとして今年で第3回を迎える.3回目ながら経験も豊富で,昨年のGGJ23ではチームの一つがGGJ終了後もボードゲームの開発を続け,<a href="https://www.kickstarter.com/projects/nekoten/rootile" target="_blank">Kickstarter</a>で製品版の出資者を募って達成している.秘境の古民家でゲームを開発してグローバルに購入者を募るというギャップがすごい.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/globalgamejam-kichijoji-pickle" target="_blank">吉祥寺(ぴっくる)会場</a></dt> <dd>主催は<a href="https://www.igda.jp/2023/05/26/13760/" target="_blank">学生チーム対抗ゲームジャム2023</a>を開催した有限会社ぴっくる.会場はオンラインセッションと武蔵野公会堂での週末オフライン開発とで構成される.まだ承認直後で,詳しい説明はこれから.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/luerdaohuichang" target="_blank">鹿児島会場</a></dt> <dd>鹿児島のゲーム開発会社,<a href="https://haru-ni.net/business/" target="_blank">アプリファクトリーはるni</a>が主催する会場.本記事の執筆時点ではまだ承認直後で詳しい説明はこれからのようだ.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/ggj2024-nagoya-nagogebu" target="_blank">名古屋 名古ゲ部会場</a></dt> <dd>名古ゲ部(旧名:名古屋ゲーム制作部)が主催するゲームジャム.GGJではあまり見られない一人での開発もOK.会場にはレトロPCも持ち込まれるようだ.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/ggjhumanakihabara" target="_blank">ヒューマンアカデミー会場(秋葉原)</a></dt> <dd>総合学園ヒューマンアカデミー秋葉原校を会場に,第二言語英語も受け入れ,見学やテストプレイでの参加も歓迎するオープンな会場.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/global-game-jam-fukuoka" target="_blank">福岡会場</a></dt> <dd>福岡会場は,過去には<a href="https://www.flickr.com/photos/pumpkinkaneko/5456001892/" target="_blank">市長が開発中の会場を訪れる</a>などオープンな雰囲気だったが, 今回は基本的にオンラインでDiscord上で作業を行い,最終日だけは福岡市天神のエンジニアカフェで行うという,事前に48時間スケジュールを立てていない会場.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/kumamoto" target="_blank">熊本会場</a></dt> <dd>熊本会場は,事前に<a href="https://kumamoto-creators-guild.connpass.com/event/304243/" target="_blank">Unity勉強会</a>を開いて資料も公開するなど,今年のGGJに向けて力をいれているようだ.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/lets-games-tokyo-formerly-roppongi-code-chrysalis" target="_blank">Let's Games! Tokyo(六本木会場)</a></dt> <dd>以前はCode Chrysalis名義で開催されていた六本木会場は日本語&英語の両方で参加説明を書いている国際的な会場で,インディーゲーム開発者の集まるTokyo Indiesでも主催者が日本語と英語の両方で参加募集を呼びかけている(11月のTokyo Indies動画(01:36:40-01:42:05) https://www.twitch.tv/videos/1977976479 )</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/nekologic-c2-kyoto">NekoLogic &amp; C2 京都会場</a> <strong>[NEW]</strong></dt> <dd>1月になって承認された京都会場は英語表記のみ(日本語も受け入れ可能),インディーゲームスタジオが主催するインターナショナルな会場だ.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/sapporo" target="_blank">札幌会場</a></dt> <dd>札幌は夏に<a href="https://ggjsap.doorkeeper.jp/events/156445" target="_blank">Sapporo Game Jam</a>,冬にGlobal Game Jamを開催する日本屈指のゲームジャム熱狂地帯であり,GGJ24でも日本で1,2を争う参加者が集まると予想される.Global Game Jam 2011で北海道大学の学生がはじめた会場が地域社会に根付いてゲームジャムコミュニティが続いているのは素晴らしい. 昨年のGGJ2023では,高評価を得たプロトタイプがボードゲーム<a href="https://twitter.com/unetotane/status/1675122959017725953" target="_blank">『ぼうけんのしょはきえてしまった!』として製品化</a>された. </dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/sendai" target="_blank">仙台会場</a></dt> <dd>Global Game Jamの歴史で断続的に開催されてきた仙台会場だが,今回は企業オフィスで開催され,しかも<a href="https://www.infiniteloop.co.jp/pr-blog/2023/12/globalgamejam2024/" target="_blank">札幌会場の事務局をつとめた企業が仙台で会場提供をする</a>,という広域(mega-region)展開の形態をとっているのが注目される.IT産業は地域に閉じない広域産業の例として挙げられるが,ゲームがそれをリードしていくかもしれない.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/global-game-jam-2024-fukushima" target="_blank">福島会場</a> <strong>[NEW] </strong></dt> <dd>久しぶりの開催となる福島会場は,郡山市のWiZ専門学校で開催される.過去には<a href="https://wiz.ac.jp/2013/01/28/48%E6%99%82%E9%96%93%E3%81%A7%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%92%E5%89%B5%E3%82%8B%EF%BC%81%EF%BC%9F/" target="_blank">東北地方唯一のGlobal Game Jam会場を開催した会場</a>でもあり,東北地方でもゲームジャム会場が復活したことを印象づけている.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/ggj2024mydearest-qiancaoqiaohuichang" target="_blank">MyDearest 浅草橋会場</a> <strong>[NEW] </strong></dt> <dd>VRノベルゲームで知られるゲームスタジオMyDearestが会場となる浅草橋会場は,これまでにも「<a href="https://effectorhack.connpass.com/event/156632/" target="_blank">VR、XR、LookingGlass、ちょっと変わった普通?のゲーム</a>」などポリシーを明確にしたり,<a href="https://effectorhack.connpass.com/event/198248/" target="_blank">NeosVRを使ってバーチャルリアリティー空間での開催に挑戦</a>したりと,挑戦的な参加者募集を行ってきた.そしてGGJ24ではついにMyDearestメンバーのみの社内GGJ会場として参加している.会場時間も10:00 - 19:00と普通の会社勤務の時間帯だ.社員限定でGlobal Game Jamをやる場合,通常の社内ゲームジャムでは得られない海外ゲーマーへのプロモーションの経験を積んだり,海外会場とのグローバル開発体験が積めるが,どのような経験を目指しているのか,公開されるプロの作品を楽しみにしたい.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/setouchi-kagawa" target="_blank">瀬戸内会場 in 香川</a></dt> <dd>上記の札幌〜仙台会場について述べたように,Global Game Jam会場によって広域産業のつながりが見えることもある.そしてGlobal Game Jamの広域展開と言えばこの瀬戸内会場だろう.まず<a href="https://note.com/unityjapan/n/n2621491f8b9c?magazine_key=m1218c4c0aa71" target="_blank">岡山Unity勉強会</a>が岡山会場をたちあげ,<a href="https://note.com/unityjapan/n/n075e772cb3c6?magazine_key=m1218c4c0aa71" target="_blank">広島Unity勉強会</a>,そして四国の<a href="https://note.com/unityjapan/n/nfc87f5d769fc?magazine_key=m1218c4c0aa71" target="_blank">讃岐GameN</a>と連携してきた.コロナ禍からいちはやくゲームジャム会場を開き(参考情報: <a href="https://www.slideshare.net/syamane/igdaj2022lightningtalkgamejam" target="_blank">IGDA日本ライトニングトーク</a>),岡山Unity勉強会は開催100回を超え,これまでもゲームジャム事前勉強会を共同開催して資料も公開してきた(<a href="https://okauni.connpass.com/event/234748/" target="_blank">2022</a>, <a href="https://hirouni.connpass.com/event/288332/" target="_blank">2023</a>).<br /> 瀬戸内会場は開催形態もユニークで,<a href="https://v3.globalgamejam.org/2020/jam-sites/setouchi" target="_blank">GGJ20では真宗興正派 善照寺というお寺で開催</a>されたり,<a href="https://twitter.com/shinjiyamane/status/1543507114202906624">地元香川県高松市の商店街で開かれたイベントにGGJ22発の作品が出展される</a>など,地域社会に根ざしたGGJ会場の形を提示してきた.そして今年のGGJ24では,「GGJの日本会場では初めて「総合病院」で開催決定!2024年に医学とゲームの最先端が交わる場所が、この「香川県」で産まれます」という国内ゲームジャムの常識を塗りかえるコンセプトで瀬戸内地方内外から参加者を募集している.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/laihuneihuichang-guangdao" target="_blank">瀬戸内会場 in 広島</a></dt> <dd>上記の瀬戸内会場 in 香川は定員30名と限られており,広島にサテライト会場が開設されている.<a href="https://note.com/unityjapan/n/n075e772cb3c6?magazine_key=m1218c4c0aa71" target="_blank">広島Unity勉強会</a>を中心としながらも,小規模でも広域でのゲームジャムのもりあがりが期待される.</dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/shohoku-college" target="_blank">湘北短期大学(厚木)</a></dt> <dd>湘北短期大学会場はGGJの国内会場の中でも古株の会場で,ゲームジャムの短期ゲーム開発を学校教育とうまく組み合わせてきた.これはこれはゲーム開発を教育にとりいれるだけでなく,施設利用を許可してくれる大学組織,そして会場責任者として毎年常駐する教員が勤め続けている大学でないとできないことだ. </dd> <dt><a href="https://globalgamejam.org/jam-sites/2024/tokyo-university-technology" target="_blank">東京工科大学(八王子)</a></dt> <dd>最後に紹介する東京工科大学会場(八王子)は,Global Game Jamの国内会場の中でも最多の開催数を誇るゲームジャム拠点だ(参考資料: 大学プレスリリース<a href="https://www.teu.ac.jp/press/2023.html?id=21" target="_blank">「メディア学部が「グローバルゲームジャム」に14年連続参加」</a>).とりわけ最初の年は,学生有志が開催前から特集番組配信を行い,それを見た水口さん平林さんが来校してゲリラ深夜番組を配信するという<a href="https://www.famitsu.com/guc/blog/shin/4906.html" target="_blank">USTEAMのライブランキングでトップ10位内に入るメディアイベント</a>になっていたのは忘れ難い.今年も会場配信には注目したい.<br /> 東京工科大学会場は参加報告も多く,<a href="https://www.4gamer.net/games/032/G003263/20110630096/" target="_blank">GTMF 2011</a>で大前さんが,<a href="https://www.4gamer.net/games/144/G014496/20120823091/" target="_blank">CEDEC 2012</a>で後藤さん湊さん石川さんが,<a href="https://techblog.sega.jp/entry/2017/05/26/100000" target="_blank">SEGA Tech Blog</a>で石畑さんが,それぞれGGJ東京工科大学会場(および夏の福島ゲームジャム)で挑戦した試みとその成果を社内外に共有している. </dd> </dl> <h3>国内会場の先に</h3> <p> ここまで,<a href="https://ggj.igda.jp/" target="_blank">GGJ日本語情報サイト</a>にはない補足情報を紹介した.参加する国内会場選びの参考にしてほしい.これらの国内会場に参加する以外にも,過去の<a href="https://igdshare.org/content/faust-li-forever" target="_blank">台北会場</a>や最近の<a href="https://www.kcg.ac.jp/news/2023/06/48453/" target="_blank">京都コンピュータ学院(KCG)</a>のように,日本から(日本語が通じる)<b>海外会場に参加してグローバル開発に挑戦する</b>ことも可能だ.&nbsp;</p><p>&nbsp;<a href="https://globalgamejam.org/" target="_blank">公式ウェブサイト</a>には各種情報がまとめられているが,日本語では <a href="https://discord.gg/Trvt8yU" rel="nofollow" target="_blank">Official GGJ Discord</a> の「Game Jam Discussion」から「日本語」のサーバに接続すると日本語での情報交換をすることもできる. <br /></p> また,Xのハッシュタグ#GGJ, #GGJJP, #GGJ24 をつけた日本語ツイートは<a href="https://togetter.com/li/2257753" target="_blank">ツイートまとめサイト</a>でも誰でも編集できるかたちで随時まとめている. S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-4328911925937016962023-01-23T13:38:00.010+09:002023-09-09T11:59:45.173+09:002022年アカデミック・レビュー<p>主筆の山根です.これまでゲーム研究や高等教育で大きな出来事があった年は年間レビュー記事を書いていましたが,このところ本ブログではICD-11論争や香川県条例といったリアルタイムの社会問題にリソースを割いていたためにアカデミックなふりかえりが止まっていました.そこで,ここ2, 3年間をまとめてゲームのアカデミックな話題をふりかってみたいと思います.</p><p>2020年から2022年にかけて,ゲーム研究の出版は国内外でもりあがりました.&nbsp;</p><p><span></span></p><a name='more'></a>&nbsp;<p></p> <h3>ゲームの学術出版動向: 欧米編(2020-2022)</h3> <p> ゲーム研究書を次々と出版してきたMIT Pressは,相変わらず良質な本を出している.研究者にとって重要なのはトップジャーナル論文誌だが,そういった研究者も学術書籍なしには研究が進まない状況をつくりだしたのはすごい. しかも手当たり次第に乱発するのではなく,第一線の研究者を編集人に配置した<b>シリーズ化路線</b>を進めて突出している. たとえば, 第一人者による手軽な読み物集<a href="https://mitpress.mit.edu/search-result-list/?series=playful-thinking" target="_blank">「Playful Thinking」シリーズ</a>(日本語では『プレイ・マターズ: 遊び心の哲学』(<a href="http://filmart.co.jp/books/composite_art/play_matters/" target="_blank">サンプル公開あり</a> )が訳されている), Atari以来のプラットフォームに注目した研究を連発する<a href="https://www.penguinrandomhouse.com/series/M4R/platform-studies/" target="_blank">「Platform Studies」シリーズ</a>, 世界各地のゲーム史を発掘する<a href="https://mitpress.mit.edu/search-result-list/?series=game-histories" target="_blank">「Game Histories」シリーズ</a>, コーディングから社会現象まで,ソフトウェア文化を語る<a href="https://mitpress.mit.edu/search-result-list/?series=software-studies" target="_blank">「 Software Studies 」シリーズ</a>と,シリーズ作はどれもクオリティが高い.これは第一人世代の研究者たちが編集人となって世界中からの投稿を呼びかけているためで,次世代の<b>新しい書き手を発掘するサイクル</b>がうまくまわっている. </p> <p> こうしたMIT出版やラウトレッジといった大手出版社が第一人者を巻き込んで学術書を連発する一方で,新しい分野の研究書を出版する新勢力として台頭してきた出版社もある.その代表として,Oxford University Pressが印象的だった. これまで<a href="https://global.oup.com/academic/product/games-user-research-9780198794844?cc=jp&amp;lang=en&amp;" target="_blank"><i>Games User Research</i></a>(2018)のようなユーザ調査分析に続けて,ゲームのデータサイエンス本<a href="https://global.oup.com/booksites/content/9780192897879/" target="_blank">Game Data Science</a>(2021)を出したことで,理工系に強い印象を持っていた.だが,ユタ大学で哲学を教える<a href="https://objectionable.net/" target="_blank">C. Thi Nguyen</a>の論集<a href=""><i>Games: Agency As Art</i></a>(2020)を出版し,それが2022年1月のアメリカ哲学会(APA)大会でAPA学術出版賞を<a href="https://twitter.com/OUPPhilosophy/status/1477321749498765312" target="_blank">受賞</a>したことで,総合的な学問としてのゲーム研究の出版社として存在感を増している. </p> <h3>学術出版状況: 国内編</h3> <p>国内でもゲームの学術研究の出版物は近年次々と出版されており,新しい出版社も加わった.数年前とはずいぶん状況が変わっている.</p> <ul> <li><a href="https://www.ferc.jp/" target="_blank">福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC)</a>が2020年に発足,2021年に『<a href="https://www.ferc.jp/news/hon20211207/" target="_blank">eスポーツの科学</a>』を出版</li> <li>『デジタルゲーム研究入門: レポート作成から論文執筆まで』が2020年に出版,2021年に<a href="https://twitter.com/chimarisan/status/1426346803838943234" target="_blank">増刷決定</a></li> </ul> 特に,学術系の出版社である福村出版がゲームの学術書を次々と出版したのが目立った. <ul> <li>キング&デルファブロ著・樋口進監訳<a href="https://www.fukumura.co.jp/book/b527780.html" target="_blank">『ゲーム障害: ゲーム依存の理解と治療・予防』</a>(2020)</li> <li>川﨑寧生著<a href="https://www.fukumura.co.jp/book/b602105.html" target="_blank">『日本の「ゲームセンター」史: 娯楽施設としての変遷と社会的位置づけ』</a>(2022)【重版出来】</li> <li>セリア・ホデント著・山根信二監訳<a href="https://www.fukumura.co.jp/book/b617789.html" target="_blank">『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学: 脳のはたらきとユーザー体験(UX)』</a>(2022)</li> </ul> <p>(なお,筆者自身も3番目の本の監訳に加わったが,出版社側の積極的な取り組みなしには出版できなかった.その経緯はIGDA日本の<a href="https://www.igda.jp/2022/11/27/13282/" target="_blank">ライトニングトーク</a>で<a href="https://www.slideshare.net/syamane/psychology-of-video-games-translaters-lightningtalk" target="_blank">公表している</a>.)</p> <p>日本語圏では,MIT Pressの様にゲーム学術書を連発することはできない.第一人者を編集人に任命して,世界中から書き手を募るような大規模プロジェクトには,ゲーム研究者の層が厚く,長期的な研究を可能にする研究職ポストが必要とされるからだ.だが日本語圏では,ゲーム研究グループをつくるには研究者層が薄く,ゲームの研究職もわずかなので同じレベルのことはできない.そのかわり,日本では商業誌が学術出版の機能を一部果たしており,研究グループを頼むことなくライターが独力でクオリティの高い記事を商業誌に掲載するという現象も起きている.たとえば<b>三才ブックス</b>のムックや雑誌に真面目な研究が載っていたりするのはその一例だろう.</p> <h3>進む産学連携: SNS時代のプレプリント投稿,データセット公開</h3> <p>WHOがICD-11でゲーミング障害を収載した件での英語圏の論争は,香川県条例の提案理由にもなり,過去にも本ブログでとりあげた(<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html" target="_blank">2020</a>.<a href="http://igdajac.blogspot.com/2022/01/2021.html" target="_blank">2022</a>).これが英語圏で注目を集めた理由としては,論争がオープンアクセスジャーナルで行われ,英語論文がオンライン公開されていたというアクセスしやすさの影響が大きい.つまりこれまでは論文誌に書いても専門家にしか読んでもらえなかったのに対して,オープンアクセスジャーナルでの論争が広くSNSからリンクされるようになった.それだけでなく,まだ審査段階の論文(プレプリントと呼ばれる)が注目を集め,<b>論文査読を通過する前から国際ニュースになる</b>という珍事も起こった.それがオクスフォード大学インターネット研究所のシュビルスキー教授のグループの研究「Video game play is positively correlated with well-being 」だ(<a href="https://automaton-media.com/articles/newsjp/20201117-143491/" target="_blank">日本語記事</a>).ちなみに論文はその後,英国王立協会(The Royal Society)による初めてのオープンアクセス誌<i>Royal Society Open Science</i>に<a href="https://doi.org/10.1098/rsos.202049" target="_blank">掲載</a>されている. </p> <p> これまでゲーム研究の論争は論文誌以外のメディアで起こることが多かったのだが,<b>誰でもアクセスできる論文で展開される論争</b>という,論文とウェブSNSとの両方の長所を生かした論争の時代がゲーム研究においてもはじまったと言える.シュビルスキーはその後もプレイデータにもとづくゲーム影響論を提唱しており,論文だけでなくゲーム会社から提供されたデータセットも公開する実践を行なっている.たとえば,『あつまれどうぶつの森』(北米版)『Apex Legends』『Eve Online』『Forza Horizon 4』『グランツーリスモSPORT』『アウトライダーズ』『ザ クルー2」と異なる企業の異なるジャンルのゲームタイトルについて各社から提供を募り,データセットもレポジトリで公開している(<a href="https://gigazine.net/news/20220802-gamer-mental-health/" target="_blank">日本語報道</a>). シュビルスキーは来るGDC23でも,「<a href="https://schedule.gdconf.com/session/video-games-and-science-in-a-world-with-gaming-addiction/890430" target="_blank">Video Games and Science in a World with Gaming Addiction</a>」で講演予定であり,ゲームには悪い影響があるのかいい影響があるのかという論争を超えてオープンデータにもとづく分析を切り開きつつある. </p> <h3>進む産学連携: 日本発のトップカンファレンス論文(12月)</h3> <p> 20年以上にわたって産学連携が唱えられてきたが,ゲーム産業の産学連携は一般的なIT分野とは異なる性質を持っている.<a href="https://dl.acm.org/doi/10.1145/1536513.1536550" target="_blank">研究志向の産学連携と人材育成志向の産学連携</a>の二つがかけ離れており,産学がそれぞれ違った夢を見る同床異夢に陥ることが多い.その結果,大学でなければできないような独自性のないプロジェクトや,企業戦略とは無縁のプロジェクトに陥ることも多い.こうした反省から,次世代人材育成志向にフォーカスしたり,研究志向であっても開発現場により近いところで研究したり,あるいは海外の成功例を積極的にとりいれるようになっているのが近年の傾向だと言える.(本ブログも次世代人材育成と海外事例紹介が大きな柱になっている.) </p> <p> こうした中で,今年は海外事例だけでなく日本国内事例も目につくようになった.大学の先端的な研究環境と企業の開発現場の問題解決という距離の離れた二つの方向のどちらも生かしたプロジェクトが出てきている.その代表例が,人工知能のトップカンファレンス「AAAI-23」に採択されたKLabと九州大学の共著論文だろう(<a href="https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/861/" target="_blank">九州大学発表</a>,<a href="https://www.klab.com/jp/press/release/2022/1226/geneliveaiklabaaai-23.html" target="_blank">Klab発表</a>).12月の発表には研究者コメントも掲載されており,研究と人材育成の異なるゴールを同時に追求したこと,スーパーコンピュータといった大学環境の必然性についてコメントされている.これらはまさに上記のゲーム産学連携の特色が出ている.また,<a href="https://doi.org/10.48550/arXiv.2202.12823" target="_blank">採択された英語論文</a>も完成度が高く,過去のGDCやトップカンファレンスの達成をふまえつつ,ラブライブの素材を生かした,ゲーム愛がある英語論文になっている(2ページ目で言及されているスクスタのスクリーンショットがいきなり1ページの本文トップに登場したり,謝辞にはスクールアイドルやラブライバーも登場する). </p> <h3>ゲーム外交に取り組む海外使節団と受け入れ体制(12月)</h3> <p> 12月にベルギー王国のワロン地域政府から経済ミッションが来日した.「ミッション」とはもともとは伝道とか布教の意味だが,この経済ミッションでは王室から大学まで数百人の要人が来日した.その全容は<a href="https://response.jp/article/2022/12/01/364756.html" target="_blank">記者会見記事</a>に詳しいが,アカデミック領域でも高等教育研究機関の代表が来日して,日本を代表する大学で両国の学長がサインする国際調印式や大学間交流が行われた.<a href="https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/14101/" target="_blank">東京大学(d.lab)</a>や<a href="http://www.tufs.ac.jp/NEWS/trend/221208_3.html">東京外国語大学</a>はそれぞれ日本を代表する大学として調印式を行なっているが,デジタルゲーム教育研究でも以下の国際交流が行われた. </p> <ul> <li><a href="https://www.iput.ac.jp/osaka/news/12975/" target="_blank">ベルギー王国から学術代表団の方々が本学を訪問されました</a>(大阪国際工科専門職大学, 2022.12.20)</li> <li> <a href="https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=2982" target="_blank">立命館大学ゲーム研究センターとベルギー王国リエージュ大学Liège Game LabがMoUを締結</a>(立命館大学, 2023.01.10)</li> </ul> <p>こうして見ると国を代表する大学の学長クラスの外交に目を奪われるが,ゲーム分野では他の輸出産業と異なり,<a href="https://igda.jp/2022/10/19/13147/" target="_blank">2カ国の学生限定のゲームジャム</a>が開催された.つまりゲーム分野では次世代を視野にいれた長期的な取り組みとして,大学トップダウンと学生ボトムアップの両方で2国間産学連携事業を進めている.その様子はレポート記事「<a href="https://news.yahoo.co.jp/byline/onokenji/20221211-00327853" target="_blank">ベルギー王女も発表授与式に参加した国際学生オンラインゲームジャムが示す未来</a> 」や<a href="https://togetter.com/li/1981966" target="_blank">つぶやき非公式まとめ</a> で知ることができる.国や大使館がゲーム人材育成を支援することを意外と思うかもしれないが,これは短期的な事業は産業界にまかせて,企業や職業訓練校が推進できない長期的な事業を国がやる,という得意分野に特化しているように見える.そしてレポートによれば,この<b>2カ国間ゲームジャムを草の根ボランティアでやりきった</b>のはすごい.しかしこのやり方で他の国々が日本にゲーム外交を申し込んでくるたびにボランティアで対応するのはあきらかに無理がある. ゲーム先進国には,海外から「ゲームを学びたい」という留学生を受け入れる仕組みがあるが,そのために国際教育事業を進めるのは先進国の政府機関の仕事だ. たとえばビデオゲーム発祥の地アメリカでは<a href="https://www.washingtonpost.com/video-games/2021/04/07/video-game-diplomacy/" target="_blank"><b>ゲーム外交( game diplomacy)</b></a>は国務省とNPO法人<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/07/games-for-change-festivalg4c.html" target="_blank">Games for Change</a>が他国間に対して展開している.それに比べて日本にはゲーム大国としての外交戦略は存在せず,国際交流基金が<a href="https://ny.jpf.go.jp/event/how-the-japanese-video-game-industry-found-lost-and-rediscovered-its-way/" target="_blank">日本ゲーム産業史のオンラインセミナーを開いた</a>程度だ.ゲームジャム外交についてはボランティアが活躍したが,持続可能な長期戦略に向けて日本政府・地方自治体も先進国のゲーム外交への取り組みを調べて,市町村や産学官の壁を超えたオールジャパンの備えをしておく必要がありそうだ. </p> <h3>おわりに</h3> <p> 上述したように,ゲーム研究では,学術出版を通じて,第一世代が編集人になって次世代を起用する世代継承が国境を超えて進行している.日本語圏だけではそのような研究者層は形成できないが,新たな国内出版社が参入したり,日本発の産学共著のトップカンファレンス論文が出たことは今後につながるニュースだった. また,ゲーム人材育成においては海外使節団を迎えるという事業を(一部はボランティアで)実現できたという飛躍の年でもあった.今後は,持続可能な体制づくりが課題になるだろう. </p>S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-29310380726579402322023-01-16T02:46:00.012+09:002023-01-30T08:56:13.981+09:00GGJ23プレビュー: パンデミック後の産学イベント(追記あり)<p>&nbsp; 世界最大のゲームジャムイベント,<a href="https://globalgamejam.org/" target="_blank">Global Game Jam</a>が1月末から2月第1週にかけて開催される.本ブログではGlobal Game Jamの初期から<a href="http://igdajac.blogspot.com/search/label/GGJ" target="_blank">報告を行ってきた</a>が,本稿では直前プレビューを行いたい.</p> <h3>対面会場が帰ってきた</h3> <span><a name='more'></a></span>&nbsp; <p>&nbsp; GGJ23の日程は以下の通り: 1月28日10AM(米国太平洋時間PST,<b>日本時間</b>では29日午前3時)に開発するゲームのテーマ発表・基調講演が発表される.それらはTwitchで公開され,2月5日(現地時間)までの間に各会場で48時間のゲームジャムを開催する.会場によっては現地集合せずにオンライン開催する設定も可能になっている.このために各会場ごとに参加申込期限が異なる.最終日である2月5日(ハワイ会場の最終日は日本時間では2月6日)には,ゲームがオープンなライセンスでアップロードされ全世界に配信される. </p> <figure> <iframe allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/PPJGLTXfH6o" title="YouTube video player" width="560"></iframe> <figcaption>公式ビデオ「What is Global Game Jam?」日本語字幕つき</figcaption> </figure> <p>&nbsp; 今年の大きな話題は,なんといっても各地の会場に集まることが解禁されたことだろう.GGJ20以来,パンデミックによりゲームジャム会場を開設するのが困難になり,GGJでもゲームジャム会場閉鎖やオンライン開催への移行が行われてきた.そしていよいよ今回のGGJ23では,コロナウィルス対策を行うことを条件に,オンライン開催だけでなく対面会場を開催できることが全世界に発表された. </p> <figure> <iframe allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/MEES6SkkKfA" title="YouTube video player" width="560"></iframe> <figcaption>GGJ23公式ティザー動画</figcaption> </figure> <p> 日本国内でも,2020年度に「不要不急の外出自粛」「夜8時以降の外出自粛」が実施されたことで各種ゲームジャムの開設が困難になり,オンライン開催に切り替わった.そのあいだ海外では外出制限区域以外でソーシャルディスタンスを保って屋外で開催されるゲームジャムもあったが,それでも以前のように数百人のメガ会場はみかけなくなった.日本で小規模なゲームジャムが開かれるようになったのはさらに遅れて2022年度からで,医師が常駐する地方会場開催のような試みが<a href="https://www.igda.jp/2022/11/05/13219/" target="_blank">IGDA日本のライトニングトーク</a>でも紹介されている. そうした試みを経て,今回のGGJ23で全国各地でオンライン・オフライン会場が開設されることになったのは感慨深い(原稿執筆時点では,北海道から沖縄まで<a href="https://ggj.igda.jp/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e4%bc%9a%e5%a0%b4%e4%b8%80%e8%a6%a7-3/" target="_blank">14会場</a>). </p> <h3>国際化するGGJと東アジアからの貢献</h3> <p>  GGJでは主催者が立ち上げた非営利企業「Global Game Jam」も組織化され,米国法人の常勤スタッフだけでなく,国際ボランティアチームが結成されている.そしてこれまでGlobal Game Jamの会場をとりまとめてきた各地域のコーディネーターに加えて,全体のディレクター職も各地域から任命されている.我々と関係の深い東アジアからは,GGJ 2022-2023 Executive Committee にIGDA台湾のJohnson Lin氏が,GGJ Board of Directors にはUnity日本法人の大前広樹氏が<a href="https://globalgamejam.org/about" target="_blank">加わっている</a>. 特に大前氏はGlobal Game Jam 2011から参加して,Unityを使った学生とのチーム開発ふりかえりを共有してくれたので(<a href="https://old2014.igda.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&amp;storyid=501" target="_blank">IGDA日本勉強会</a>,<a href="https://www.4gamer.net/games/032/G003263/20110630096/" target="_blank">GTMF 2011</a>など)日本のゲームジャムシーンたちあげに大きく関わってきた. </p> <h3>GGJ23国内会場に向けて</h3> <p>  Global Game Jamの会場募集はまもなく締め切られ,多くの<a href="https://globalgamejam.org/2023/jam-sites?title=&amp;country=JP" target="_blank">国内会場</a>は公式ウェブサイト(英語)とは別に事前登録が必要であり,申込方法が会場ごとに違うだけでなく,申込〆切や開会式の日時も会場ごとに異なっている.国内会場も多様で,札幌市産業振興センター で開催される札幌会場(対面定員120人)や八王子の東京工科大学会場(オンライン定員100人)といった大会場から,お寺の畳の間で開催される瀬戸内会場,薪ストーブ小屋で開催される奥多摩会場(すでに募集終了)など,規模や施設もさまざまで,さらに英語でも参加できる第二言語ありの会場もあれば,日本語のみの会場もある.対面参加とオンライン参加を選べる会場もあれば,対面参加のみの会場もある.興味のある方は,さまざまな会場の個性を調べてほしい. </p> <p>  <b>オンライン勉強会</b>を企画しているコミュニティもある.たとえば<a href="https://globalgamejam.org/2023/jam-sites/setouchi" target="_blank">GGJ瀬戸内会場in香川</a>を開催予定の<a href="https://note.com/unityjapan/n/n2621491f8b9c" target="_blank">岡山Unity勉強会</a>は,2023/01/21(土)に<a href="https://okauni.connpass.com/event/272061/">ゆるもく勉強会</a>を開催し,その中でGGJ勉強会も開催予定だ.(GGJ瀬戸内会場の昨年の勉強会の<a href="https://www.youtube.com/watch?v=D7XH4ynLqsI&amp;list=PLm0W_cIrFOP-HeKhqTjK3ABPaYIoJfdJX">録画は公開されている</a>.今年は質問への回答中心になる見込み.) </p> <p>(追記1) 1月19日(木)にも,IGDA日本でオンラインセミナー<a href="https://www.igda.jp/2023/01/17/13413/" target="_blank">「Global Game Jam 2023 直前配信/日本全国の3D都市モデルを活用してゲームを作ろう!」</a>が開催され,国土交通省が進める3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」のゲームエンジン利用についての講習が行われる. </p> <p> またIGDA日本では,ボランティアスタッフ運営の<a href="https://ggj.igda.jp/" target="_blank">日本語ウェブサイト</a>,<a href="https://www.igda.jp/2022/12/05/13310/" target="_blank">新年会</a>(1/21) ,SNSハッシュタグ<tt>#GGJJP</tt>などで情報共有を支援していく. (GGJ期間中にIGDA日本の<a href="https://www.igda.jp/2022/12/22/13336/" target="_blank">SIG-地方創生セミナー</a>(2/03) も開催されるが,GGJと勉強会との両立も不可能ではない.希望職種アンケートを実施して事前にチーム分けを決めるポリシーの会場であれば,夜から遅刻参加できる会場もある.) </p> <p>(追記2) 日本国内の会場がでそろったが,この他にも<b>海外会場へオンライン参加する取り組み</b>も行われており,たとえば京都コンピュータ学院専門学校では,学生が姉妹校のロチェスター大学の<a href="https://twitter.com/KCG_PR/status/1618437852098105344">オンライン会場</a>に登録している.</p> <h3>付論: ゲームジャム発の研究コミュニティ</h3> <p> 最後に,アカデミック・ブログの観点から,GGJ発の学術活動の話を. さらにGlobal Game Jamの研究者コミュニティが国際会議<a href="http://igdajac.blogspot.com/2013/09/fdg2013.html" target="_blank">FDG2013</a>で「Global Game Jam Workshop」を開催し,そこからうまれた国際会議<a href="https://icgj23.gameconf.org/" target="_blank">ICGJ</a>が継続して開催されることで,GGJはゲームジャムのアカデミックな議論もリードしてきた. </p> <p>  そうしたGGJ/ICGJの研究コミュニティがGGJ直前に入門書を出版した: <i><a href="https://doi.org/10.1007/978-3-031-15187-3" target="_blank">Game Jams – History, Technology, and Organisation</a></i>(2023).序文と後書きのPDFファイルは無料でダウンロードできる.謝辞には日本人の名前もあがっており,地域コーディネーターをつとめてきた九州大学の金子氏(Kosuke Kaneko)や研究活動をしてきたIGDA日本の山根(Shinji R. Yamane)の名前が載っていた(事前に本人への連絡が無かったので驚いた).ただし,貢献が掲載されたことを喜んでばかりもいられない.もしもゲームジャム研究に世代継承がなければ,個人が忙しくなったら途絶えてしまうだろう.パンデミック期間中に減少したゲームジャムでの人材育成や世代継承の機会を強化していくことが必要だろう.&nbsp;</p><p style="text-align: right;">(山根信二) <br /></p> S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-57821897980746867302022-11-12T17:13:00.014+09:002023-03-14T18:26:15.423+09:00ゲーム学における最大の論争(下): ゲーム産業団体のグローバル化 <p>主筆の山根です.<br /> 過去記事<a href="http://igdajac.blogspot.com/2022/01/2021.html" target="_blank">「ゲーム学における最大の論争(上)」</a>では,Gaming disorder(ゲーム障害,ゲーミング障害,ゲーム行動症などと訳されるが公式訳は未定)の決定的な根拠が立証されないままICD-11に収載されたこと,そして立証する者がいないまま専門家の間で統一見解が出なかったこと,それを受けてアメリカのゲーム業界団体では重要論文を速報しながら根拠にもとづく議論を求めたり,ゲーム開発者コミュニティ内では心理学博士人材が情報共有を進めていたことを紹介しました.今回は,さらに最新動向と日本の状況について展望と提言を行います.</p> <h3>日本がゲーム産業の国際的ネットワークから無視され始めている?</h3> <p>  今月2022年11月2日に,世界のゲーム業界団体が<a href="https://www.thegvgc.org/" target="_blank">Global Video Game Coalition(GVGC)</a>を立ち上げた.プレスリリースは以下の文章ではじまっている.</p><p><span></span></p><a name='more'></a>&nbsp;<p></p> <blockquote> (<a href="https://www.thegvgc.org/news/" target="_blank">プレスリリース</a>原文) The world's leading video game associations today announced the formation of the Global Video Game Coalition (GVGC) to raise awareness of the positive impact of video game play on players of all ages and to demonstrate the industry's long-standing commitment to enabling players, parents and guardians to engage in responsible game play. <br /> (日本語訳) 世界の主要ゲーム業界団体は,本日,ビデオゲームプレイがあらゆる年令のプレイヤーに与えるポジティブな影響について関心をもっていただくためにGlobal Video Game Coalition (GVGC)の設立を発表します.ここで,プレイヤー・親・保護者のみなさんが責任あるゲームプレイ(Responsible Game Play)に取り組めるように産業界がおこなっている長期的なコミットメントを明らかにしていきます.</blockquote> <p> このニュースリリースからウェブサイトのコンテンツに目を転じると,プレイヤー・親・子供の世話人に力を与える「責任あるゲームプレイ(Responsible Game Play)」のツールとして,まずコンテンツレーティングについてPEGI, ESRB, IARC, USKが紹介されている. この第一報で気がつくのが「世界の主要なゲーム業界団体」に<b>日本のゲーム業界団体が入っておらず</b>,上記の自主レーティングの例にも日本のCEROは出てこないことだ.東アジアからは韓国のゲーム業界団体が参加しているので,アジアが軽視されているというわけでもなさそうだ.つまり<b>グローバルなゲーム産業の中で</b><b><b>日本の業界団体だけが</b>消えている</b>かのように見える.本論の立場では,これは日本がガラパゴス状態で無視されたといった産業界の失敗ではなく,ゲーミング障害論争のグローバル化による避けられない事態のように見える.以下で解説と提言を行う. </p> <h3>世界のゲーム業界団体に起こった変化</h3> <p>  <a href="https://www.thegvgc.org/" target="_blank">GVGC</a>はスイスのジュネーヴを本拠地にしているが,この新機関はたんなる広報機関ではなく,ジュネーヴに本部を置く国際機関,特にWHO(世界保健機構)とのコンタクトを意識して国際求人を行っている.新機関と言ってもこの機関はいきなり登場したわけではなく,過去の活動の積み重ねの上に成立している.数年前は世界のゲーム産業団体がスイスに代表を送り込むとは考えられなかったが,バラバラだった各大陸のゲーム産業団体が最近になって行動をともにするようになった.ゲーム産業団体が歩調をあわせてきた取り組みを表1の年表に示す. </p> <table border="1"> <caption>表1: ゲーム業界のWHOゲーミング障害への取り組み年表</caption> <tbody><tr><th>Date</th><th>Event</th></tr> <tr><td>2018/01/05</td> <td>米ESA,ICD-11で提案されたゲーミング障害をWHOが撤回するよう<a href="https://www.theesa.com/news/esa-responds-to-whos-proposed-disorder-classification/">声明を発表</a>.さらに論争論文(Debate Paper)へのオンラインリンクをつけて<a href="https://www.theesa.com/resource/scholars-open-debate-paper-on-the-world-health-organization-icd-11-gaming-disorder-proposal/" target="_blank">広報する</a>.</td></tr> <tr><td>2018/03/01</td> <td>欧州 Interactive Software Federation of Europe,<a href="https://www.isfe.eu/news/scientists-oppose-%E2%80%A8whos-proposed-video-game-action-%E2%80%A8/" target="_blank">論争論文をもとにプレスリリース声明発表</a>.<br />メンバー団体の構成はオーストリア,ベルギー,チェコ,フランス,ドイツ,アイルランド,イタリア,オランダ,ノルディック(デンマーク,フィンランド,ノルウェー,スウェーデン),ポルトガル,ポーランド,スペイン,スロヴァキア,スイス,UKに加え,欧州外からブラジル,米国,カナダ,南アフリカ,ニュージーランド,韓国</td></tr> <tr><td>2018/12</td> <td>ESAがWHO担当者と会合をおこない,ゲーミング障害への懸念を伝える(<a href="https://www.theesa.com/news/entertainment-software-association-statement-on-december-3-dialogue-with-world-health-organization/" target="_blank">2019/01/11発表</a>) </td></tr> <tr><td>2019/05</td> <td>WHO総会がICD-11を承認</td></tr> <tr><td>2020/03/20</td> <td>ESAカナダ,WHOと<a href="https://www.gamesindustry.biz/industry-launches-playaparttogether-to-help-fight-covid-19-pandemic" target="_blank">#PlayApartTogether</a>キャンペーンを実施.のちにカナダ国外の非メンバー企業も参加.</td></tr> <tr><td>2022/01</td> <td>ICD-11発効,2022/02に改訂,各国はまだ公式訳を出せない</td></tr> <tr><td>2022/07/05</td> <td>欧州・米国・アジア太平洋地域のゲーム業界団体が,ゲーム産業界を代表してWHOなどと会合を行うGlobal Video Game Alliance (仮称)とそのジュネーブ常駐ディレクターの求人を開始 (<a href="https://www.isfe.eu/news/job-vacancy-executive-director-the-global-video-game-alliance-gvga/" target="_blank">欧州ISFEの求人</a>)(<a href="https://theesa.ca/2022/07/04/executive-director-the-global-video-game-alliance-gvga/" target="_blank">米国ESAの告知</a>)</td> </tr><tr><td>2022/10/11</td> <td>日本のゲーム業界の4団体合同検討会,ゲーム障害調査研究会の報告を踏まえて具体的な対応策を公表すると発表</td> </tr><tr><td>2022/11/02</td> <td> 世界のゲーム業界団体がジュネーブに<a href="https://www.thegvgc.org/" target="_blank">Global Video Game Coalition(GVGC)</a>設立. </td> </tr></tbody></table> <p> こうして見ると,ゲーム業界がゲーミング障害について単独活動から共同活動へと進んだのは2018年初頭のことだと言える.2018年1月には米国ESAの単独声明だったが,3月には欧州・北米・アフリカ・南米・アジアオセアニアの全大陸のグローバル連携へと発展している.ゲーミング障害は<a href="https://ides.hatenablog.com/entry/2021/11/20/031359" target="_blank">アジア諸国からの圧力がかかっていた</a>という証言もある中で,アジアは世界への説明責任が求められていた.その中で韓国のゲーム産業団体が共同声明に加わったのは意義深い.</p><p> 非英語圏もふくむ世界のゲーム業界団体が短期間で共同声明を出せたのは,ESAが<b>雄弁だったからではなく</b>,学術論文にもとづいているからだろう.1月のESAの声明は,国際論文誌の論争論文(Debate Paper)へのリンクをはって<a href="https://www.theesa.com/resource/scholars-open-debate-paper-on-the-world-health-organization-icd-11-gaming-disorder-proposal/" target="_blank">紹介しただけ</a>だった.だが3月のグローバル業界団体共同声明では,論文を引用した声明だ.つまり,各大陸のゲーム業界団体は学術論文を起点にして短期間のうちに合意形成している.この学術論文に基づく合意形成のスピードを日本のゲーム業界団体は経験していなかった. </p> <h3>日本ゲーム業界のゲーミング障害への取り組み</h3> <p>  これに対して,日本のゲーム業界も独自の意見表明に取り組んでいた.それは独自に学術研究に着手しゲーミング障害への自主的な取り組みを進めるものだ.表1に示すように,先月2022年10月に国内ゲーム業界団体(CESA,JOGA,モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)、eスポーツ連合(JeSU))が進めているゲーム障害に関する調査・研究の中間発表が報道された.この団体にはアーケードゲーム業界団体や個人ゲーム開発者の団体,教育用ゲームの団体などは含まれていないが,日本のゲーム業界の最大勢力が結集したものだ.</p> <p>  日本の方法は,ゲーム業界団体が日本を代表する専門家チームに調査を依頼するというものだ.しかし新型コロナウィルスのために全国調査を<a href="https://jesu.or.jp/contents/news/news-200813-2/" target="_blank">1年延長</a>したという事情もあり,まだ終わっていない.まず2022年10月4日、ゲーム障害調査研究会が記者発表会を行った.これは中間発表に相当するもので,発表会の様子はゲーム系メディアによって以下の報道が行われている.</p> <ul> <li>「<a href="https://jp.ign.com/games/62972/news/" target="_blank">ゲームに気持ちを奪われすぎていないか?「ゲーム障害」の実態や関連要因を全国調査した報告書が発表: プレイ時間や課金額、ネット上におけるコミュニケーションとの相関も調査</a> 」(IGN JAPAN, 2022年10月4日) </li><li>「<a href="https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20221005068/" target="_blank">ゲーム障害調査研究会の記者発表会をレポート。ゲーム障害疑いのある人は0.8%,ガチャの平均利用額や家庭でのルールなども全国調査</a>」 (4gamer, 2022/10/05)<br /> この記事は分量は長いが,各委員の発表をまとめずに個別に紹介しておりわかりやすい. </li><li>「<a href="https://www.gamespark.jp/article/2022/10/06/123180.html" target="_blank">「ゲーム障害への対策は必要」CESAら組織のゲーム障害調査研究会、大規模調査の中間発表明らかに</a> 」(Game*Spark, 2022/10/06) </li></ul> <p>  日本のゲーム産業団体が依頼する研究には,海外ゲーム産業団体(および彼らが引用する学術論文の研究者)とで,以下のような違いがある. </p><ol> <li>論文誌に掲載された査読論文ではなく,未発表の調査が記者会見の根拠になっている</li> <li>配布資料が長大で,要点がまとめられていない.そのため「ゲーミング障害への対策は必要」と単純化された見出しがついて,前章でのべてきたGDCや学界をまきこんだ論争がまだ続いている(根拠を立証できない)ことが伝達できていない. </li> <li>海外のゲーム業界団体の声明をとりあげていないために,日系企業が日本法人と海外法人とで判断が衝突するおそれがある</li> </ol> このような国内外のギャップについて,順番に背景を説明する.<p>1. 論文が先か,記者会見が先か</p> <p>  論文が公表されるまでには時間がかかる.学術論文誌に投稿したあと,論文誌の編集委員が他の専門家に査読を依頼し,それを通過して初めて掲載される.この時間が足りなかったのか,今回の中間発表では論文を出す前に記者会見している.これはやむを得ない面もあるが,ゲーム産業がこれを根拠にするのは無理がある.論文草稿も公開せずに記者会見するのは今後の論争のお手本にならないので,最終報告会では論文にもとづく発表を期待したい.</p><p> そこで参考になるのが海外団体の流儀だ.たとえばアメリカのゲーム業界団体ESAがICD-11のゲーミング障害について声明を出した時は<a href="https://www.theesa.com/resource/scholars-open-debate-paper-on-the-world-health-organization-icd-11-gaming-disorder-proposal/" target="_blank">声明文はわずか1行,あとは論文情報とオンラインジャーナルへのリンクが主役</a>だった.オンラインジャーナルに論文が掲載されればこうして直接参照したシンプルな声明を出せる.もしも論文掲載が審査中で報告会に間に合わない場合は,まだ採択前の投稿段階の草稿で議論が進められる場合もある.たとえば日本のような自己申告のアンケート調査ではなく「実際のプレイ時間」を使った研究が発表された場合は,採択前の草稿段階で<a href="https://automaton-media.com/articles/newsjp/20201117-143491/" target="_blank">全世界で報道されていた</a>.</p><p></p> <p>2. 「ゲーム障害への対策は必要」と単純化されたメッセージ</p> <p> 今回の中間発表では,報道が「ゲーム障害への対策は必要」と単純化されてしまい,なぜ論争になったのかわからなくなっている.実のところ,我々はまだその障害を理解していない(ただし各委員ごとに詳しい報道を見ると,篠原委員が「ゲーム障害やゲーム依存症といった概念を,やたらに使うことは避けるべきだろう」と解説している).そしてこれまで国内に紹介された科学者の取り組みも報道では無かったことにされている.たとえばWHOのICD-11プロジェクトに日本から参加した臨床心理学の神崎氏は2020年に以下のように報告している. </p><blockquote> アメリカ精神医学会は、WHOがICD-11を発表した2018年にもゲームに嗜癖性があるか否かについては未だに議論の最中であると改めて表明しており、基本的に一貫しています。 <br />&nbsp; 付け加えてご紹介すると、アメリカ心理学会の担当部会も、ICD-11でゲーム症/障害が新設されたことに対して、科学よりも「モラルパニック」の産物という表現で反対声明をリリースしているほか、オックスフォード大学やジョンズ・ホプキンズ大学などの研究者らは、欧米を中心とした各国から総勢20名以上の連名で論文を発表して、エビデンスの乏しさやモラルパニックの恐れなどを指摘し、ICD-11におけるゲーム症/障害の新設は「時期尚早」であり「削除されるべき」との明確な反論を提唱しています。<br />(<a href="https://www.ferc.jp/research/may14-2020/" target="_blank">福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC)【研究者の眼】</a>)</blockquote> <p></p> <p>  もう一つの単純化されたメッセージは,対策の判断根拠だ.診察もせずに「疑いが何%あるから無視できない」といった自主規制という結論ありきの単純な報道では,失われるものが大きすぎる.「何%以下なら無視していいんですか」「もっと大きな要因がないか調べたんですか」いう検討事項が抜け落ちてしまっている.そうした報道の弊害が出ることも踏まえて,事前の想定問答を用意するなどした方がよい.</p> <p>  詳しくは最終報告書を待ちたいが,すでにゲーム影響論の分野では疑い率以外のリスク分析も日本に紹介されている.たとえば心の健康に及ぼす寄与率(関与率)を比較した健康リスク研究としては,スマホの利用時間が長いほど健康に悪いという俗説に対して,根拠となる査読論文やサンプル数を示しながら「ティーンエイジャーの精神的健康の悪化と技術の関連性は、ジャガイモを食べることと心の健康の関連性と同程度」「メガネをかけていることのほうがマイナスの関連性が大きい」といったリスク要因評価が紹介されている.(<a href="https://www.nikkei-science.com/202004_086.html" target="_blank">スマホ利用と心の健康</a>, 日経サイエンス 2020年4月号).今回の中間発表はそうしたリスク間の評価を行っていないため,最終報告ではリスク評価への言及が加わることを期待している. </p> <p>3. 日本法人と海外法人の国際ギャップ</p> <p> 上記2点の結果として,日本のゲーム会社は日本の業界団体に所属する日本法人と,海外の業界団体に所属する海外法人とでは異なる振る舞いになってしまっている.表2に現時点での違いを示す.</p> <table border="1"> <caption>表2: 業界団体のゲーミング障害への取組の比較(2022/10)</caption> <tbody><tr><th>項目</th><th align="center">日本の取組</th><th align="center">海外の取組</th></tr> <tr><th>国際的な連携</th><td align="center">なし</td><td align="center">あり</td></tr> <tr><th>WHOへの働きかけ</th><td align="center">なし</td><td align="center">あり</td></tr> <tr><th>主張の根拠</th><td align="center">有識者委員会の委託報告書</td><td align="center">多数の著者からなる査読論文を引用</td></tr> <tr><th>ゲーム障害論争<br />への対応と根拠</th><td>ゲーム障害への対策が必要<br />(根拠となるリスク分析は不明)<br />(委員によって異なる)</td><td>ゲーム障害を理解するためのエビデンスが不足<br />学会論争での国際声明を引用<br />ジュネーヴに代表常駐</td></tr> </tbody></table> <p>世界のゲーム業界団体に日本が合わせる必要はないが,日本だけは異なる文化を持っていることを示す必要はあるだろう.</p> <h3>過去の成功体験</h3> <p>&nbsp; ここまで読むと日本の業界団体が問題を抱えているように思われるかもしれない.だが本論の視点では,国内ゲーム業界団体がその他の国々のゲーム業界団体とは異なる行動をとったのは,独断専行やミスによるものではない.むしろ過去の成功に基づいた合理的な判断だった.これは単純な問題ではない.</p><p> かつて日本のゲーム業界団体は,ゲーム業界が健全な業界であることを社会に示すために,世界のレーティング機関を調査し,のぞみうる最高のレーティングのあり方について学界に調査報告を依頼したことがある.その結果は学術書として大学出版局から出版され(<a href="https://doi.org/10.32165/jasag.13.1_80" target="_blank">当時の書評記事</a>),ゲーム業界団体とは独立した第三者機関としてのCEROの方向性を決定づけた.つまり研究チームへの調査依頼によって,日本のゲーム業界団体は当時の世界でもっとも(政治学的に)望ましい形のレーティングの仕組みを構築・説明できた.今回の専門家委員会への依頼もこうした過去の世界的な成功体験からふりかえると,合理的な判断だったと言える.(前回と同じパターンだとすれば,最終報告は学術書として出版されるかもしれない.)</p> <h3>グローバル対応のための提言</h3> <p>  いま起きているのは,日本のゲーム業界団体が間違ったことをしたわけではなく,成功にもとづく合理的な判断のために,新ルールでは世界から消えてしまうという複雑な事態だ.だがその反面,論争のどこを押さえていなかったか,どこに国内外ギャップがあるのかを特定して対応をとることは可能だと考えられる.以下に国内外ギャップの主なポイントをあげておく.</p><dl> <dt>1. 国内大学の研究力弱体化への対応: </dt> <dd>CERO設立前と2020年代では,大学の研究力が落ちており,国際的水準の研究を続けられる環境でなくなりつつある.特にゲーム研究では国内トップの研究リーダーをそろえても,その研究リーダーの目となり耳となる若手中堅世代がごっそり抜けている.この研究環境の変化を踏まえて,大学の専門チームに研究調査を依頼するには,過去の反復を超えて,単独チームではなく分野別チームを複数組織した方が確実だろう.余裕がなければ,報告書の強化材料として,本記事上記の表1,2だけでも使ってほしい.</dd> <dt>2. ゲーム業界団体の産学連携への対応: </dt> <dd>世界のゲーム企業が産学連携を進めるとともに,ゲーム業界でも博士人材が活躍し意思決定に関わるようになった(前編を参照).さらにオンライン公開される論文誌(オープンアクセスジャーナル)が速やかに活用され,論争のスピードと可視化も進んだ.これは毎日ゲームのことを考えている研究者にはいいことだが,それを報告にまとめるとなると労力がかかる.おそらく報告書よりも最新論文に基づく合意形成がこれから進み,合意形成に賛成するにせよ留保するにせよ別団体を立ち上げるにせよ,論文でコミュニケーションできる人材が必要になる.<br /> ゲーム業界団体は学者に1年後の報告書を依頼するよりも,グローバルな研究ネットワーク(GDC, HEVGA, あるいは個人的つながり)につながる学者との定期的な連携関係強化を進めた方がよいだろう.</dd><dt>3. CEROの制度設計の再確認</dt> <dd>自主レーティングが重要な役割をもっていることはWHO周辺においても変わらない.そして日本のCEROが学術調査に基づいて設置されたことは当時では最先端の取り組みだった.だが,それが海外において無視されるのは非常にもったいない.あらためてCEROの今日における比較や強みを世界に説明する必要があるのではないか.</dd><dd> 特に(国際動向とは関係ないが)CEROは法的な影響力を持つことになった.今年の<a href="https://www.pref.tottori.lg.jp/28423.htm" target="_blank">鳥取県青少年健全育成条例</a>ではCERO Z指定が有害図書類扱いとなったために,安心してプレイできるゲームをおすすめしてきたゲーム好きのCEROボランティアが<b>図書発禁の決定の片棒をかつがされる</b>という心外な状況が発生してしまった.CEROはボランティアベースでありすべての要望に応えるのは難しいだろうが,ボランティアであるがゆえに理想を語れる組織でもある.CEROの理念と制度を国内外に再発信する時期ではないだろうか.</dd></dl> <p>本記事で見てきたギャップを一見すると,<span data-offset-key="c4vj9-0-0"><span data-text="true">日本のゲーム業界団体はジュネーヴに声を届ける手がかりを失ったように見える.だが,本記事で見たように,日本以外の業界団体が重要論文にもとづく意思表明をするようになったのは最近のことに過ぎない.したがって日本の業界団体もこれまでの有識者委員会報告書にもとづく自主規制を否定したり断念する必要はない.これまでの積み上げに加えて,さらに進行中の学術論争を意思決定にとりいれることは可能なはずだ.</span></span></p><h3>付記: ゲームへの社会的批判とIGDA</h3> <p>  最後に,本ブログの本家であるIGDA(International Game Developers Association, 国際ゲーム開発者協会)の立場について説明します.IGDAは業界団体(企業の代表)ではありません.企業の枠を超えたゲーム開発者の草の根団体(grassroots community organization)です.IGDAが設立された経緯については,IGDA日本支部の<a href="https://www.igda.jp/?page_id=316" target="_blank">ウェブサイト</a>でIGDA20周年記念講演のスライド日本語版と講演内容の日本語訳が公開されています.また,記念講演は日本語でも報道されています(<a href="https://www.gamebusiness.jp/article/2014/03/24/9389.html" target="_blank">【GDC 2014】ゲームの社会批判に答えるにはプロの開発者団体が必要 ― IGDAの創始者が語る20年間の軌跡</a>).それらから,IGDA設立時の1993年当時は格闘ゲーム「モータルコンバット」が北米マスメディアで問題視され,「ゲームについて知識の無いポリシーメーカー(政治家)が法規制に走ろうとする時,専門家はどうすべきか?」という問題意識が高まったことがわかります.つまり米国のゲーム業界もはじめから社会的な活動をしてきたわけではなく,社会的な論争(特に<a href="https://doope.jp/2014/0332728.html" target="_blank">Brown v. EMA裁判</a>)のたびに説明責任を果たしてきた蓄積の上にいまの活動があります.</p><p> IGDAの日本支部であるNPO法人IGDA日本が香川県条例に<a href="https://www.igda.jp/2020/02/03/10740/" target="_blank">反対コメントを提出</a>したのにもこうした背景があります.ゲームへの社会的批判に対して業界団体とは異なる視点から貢献できることを願っています.(なおこの文章の責任は主筆の山根にあります.)</p> <p></p>S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]1tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-21907368705184890952022-05-01T20:47:00.003+09:002022-05-02T02:12:13.231+09:00GDC22アカデミックレビュー: ゲーム開発者の過去と未来<p>アカデミック・ブログ主筆の山根です.<br /> 毎年サンフランシスコで開催されるGDC(Game Developer Conference)は,世界最大のゲーム開発者のカンファレンスです.あまりにも大規模なのでどのセッションが「当たり」だったのか1社だけではカバーできず,企業を超えた情報交換も生まれています.IGDA日本が開催してきた現地でのパーティーや国内でのGDC報告会もそうした情報交換の場ですが,今年もコロナのために開催できません.そこで本稿では,情報交換をしていないやや特殊な視点から,「他ではできない体験」という観点から私的なふりかえりをおこないたいと思います. </p> <p> 今年のGDC22は,3月にサンフランシスコ現地開催とオンラインでのバーチャル開催とのハイブリッド形式で開催されました.数百件のセッションの中でも話題を集めたものは,公式ウェブサイトで紹介されています(<a href="https://gdconf.com/news/check-out-these-amazing-gdc-2022-highlights-part-1" target="_blank">Part1</a>, <a href="https://gdconf.com/news/check-out-these-fantastic-gdc-2022-highlights-part-2" target="_blank">Part2</a>).また日本国内でも<a href="https://togetter.com/li/1854387" target="_blank">ツイートまとめ</a>が作られたり,今年は過去のGDC参加者が新たな<b>メタバース</b>系に注目した<a href="https://metaready06.peatix.com/" target="_blank">GDC報告会</a>も開催されました.本稿ではこれらの範囲をすべてカバーすることはできないので,国際学会でもIT系カンファレンスでもない,<b>GDCならではの発表</b>という観点から2つのセッションを選んでみます.</p><a name='more'></a> <p> GDCでなければ体験できないものは,同業者との夜のパーティー,「当たり」の講演で高揚した雰囲気,<a href="https://www.famitsu.com/guc/blog/shin/5487.html" target="_blank">西海岸文化</a>など,いくつかあげることはできますが,今回は日本から遠隔参加した立場から,<b>ゲーム開発者の「過去」と「未来」という2つの点</b>で印象に残った2セッションを紹介します. </p> <h3>1: Experimental Gameplay Workshopの20年</h3> <p> GDCの名物企画,「Experimental Gameplay Workshop」が20年を迎えました. <a href="https://www.igda.jp/2022/03/03/12280/" target="_blank">IGDA日本でもGDCプレスリリースを紹介しました</a>が,実験的ゲームが展示されるEGWは「ゲーム開発者の仕事は新しいゲームをつくること」という点では,もっともゲーム開発者らしいセッションだと言えます.20周年ということで「過去のふりかえりがあるかも」と思いましたが,過去のゲームには用はないとばかりに未知のゲーム体験を求める例年どおりの2時間でした.(個人的には<a href="https://twitter.com/yongminparks/status/1480948267026620419" target="_blank">2Dガンカタ</a>が笑えました.) </p> <p> Experimental Gameplay Workshopは,ゲームスタディーズのフロントランナーであるJesper Juulの新著『<i>Handmade Pixels</i>』によって,インディーゲームの歴史的イベントとしての学術的評価が高まりましたが,かつて日本のゲームが海外の開発者や研究者に衝撃を与えた場でもあります.これはJuulも本の構成におさまらず言及していないので,日本とアメリカのゲーム開発の交流という視点も含めたExperimental Gameplay Workshopの20年について,今月のIGDA日本のライトニングトークで<a href="https://www.igda.jp/2022/04/28/12594/" target="_blank">報告</a>しました. </p> <h3>2: GDC22でのゲーム開発者の新たな挑戦</h3> <p>20年の歴史の話の次は,未来についての話です.GDCを特別なものにしていると個人的に感じているのは,「この時代にこの社会でゲーム開発者は何をすべきか」と開発者自身が問うセッションがあることです.これこそがGDCをその他の大規模な勉強会と区別しているところではないかと思います.</p> <p> 歴史を遡ると,ゲーム開発者は<b>ゲームの暴力問題</b>,<b>ゲームの依存症問題</b>で社会的に批判され,それに対して活動を起こしてきましたが,GDCがそのインキュベーター役を果たしています.たとえば1990年代にゲームが暴力の原因であるとしてゲーム開発者が反論の機会を得られずに攻撃されていた状況に対して,アーネスト・アダムズ(著書邦訳あり)がIGDAを立ち上げましたが,その呼びかけの場になったのが,クリス・クロフォードが自宅で開いていたComputer Game Developers' Conference(のちのGDC)です(これについては,IGDA日本のウェブサイトに掲載されている<a href="https://www.igda.jp/?page_id=316" target="_blank"> IGDA20周年記念講演 in GDC</a>に詳しい).また,WHOがICD-11でgaming disorderを分類したときに多くの心理学者がGDCに招かれるとともにゲーム開発者は何をすべきか,というセッションが開催され,それらのGDC講演は次々とYouTubeで公開されたことで大いに参考になりました.その直後の2020年の香川県条例の際に香川でゲームジャムを開催しましたが,その<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html" target="_blank">直前記事</a>はGDCの資料を解説したようなものです.そしてGDC22では,<b>パンデミック後の開発者</b>について開発者自身が自らの未来について語るセッションが開催されました. </p> <p>ゲーム開発者の今後を語るセッションとして注目したのが,GDC22で最大の人数が収容できるメインステージで開かれた「開発者たちのルネサンス」(The Developer's Renaissance)です.パンデミックによってゲーム開発者がどのように変化し,新しい一歩を踏み出したのかを3人がオムニバス形式で発表するセッションで,週休3日制や社内の障害者やマイノリティ,社会起業やゲームジャムなど幅広い内容を扱うこのセッションは,4月にYouTubeでも公開されました.</p> <div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><iframe allowfullscreen="" class="BLOG_video_class" height="266" src="https://www.youtube.com/embed/hz0g9MqSkwo" width="320" youtube-src-id="hz0g9MqSkwo"></iframe></div><br />&nbsp;<p></p><p>このセッションについては,長いGDC取材歴を誇る奥谷海人氏がわかりやすいレポートを書いています(「<a href="https://www.4gamer.net/games/036/G003691/20220404001/" target="_blank">GDC 2022で見えてきた,“現実”と直面するゲームデベロッパ</a>」).「どうやってコロナ禍以前に復旧するか」ではなく「コロナ禍を乗り越えてこれからどうルネサンス(新生)するか」という未来志向に刺激を受けました.そして3人の登壇者の中でもとりわけ大きな転身をとげてきたのが,上記YouTubeビデオの42:30からはじまる最後の登壇者,Mike Wilsonです.こちらの講演も奥谷海人氏が(ジョン・ロメロの過去の講演も参照しつつ)力強い記事「<a href="https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20220328108/" target="_blank">Devolver Digitalの設立者,マイク・ウィルソン氏の縦横無尽な経歴。そしてメンタルヘルス問題に取り組む新たな試みとは</a>」を書いている.この記事にも出てくるように,マイク・ウィルソンはid software, Devolver, Take Thisとゲーム業界を変える新組織に関わってきた(Develverには面白い目利きのエピソードが多いですが,日本でも<a href="https://www.gamebusiness.jp/article/2016/03/16/12100.html" target="_blank">学生が作ったDownwellのプロトタイプ動画をTwitterで見かけて契約した</a>という目利きで有名です.またTakeThisについては,本ブログの「<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/06/blog-post.html" target="_blank">パンデミック下の不安に応えるゲーム専門家</a> 」でも紹介しています). </p> <p>そしてマイク・ウィルソンの講演の最後にゲームジャムシーンともコラボする<b><a href="https://www.deepwelldtx.com/gamejam" target="_blank">メンタルヘルスゲームジャム</a></b>について発表がありました.「これまでにも賞金が出るシリアスゲームのゲームジャムはあったけど,何が違うの?」と思われるかもしれない.また「すでに長期間の実験を行って認可を受けたゲームが医療現場で使われているのに,素人が短期間で健康ゲームを作るのに意味があるの?」と疑問に思われるかもしれない.もちろん賞金もでますが,このゲームジャムの目的は単に健康ゲームを増やすだけではありません.実はメンタルヘルスゲームジャムのプランには,産業界のリーダーとの交流や,パンデミック後のメンタルヘルスについて表立って語れない社会的風潮に一石を投じるようなゲームも含まれています.「ゲームで心身をよりよくしていこう」というメッセージを発信し「大企業ではない少人数チームが成功できる」と目利きのDevolver創業メンバーと世界を変えたGlobal Game Jamが言うのだから説得力があります. </p> <div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><iframe allowfullscreen="" class="BLOG_video_class" height="266" src="https://www.youtube.com/embed/vRdT0tJAD1c" width="320" youtube-src-id="vRdT0tJAD1c"></iframe></div><br />新会社DeepWell Digital Therapeutics (DTx) のプロモーションビデオ.産業界のベテラン・脳神経科学の博士人材ら参加メンバーの抱負に加えて,最後にI can't wait to tell the world that games are good for youでしめくくる. <h3>いよいよメンタルヘルスゲームジャム開幕</h3> <p> こうしてGDCメインステージで発表されたメンタルヘルスゲームジャムはメイデイ(5月1日)から5月22日まで開催されるオンラインのゲームジャムで,メンタルヘルスに限らずフィジカルでも健康に働きかけるゲームを開発します.そして欧米時間の5月1日(日本時間の5月2日月曜日<strike>午前3時</strike><b>午前2時</b>)にオープニングイベントが(Global Game Jamの参加者におなじみの)<a href="https://twitter.com/globalgamejam/status/1520264906536366080" target="_blank">TwitchのGlobal Game Jam公式チャンネルで配信される予定</a>です. </p> <h3>まとめ: ゲームは現実をよい方向に変えることができる</h3> <p> 本記事ではGDC22で個人的に印象に残ったセッションから,過去と未来の展望を紹介しました.GDCには独自の文化があり,最先端の研究開発動向はトップスクールで学ぶことができたとしても,それでGDCに参加する価値が減ることはありません.そしてゲーム開発者の未来について考えたり,開発者の挑戦を知ることができるのは類似のテックカンファレンスには見られない特徴だと思います. </p> <p> アーネスト・アダムズは,上記のGDC講演の中で,社会的パニックによって世界各国のゲーム開発者が攻撃される未来を予想しました.そしてそれと同時に,米国の経験を生かした開発者コミュニティによって世界各地で開発者を守る活動が進むとも考えていました.日本から見てもこの予想は外れていません. </p> <p> 日本でも,この2年でパンデミックによる不安を煽る報道が増えました.「パンデミックで生徒のパソコン利用時間が増えて依存症につながるおそれがある」とか(eラーニングを活用する学校へ圧力がかかった),「ゲームは麻薬と同じである」という中国共産党の公式見解を<a href="https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/episode/te/M329MWY1M5/" target="_blank">日本の国立機関や公共放送も批判を省略して一方的に紹介しています</a>.こうした状況でオンライン参加したGDC22は,ゲームは人に力を与え社会を変える力があること,それは少人数チームでもできることだという心強いメッセージが残りました. </p> S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0Tokyo, Japan35.6803997 139.76901747.3701658638211569 104.6127674 63.990633536178848 174.9252674tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-30657256991898167532022-01-03T02:22:00.011+09:002023-03-28T16:34:47.782+09:002021アカデミック・レビュー: ゲーム学における最大の論争(上)<p>アカデミック・ブログ主筆の山根です.あけましておめでとうございます.</p><p>本サイトはゲーム研究・ゲーム教育について情報発信を続けてきましたが,2021年の更新は停滞していました.これはコロナ禍によってIGDA日本の勉強会(および懇親会)が開けなくなったことも大きいですが,本アカデミックSIGにとっては,執筆以外の活動が増えた1年でした.具体的には,「gaming disorder」(ゲーム症,ゲーム障害,ゲーミング障害,執筆時点で公式日本語訳は未定です)についてウェブでの情報発信よりも直接的な社会的活動に終始した1年でした.2021年を振り返るこの機会に,ゲーム研究で最も問題となった概念の一つであるこの議論の経緯をまとめてみます. <!--<h3>2021年の主要出版ニュース</h3> 筆者の独断で選ぶニュースは以下の通り. <ul> <li><a href="https://www.ferc.jp/" target="_blank">福岡eスポーツリサーチコンソーシアム(FeRC)</a>が2020年に発足,2021年に『<a href="https://www.ferc.jp/news/hon20211207/" target="_blank">eスポーツの科学</a>』を出版</li> <li>『デジタルゲーム研究入門: レポート作成から論文執筆まで』が2020年に出版,2021年に<a href="https://twitter.com/chimarisan/status/1426346803838943234" target="_blank">増刷決定</a></li> </ul>--> </p><p>2021年,IGDA日本アカデミックSIGの名前を出しての著述活動は以下の通りです.<span></span></p><a name='more'></a><p></p> <ul> <li>「<a href="https://www.academia.edu/44941445" target="_blank">ゲーム開発はICD–11をめぐる分断を乗り越えることができるか</a>」情報処理学会Technical Report, <a href="http://id.nii.ac.jp/1001/00209255/" target="_blank">2021/02</a>. </li> <li>「香川ゲーム条例:ゲーム産業に与えるインパクト」(<a href="https://www.sf60.jp/convention/" target="_blank">第60回日本SF大会</a>, 香川県高松市にて)<br />(企画説明から引用)2020年4月に施行された「ゲーム規制条例」。これがゲーム産業に与えたインパクトを、アカデミアからゲーム研究者、議会からは国会議員、地方議員をお招きして、これまでとこれからを語る。 2021/08</li> <li>「香川県ネット・ゲーム依存症条例現地民シンポジウム」(第60回日本SF大会, 香川県高松市)<br />こちらのシンポジウムには地元テレビ局の取材が入り,報道されました.<a href="https://news.ksb.co.jp/article/14423925" target="_blank">ゲーム条例制定過程の問題点「全国で共有を」 高松市でシンポジウム</a>(KSB瀬戸内海放送,2021/8/23) </li> <li>Synodos対談「<a href="https://synodos.jp/opinion/society/27424/" target="_blank">ゲーム障害は臨床的に必要な概念なのか?――病理化、スクリーニング、モラルパニック</a>」(山根信二×井出草平)2021.10.29</li> <li>Yahooニュース インタビュー <a href="https://news.yahoo.co.jp/byline/shigiharamorihiro/20211229-00274086" target="_blank">「ゲーム依存症」実は正式な病名ではない 非公式な独自解釈が生む危険性とは</a>(鴫原盛之)2021/12/29<br /> 同日に配信された「山田太郎のさんちゃんねる 【第477回】」の24-33分でも,山田議員が「依存症という言葉は不適切である」「disorderはdisease(illness)ではない」という同趣旨の説明をしています https://www.youtube.com/watch?v=AVqTK3iVoTQ</li> </ul> <p>(この他の仕事として,<a href="http://id.nii.ac.jp/1001/00209895/">ゲーム開発者初年次教育</a>と『<a href="https://www.ferc.jp/news/hon20211207/" target="_blank">eスポーツの科学</a>』もありますが,それらは単独での仕事ではないので省略します.)ただしこれらの論争の中では,情報源を示してもその発表場所や学会の意義については説明してこなかったので,それら英語情報をどう信用すればいいのかわからないところがありました.そこで,以下では,これまでの現場での発言では紹介してこなかった論争シーン全体を筆者の視点からふりかえってみます. </p> <h3>香川県条例の論争を構成した多様な参加者</h3> <p>香川県のネット・ゲーム依存症対策条例が2020年4月に施行されましたが,本ブログはその背後にあった論争を紹介し,さらにゲーム開発者への無理解をのりこえるために2020年1-2月のパブリックコメント期間に香川県でゲームジャムを開催すると<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html" target="_blank">記事にしました</a>.そしてその後パブリックコメントの水増し疑惑で条例の成立過程が<a href="http://game.ksb.co.jp/" target="_blank">全国的ニュース</a>になり,この問題に議論や透明性が欠けていたことが多くの方々に知られるところとなりました. </p> <p> こうして地方議会の問題が全国的な注目を集めるまでには,複数の異なる問題意識を持った参加者が関わっています.<a href="https://icc-japan.blogspot.com/2020/03/blog-post.html" target="_blank">コンテンツ文化研究会</a>による情報公開や勉強会,地元メディアやネットメディアが行った<a href="https://twitter.com/y0he1_yamash/status/1397916296780476419" target="_blank">調査報道</a>,それ以前から繰り返し<a href="http://www.takashikiso.com/archives/10185416.html" target="_blank">警告されてきたゲームの悪影響報道への警戒</a>.こうした異なる視点が香川県条例に持ち込まれていましたが,当方の立場としては<b>ICD-11をめぐる産学の国際的な論争</b>を念頭に置いて議論に参加していました.この国際的な議論についてもこれまで国内での説明が無かったので,以下に整理してみます.</p> <h3>学会での議論</h3> <p>gaming disorderの論争でもっともよく知られているのは,第一線の研究者による共同声明とそれに続く<b>誌上討論</b>(ディスカッションペーパー)でしょう.以下に論争の主な記事とそのまとめを紹介します.</p> <ul> <li>26名の学者による公開声明(2017)「<a href="https://doi.org/10.1556/2006.5.2016.088" target="_blank">Scholars’ open debate paper on the World Health Organization ICD-11 Gaming Disorder proposal</a>」<br />これは心理学のクリス・ファーガソンやシュビルスキー(Andrew Przybylski),UNICEF研究部門のKardefelt-Winther,デジタルヘルスケアのVan Rooij,論集『<a href="https://doi.org/10.4324/9781315736495" target="_blank">Video Game Debates</a>』の編者Rachel Kowert,<a href="https://web.archive.org/web/20071022090305/http://www.igda.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=47" target="_blank">90年代のゲーム研究のパイオニア</a>で<a href="http://gamestudies.org/0101/editorial.html" target="_blank">ゼロ年代のゲームスタディーズのたちあげリーダー</a>だったエスペン・オーセット(Espen Aarseth)も加わった<b>オールスター共著論文</b>です(以下,人名はすべて敬称略).最大手の業界団体ESAのウェブサイトで<a href="https://www.theesa.com/resource/scholars-open-debate-paper-on-the-world-health-organization-icd-11-gaming-disorder-proposal/" target="_blank">紹介</a>されました.</li> <li>続報(2018)「<a href="https://doi.org/10.1556/2006.7.2018.19" target="_blank">A weak scientific basis for gaming disorder: Let us err on the side of caution</a>」ESAもふたたびウェブサイトで<a href="https://www.theesa.com/news/preeminent-researchers-and-scientists-oppose-whos-proposed-video-game-action/" target="_blank">紹介</a>します.そしてヨーロッパや各地域の業界団体ISFEもウェブサイトで<a href="https://www.isfe.eu/news/scientists-oppose-%E2%80%A8whos-proposed-video-game-action-%E2%80%A8/" target="_blank">論文へのリンクを示しながらWHOに反論します</a>.</li> <li>有志による応答(2018)「<a href="https://doi.org/10.1556/2006.7.2018.59" target="_blank">Including gaming disorder in the ICD-11: The need to do so from a clinical and public health perspective</a>」(<a href="https://ides.hatenablog.com/entry/2021/05/17/000939" target="_blank">日本語紹介</a>)<br />久里浜医療センターのスタッフやキング,WHOで行動嗜癖を担当するポズニャックも名を連ねる<b>オールスター反対論文</b>です.</li> <li>これらの議論を分析した「<a href="http://www.digra.org/digital-library/publications/meta-analysis-and-systematic-review-of-recent-literature-on-gaming-disorder/" target="_blank">Meta-analysis and systematic review of recent literature on gaming disorder</a>」(2019)は<a href="http://www.digra2019.org/" target="_blank">DiGRA2019京都</a>で発表され,日本で開かれた国際会議で海外研究者が日本の機関の言説を批判していたので個人的に印象に残っています.</li> <li>この論争の論点をgaming disorder推進の立場でまとめたキング&デルファブロ著の学術書『<a href="https://www.fukumura.co.jp/book/b527780.html" target="_blank">ゲーム障害: ゲーム依存の理解と治療・予防</a>』(邦訳2020,重版2021)(日本語寸評「<a href="https://hiyokoya.hatenadiary.jp/entry/2020/12/25/224119" target="_blank">Critique of Games メモと寸評</a>」井上明人, 2020-12-25)</li><li>英国心理学会の学会誌『The Psychologist』(2021) 編集長インタビュー「‘<a href="https://www.bps.org.uk/psychologist/imagine-having-debate-about-addiction-glass-bottles-and-no-one-cared-what-was-inside" target="_blank">Imagine having a debate about addiction to glass bottles, and no one cared what was inside the bottle</a>’」(24 November 2021)で,オクスフォード大学のシュビルスキー教授が「日本のある県では,子どものビデオゲームプレイ時間を保護者が制限するよう県条例で定めている」と発言.</li></ul> <p>これらのgaming disorder論争とその余波を見ると,以下の点が特長的です: (1)オープンアクセスジャーナル(記事が無料公開されるオンライン論文誌)で論争することで世界中に公開されていた.(2)論争のどちら側も単独著者ではなく,国際的なオールスター研究者の共同執筆体制ができている.(3)gaming disorderに慎重な立場のディスカッションペーパーが出たら,米国ゲーム業界団体ESAが速報する体制ができていた. </p> <p>これらの学術論争は当時の<b>日本の学会メディア</b>では伝えられることはありませんでした.(これは研究コミュニティがこの論争を意図的に無視したわけではなく,後述するように日本では国内ゲーム関連学会の国際化機能が弱く,それに対してオンラインコミュニティの個人的な伝達の方が伝播力が強く学会よりも先に広まってしまうためです.)<b>唯一の例外</b>が,この論争に参加した共著者の一人,久里浜医療センターの樋口院長の<a href="https://www.jmsaas.or.jp/wp-content/uploads/newsletter_pdf/jmsaas4-1_compressed.pdf" target="_blank">学会誌</a>の報告で,そこではWHO採択前に起こったことして,「世界のゲーム業界がこの件に気付いたのです。<b>様々な方法を使って、業界がこのゲーム障害収載の阻止に動いています</b>」と報告されていました.これを読んだときは「アカデミックな大論争を無かったことにするのか?」と思いましたが,確かに特長(3)を相手側から見ると,世界各地のオールスター研究者が共同声明を出し,それをゲーム業界団体が即座に利用するというのは連携が上手すぎてあやしい.世界各地の研究者がゲーム業界団体の手先になって共著論文を書いて,それがゲーム業界の批判キャンペーンの根拠として使われているような印象を抱いても不思議ではないでしょう.しかし,各地の第一人者の問題提起をゲーム産業の策謀であると考えるのは現実的ではないでしょう.むしろゲーム業界が英語論文を正しく活用しているのならそれは傾聴に値するのではないかと本論では考えます.</p> <p>さて,このように多くのの分野にまたがる国際的な議論が行われましたが,結局のところ学者の間で決着がついていない状態でICD-11草案が採択されました.このことは地球規模の混乱を起こすのではないか,そしてICD-11の公式日本語訳ができて有効になる前に,いちはやく独自解釈の予防法を施行した香川県条例は,そのトップランナーだったのだと筆者は考えています. </p> <h3>ゲーム・エンタテインメント専門家コミュニティでの議論</h3> <p>gaming disorderをめぐる国際的な論争は,上記の誌上討論だけではありません.海外のゲーム開発者の勉強会やゲーム教育の専門家コミュニティでも解説・現状分析・提言が行われてきました.主な英語勉強会・ゲーム開発者団体・日本語情報を列挙します.</p> <ul> <li>2017.03: GDC17: Throwing Out the Dopamine Shots: Reward Psychology Without the Neurotrash 「ドーパミン説を捨てよう: ニューロトラッシュ(脳神経のゴミ広告)抜きで報酬の心理学教えます」https://www.youtube.com/watch?v=xkg9ocYDLr8<br /> 世界最大のゲーム開発者の勉強会である<a href="https://gdconf.com/" target="_blank">GDC(Game Developers Conference)</a>では数多くのセッションが行われますが,これはその一つ,Epic Gamesで働く報酬心理学の博士による講演で,大会後に動画が無料公開されています.</li> <li>2018.01: <a href="https://hevga.org/higher-education-video-game-alliance-opposes-world-health-organizations-gaming-disorder/" target="_blank">Higher Education Video Game Alliance Opposes World Health Organization’s ‘gaming disorder’</a><br /> ゲームの学位プログラムを持つ大学が集まるHEVGA(ビデオゲーム高等教育機関連合)による声明(<a href="https://anotherway.jp/archives/hevga-who-translation-jp.html" target="_blank">藤本徹による日本語訳</a>)</li> <li>2018.01: IGDA(国際ゲーム開発者協会)ディレクターブログ「<a href="https://members.igda.org/blogpost/1016423/292620/The-WHO-s-Gaming-Disorder-Proposal-is-a-Danger-to-IGDA-Members" target="_blank">The WHO’s Gaming Disorder Proposal is a Danger to IGDA Members</a>」</li> <li>2018.10: <i>CHI Play '18</i> 基調講演 <a href="https://dl.acm.org/doi/10.1145/3242671.3242715" target="_blank">Sex, Lies and Videogames: Why Videogames Still Struggle to Overcome Moral Panic</a>「ビデオゲームがいまだにモラルパニックを乗り越えるのに苦しむ理由」,クリス・ファーガソン<br />最大最古のコンピュータ学会ACMの中でもゲームに関する発表が多い国際会議<a href="https://sigchi.org/conferences/conference-history/chiplay/" target="_blank">CHI Play</a>の基調講演で論争の主要著者の一人が登壇しました.</li> <li>2019.03: GDC19: When the Fun Stops: The Science of Addiction「楽しさが止まるとき: 中毒の科学」,アンドリュー・シュビルスキー https://www.youtube.com/watch?v=vVwu4RDChsY<br />同じく論争の主要著者がGDCでゲーム開発者に向けて登壇.<br /> </li> <li>2019.03: GDC19: Ethics in the Game Industry セリア・ホデント「ゲーム産業における倫理とは」https://youtu.be/V3PiM1y3jRI <br /> 邦訳本もある心理学者がICD-11でのgaming disorderについて「No Consensus」(科学者のあいだでも統一された見解がない)と紹介.</li> <li>2019.03: GDC19: <a href="http://lgrace.com/gamesadvocacy/" target="_blank">Under the Fire: How to Publicly Discuss &amp; Promote Games</a>「戦火の下で: ゲームを公に議論し、促進するには」,<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html" target="_blank">当ブログ</a>でも「GDC19でのパネルディスカッション」として紹介しました. </li> <li>2021.08: GDC21: How the Industry Can Change the "Games Are Bad" Narrative. レイチェル・コワート「産業界が『ゲームは悪である』語りを変えるには」 https://www.youtube.com/watch?v=iH7FfRwgJwc</li> </ul> <p>これらの学会討論以外の場で行われたコミュニケーションの特長としては,(1)英語圏ではゲーム業界団体(ゲーム会社の団体である)ESAとは別に,ゲーム開発者の勉強会やコミュニティでも問題提起が行われている,(2)声明を出すのも業界団体(大企業の代表)だけでなく,ゲーム開発者教育のHEVGA,ゲーム開発者団体のIGDAといった関連団体が学者の論争を参考にした声明を出している,(3)心理学博士が数多くGDCで講演し,それが無料公開されることで心理学の最前線とゲーム開発者コミュニティがつながっている,(4)研究者の講演の内容も,論争紹介にとどまらず,「なぜ娯楽の中でゲームが叩かれるのか」といった論争相手の分析やパニックを起こす現代社会の分析,職業倫理やデータ活用といった今後の提案まで話題をひろげている,ということがいえます.</p> <p> そして日本との最大の違いは,GDC17講演に見られるように,大手ゲーム開発会社が報酬心理学の博士人材をリクルートしており,脳神経科学でどこまで解明されて,<b>どこまでが仮説段階や誇大広告なのか</b>という知見や,ゲーム企業が今後の解明に協力できるのではないかという提言までも業界内外で(ライバル企業だけでなく)公開できることでしょう. </p> <h3>企業団体と開発者コミュニティとの両輪でまわすゲーム論陣</h3> <p>この1年で「日本のゲーム業界は海外のゲーム業界のように情報発信すべき」という意見をよく聞きました.ESA CanadaがWHOとコラボするとか,ESAがワシントンオフィスを構えるといった社会活動は確かに素晴らしい.しかし本稿でここまで見たように,ESAはgaming disorderについて独力で批判を展開したわけではなくオープンアクセス論文に依存しています.<br />ですから,重要論文とそれをフォローできる人材がいなければ,業界団体だけの活動では折り目正しい批判ができないでしょう.また,ESAだけでなく勉強会や教育団体の活動が社会的な理解を深めたり日本語での紹介に繋がったことも見逃せません.業界のトップだけではなく,関連業界も含むゲーム開発者コミュニティ全体で最新知識にもとづくゲームの探求を進めていくことが重要でしょう.</p> <p>次の記事では,後編として,ゲーム開発者コミュニティのボトムアップの社会活動から学んだことについてまとめます.アメリカで業界団体ESAができる以前にゲーム開発者はモラルパニックにどのように立ち向かったのか,ヒトの脳の仕組みが解明できていない状況で教科書は報酬の心理学についてどう教えるべきか.これらのアメリカのゲーム産業の経験は現代日本にとっても参考になると考えています. </p> S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]1tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-91955642673950523322020-12-22T23:30:00.037+09:002021-06-30T12:45:10.953+09:00書評『ゲームエンジンアーキテクチャ 第3版』<p>幹事の山根がIGDA日本のウェブサイトに<a href="https://www.igda.jp/2020/12/22/11349/" target="_blank">「書評『ゲームエンジンアーキテクチャ 第3版』: 待望の日本語訳がひらく次世代ゲーム開発」</a>を掲載しました.ベテラン開発者が実務家教員として大学で教えることで作られた本書は,実務家教員の役割と意義がわかる一冊です.&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-62144649417890288782020-07-13T13:15:00.003+09:002023-02-16T04:14:53.201+09:00Games for Change FestivalプレビューとG4Cの歩み 今年の<a href="http://www.gamesforchange.org/festival/" target="_blank">ゲームズ・フォー・チェンジ・フェスティバル(Games for Change Festival)</a> G4C2020 は7月14日(日本時間14日火曜深夜)-16日(日本時間17日金曜早朝)に開催される.特に今年はパンデミックにともない無料オンライン開催が決まり,日本からも視聴参加が容易になった.そこで本稿ではプレビューを行う. <br /> <h3> </h3> <h3> 個性的なニューヨークのゲームシーン</h3> <br /> <a name='more'></a> ニューヨーク市はゲーム産業の中でも独自の都市文化を持っている.年間を通じてゲーム関連の様々なイベントが開催されており,ゲーム企業だけでなく,中学高校・<a href="https://gamecenter.nyu.edu/about/new-york-city-games-community/" target="_blank">大学</a>・美術館・NPO・eスポーツチーム・そして市民がそれぞれゲームイベントに参画することで多様なゲームコミュニティが形成されている.こうしたニューヨークのゲームイベントの中でも最大級のイベントが今回紹介するGames for Change Festivalだ. <br />  このG4Cフェスティバルは「<a href="https://www.forbes.com/sites/melissarowley/2019/02/27/meet-the-woman-behind-the-sundance-for-video-games-immersive-media/" target="_blank">サンダンス映画祭のビデオゲーム版</a>」とも呼ばれ,大企業ができないようなゲーム,つまり娯楽以外のために作られたゲーム,小規模だからできるゲーム,非営利だからできるゲーム,そして社会的テーマを扱ったゲームのデモや開発者プレゼンが行われる.ただし大企業でも野心的なゲームはこれまでに<a href="http://www.gamesforchange.org/festival/awards/" target="_blank">G4Cアワード</a>で表彰されており,2018年のゲームオブザイヤーは<i>Life is Strange: Before the Storm</i>,2019年のゲームオブザイヤーは<i>Nintendo Labo</i>,参加者が選んだのは <i>Discovery Tour by Assassin’s Creed: Ancient Egypt</i>だった.<br /> <h3> G4Cのはじまり: Peace Maker</h3> もともとG4Cは1人の大学院生の課題作品からはじまっている.カーネギーメロン大学のエンタテインメントテクノロジーセンターは<a href="http://igdajac.blogspot.com/2009/11/randy-pausch.html" target="_blank">ランディ・パウシュの『最後の授業』</a>でも知られるゲーム高度専門家人材育成機関のパイオニアだが,そこで学ぶ学生が課題作品として<i>PeaceMaker</i>というゲームを開発した.この作品は<a href="http://igdajac.blogspot.com/2019/11/blog-post.html" target="_blank">『ゲームデザインバイブル』</a>第32章で「わたしが見てきた中で最も印象的だった事例」として紹介されている.これはイスラエルからの留学生が開発したゲームで,開発者はイスラエル軍の諜報活動に従事した元士官アシ・ブラクで,除隊後に留学したカーネギーメロン大学でパレスチナ出身の学生とはじめて議論した経験から,<b>紛争解決を目指すゲーム</b>を開発したという.そして開発したゲームを販売するだけでなくイスラエルに持ち帰り,国会議事堂で国会議員を対象にしたプレイテストを実施する.この様子はNHK「おはよう日本」ワールドリポートでも報道されている.<br /> <iframe allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/CDNABJFfWko" width="560"></iframe><br />  こうして社会問題を解決するゲームという研究をまとめたブラクは,その後,ニューヨークを拠点にゲームで社会問題を解決するための組織「Games for Change」を<a href="https://web.archive.org/web/20180304012027/https://globe.asahi.com/worldoutlook/2014121900005.html" target="_blank">たちあげ</a>,シリアスゲーム最大のイベントに成長させた.その後ブラクはG4Cのフロントマンからは一歩引いて,GDC2019期間中に新事業「Games for Change Accelerator」を発表している.これは社会的インパクトを与えるゲーム開発者と,投資家(社会投資家,XR投資家,ゲームの目利き)をマッチングさせる<a href="https://www.gamesindustry.biz/articles/2019-03-19-games-for-change-accelerator-to-offer-funding-and-support-for-social-impact-games" target="_blank">ゲーム開発資金サポート組織</a>だ. <br /> <h3> G4C2020の注目セッション</h3> GDC2020は無料配信されるが,視聴には<a href="http://festival.gamesforchange.org/" target="_blank">公式ウェブサイト</a>からのオンライン登録が必要だ.以下では個人的に注目しているセッションを紹介したい. <br /> ・「<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjAt/educational-vr-games-lessons-learned" target="_blank">Educational VR Games: Lessons Learned</a>」日本時間7/14 24:00-24:20<br /> <a href="http://igdajac.blogspot.com/2019/11/blog-post.html" target="_blank"> 『ゲームデザインバイブル』(原題: <cite>Art of Game Design</cite>)</a>第32章で変容のためのゲームを提唱したジェシー・シェルによる,アメリカの政府資金助成も受けた歴史教育VRゲームの開発経験談.<br /> ・「<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjCX/winning-against-pandemics-games-as-essential-tools-for-planning-and-response" target="_blank">Winning Against Pandemics: Games as Essential Tools for Planning and Response</a>」日本時間7/14, 25:15-26:15<br />  新型肺炎のパンデミックにおいて,ゲームは外出制限下の「ひまつぶし」だと思われがちだが,パンデミックに勝つためのゲームも存在する.まさにいま求められているゲームの開発者たちが登壇する.パネリストはそれぞれ有名な開発者なので略歴をチェックしてほしいが,彼らのゲームでもっとも知られているのはFoldItだろう.すでに国内でも「<a href="https://news.denfaminicogamer.jp/news/200311z" target="_blank">ゲームが新型コロナウイルスを止める可能性。ワシントン大学の博士が『Foldit』のプレイをゲーマーに呼びかけ、タンパク質の立体構造を用いたパズルゲーム</a>」(電ファミニコゲーマー2020)などで紹介されているが,新型コロナウィルスに取り組む前の実績を紹介した記事も多い. <br />  Nature Video: 研究者やハイスコアゲーマーへのインタビュー(字幕自動翻訳あり) <br /> <iframe allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/axN0xdhznhY" width="560"></iframe> <br />  TEDxVancouver - Seth Cooper - Play Games, Solve Disease <br /> <iframe allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/uBA0vKURH3Y" width="560"></iframe> <br /> ・「<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjEZ/g4c-chapters-asia-pacific-launch-announcement" target="_blank">G4C Chapters: Asia-Pacific Launch Announcement</a>」7/15, 4:35-4:40<br />  G4Cでは,新たにアジア太平洋支部がニュージーランドに開設される.日本のシリアスゲームの国際化ではアメリカに出品することを第一に考えてきた傾向があるが,これからは広域のコミュニティができるかもしれない.新支部についてはオープニングでも発表される予定だが,この枠では新支部長が紹介されるとともに,続くアジア太平洋ミーティングの案内も行われる予定だ. <br /> ・「<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjA7/games-and-moral-panic-2500-year-history" target="_blank">Games and Moral Panic: 2500 Year History</a>」7/17金曜日07:00 – 08:00<br />  最終日の目玉として,ゲーム研究のリーダーが集結したパネルディスカッションを紹介する.パネリストにはカナダ連邦に任命されたゲーム研究のリーダー,トップ校のデジタルヘルス研究ディレクター,HEVGA会長といったゲーム研究拠点の豪華メンバーがそろっている.<br />  彼らは自分の業績を語りにくるのではないし,いまさらゲームは世界を変えると自明のことを語るわけでもない.前回G4Cフェスティバル2018に集まったメンバーの再結成イベントと言えるが,2018年も「Moral Panic」がテーマだった.つまり,当時起こっていた<b>社会的なパニックとしてのゲームに対する非難</b>(米国内の銃乱射事件やWHOゲーミング障害をきっかけにしたもの)に対して学会トップが結集した行動だった.そこでは「なぜゲームは社会から攻撃されるのか」「ゲームを攻撃する人は何を考えているのか」を踏まえて,ゲームに関わる者はどう語るべきかを問いかけている.このパネルディスカッションは好評を呼び,翌年にゲーム開発者が集まるGDC19にも招かれて,講演動画や資料がオンライン公開されている(この内容はすでに本ブログで<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html" target="_blank">2020年1月に紹介している</a>(YouTube動画を日本語自動翻訳字幕で視聴可能).GDC19では近代の焚書やスポーツ 禁止令から続くゲーム焚書について説明していたが,今回は2500年前にさかのぼるということでモラルパニックのスケールがさらにひろがっている.<br /> <h3> その他</h3> この他にも,先日IGDA日本でもウェビナー講演したホデントを迎えた<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjAA/addressing-ethics-in-the-game-industry" target="_blank">ゲーム産業における倫理問題</a>,個人情報にまつわるプレイヤーの<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjCj/exploring-digital-rights-data-sovereignty-in-xr" target="_blank">権利保護問題</a>,<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjAG/raising-good-gamers-research-roundtable" target="_blank">ゲーマー研究の難しさ</a>,ナイアンティックの社会的影響部門長を迎えた<a href="https://g4c2020.sched.com/event/cjAJ/resilient-cities-play-and-the-return-to-public-space" target="_blank">都市計画のセッション</a>,そしてテーマごとのFunder(ゲーム開発を公募して出資する機関の代表者)による説明会など,幅広い講演が予定されている.これだけの発表が一堂に会するのはG4Cならではであり,ぜひ講演スケジュールの中に面白そうな題名の講演がないかチェックしてほしい. <h3>追記</h3><p>  G4C会期中に,ビデオゲーム高等教育連合 HEVGA(Higher Education Video Game Alliance) がフェローの発表を<a href="https://twitter.com/theHEVGA/status/1283810207852892160">行いました</a>.このフェロー制度は,ゲーム開発者教育を行う高等教育機関のリーダーを表彰するものです.HEVGAは過去にGDC期間中にフェローを発表・表彰していましたが,今回はG4Cでの発表となります.これにより,研究機関でゲーム教育にたずさわるリーダーが,G4Cコミュニティーにも認識されることになりました.ゲーム研究に取り組む研究者と,社会を変えるゲーム開発者とが場を共有することになりました. アナウンス動画: https://www.youtube.com/watch?v=PeowChp4VrI</p>S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-85455108401154874042020-06-01T20:56:00.002+09:002020-09-30T15:25:27.880+09:00パンデミック下の不安に応えるゲーム専門家ブログ主筆の山根です. <a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/05/ggj20.html">前記事「GGJ20以後のゲームジャムシーン 」</a>では,大きなゲームジャムがオンラインに移行することで国境を超えたチーム開発経験を積めるようになったことに注目しました.ゲームジャムはこれからも貴重な開発体験を積む場所になるでしょう.その一方で,ゲーム開発以外の人たちにとってパンデミックはどのような変化をもたらしたのでしょうか? 本記事では,ゲーム開発者以外の動向に注目し,パンデミックに伴う外出禁止がゲームにもたらした変化をまとめます.<br /> <br /> <a name='more'></a><br /> <h3> 不安にこたえる専門家団体</h3> 昨年にWHOがゲーミング障害を収載したことが報道され,診断が実施される前から「外出禁止中にゲームのやりすぎでゲーミング障害になるかもしれない」という<b>不安を抱く機会が増えている</b>.この不安に対して,どのようにプレイすればいいのかアドバイスすることが専門家に求められる. そこで北米の団体がいちはやく情報発信をはじめている.まず3月中旬にカナダ連邦のゲーム業界団体「ESA Canada」(日本のCESAに相当する)が,すべての親子がいっしょにビデオゲームをしようというメッセージを<a href="https://twitter.com/ESACanada/status/1239911978593914881">発信した</a>.その後,WHOアンバサダーと北米のゲーム企業が「#PlayApartTogether」キャンペーンを実施,さらにWHOは5月にも<a href="https://twitter.com/WHO/status/1261958842293850113">体を動かすビデオゲームをしよう</a>(#BeActive and stay #HealthyAtHome )キャンペーンを実施した.これらの組織キャンペーンでは,単にゲームの<b>プレイ時間の量</b>を制限するのではなく,<b>プレイの内容</b>(親子で遊ぶ,離れて遊ぶ,身体を動かす)を具体的に紹介しているのでわかりやすい.このようにゲームの遊び方を具体的に説明しているのは,ゲームの効果に関するリサーチをふまえていると考えられる.WHOが素早く対応した背景としては(1月に<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html">解説</a>したように)実際はWHOはゲームの医療応用に取り組んでおり,<span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">むしろゲーミング障害はWHOのゲームへの取り組みの中でもっとも</span><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0"><span class="css-901oao css-16my406 r-1tl8opc r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">学術的知見が</span>手薄な部分であり,こうしたゲーム活用こそ本来のWHOの本流の活動だとも言える.</span><br />  また,ESAのようなゲーム企業の業界団体だけでなく,<b>民間の非営利団体</b>もゲームに関する活発なオンライン活動をはじめた.この先駆けになったのは,Global Game Jam 2020の基調講演(日本語字幕あり)の先頭を切った非営利法人「Take This!」だろう.2020年1月のこの動画では心理学博士がゲームジャムを健康に過ごす方法について教えてくれる.<iframe allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/8sdcq7CbPsc?start=233" width="560"></iframe><br /> この「Take This!」は,以前からゲームスタジオやゲーマーコミュニティにでかけてメンタルヘルス講習会を実施してきた.そしてパンデミックがはじまってからは,いろいろな団体と協力しながらオンライン活動を推進している. たとえば5月にはXBoxをスポンサーに獲得して,IGDAと共同で<a href="https://www.takethis.org/2020/05/game-development-crisis-conference-schedule-announcement/">Game Development Crisis ConferenceをTwitch上で開催</a>,さらに他のゲーム関連非営利団体と合同で<a href="https://givebutter.com/stayinthegame">Stay in the Game Relief Fund</a>共同募金キャンペーンを展開するなど,オンライン配信の規模を拡大している.このように,パンデミックの期間中,企業と比べて身軽な非営利団体が活発にオンライン配信を行い,ゲームで健康に生活するというメッセージを発信しはじめている.ゲームを医療活動に活用したり,eスポーツ選手のケアをしている専門家は日本にもいるが,個々の専門家が連携協力している北米の取り組みは参考になるだろう. <br />  だが,ここまでのアピールは,ゲームのポジティブな効用を活用するきっかけになるが,ゲーミング障害にならないためのアドバイスをしているわけではない.各家庭の保護者にとっては,外出禁止の期間中にゲームのやりすぎにならないかという不安は残るだろう.そうした不安にこたえるために,研究者による一般向け情報発信を次に紹介しよう. <br /> <h3> 疑問に答えるゲーム専門家</h3> 研究機関に所属するゲーム研究者は,論文が主な発表手段で,メディアにはあまり登場しない.だがパンデミックによる不安にこたえようと専門家の著述活動が増えている. <br />  4月前半には英語ニュースサイト「The Conversation」がいちはやく専門家によるパンデミック下のゲーム活用法を掲載した.このニュースサイトは「<a href="https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/column/15/425482/102200040/">執筆者を学者や研究者に限定し,わかりやすく編集し,タイムリーに発信する」</a>新興メディアで,以前の<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html">解説</a>記事でも紹介したHEVGAの会長であるAndy Phelpsが寄稿している.彼はHEVGAの役員とも相談して『どうぶつの森』からTwitch,健康の手引きまで網羅したパンデミック下のゲームの遊び方をまとめ「<a href="https://theconversation.com/gaming-fosters-social-connection-at-a-time-of-physical-distance-135809">Gaming fosters social connection at a time of physical distance</a>」(April 14, 2020)として掲載された.なお編集される前の原稿「<a href="https://medium.com/@andymphelps/games-in-the-era-of-social-physical-distancing-and-global-pandemic-800590fbd893">Games in the Era of Social (Physical) Distancing and Global Pandemic</a>」(Apr 14)も自身で公開している. <br /> Phelpsはさらに5月には職場同僚と共著で「<a href="https://theconversation.com/online-plagues-protein-folding-and-spotting-fake-news-what-games-can-teach-us-during-the-coronavirus-pandemic-137490">Online plagues, protein folding and spotting fake news: what games can teach us during the coronavirus pandemic</a>」を掲載し,FoldItプロジェクトなどの<b>ゲームの力をワクチン開発に使う取り組み</b>も紹介している.ゲームについては子供の方がよく知っているという親世代も,これらの記事を読めば子供に幅広いゲームの可能性について教えられるだろう.<br />  新興メディアだけでなく,大手メディアにも研究者が登場している.その先駆けとして心理学者のChris Fergusonをあげることができる.「<a href="https://igdajac.blogspot.com/2018/07/video-games-and-gaming-culture-2016.html" target="_blank">Video Games and Gaming Culture </a>(2016) に再録された論文90本にも収録されているゲームの心理学のリーダーだが,ゲーミング障害のICD--11への収載についても<a href="https://dx.doi.org/10.1556%2F2006.5.2016.088">公開反対声明</a>(2017),<a href="https://div46amplifier.com/2018/06/21/an-official-division-46-statement-on-the-who-proposal-to-include-gaming-related-disorders-in-icd-11/">全米心理学会の部会声明</a>(2018)を発表して反対の論陣を張ってきた.彼は過去にもTIME誌に<span class="tlid-translation translation" lang="ja"><a href="https://time.com/3693883/parents-calm-down-about-infant-screen-time/" target="_blank">Parents, Calm Down About Infant Screen Time</a>(「</span><span class="tlid-translation translation" lang="ja"><span class="tlid-translation translation" lang="ja">保護者は</span></span>幼児の視聴時間について焦らないで」)を寄稿しているが,パンデミックの4月下旬にもTIME誌にもインタビューが掲載された.この<a href="https://time.com/5824415/video-games-quarantine/">記事</a>では書き手に対して「何をやっているかチェックしている限り,<b>ビデオゲームにこれ以上はダメだという時間制限基準はありません</b>.とりわけいまは,ゲーム以外にすることがないでしょうから」と述べ,ゲーミング障害への不安と育児との板挟みになっている保護者へ「後ろめたく思うことはありません(Nothing to Feel Guilty About)」というメッセージを送っている. <br />  4月下旬には日本国内でも専門家がメディアに出演し,パンデミック下でゲームを禁止するのではなく,どうやってうまく使うかを解説している.『NHKあさイチ』の「<a href="http://www1.nhk.or.jp/asaichi/archive/200427/1.html">外出自粛 ゲームと上手につきあうには?</a>」(4月27日)では『キラメイジャー』の紹介に続いて精神科医,eスポーツの<a href="https://twitter.com/team_detonation/status/1254356142681018373">DetonatioN Gaming</a>や,多数の著書論文を書いている<a href="https://twitter.com/tfujimt/status/1254274553154383875">東京大学の藤本徹さん</a>らが出演.ここでも親がゲームの効用を理解することの重要性が語られている.<br />  これまでマスメディアは繰り返しゲーム悪影響論を展開してきた.だが,パンデミックによる外出禁止によって,ゲームを活用する専門家の助言を発信するようになったと言えるだろう.<br /> <h3> 加熱するゲーム依存報道への警鐘: 7人中1人! 10人中3人!</h3> WHOでゲーミング障害がICD-11に収録掲載されたことによって,ゲーミング障害に関する研究もはじまっている.ゲームによる<b>ポジティブな影響</b>は言うまでもないが,たしかに<b>ネガティブな影響</b>も存在するだろう.それを<b>ゲーミング障害</b>と呼ぶとして,では他の障害(オーバートレーニング,エクササイズ依存,薬物中毒...)に比べて,どれくらい深刻なのか,どれくらいの規模にひろがっているのだろうか.そして(一部の医者が主張するように)麻薬中毒と同じ脳内現象が本当に起こっているのだろうか.こうした未着手の問題は今後の調査によって得られたデータにもとづいた議論が進められていくだろう.この際に議論の的になるのが,実際に診断を受けたゲーミング障害についてのデータと,診断を受ける前のゲーミング障害と<b>疑われる者</b>のデータとの関係である.これについては,今年に入ってすでに2件の指摘がおこなわれている. <br />  まず2月6日に日本の厚労省主催「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」の公開資料をもとに,木曽崇<a href="http://www.takashikiso.com/archives/10185416.html">「厚労省研究班調査:国内中高生93万人にゲーム依存の疑い?!が報道される前に」</a>がデータの扱い方について指摘している.幸いこの記事で危惧されたセンセーショナルな報道は出なかったが,それから2週間後の2月18日にはNHK「視点・論点」<a href="http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/421278.html">「深刻化する若者のゲーム依存とその対策」</a>でネット依存が<b>疑われる者</b>の推計が93万人と注釈なしに報じられた.このNHK番組についてはデータの注釈を欠いているだけでなく,データの<a href="https://twitter.com/nagataki/status/1230065340261945344">グラフ化における省略</a>などについても指摘が行われており,<b>学会発表したら指摘されるはずの欠陥がマスメディアで発表されている</b>と言わざるをえない.学会で修正される前のセンセーショナルな数字だけが一人歩きすることが危惧される.<br />  センセーショナルな調査発表は日本だけではない.同じ2020年2月6日に「アフリカのゲーマーの30%がゲーム依存」という論文がScientific Reports誌に<a href="https://doi.org/10.1038/s41598-020-58462-0">掲載</a>された.(Scientific Reports誌はnature.comのサイトに掲載されるのでよくNature誌と間違えられるが,Natureの出版社による別基準のオープンアクセスジャーナルで基準は全く異なる.)だがこの論文はその後,<a href="http://platinumparagon.info/gaming-addiction-in-africa/">4月17日にゲーム依存の研究者からの指摘</a>,<a href="https://steamtraen.blogspot.com/2020/04/some-issues-in-recent-gaming-research.html">4月21日には別のブログでの指摘</a>をあいついで受けて,実験内容および論文記述さらには研究予算の数々の<b>疑惑</b>の渦中にある.さらには著者の過去の論文データまで疑惑の目が向けられることになり,日本の研究者を含む過去の<b>共著者が本当に実在している</b>のか<a href="https://steamtraen.blogspot.com/2020/04/the-mystery-of-missing-authors.html">立命館大学や総研大に問い合わせる事態</a>にまで発展した.そしてついに4月23日にScientific Reports編集部が調査をはじめた旨が論文に<a href="https://www.nature.com/articles/s41598-020-58462-0#change-history">追記</a>(23 April 2020)された. <br />  グラフやデータ処理について学術的に厳密なチェックを受けないものが堂々と発表されてしまうのは残念である.だがそうした指摘が行われているということは,世界の専門家が調査データ分析に貢献したいと考えていることを浮き彫りにしている.ゲーミング障害についての公開データにもとづく議論が待たれている. <br /> <h3> まとめと今後の国内の課題</h3> 本記事ではここまでパンデミック下での専門家による情報発信や組織を超えた協力を見てきた. そしてこれまでは「ゲームは1日1時間」といった<b>根拠の薄弱な</b>一律のゲームプレイ規制が変わり,「親子で遊ぶ」「離れて遊ぶ」「身体を動かす」「生活のバランスをとって遊ぶ」「区切りのいいところまで,休憩をはさんで」「ゲーム作品によって異なる魅力を知る」「生活にゲームをとりいれる」といった<b>プレイヤーとプレイの質に即した具体的アドバイス</b>に移りつつある.そのためには<b>ゲームの内容を理解したアドバイザー</b>が必要となる.ゲームを活用して健康的な生活を送るアドバイスは,これまでは業界団体による(特定のゲーム企業に偏らない)情報発信が行われてきた.しかし本記事で見たように,非営利団体や研究者団体,個人研究者による新しいアドバイスの形態が生まれている.<br />  日本でこれまでゲームの効用の情報発信において大きな役割を負ってきたゲーム業界団体CESAも,これまでの知見と実施対策を今後も<a href="https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2003/04/news149.html">啓発していきたい</a>という姿勢だ.多くの国内学会が情報発信のリソースを持てない中で,CESAには実態把握できていることを徹底させたいという一貫した姿勢を見ることができる. その一方で,今後は新しい事態や不安に対応できる人材も必要になるだろう.北米での取り組みに見られるように,得られた知見を理解してもらう啓発活動だけでなく,これまでの知見を動員して新たな不安に対応するには研究者人材が必要になる.そして専門家の助言を流通させるチャンネルができれば,最新のゲームタイトルも含めた国際動向も社会にひろめることができるのではないか.本記事もそうした取り組みを試みていきたい.<br /> <br /> <h3> 追記(2020.07) 疑惑の論文撤回</h3> 上記「アフリカのゲーマーの30%がゲーム依存」論文は本記事公開後に撤回されました (<i>Scientific Reports</i>による<a href="https://www.nature.com/articles/s41598-020-66798-w" target="_blank">説明</a>) .第3共著者に名を連ねてしまった研究者の<a href="https://retractionwatch.com/2020/06/12/how-i-got-fooled-the-story-of-how-a-study-of-gamers-came-to-be-retracted/" target="_blank">説明</a>もでました.<a href="https://www.asahi.com/articles/ASN7G4TFJN6KUHBI02K.html" target="_blank">コロナウィルスでの論文撤回があいついだ</a>ために国内で注目されることはありませんでしたが,「新しい障害の第一人者になりたい」という研究者に対して,学会発表後のチェックが機能したということもできます.一方,日本のゲーム依存に関する調査は,そもそも国際論文誌に投稿したりデータを公開しておらず,報道発表しかありません.日本の議論も同様に,国際論文誌に投稿して世界の研究者のチェックを受けることを期待しています.S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-69586190890298671222020-05-25T16:02:00.004+09:002020-06-04T11:41:04.110+09:00GGJ20以後のゲームジャムシーンブログ主筆の山根です.この4月から東京国際工科専門職大学のデジタルエンタテインメント学科に移り,4月から授業スタートしましたがまだ学生とは直接会っていません.さて,本記事では1月末のGlobal Game Jam 2020 をふりかえるとともに,その後のゲームジャムシーンをまとめたいと思います.<br /> <br /> <a name='more'></a><br /> <h3> GGJ20ふりかえり</h3> 世界最大のゲームジャムイベント,Global Game Jam(以下GGJ)が今年2020年は1月31日金曜日から2月2日日曜日まで<a href="https://globalgamejam.org/news/tools-down-ggj2020-roundup">開催</a>された.世界各地の会場で金土日の48時間で行われるGGJは,日本で最初に開催されたゲームジャムでもあり,多くの国内のゲームジャムのモデルにもなってきた. <br /> <h3> 防疫に直面したGGJ会場</h3> GGJは年々大規模化している.本ブログでも<a href="http://igdajac.blogspot.com/2013/05/glocal-game-jam-2013-4.html">GGJ2013の振り返り</a>で,ゲーム開発者への支援が進む各国で<b>数百人規模のメガ会場</b>が生まれていることを報告した.その傾向は12年目のGGJ2020でも変わらず,世界の大都市では数百人単位の会場も開設された.しかし今年はそうした都市会場が,1月後半から新型コロナウィルスの蔓延に直面することになる. <a href="http://ggj.igda.jp/sites-list">日本国内の会場</a>の中でも,秋葉原の電子デバイスGlobal Game Jam会場が参加者募集を停止し,<a href="https://note.com/sooh/n/n0d46ca77149d">閉鎖</a>された.アジア・オセアニア地域のGlobal Game Jamで多くのゲーム開発者が参加したのは,1位が上海会場の377人,2位が香港会場の328人.3位がバンガロール,4位がメルボルン,5位がシンガポール.この中で,香港会場はいちはやく新型コロナウィルスに対応し,<b>オンライン開催</b>に切り替えながら<a href="https://www.facebook.com/ggjhongkong/posts/2538364619767380">世界全体でも8番目の参加者数を集めた</a>.これは主催者の香港理工大学を中心としたスタッフの力が大きい.2ヶ月前にはデモ鎮圧のために<a href="https://www.afpbb.com/articles/-/3257057">封鎖</a>されていた香港理工大学だが,日本の全会場を集めたよりも多くの参加者を集め,オンライン参加に切り替えて成功させたスタッフワークは見事というほかない.Global Game Jamは即席チームを組むところからはじめて作品の全世界公開と成果発表までを行うが,オンラインでもこうした短期チーム開発イベントができるということをいちはやく示したと言える. <br /> <h3> GGJの現状</h3> <a href="https://globalgamejam.org/news/tools-down-ggj2020-roundup">速報</a>によれば,12年目のGGJ20は,48,700人以上のゲームジャム参加者が世界118カ国934会場に集まった. Global Game Jamの各地の様子は,毎年3月に開催されるゲーム開発者会議GDC(Game Developers Conference),そして同時開催されるゲームジャム国際学術会議<a href="http://gameconf.org/">ICGJ</a>(International Conference on Game Jams, Hackathons and Game Creation Events)で報告されるのだが,残念ながら今年は新型コロナウィルスのためどちらも開催されず,グローバルな全貌がよくわかっていない. <a href="https://sites.google.com/view/icgj2020">ICGJ2020</a>は8月の大阪開催が決まったものの,やはり開催変更になり,大阪では開催せずオンライン発表になった.今年,GGJの成果を共有できる最大のイベントはここになりそうだ.6月1日までゲームジャム報告を受けつけているので,GGJの成果を発表したい人は(オンライン開催で旅費が不要なので)ぜひ英語報告を投稿してほしい. <br /> <h3> GGJ日本会場の動向</h3> GGJの<a href="http://ggj.igda.jp/sites-list">日本の会場</a>は今年も北海道から沖縄まで,新しい会場も加わって25会場で開催された(そのうち1つは上述したように閉鎖).昨年は札幌会場が100人を超えたが,今年はウィルスの影響か100人以上集まった会場はなかった.<br />  これらの日本会場関連のSNS動向は,「<a href="https://togetter.com/li/1428827">Global Game Jam 2020 日本語非公式まとめ</a>」にまとめられているほか,参加者による国内会場報告も公開されている.大人から学生まで参加者の幅広さ,その土地その土地でのコミュニティを感じることができる. <br /> <ul> <li><a href="https://note.com/kono3478/n/n85c27fcccc81">秋葉原ヒューマンアカデミー会場ふりかえり</a> </li> <li><a href="https://www.sugawara.ac.jp/digital/%e5%a5%bd%e3%81%84%e3%82%b2%e3%83%bc%e3%83%a0%e5%87%ba%e6%9d%a5%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%ef%bc%81%e6%9c%ac%e6%a0%a1%e9%96%8b%e5%82%acglobalgamejam2020sendai/">仙台会場</a> </li> <li><a href="https://medium.com/@asobu/global-game-jam-2020-in-asobu-ed279f930ff7">Global Game Jam 2020 in asobu</a>(渋谷) </li> <li><a href="http://yuhintosh.hateblo.jp/entry/2020/02/11/020845">GlobalGameJam 2020 Hakodate を開催しました!!!</a> </li> </ul> ゲームジャムの特色でもある「仕事ではできないような新しい挑戦」としては,アップデートされたばかりのOculus Quest でのハンドトラッキングに早速挑戦した<a href="https://globalgamejam.org/2020/jam-sites/tokyo-roppongi-code-chrysalis">六本木Code Chrysalis会場</a>の<a href="https://globalgamejam.org/2020/games/you-are-tool-vr-3">You are a tool VR</a>が目についた. <br />  日本の25会場の中には募集段階から特色ある会場も多く,シナリオライターと協力して<a href="https://note.com/torotiti/n/n54ad38242cfc">ノベルゲーム開発参加者を募集</a>した(「どこでもいっしょ」20周年でもおなじみ)ビサイド立川会場,<a href="https://effectorhack.connpass.com/">サウンドミニハッカソン</a>による「普通のゲームジャムではない」(『東京クロノス』でもおなじみ)<a href="https://effectorhack.connpass.com/event/156632/">MyDearest浅草橋会場</a>,そして,香川県(「ネット・ゲーム依存症対策条例」でおなじみ)で初めてのGGJ会場である<a href="https://okauni.connpass.com/event/160411/">瀬戸内会場in香川</a>もあった.筆者は<a href="http://igdajac.blogspot.com/2020/01/blog-post.html">前記事</a>で書いたように香川に遠征して運営に当たっていたが,国内会場でも珍しい<a href="https://okauni.connpass.com/event/160411/" target="_blank">お寺でのゲームジャム</a>で,ゲームを通して香川県民の方々の声に触れることができた.また終了後には,「ねとらぼ」による香川県議会事務局への質問で<a href="https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2002/06/news075.html">「香川県で行われるeスポーツイベントや、「Global Game Jam」などの教育イベントへの影響は想定していますか」</a>という質問項目もあったように,県外からの注目も実感できた.こうした香川での収穫については別原稿で書きたいが,ゲームジャムに体現される「誰でも週末にゲーム開発者になれる」という現状認識を今後も広めていきたい. <br /> <h3> 新型肺炎下のゲームジャムシーン</h3> GGJが開催されたあと,世界的なパンデミックが発生する.いまふりかえると,GGJの秋葉原会場が開催を断念したり,香港会場がオンライン開催に切り替えたのは,その後のゲームジャムイベントの先駆けだった.本稿の後半は,こうしたゲームジャムシーンの展望についてまとめたい. <br />  Global Game Jamは,初期の頃からオンラインでの参加には反対しており,会場に集まっって即席チームをつくるをつくることにこだわってきた.しかし,GGJ20の香港会場のようなオンライン参加や,参加前のある程度の打ち合わせを認めざるをえないだろう.すでにGlobal Game JamのU18部門である「<a href="https://ggjnext.org/run-an-online-jam/">GGJ NEXT</a>」が今年は2020年7月に<b>すべてオンラインで開催される</b>ことがアナウンスされ,ゲームジャム開催者とDiscordで助言するメンターとを募集開始している.昨年のGGJ NEXTは日本国内では釧路高専と秋葉原の専門学校で<a href="https://mediag.bunka.go.jp/article/article-15369/">開催されている</a>が,今年はオンラインで行うために事前準備期間をとっている. <br />  各地のゲームジャムも完全オンライン型が増えている.インディーゲーム配信サイトで,ゲームジャム開催スケジュールも運営するitch.ioがオンラインでのゲームジャム参加を<a href="https://twitter.com/itchio/status/1243733917074481153">アピールしている</a>(itch.ioへの日本語参加案内は<a href="https://www.slideshare.net/syamane/in-japanese-81057641">ゲームジャム高梁2017資料</a>を参照).こうして外出禁止期間でもゲーム開発に参加するためのハードルは低くなってきた. <br /> <h3> 連帯に向かうオンライン開発イベント</h3> 本ブログの親元である<b>IGDA</b>(ゲーム開発者の国際NPO)も,Global Game Jam以外のオンライン開発イベントに協力している.<a href="https://multibriefs.com/briefs/IGDA/IGDA042220.php">4月のニュースレター</a>では「#EUvsVirus Challenge」への参加呼びかけが行われた. これはEU(欧州委員会)が<a href="https://twitter.com/EUinJapan/status/1256098344297873408">主催</a>するハッカソンで,新型コロナウイルスがもたらすさまざまな課題への解決策を探るために欧州全土で1万人以上が参加した48時間のイベントだ.開発するのはゲームに限定されないアプリやサービスで,ゲームジャムと違って必ずしも完成を目指さないが,新型コロナウィルスによる外出禁止の間にオンライン開発をするのではなく,新型コロナウィルスによるさまざまな問題を解決するためにオンライン短期開発に取り組もうという機運も高まっている. この<b>全欧州規模のオンライン短期開発イベント</b>からは実際に優れたサービスが生まれ<a href="https://www.thisistherealspain.com/en/latest-news/the-spanish-proposals-in-the-pan-european-hackathon-against-coronavirus/">投資を受けようとする事例</a>も生まれている.だが,イベントの効果はそれだけでない.異なる専門分野の人とチームを結成すること,国境を超えてアイデアを競いあうこと,そしてオンラインで企画からプロトタイプ提案までの経験を積むことで,週末の間にこれからの生活に必要な学びや失敗を得ることができる.<br />  日本語圏でもすでにいくつもオンラインでのゲームジャムが行われているが,そうしたイベントで「国境を超えて違う分野の人とチームを組む」経験を積んだ開発者人材が,これからの社会生活にその経験を生かしてほしいと願っている.<br /> <br /> <h3> Global Game Jamの新体制</h3> 最後にGlobal Game Jamの運営陣の大きな交代について紹介する.Global Game Jamのトップであるディレクター職に前IGDAトップのKate Edwardsが就任したことは前年から報じられてきた.さらに今春には,GGJの立ち上げメンバーの退任が発表され,<a href="https://www.gamesindustry.biz/articles/2020-04-30-global-game-jam-founders-susan-gold-and-gorm-lai-leave-after-12-years">メディアでも報じられた</a>.Global Game Jam発起人のIGDAのスーザン・ゴールド(日本でも<a href="http://igdajnpo.blogspot.com/2012/07/susancedec-awards.html">CEDEC Award受賞</a>,GGJの原型となったNordic Game Jam(<i>BABA is You</i>などを輩出)をIGDAコペンハーゲンやゲーム研究者のイェスパー・ユールたちとともにたちあげ,さらにGlobal Game Jamたちあげにも尽力したGorm Leiは.長年つとめてきたGGJでの役職から退くことになった.世界を変えた先駆者を送り出して,GGJは新世代に交代することになる.S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-15122192153821706102020-01-30T06:44:00.006+09:002024-09-24T19:30:56.056+09:00ゲーミング障害の政治とゲーム開発者ができることアカデミックSIG主筆の山根です. <br />  本記事では,WHOでのゲーミング障害の扱いに対するゲーム学界の対応を説明し,ゲーム開発者が(パブリックコメント以外に)できることを考え,<a href="https://okauni.connpass.com/event/160411/" target="_blank">Global Game Jam瀬戸内会場in<b>香川</b></a>について説明します. <br />  さて<b>香川</b>といえば県の<a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87%E5%AF%BE%E7%AD%96%E6%9D%A1%E4%BE%8B" target="_blank">#ネット・ゲーム依存症対策条例</a>が話題だが,その出しにつかわれたのが「ゲーム障害(ゲーミング障害)」という概念である.世界保健機構(WHO)のICD-11(追記: 「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems) 第11版)で,「<b>ゲーミング障害(gaming disorder)</b>」の分類が追加されることが決定され,有効になる前から政治的関心を集めている.本記事ではゲーミング障害に関するゲーム研究・ゲーム分野での議論をまとめてみたい. <br /> <h3> ゲームと障害</h3> これまでゲームと「障害」(discorder)についての学会報告といえば,「ゲームで障害を治療できるか」というゲームを積極的に応用する取り組みが主流だった.<br /> <a name='more'></a>たとえば<a href="http://kongoshuppan.co.jp/dm/1438.html">心理学の定番教科書</a>でも,「VRゲームはPTSD(心的外傷後ストレス障害)治療に使えるか」「ゲームは認知障害に対して有効か」といいったゲーム活用の知見を学生のうちから教えている. <br /> そこに登場した新たな概念が「ゲーミング障害」である.それまで存在しなかった障害の分類に対するゲーム開発者・ゲーム研究者の対応はどうだったか.まず本ブログの親団体であるIGDA(アメリカに本部を置く国際ゲーム開発者協会)の対応は,<a href="https://twitter.com/IGDA/status/950773022268493824">ゲーミング障害はファクト(科学的に検証された根拠)に基づいていない」「米国医師会や米国精神医学会ではそのような議論は行われていない」</a>というもので,アカデミック的な議論にもとづく意思決定を求めるものだった.もちろんゲームによって依存が生まれることは認めており,IGDAの元チェアマンが書いた教科書『<a href="http://igdajac.blogspot.com/2019/11/blog-post.html">ゲームデザインバイブル</a>』では,ゲームに依存性があること,ゲームデザイナの社会的責任に関する章があり,ゲームデザイン書籍のベストセラーである本書で多くの学生が学んでいる.(追記: その一方で,倫理や社会的責任を学べなかった上の世代のゲーム開発者の学びなおしも重要な課題である.GDCでは倫理や社会問題についての講演が設けられるようになったが,国内ではようやく教科書が翻訳されたところだ.)<br /> このようにゲーム開発者コミュニティはWHOでは科学的な検証が不十分な現状で分類を行うことに反対していたが,専門家の議論はまとまらなかった.英国の心理学者はこう解説している.<br /> <blockquote> 「アカデミアの意見はふたつに大きく割れた。ゲーミングが原因で問題を抱えている人々に客観的なラベルが貼られたことで、そうした人々が必要に応じて適切な治療を受けられるようになったと主張する研究者もいる。その一方で、ゲーム依存に対する科学的証拠がまだ十分ではないと主張する研究者もいる」<br /> 「ゲーム障害のICD-11入りが過度なゲーミングに対する偏見を小さくすると指摘する。これに対して認定に否定的な人々は、逆にゲームという行為に対する偏見を大きくすると主張している」<br /> <cite>(<a href="https://wired.jp/2019/06/03/video-game-addiction-facts-statistics/">ゲーム障害」を過度に心配してはいけない理由</a>)</cite></blockquote> そして記事の最後にあるように「人々の尊敬を集める立場である人々も、公共の場でゲームについて語る際はもっと筋の通った慎重なアプローチをする必要がある」,つまり政治家やマスメディアがゲームについての扇情的な発言をする前に,今まで以上にファクトチェックをすることが求められるだろう. <br /> <h3> 日本が果たすべき役割</h3> ところで,ゲーミング障害の国際疾病分類への追加に最大の責任を負っているのは日本である.国立病院機構久里浜医療センター(以下,久里浜と略記)は,ゲーミング障害に唯一明確な支持をしたのが日本政府だったと<a href="http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jmsas/wordpress/wp-content/uploads/newsletter_pdf/jmsaas4-1_compressed.pdf">述べて</a>いる.これをそのまま受け取れば,ゲームの長時間プレーで死者が出た韓国・中国のWHO代表ですらゲーミング障害分類を積極的に支持しなかった.その案を日本代表が強く推進したことから,日本代表は世界のどの国とも違う独自の意思決定・リスク評価をしていたことがわかる.これは<b>日本のゲーム教育</b>にも問題がある.上述したように海外の心理学やゲーム開発の教科書では,シリアスゲームを開発したりeスポーツを活用した治療への取り組みがみられるが,国内教科書にはほとんど見られない.<br />  また久里浜は「病名がなければ、研究費も受けられない」と<a href="https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/289702.html">研究の必要性を訴え</a>,その主張に沿ってWHOでの決定後,日本はゲーミング障害についてのファクトを集める研究に<a href="https://www.gamebusiness.jp/article/2019/12/25/16582.html">予算を投じられる</a>こととなった.ゲーム障害の国際疾病分類入りを推進した日本こそファクトにもとづく学術論文を発表して世界に対する責任を果たすことが求められるだろう. <br /> <h3> ゲーム研究者の声明</h3> 先にWHOでは「アカデミアの意見は大きく割れた」とのべたが,ゲーム研究,すなわち大学でゲームを学問として教える研究者たちは別で,積極的な声明を出している.本ブログでも活動を<a href="http://igdajac.blogspot.com/2018/02/2017.html">紹介</a>しているHEVGA(全米ビデオゲーム高等教育機関連合)は声明を発表し,ゲームの教育利用の著作で知られる藤本氏がその重要性から<a href="https://anotherway.jp/archives/hevga-who-translation-jp.html">私家版日本語訳</a>を公開している.また,各団体の代表が公の場で発言している(これについては後でまとめる).あるいはゲーミング障害の理解のされ方を理解すべく,昨年京都で開催されたDiGRA2019では<a href="http://www.digra.org/digital-library/publications/meta-analysis-and-systematic-review-of-recent-literature-on-gaming-disorder/">専門家のゲーミング障害の分析についてのメタ分析</a>も発表された. <br />  この声明だけではわかりくいが,多くのゲーム研究者はゲーミング障害がゲーム規制の口実に使われるだろうと(過去の焚書の事例から)予想し発言してきた.その中でもっとも注目を集めたのが昨年3月のGame Developers Conference(GDC19)で開催されたパネルセッション'How to Talk About Games Today'「いまゲームについてどのように語るべきか」だ.過去に<a href="http://igdajac.blogspot.com/2019/03/2019.html">本ブログの2019年プレビュー記事</a>でも言及したが,このセッションの動画と資料が公開されたのでくわしく紹介しよう. <br /> <h3> GDC19でのパネルディスカッション</h3> 世界最大のゲーム開発者会議GDCには各地の名物教授も集まる.GDC19のパネルディスカッションも<b>ゲーム研究組織の世界的なリーダーたち</b>が名を連ねた.<br /> <ul> <li>Lindsay Grace(マイアミ大学准教授,インタラクティブメディア学科長)はギネスブック登録された世界最大のゲームジャムを運営する<b><a href="https://globalgamejam.org/" target="_blank">Global Game Jam</a></b>の副代表,世界各地のゲーム学位授与機関が集まる<b><a href="https://hevga.org/" target="_blank">HEVGA</a></b>(全米ビデオゲーム高度教育アライアンス)副会長をつとめている.どこにでもゲーム開発を教えにでかけた<a href="https://www.famitsu.com/news/201803/21154058.html" target="_blank">GDC18報告</a>が日本でも報じられた。また<a href="https://www.academia.edu/37647506/Global_Game_Jam_Stories" target="_blank">Global Game Jam Stories</a>(2018)を編集している。</li> <li>Mia Consalvo(コンコルディア大学教授)は世界最大のゲーム研究国際学会<b><a href="http://www.digra.org/" target="_blank">DiGRA</a></b>(デジタルゲーム研究に関する国際学会)前会長,そして<a href="https://www.chairs-chaires.gc.ca/chairholders-titulaires/profile-eng.aspx?profileId=2785" target="_blank"><b>Canada Research Chair</b> for Game Studies and Design</a>,つまりカナダ連邦が国家戦略として進めるゲームスタディーズ・ゲームデザイン研究を率いる要職についている. </li> <li>Roger Altizer(ユタ大学教授)はゲーム開発者教育ランキングのトップ学ユタ大学のEntertainment Arts and Engineering(<b><a href="https://www.coe.utah.edu/2017/03/23/eae-among-top-ranked/" target="_blank">EAE</a></b>) 副ディレクター,治癒支援アプリラボディレクター.デジタルメディシンディレクター. </li> <li>Andrew Phelps(ロチェスター工科大学 教授)&nbsp; はRITでインタラクティブゲーム&メディア学部を立ち上げ,上記の<b><a href="https://hevga.org/" target="_blank">HEVGA</a></b>の現会長である.</li> </ul> このパネルディスカッションの動画は参加者向けアーカイブだけでなく,YouTubeでも<a href="https://youtu.be/p4djhHzYtSs">公開</a>され,自動英語字幕もついている.<iframe allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/p4djhHzYtSs" width="560"></iframe><br /> さらに,リンク付きで<a href="http://gameclasses.com/gamesadvocacy/" target="_blank">参考資料もウェブ公開されている</a>.この公開ページの題名が「Under Fire: How to Publicly Discuss &amp; Promote Game(我々は攻撃を受けている: ゲームの公開議論と宣伝のハウツー)」というふざけた題名になっているが,内容は落ち着いている.以下,簡単に紹介しよう. パネルの構成はHEVGA声明とほぼ同じだ.その基本的な姿勢は,感情的な扇動に対して学術的な立場から対応するというものだ.そのために,過去の焚書の何が問題だったのか?なぜゲームについて相反する研究結果が出て,専門家の統一見解が得られないのか?ゲームは治療へ応用できるのか?といった,そもそもの背景となる知識や論文が提供される.<br />  以下,パネリストごとに一言でまとめてみる. <br /> ・Andrew Phelps「はじめに」(YouTube動画 -04:22) ここではメンバーの紹介そして近年のゲームの議論の背景を説明するという趣旨が説明される. <br /> ・Lindsay Grace「モラルパニックと誤解」(04:30-13:18) 過去の焚書の歴史からの教訓を得る.日曜日のスポーツのすすめ焚書! コミック焚書! テレビ依存症の恐怖! TRPGで非行に走る若者たち!(単発事例をあげるのではなく,当時の社会関係を分析した論文を紹介しています)<br /> ・Mia Consalvo「ゲームと暴力に関するリサーチメソッド」(13:40-25:25) ゲームと暴力との関係を示そうとする研究はどうやって進められてきたのか. <br /> ・Roger Altizer「ゲームはあなたによいものです」(25:55-37:45) ゲームを健康目的に積極的に活用する立場から. <br /> ・Andrew Phelps「まとめ: 我々は何をすべきか?」(38:00-1:00:00) ワシントンで政治家とミーティングした話,HEVGAのWHOへの声明について,ゲーム開発者はどうすべきか?,まとめ(47:50),Q&amp;A(50:10-) <br />  これらの動画そして発表資料はどれも興味深いが,特にゲーム開発者にとっては,まとめでフェルプスが指摘している点が興味深い.「Beware of unpublished or ‘preliminary’ research or ‘sponsored’ studies」(学会論文になっていない研究,予備調査,スポンサーつきの研究には注意せよ,これはまさに論文化されていない商業出版物や予備調査に立脚した香川県条例にあてはまる)「Remember that you are an expert on the creation of games –most people have no idea how games are planned, made, marketed, or sold」(みなさんがゲーム制作の専門家だということを忘れずに.ほとんどの市民はどうやってゲームが企画され,開発され,配布され,発売されているのかを知らないのです)ゲーム開発者はたんなる攻撃対象ではなく,社会が理解し始めている新しいメディアのエキスパートなのだ. <br />  GDC19に登場したオールスター教授陣は世界の研究者に号令をかける立場でもあり,日本のコミュニティとも無縁ではない.パネリストの多くは昨年DiGRA2019京都会議の<a href="http://igdajac.blogspot.com/2019/06/digra2019-in.html">ゲーム教育ワークショップ</a>にも出席していたし,3月のGDC20でもLindsay Graceは再び<a href="https://schedule.gdconf.com/speaker/grace-lindsay/19419" target="_blank">登壇予定</a>,また今年2020年8月24日に大阪で開催される<a href="https://sites.google.com/view/icgj2020/">ゲームジャムの国際会議</a>でもLindsay Graceは運営委員に名を連ねている. <br /> <h3> Global Game Jam瀬戸内会場in香川がめざすもの</h3> 募集したパブリックコメントをなかったことにするわけはいかないので,県条例に対するパブリックコメントは大いに行いたい.(18歳以上であれば後述するGlobal Game Jamに参加すればゲーム事業者になってパブリックコメントを出せる.)<br />  GDC19パネルディスカッションまとめで示されたように,「ほとんどの市民はどうやってゲームが企画され,開発され,配布され,発売されているのかを知らない」という事態をゲーム開発者は変えることができる.今年度の<b>文化功労者</b>に宮本茂が選出されたが,その一方で ゲーム業界のイメージはどうか.ゲーム業界は子供を中毒状態にしては金や時間を奪う<b>麻薬の売人</b>だと思われているかもしれない.若者をバクチ漬けにして借金地獄に沈める<b><span data-offset-key="3m18a-0-0"><span data-text="true">時代劇にでてくる賭場の胴元</span></span></b>だと(いまどき)思われているかもしれない(追記: 語句修正).日本の教育政策を失敗させ子供を凶暴化させる<b>反社会集団</b>と思われているかもしれない.あるいはドーパミンを出させて日本人の脳をウニにしようとする<b>悪の組織</b>だと思われているかもしれない.こうしたゲーム開発者のイメージまではパブリックコメントでは変えることができないが,<b>ゲームは特殊な存在ではない</b>こと,<b>学ぶ場があれば誰でもゲーム開発者になれる</b>という理解をひろめることは有効だろう. <br />  そこで,今週末(1/31-2/02)に開催される「Global Game Jam瀬戸内会場in香川」(<a href="https://globalgamejam.org/2020/jam-sites/setouchi" target="_blank">日本語・英語公式ページ</a>,<a href="https://okauni.connpass.com/event/160411/" target="_blank">日本語参加申込ページ</a>)では,開会式の当日まで参加者(および参加キャンセル待ち)を受け付けるとともに,「ゲームはこうして開発できる」「短時間でゲームを開発し,世界に配信できる」「誰でも,どこでもゲーム開発者ゲーム事業者になれる」ということを明らかにしたい.そのために,金曜日午後5時からの開会式,土曜日の日中,閉会式が行われる日曜日午後に県民の参観を受け入れ,ゲームを学問として教える大学教員(筆者:)が説明を行う.確実に説明を受けたい人は事前に<a href="https://okauni.connpass.com/event/160411/">イベントへの問い合わせ</a>ボタンで希望時間を連絡先をいただければ用意します(なお駐車スペースに限りがあるので,タクシーまたは公共交通機関をご利用ください). <br />  ゲームジャムへの市民参加は特別なことではない.過去にもGlobal Game Jam会場を政治家が訪問することは多く,Global Game Jam 2011福岡会場では<a href="https://www.flickr.com/photos/pumpkinkaneko/5456001892/">市長の単独訪問</a>があった.またコペンハーゲン会場やエジプト会場では国をあげて巨大会場がつくられ,大臣の挨拶も行われている.さらに各自治体が開催するゲームジャムもある(<a href="https://news.yahoo.co.jp/byline/onokenji/20181225-00109018/">岡山県高梁市のゲームジャム高梁</a>では高梁市長・市議会長が開会式で挨拶を行なった). <br /> <h3> 香川のゲーム文化</h3> 残念なことに,香川県条例案を受けて<b>「香川には次世代産業は育たない」という風評被害</b>も起きているが,どの自治体にも同じ議員立法の脆弱性を抱えており,香川県議会だけが特殊なのではない.実際,<b>香川には根強いゲーム文化が存在する</b>.中村光一を輩出したことは言うまでもなく,<a href="https://www.kagawa-u.ac.jp/kagawa-u_eng/topics/research/wmutedigitel-2012/">IEEE DIGITEL 2012</a> [第4回IEEEデジタルゲームと知的玩具による教育に関する国際会議] を香川大学が中心となって開催,ゲーム要素をとりいれて<a href="https://www.city.mitoyo.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=12741">プログラミングコンテスト自由部門で三冠を受賞</a>した香川高専詫間が<a href="https://sanuki-gamen.connpass.com/event/104464/">讃岐ゲームジャム</a>を開催してゲーム開発に取り組み,活躍できる人材を育成してきた.また<a href="https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1195679.html">「あそぶ!ゲーム展」</a>の無料連続開催,<a href="https://www.slideshare.net/UnityTechnologiesJapan002/unite-tokyo-2018-unity-unity">ゲーム技術を活用</a>する<a href="https://www.teamlab.art/jp/e/ritsuringarden/?utm_campaign=ritsurin2020">チームラボのインタラクティブアート</a>の高松で継続開催するなど,香川では産官学民で数々のイベントが行われ活況を呈している.さらに今夏にゲームジャムの開催も準備中である.それらがひとつながりのゲーミング文化の一部だと認識されていなかっただけなのだ.ここでは香川のゲームシーンを再確認するとともにGGJを通じて「どんな人が」「どうやって」ゲームをつくっているのかという開発現場を理解する場を提供することで,ゲーム開発者だけができる地域貢献を実現したい. <br />  今年は日本国内だけでも<a href="http://ggj.igda.jp/sites-list">25の会場</a>でGlobal Game Jamが開催される.見学者が入れない会場も多いが,会場に行けない人はSNSでも情報発信しているのでチェックしてほしい.<br /> (追記1/30: 電子デバイス会場はコロナウイルス流行を考慮して中止され国内24会場に)S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-52467744942592215762019-11-01T02:11:00.054+09:002024-12-11T02:11:01.126+09:00ゲームデザイン大学教科書の到来 (付録: 『ゲームデザインバイブル』正誤表案)アカデミック・ブログ主筆の山根です. <br /> ジェシー・シェルによる<cite>The Art of Game Design</cite>が今年の夏に『<a href="https://www.oreilly.co.jp/books/9784873118017/">ゲームデザインバイブル 第2版</a>』として、オライリージャパンから翻訳出版された.これはゲームデザインを学ぶ大学生のための教科書として執筆されて改版を重ね、現時点での<b>ゲームデザインの最強の定番教科書</b>である.これまで大学で使えるレベルのゲームデザイン教科書が入手困難だった日本のゲーム教育界にとって、本書の翻訳は江戸時代に『解体新書』が訳されたのと同様に、専門家だけでなく多くの人が新しい学問体系を知るきっかけになるだろう.本稿ではこの教科書(以下、本書)の紹介と今後の展望について述べ、末尾には付録として正誤表案を示す.<br /> <h3> 著者について</h3> 著者の<a href="https://www.schellgames.com/leadership/jesse-schell" target="_blank">ジェシー・シェル</a>は、数々の職を経験したあと、ゲーム産業とコラボレーションをする大学のパイオニアだったカーネギーメロン大学ETC(エンタテインメントテクノロジーセンター)に教育専門教員としてスカウトされ、全米トップの大学でゲームデザインを教えてきた.その他にも、過去にはIGDAチェアマンをつとめたり、自らのゲームスタジオSchell Gamesもたちあげて現在に至っている. <br />  彼がディズニーでVRアトラクションやオンラインゲームに取り組み、そこで出会ったランディ・パウシュにスカウトされた経緯はカーネギーメロン大学のYouTube講義『最後の授業』でも言及されている(<a href="https://logmi.jp/business/articles/30258">パイレーツ・オブ・カリビアンVRのゲームデザイナ</a>, <a href="https://logmi.jp/business/articles/30965">BVW科目の後継</a>として).そして<a href="https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92515/2515651/index.html">NHKのドキュメンタリー</a>にも登場した.<br /> <br /> <a name='more'></a><br />  彼の目立った仕事をあげると、VR脱出ゲーム『I Expect You To Die』が300万ドル(約3.3億円) を超える売り上げを<a href="https://www.moguravr.com/i-expect-you-to-die/">記録</a>し、その戦略がゲーム業界以外でも注目された.ゲームタイトルだけでなく、中学生向け教育用XR教材「Happy Atoms」が<a href="https://japan.cnet.com/article/35085220/">クラウドファンディング</a>で注目され、2017年に数々の賞を受賞した.これらをつくりだしたゲームスタジオSchell Gamesは100人を超える大規模スタジオに成長し、西海岸・東海岸・カナダとも異なる新たなゲーム産業の地域ハブとなった<a href="https://venturebeat.com/2017/07/28/the-deanbeat-pittsburgh-steels-itself-to-become-a-regional-game-hub/">ピッツバーグを代表する企業</a>となった.毎年3月のGDCでカーネギーメロン大学ETCの同窓会が開かれ、彼自身も<a href="https://gdcvault.com/search.php#&amp;conference_id=&amp;category=free&amp;firstfocus=&amp;keyword=Schell">毎年GDCの複数セッションで講演</a>を続けているゲーム業界の名物教授だ. <br />  「前例がない場所で仕事をする」「異なる分野に挑戦し続けている」というパイオニア的な仕事をしてきたわけだが、そうした彼の仕事の特徴はこの教科書にもみることできる.彼の教科書には特定のジャンルのゲームデザイン方法は書かれておらず、ボードゲームからVRゲームまでさまざまなゲームに共通する理論や構造を扱っている. <br /> <h3> 本教科書を採用するメリット</h3> 著者はこの教科書を大学の授業に使ってきた.初版を使った2014年の授業報告はCEDEC2015でも<a href="https://www.slideshare.net/syamane/cedec2015-52324775">発表</a>した他、第2版にもとづく<a href="https://portal.pub.ous.ac.jp/SyllabusGaku/Syllabus.asp?mode=2&amp;cdky=14010&amp;cdsl=FII6C210&amp;nendo=2017">シラバス(1学期分の授業計画)</a>も公開している.その経験を踏まえて、本教科書をゲームデザイン科目に採用すると以下のメリットがあると考えている. <br /> <ul> <li>人生のアドバイスまで含んだ稀有な教科書.ゲームデザインは学ぶ価値がある学問である.それは職業ではなく、人生の様々な場面で使える. </li> <li>アナログゲームやデジタルゲームに限定されず、あらゆるゲーム共通するゲームデザインの原理や基本要素を学べる.いま売れているゲームを模倣する教育には使えないが、まだ存在しない新しいゲームをつくりたい人の育成には最適. </li> <li>英語だけでなく独仏葡韓中の多言語に翻訳されており,将来に国際的な業務に参加する際の共通言語としても使える </li> <li>入門書になるだけでなく、参考文献も示し、それらを読めばさらに詳しい議論を追える. <br /> つまりこのは教科書は学生だけでなく研究者にとっても深い考察を与える手引きになる.たとえば文化庁事業<a href="https://mediag.bunka.go.jp/project/media1/project-5491/">『ゲーム研究の手引き』</a>では「優れたゲームデザイン理論書はゲーム研究者にとっても非常に重要な文献」の一冊として本書が紹介されている. (くわしくは筆者が受講生用に書いた<a href="https://www.slideshare.net/syamane/2017-79999216">教科書案内</a>を参照.) </li> </ul> <h3> アカデミックな評価</h3> 本書は古今東西のゲームデザイン論を集成し体系化しようとする試みであり、そのためにゲームに関係する様々な分野の人がアート・ソフトウェア工学・ナラティブ・マネジメントなど自分の関心に近い章を読むことができる.その例として、本アカデミック・ブログでは「ゲーム研究の成果を教科書で学べるか」という研究者視点で紹介しよう.<br /> ・ (1)ゲームAI研究:<br />  IGDA日本SIG-AIの三宅は2000年の『Counter-Strike』について、2017年に以下のように述べている. <br /> <br /> <blockquote> 無理矢理に「連続空間」を「離散空間」と見なしているんです。これもロボット技術の分野では60年代からあったのですが、ゲームに持ち込む発想がなかなか出てこなかったんですね。 (<cite><a href="https://news.denfaminicogamer.jp/interview/gameai_miyake/3" target="_blank">21世紀に“洋ゲー”でゲームAIが遂げた驚異の進化史。その「敗戦」から日本のゲーム業界が再び立ち上がるには?</a>)</cite> </blockquote> 2008年初版の本書には、当然この発想が入っていた.空間のデザインについて、連続空間ゲームを離散空間ゲームにできないか、あるいはその逆を考える(技術を学ぶのではない)課題が入っている.さらにAIでは自動生成ナラティブの博士論文も紹介されている.<br /> ・(2)ゲームスタディーズ:<br />  ゲーム研究者にとっても本書の内容は読むに値する.「創発型ゲーム」「ユーザの心的状態を含めたゲームメカニクス」など近年のゲーム研究書のキーワードが教科書入りしている.これは研究者にとっては研究トピックを体系の中に位置づけ整理することができる.その一方、これから学ぶ学生は研究書を読んでも「それ教科書で読んだ」と思うかもしれない.だが、大学では研究と教育が同時に進められるのはむしろ普通である.そして学生がいちはやく研究成果に触れることができるトップ校のゲーム開発者教育を本教科書は示している.<br /> <br /> ・(3)トランスメディア論:<br />  トランスメディア論は日本では紹介が遅れたため、マーケティングのメディアミックス論と混同されて、開発現場で使える手法になっていない.しかし欧米ではメディアミックスの手法はトランスメディア論として大学で学べるようになっている.本書にはそうしたトランスメディアの章が含まれ、日本でははじめてのトランスメディアワールドの作り方の教科書としても読むことができる.<br /> ・(4)シリアスゲーム・ゲーミフィケーション研究:<br />  井上明人『ゲーミフィケーション』の末尾に「シェル構想」として本書の著者が登場するので、国内のシリアスゲーム関係者は著者の名前は聞いたことがあるだろう.シェル自身はシリアスゲームという分野があるのではなく、人を変えるゲームがあるのだとして「シリアスゲーム」という言葉は使わない.つまりシリアスゲームの知見はあらかじめ本書に含まれている.特にMotivaionの章とTransformational Gameの章は、いま日本語で読めるシリアスゲームのデザインのための最高の教材だ.本書が出版されたあと、シェルのゲームスタジオのスタッフがこれらの章の考え方にもとづいた<a href="https://anotherway.jp/archives/20181124.html">The Transformational Framework</a>を配布しているので、さらに実践活用に向かいたい人はそちらも参考になる.<br /> <br /> このように、本教科書は様々な分野の成果が取り入れられており、学生のうちにこうした内容に触れた人材が世界各国で育つ新しい時代の到来を感じさせる.<br /> <br /> <h3> 本書の改善点と今後の展望</h3> 本書(第2版日本語訳)が出た直後に、原著は改訂第3版である<cite>The Art of Game Design: A Book of Lenses, Third Edition</cite>が発売された.<a href="https://www.crcpress.com/The-Art-of-Game-Design-A-Book-of-Lenses-Third-Edition/Schell/p/book/9781138632059">カタログ</a>の「New to this edition」を読めば、どの項目が追加されたか一目でわかる. 大きな変更はないが、VR/ARゲーム開発者は第3版も読んだ方がよいだろう. <br />  また、ベストセラーの大学教科書=すなわちデファクト教科書が訳されたことで、いよいよ国内のゲームデザイン教育は「どういう知識を教えるか?」という段階を通過して、次の段階について議論する時がきた.どういうカリキュラム設計や授業案で、どういう教育法で行い、その教育をどう評価するのか.そもそもこの教科書を使いこなせる教員をどうやって育てるのか.この話題については、CEDEC2015での発表以来、著者も考えて続けている問題だ.IGDA日本でも話題にする他、国内での議論を深めたい. <br /> <br /> <h1> 付録: 『ゲームデザインバイブル』正誤表案</h1> (2019年10月作成、不定期更新)<br /> 最後に、筆者による『ゲームデザインバイブル』正誤表プロジェクトについて紹介する. 冒頭で述べたとおり本書の翻訳は『解体新書』に匹敵する偉業だが、無理な訳をあてている部分がある.前述したように、この教科書には入門レベルだけでなく研究レベルの内容も入っているため、この教科書を読んで卒業研究に進むと支障が出る可能性もある.そこで修正案をつくり、出版社問い合わせ先に送るとともにIGDA日本アカデミックSIGでも共有した.他にも指摘があれば<a href="https://www.igda.jp/?p=10388">IGDA日本新年会</a>またはオンラインでご連絡いただきたい. <br /> コメントの書き方は以下のようになっています. <br /> <blockquote> (修正前の語句)/(修正後の語句)<br /> ; (コメント文) </blockquote> という形でマークアップし、コメント文中では以下のタグをつけています. <br /> <ul> <li><span style="color: red;">【最重要】</span> すぐに直すべき語句、20個未満.いわゆる正誤表を出すべき修正箇所 </li> <li><span style="color: red;">【影響度: 大】</span> 修正案のうち、大規模すぎて正誤表ではカバーできず改版を要する修正案 </li> <li><span style="color: red;">【影響度: 小】</span> 修正を正誤表で収めるための小規模な修正案 </li> </ul> <br /><!--Thanks to DE1大嶌--><table border="1"> <thead> <tr> <th>頁と行</th> <th>訂正前/訂正後<br /> ; コメント</th> </tr> </thead> <tfoot> <tr> <th>頁と行</th> <th>訂正前/訂正後<br /> ; コメント</th> </tr> </tfoot> <tbody> <tr> <td>Page ix, 14行目</td> <td>カードの束/カードデッキ<br /> ; 本書と同時発売のデッキオブレンズはデッキを組んでデザインゲームにも使えます <a href="https://www.youtube.com/watch?v=AiSI8WGZokA">https://www.youtube.com/watch?v=AiSI8WGZokA</a></td> </tr> <tr> <td>Page x, 7-8行目</td> <td>「ゲームデザインと仮想世界の構築」という講義をさせていただきました。この講義が/「ゲームデザイン」と「仮想世界の構築」を教えることができました.この経験が <br /> ; 参考資料: Building Virtual Worldsはランディ・パウシュの『最後の授業』で有名な名物授業です <a href="http://www.etc.cmu.edu/learn/curriculum/building-virtual-worlds/">http://www.etc.cmu.edu/learn/curriculum/building-virtual-worlds/</a></td> </tr> <tr> <td>Page xvi, 1行目</td> <td>ゲーム界のメンデレーエフを待つ/メンデレーエフを待ちながら<br /> 
; 原文は『ゴドーを待ちながら』風に書くことで「メンデーエフは来ない」ということを暗示しつつ、いまできることをやるだけだと書いている.が、訳文ではただ来るのを待ってるだけのように読める.</td> </tr> <tr> </tr> <tr> <td>Page xvi, 4行目</td> <td>究極の/望みうるかぎり最高の<br /> 
; 原文のthe bestは「究極の」という意味ではなく「理想ではないが望みうる最高の」の慣用表現で使われている<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page xix, 7行目</td> <td>ゲームデザインを構成する要素の関係性/ゲームデザインの網の目<br /> ; 本節ではウェブとリニアを対比させているがウェブの訳が抜けている</td> </tr> <tr> <td>17行目</td> <td>恐ろしく複雑に連鎖している幅広い分野/幅広い分野の恐ろしく複雑な網の目<br /> ; 本段落ではウェブとリニアという構造を対比させているがウェブの訳が抜けている</td> </tr> <tr> <td>Page 3, 下から8行目</td> <td>わたしは,ゲームデザイナーです(4回繰り返し)/わたしは,ゲームデザイナーです.「わたしが」ゲームデザイナーです.わたしは「ゲームの」デザイナーです.私はゲームの「デザイナー」なのです.<br /> ; 英語原文では強調点を変えて繰り返されている文章が,日本語訳ではまったく同じ説明の繰り返しになって意味不明になっている.フォントを変える,傍点を打つ,カッコに入れるなどするとよい.(Thanks: <a href="https://twitter.com/aysgstr/status/1483438760239202308">『ゲームデザインバイブル』読書会</a>) <span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 12, 4行目</td> <td>わたしは,ゲームデザイナーです(4回繰り返し)/(同上)<br /> ; (同上)</td> </tr> <tr> <td>Page 29, 17行目, 下から8行目</td> <td>体験の核/体験の本質<br /> ; 前節で出てくる現象学用語ではessence of experienceは「体験の本質」という訳が定着している.レンズの様に訳注をつければ全部修正する必要はない<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 35, 3-5行目</td> <td>VS./vs.<br /> ; 表記の統一</td> </tr> <tr> <td>Page 61, 6行目</td> <td>魔法の円/魔法円(マジックサークル)<br /> ; 魔法円(12章)との表記統一</td> </tr> <tr> <td>Page 64, 26行目</td> <td>魔法の円/魔法円<br /> ; 魔法円(12章)との表記統一</td> </tr> <tr> <td>Page 66, 下から6行目</td> <td>James P. Carse著『Finite and Infinite Games』/;未訳だが,ミヒャエル・エンデ『ものがたりの余白 エンデが最後に話したこと』に『かぎりある遊びとかぎりない遊び』として言及あり.その後,ベルナール・スティグレール「講演 有限のゲーム、無限のゲーム:アルゴリズム的統治性の時代におけるジェイムズ・P・カースの一解釈」(石田英敬 訳)がGenron 6(小特集 遊びの哲学), 159-177, 2017 に掲載された.<span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 66, 下から3行目</td> <td>Nicole Lazzaro 著「Why We Play Games: Four Keys to Emotion without Story」/;参考文献にも出てこない本件は,GDC 2004でのゲーム開発者への講演である.https://gdcvault.com/ を検索すると,講演のもととなる論文がダウンロードできる.<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 67, 4行目</td> <td>Bernard Suits著『The Grasshopper: Games, Life, and Utopia』/ スーツ『キリギリスの哲学―ゲームプレイと理想の人生』<br /> ;<span style="color: red;">【最重要】</span>邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>Page 73, 1行目</td> <td>ゲームシステム/ゲームメカニクス(訳注)<br /> ; 原文のgame mechanicsを32.4章では「ゲームメカニクス」と訳しており,訳が混在しています.また参考文献には『ゲームメカニクス』も挙げられており、参考文献を踏まえて読むという観点から「ゲームメカニクス」と訳すのが自然です.  さらに、ゲームシステムと訳したために以下の問題が生じています.第4章ではゲームを「形式化されたシステム」と呼んでおり,メカニクスをゲームシステムと訳すとシステムの要素がシステムになるという混乱を産みます.また第12章ではゲームメカニクスはプレイヤー心理や体験も含むと説明されていますが、それをゲームシステムと訳したことで,ゲームシステムの外にあるはずのプレイヤー心理までゲームシステムが含むような混乱を招いています.また14章で「パズルはゲームシステムである、だがパズルはゲームなのか」という混乱した訳文になっていますし、18章などででてくるゲームのシステム全体を変える話とメカニクスだけを変える話とが区別できなくなっている.<br /> 【影響度:大】「ゲームメカニクス」に一括変換するのが望ましい.この選択肢を選んだ場合、各章の扉絵の相関図も変更となる.<br /> 【影響度: 小】もしも4大要素を訂正するのは正誤表の範囲では対応できず次の版で修正したいという場合は、lensと同様に、訳注で原著の表現を示すことで混乱した読者の手引きになる.</td> </tr> <tr> <td>Page 77, 3行目</td> <td>3. ビジュアル/3. ビジュアル/アートワーク<br /> ; 基本概念を不可逆に変更することは避けるべきだが、lensと同様に原書では「Aesthetics」だと説明するとよい.問題は、ここでaesthetics をビジュアルと訳したために、122ページでサウンドの分析が意味不明になっている.また美のレンズも視覚の話であるかのように改変されている.<br />  そこで「ビジュアル」をすべて「アートワーク」などに置き換えるのが望ましい【影響度:大】<br />  正誤表の範囲に収めるためにはすべて置き換えるほかに、この見出しを「ビジュアル/アートワーク」として以後は使い分けることも考えられる.【影響度:小】</td> </tr> <tr> <td>Page 77, 32行目</td> <td>サウンドも、ビジュアルの重要な構成要素です/ サウンドも、ビジュアル/アートワークの重要な構成要素です<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>意味不明な文章.aestheticsをビジュアルと訳さず「アートワーク」と訳してはどうか.その場合、p.74の「ビジュアル」をビジュアル/アートワークと併記する.</td> </tr> <tr> <td>Page 83, 20行目</td> <td>『ブリッジ』/ブリッジの<br /> ; コントラクトブリッジはチェスと同じ一般名詞なので『』を外す</td> </tr> <tr> <td>Page 85, 訳注1</td> <td>任天堂の専用コントローラ/ファミコン用コントローラー「パワーグローブ」<br /> ; Nintendoとはファミコンのことを指しています.これでは任天堂が作ったように読める</td> </tr> <tr> <td>16行目</td> <td>ディズニーワールドにある仮想現実センター/ディズニーが建てた仮想現実センター<br /> ; DisneyQuestはディズニーワールド以外にも全米数カ所に建てられた</td> </tr> <tr> <td>Page 86, 2行目</td> <td>ビジュアルのアイデア/ビジュアル/アートワークのアイデア<br /> ; あとで聴覚や触覚のデザインも出るのでビジュアル効果だけではない</td> </tr> <tr> <td>Page 89, 8行目</td> <td>本物の財宝らしい立体的なオブジェクトに塗って見せて、/2Dの手描きの財宝をがっちりした立体物に重ねて<br /> ; これはディズニーが研究してきたプロジェクションによるAR技術です http://youtu.be/wjrylXl0tTk <span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 90, 12行目</td> <td>目指している本質的な体験/目指す必要不可欠な体験<br /> ; 意味がとれない</td> </tr> <tr> <td>Page 91, 11行目</td> <td>特定の本質的な体験/特定の必要不可欠な体験<br /> ; 意味がとれない</td> </tr> <tr> <td>Page 94, 6行目</td> <td>仕事と遊び/仕事vs.遊び<br /> ; 80ページではvs.をそのまま使っていたので統一</td> </tr> <tr> <td>Page 96, 3行目</td> <td>ゲームデザイン過程/ゲームデザインのプロセス<br /> ; processをプロセスと過程と行程に訳し分けているがあまり効果的ではなくむしろ読みにくい.説明語句を加えるか、プロセスに統一してはどうか</td> </tr> <tr> <td>4行目</td> <td>全体的な行程/全体のプロセス<br /> ; 同上.説明語句を加えるか、プロセスに統一してはどうか</td> </tr> <tr> <td>Page 101, 下から9行目</td> <td>ビジュアル/アートワーク<br /> ; レンズ#94大要素のうちエステティクスを「ビジュアル」と訳しているが,次のページに出てくる例は「サウンド」から要素を構築しているので,意味が通らない <span style="color: blue;">[追記] </span> </td> </tr> <tr> <td>Page 102, 13行目</td> <td>最終アート/アートワークの最終案<br /> ; 最終アートという言い方はあまり使わない</td> </tr> <tr> <td>14行目</td> <td>『グーの惑星』/Tower of Goo (訳注: のちにヒット作『グーの惑星』として製品化される大学院での試作品)<br /> ;<span style="color: red;">【最重要】</span>別の作品です.【影響度: 小】本文・索引の修正</td> </tr> <tr> <td>Page 107, 13行目</td> <td>小学館文庫刊/<br /> ; 参考文献リストが脚注にも巻末にもあるので本文中に出版社名はいらない.また出版社名を書く場合は、「小学館文庫刊」ではなく「小学館文庫, 小学館刊」もしくは刊なしの「小学館」でよい.</td> </tr> <tr> <td>Page 112, 29行目</td> <td>背後で/バックグラウンドで<br /> ; これはコンピュータのバックグラウンド処理のことでしょう</td> </tr> <tr> <td>Page 121, 20-21行目</td> <td>お話しします/説明します<br /> ; 「お話しします」という書き方はこのあと何度か出てきますが、教科書ではあまり使わない表現です.</td> </tr> <tr> <td>Page 122, 12行目</td> <td>;訳注 Gamesutraで題名を変えて掲載されたhttps://www.gamasutra.com/view/feature/130848/how_to_prototype_a_game_in_under_7_.php?print=1.<br /><span style="color: blue;">[追記]</span> Game Developerウェブサイトに移転しました. <a href="https://www.gamedeveloper.com/game-platforms/how-to-prototype-a-game-in-under-7-days" target="_blank">https://www.gamedeveloper.com/game-platforms/how-to-prototype-a-game-in-under-7-days</a></td> </tr> <tr> <td>Page 127, 2行目</td> <td>技術/エンジニアリングと技術 <span style="color: blue;">[追記]</span> <br />; 原文はEngineering and technology.技術そのものではなく技術を生かす方法について述べている. </td> </tr> <tr> <td>Page 128, 24行目</td> <td>技術/エンジニアリング <span style="color: blue;">[追記]</span> <br />; 原文はEngineering. </td> </tr> <tr> <td>Page 129, 下から5行目</td> <td>ここまでの過程で、あなたは多くのアイデアを思いつき、その1つを選んだはずです。/ここまでの過程で、あなたは多くのアイデアを思いつきました,いよいよ,その中のどれかを選んで次に進みます.<span style="color: blue;">[追記]</span> <br />; 原文のoneは冠詞無しなので「1つ」ではなく不特定の代名詞「どれか」 </td> </tr> <tr> <td>Page 130, 23行目</td> <td>イテレーションのルールです/ループの法則なのです.<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>次節で「絶対的な真理」と言っているので、このruleはゲーム内のルールではなく「法則」です.ループのルールという韻を踏んでいるのもわからなくなってます.【影響度: 大】この章以外にも「イテーレーションのルール」が使われており、それらも修正する必要があります</td> </tr> <tr> <td>Page 131, 10行目</td> <td>ソフトウェアエンジニアリング/ソフトウェア工学<br /> ; 国内でもひろく教えられている学問の名前です</td> </tr> <tr> <td>12行目</td> <td>ソフトウェアエンジニアリングの短い歴史/ソフトウェア工学小史<br /> ; 見出し語ではあまり使われない表現です.この表現を訳すときは「小史」などという訳す方が多いと思います</td> </tr> <tr> <td>Page 131, 下から8行目</td> <td>正式な開発工程/きちんと形式化された開発工程 <span style="color: blue;">[追記]</span> <br /> ; 原文はソフトウェア工学のformalです</td> </tr> <tr> <td>Page 132, 脚注</td> <td>IEEE Computer Society Press社/IEEE Computer Society Press<br /> ; IEEEの出版部門なので「社」はいらない</td> </tr> <tr> <td>Page 133, 図8-3</td> <td>開発、次のレベル/開発し、次の段階の<br /> ; 「開発」「レベル」だけでは意味がとおりにくい</td> </tr> <tr> <td>図8-3</td> <td>次のサイクルを遵守 一区切り/取り組みの区切り</td> </tr> <tr> <td>Page 134, 2行目</td> <td>リスク評価/リスクアセスメント(事前評価)<span style="color: blue;">[追記]</span><br />; 原文はアセスメント. 図8.3ではevaluateを評価と訳しているので違う語として訳し分けた方がよい.この後にでてくるリスク評価もすべてアセスメント・事前評価の意味で使われているが,事後評価と区別できない.【影響度: 小】本書のリスク評価とはアセスメント(事前評価)のことを指してます,と脚注に入れるだけでもよい </td> </tr> <tr> <td>Page 134, 13行目</td> <td>スパイラルモデルはイテレーションのルールがすべてなので、/ これはまさにループの法則にかなっているので、スパイラルモデルは<br />; 【重要】意味が通らない</td> </tr> <tr> <td>Page 137, 10行目</td> <td>デモ/ デモ・デイ <span style="color: blue;">[追記]</span> <br /> ; 原文はDemo Day.ただのデモではなく,スプリント最終日の意味がある</td> </tr> <tr> <td>Page 138, 9行目</td> <td>ゲームシステム/ゲームメカニクス <span style="color: blue;">[追記]</span> <br /> ; Page 73 参照.</td> </tr> <tr> <td>Page 149, 下から1行目</td> <td>前述した非公式のプロセス/前章で述べたおおまかな流れ <span style="color: blue;">[追記]</span> <br /> ; 本章のformalはソフトウェア工学の形式化を指す</td> </tr> <tr> <td>Page 150, 2行目</td> <td>非公式な/おおまかな <span style="color: blue;">[追記]</span> <br /> ; 原文はinformal loop.次の段落にでてくるformal=形式化との駄洒落.</td> </tr> <tr> <td>Page 150, 6行目</td> <td>正式な流れ/形式的な手続き <span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 150, 8行目</td> <td>正式な/形式化された <span style="color: blue;">[追記]</span> <br /> ; 原文はformal loop.これは正式という意味ではなく,ソフトウェア工学の形式化を指す</td> </tr> <tr> <td>Page 155, 6行目</td> <td>ドラブル/トラブル <span style="color: blue;">[追記]</span> <br />; typo <span style="color: red;">【最重要】</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 156, 下から14行目</td> <td>/マイク・セリンカー著『コボルドのボードゲームデザイン』安田均/グループSNE訳. 書苑新社(2019)のちに新紀元社(2021). <span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 167, 25行目</td> <td>本質です/必要不可欠です<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>意味がとれない</td> </tr> <tr> <td>Page 167, 24行目</td> <td>エロ本/ポルノグラフィ<br /> ; いまどきの学生はエロ本を知らないので</td> </tr> <tr> <td>Page 171, 26行目</td> <td>ディズニークエスト用/DisneyQuestのアトラクション<br /> ; p.85ではディズニークエストではなくDisneyQuestと表記しているので、どちらかに統一する</td> </tr> <tr> <td>Page 174, 脚注1行目</td> <td>/ロビン・ハニキ、マーク・ルブラン、ロバート・ズベック「MDA:ゲームデザインとゲームリサーチへの形式的アプローチ」松永伸司訳、9bit、2022年 https://9bit.99ing.net/Entry/110/ <br /> ; 本書刊行後に日本語訳が公開された.</td> </tr> <tr> <td>Page 174, 脚注4行目</td> <td>「I Have No Words &amp; I Must Design」/コスティキャン「言葉は無く、デザインはせねばならず: ゲームのための批評的語彙に向けて」https://www.newgamesorder.jp/etc/readings/IhaveNoWords2002jp <br /> ; 有志による日本語訳あり.</td> </tr> <tr> <td>Page 184, 下から6行目</td> <td>そして、すべてのプレイヤーの潜在意識にある、秘密の優先順位を解明していきます。/それから,すべてのプレイヤーの潜在意識でそれらの前に先立って行われる隠れた処理についても解明していきます.<span style="color: blue;">[追記]</span> <br />; 優先順位はこの先にでてこないので,prioritiesは優先順位や優先権のことではなく「その前に先立つもの」の意味. </td> </tr> <tr> <td>Page 189, 14行目</td> <td>集中的に研究されてきました/多くの研究の対象となってきました<br /> ; 原文はsubject of extensive study</td> </tr> <tr> <td>Page 195, 23行目</td> <td>自らの作り出す/我々が他人の作り出す<br /> ; 原文はmake us feel we are part of the story world they are creating.</td> </tr> <tr> <td>Page 198, 19行目</td> <td>人間の脳は/人間の心は ; 原文ではこれまでbrainの話をしてきたが,この段落ではmindと表現を変えているのでこの段落に出てくる脳は心に修正 <span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 201, 下から1行目</td> <td>この階層は通常、ピラミッドで表現されます/よくあることですが、この階層は著者以外の人によってピラミッド図で表現されています<br /> ; 原文はoftenは高めの頻度を表すもので「通常」の意味はない.またrepresentは自己表現ではなく「そこにないものを別のものであらわす」という意味もある.マズロー自身は<a href="http://hdl.handle.net/10285/2806">この図を使って説明していない</a>ため代行の意味がある. <span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 206, 8行目</td> <td>勲章/バッジ</td> </tr> <tr> <td>9行目</td> <td>ゲーム化/ゲーミフィケーション<br /> ; ゲーム化は忠実な訳で悪くないのですが、ポイント・バッジ・リワードはゲーミフィケーションですでに使われている用語なのでそれとわかるようにしては.</td> </tr> <tr> <td>下から1行目</td> <td>新種の/新しいタイプの</td> </tr> <tr> <td>Page 210, 16行目</td> <td>ゲーム性/ゲーム<br /> ; ゲーム性は本書では定義されていません</td> </tr> <tr> <td>Page 215, 21行目</td> <td>; ここでゲームメカニクスをゲームシステムと訳したために、ゲームシステムがシステムの外にあるプレイヤーのメンタル(体験)も含むという混乱した記述になっているので、次の版では要修正.</td> </tr> <tr> <td>Page 216, 4行目</td> <td>非連続的/離散的<br /> ; この節は数学の話をしています.以下「非連続」はすべて修正が必要です.参考資料: <a href="https://courrier.jp/news/archives/74175/">https://courrier.jp/news/archives/74175/</a></td> </tr> <tr> <td>5行目</td> <td>空間はゲームシステムであり、数学的な構造物です/ゲームメカニクスとしての空間は数学的な構造です.<br /> ; この節はゲームの構造だけを取り出す数学的な見方をしているので、数学用語を使ってください</td> </tr> <tr> <td>9行目</td> <td>抽象的な構造物/抽象的な構造<br /> ; 前項と同じ</td> </tr> <tr> <td>Page 218, 9行目</td> <td>機能空間/関数空間<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>これは数学用語です.この章以外でも「機能空間」「機能的空間」は「関数空間」に修正しないと意味がとれません【影響度: 大】</td> </tr> <tr> <td>11行目</td> <td>機能空間/関数空間<br /> ; 同上</td> </tr> <tr> <td>Page 219, 7行目</td> <td>入れ子の空間/ 入れ子構造の空間<br /> ; 数学用語です【影響度: 小】目次の修正</td> </tr> <tr> <td>Page 220, 10行目</td> <td>(次のゲームシステム2で紹介します) / (次のゲームメカニクス3で紹介します) <br />; 状態(ステータス)はゲームメカニクスの2番目ではなく3番目です.これは原書第2版で時間のメカニクスを追加した際に修正されずに残った原書の間違いを引き継いでいます. <span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>17行目</td> <td>機能的で抽象的な関係性/抽象的な関数の(数学)用語<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span> この節は数学の述語を使っています</td> </tr> <tr> <td>18行目</td> <td>機能的空間/関数空間 ;【影響度: 小】レンズ目次の修正</td> </tr> <tr> <td>Page 221, 5行目</td> <td>機能的空間/関数空間</td> </tr> <tr> <td>6行目</td> <td>機能空間/関数空間</td> </tr> <tr> <td>12行目</td> <td>非連続的/離散的<br /> ; 【影響度: 小】目次の修正</td> </tr> <tr> <td>Page 222, 14行目</td> <td>時間計測/時間の基準<br /> ; 同上</td> </tr> <tr> <td>10行目</td> <td>時間計測によって/時間の基準によって<br /> ; ゲームプレイを制限しているのは計測ではありません.(マリオはジャンプで何秒空中にいるかといった)タイミング設定です.</td> </tr> <tr> <td>Page 223, 3行目</td> <td>時間をさかのぼります。デジタルゲームでは/デジタルゲームでは時間を巻き戻します.つまり、<br /> ; 前半で主語がなく意味が取りづらいので</td> </tr> <tr> <td>Page 224, 2行目</td> <td>ステータス/ステータス(状態)<br /> ; このあと20章で演劇用語のステータス(役作りに使う上下関係)もでてくるので日本語を添えてもよい</td> </tr> <tr> <td>4行目</td> <td>収集物/トークン<br /> ; トークンのかわりにコインでも可</td> </tr> <tr> <td>4行目</td> <td>スコア表示/スコアボード<br /> ; 一般的な用法にしてはどうか</td> </tr> <tr> <td>Page 225, 8行目</td> <td>ステータス図/状態遷移図<br /> ; 原文の a state diagram に従っているので悪い訳ではないが、教科書ではこの表記の方が多い.オライリー『UMLクイックレファレンス』のように「状態図」という訳も可能です.</td> </tr> <tr> <td>Page 226, 4行目</td> <td>サブステータス/サブステート</td> </tr> <tr> <td>11行目</td> <td>役に立つ方法が、「正しい」方法です/役に立つ方法が、何かを考えるための「正しい」方法です<br /> ; 原文は the “right” way to think about something is whichever way is most useful at the moment.</td> </tr> <tr> <td>Page 228, 脚注</td> <td>インディアナ州インディアナポリス/<br /> ; 図書館検索できる現代では出版社の所在地まで入れなくてもよいでしょう</td> </tr> <tr> <td>Page 231, 訳注</td> <td>偶発的/創発的<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span> 偶発と創発は意味が違います.ユール『ハーフリアル』邦訳でも「創発的ゲームプレイ」と訳されています.以下、この語はすべて修正する必要があります【影響度: 大】</td> </tr> <tr> <td>Page 241, 12行目</td> <td>目標/目標(ゴール)<br /> ; このあとゴールという訳も出てくるので、目標もゴールも原文では同じだということを示す</td> </tr> <tr> <td>Page 246, 4行目</td> <td>批評/批判</td> </tr> <tr> <td>Page 259, 20行目</td> <td>確率理論/確率論<br /> ; 一般的に使われている分野名です.</td> </tr> <tr> <td>Page 263, 脚注</td> <td>/バーンスタイン『リスク―神々への反逆」 上下(日経ビジネス人文庫) <br /> ; 邦訳あり.単行本が文庫化されている.<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 288, 20行目</td> <td>プラットフォーマーゲーム/2Dプラットフォーム・ゲーム<br /> ; 原文は2D platform game.プラットフォーマーはビジネス用語で別の意味で使われているので原語を変えない方がよい <span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 289, 2行目</td> <td>名言/迷言<br /> ; ヨギ・ベラは珍発言で有名なヤンキースの名物監督です.</td> </tr> <tr> <td>Page 292, 12行目</td> <td>長期 VS. 短期/短期 vs. 長期<br /> ; 原著ではShort vs. Long</td> </tr> <tr> <td>Page 301, 9行目</td> <td>Demon's Souls/デモンズソウル<br /> ; 国産ゲームで国内発売時のタイトルはカタカナ,2020年のPS5リメイクで『Demon’s Souls』表記になりました.【影響度: 小】本文・索引の追記<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 302, 脚注</td> <td>新潮文庫刊/新潮文庫</td> </tr> <tr> <td>Page 303, 4行目</td> <td>複雑という言葉も、二面性を持っています/複雑さも両刃の剣です<br /> ; 14章の「両刃の剣」と表記統一</td> </tr> <tr> <td>20,25,26行目</td> <td>偶発的複雑さ/創発的複雑性<br /> ; 創発は他の分野やゲーム学で定着している術語です.限定された要因で生じる複雑さは専門用語では「組織的複雑性」と呼ばれます.276ページ参照.<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 304, 2, 24, 25行目</td> <td>偶発的複雑さ/創発的複雑性<br /> ; 同上 <span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 305, 17行目</td> <td>偶発的複雑さ/創発的複雑性<br /> ; 同上 <span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 306, 21行目</td> <td>できました/見せることができました<br /> ; 原文参照.構造を変えたのではなく、エレガンスの度合いを変えた</td> </tr> <tr> <td>Page 312, 下から2行目</td> <td>イテレーションのルール/ループの法則<br /> ; 第8章の正誤表にあわせる</td> </tr> <tr> <td>Page 317, 訳注</td> <td>; 訳注 GDC Vault で公開されている <a href="https://gdcvault.com/">https://gdcvault.com/</a></td> </tr> <tr> <td>Page 322, 下から3行目</td> <td>マップ/環境<br /> ; 原文はenvironment. 次ページでは「マップ」以外の例もでてくる.<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 325, 1行目</td> <td>10の法則/パズルデザインの10の原則<br /> ; これらはパズルの不変の法則ではなく、無数にあるパズルデザインのコツを10個選んだに過ぎません.以下10の「法則」は「原則」に変更することが望ましいですが、多すぎて困難な場合はこの文章だけでも修正すべきです.</td> </tr> <tr> <td>Page 336, 2行目</td> <td>法則/原則</td> </tr> <tr> <td>Page 342, 6行目</td> <td>抽象的な概念が/抽象化が</td> </tr> <tr> <td>Page 342, 脚注1</td> <td>ダイエジェティック/ノンダイエジェティック<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span> 原文が間違っています. ちなみに原文ではギリシャ語でダイエジェティック,と書いていますが,現代フランス語の映画研究用語が元になっています. <span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 345, 19行目</td> <td>ゲームデザイン/デザイン<br /> ; ここではゲームデザインではなくマッピングのデザインについて述べている</td> </tr> <tr> <td>Page 346, 7行目</td> <td>タフテ/タフティ<br /> ; 国内にも広く紹介されている著名人です</td> </tr> <tr> <td>Page 353, 脚注</td> <td>作っています/作りました</td> </tr> <tr> <td>Page 356, 11行目</td> <td>たいていのゲームは/なぜならたいていのゲームは</td> </tr> <tr> <td>Page 360, 6行目</td> <td>書式の使用を検討する/多次元処理を見直す<br /> ; 原文は Review Use of Dimensions. 本章で使われている情報チャネルは情報通信用語です.そして現代の情報通信では、情報チャネルで信号を送るときに1次元信号だけでなく多次元信号処理を行っています.本節ではそうした情報処理にもとづくインタフェースデザインについて説明されており、次元を書式に翻訳するのはわかりやすくしているように見えて大学教科書としては逆効果です.参考資料 <a href="http://www.ieice-hbkb.org/files/01/01gun_09hen_07m.pdf">http://www.ieice-hbkb.org/files/01/01gun_09hen_07m.pdf</a></td> </tr> <tr> <td>Page 379, 20行目</td> <td>カリフォルニアのディズニーランド/ディズニーランド<br /> ; アラジンVRは脚注にあるようにフロリダのディズニーワールドをはじめ、各地のディズニークエストに設置されていたのでカリフォルニアだけではありません.</td> </tr> <tr> <td>訳注</td> <td>; Aladdin VR訳注は最初に出てくるp.302に移した方がよいでしょう.日本語文献としては、謝辞にも登場するランディ・パウシュ『最後の授業』に開発から論文化までの話があります.</td> </tr> <tr> <td>脚注</td> <td>本書執筆時点/本書初版の刊行時点<br /> ; この脚注は初版から変わっていません.ディズニーはその後DisneyQuestの開発を止めました.<a href="https://www.polygon.com/features/2018/10/18/17888722/disneyquest-disney-vr-closed">https://www.polygon.com/features/2018/10/18/17888722/disneyquest-disney-vr-closed</a></td> </tr> <tr> <td>Page 383, 19行目</td> <td>内在的/内発的<br /> ; ここは心理学用語「内発的動機づけ」を踏まえています.</td> </tr> <tr> <td>Page 384, 23行目</td> <td>ビジュアルのことです/アートワークのことです<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>視覚の話ではありません.もとのコンセプトにまちがった説明を加えて読者を混乱させます.</td> </tr> <tr> <td>Page 421, 5行目</td> <td>ビジュアル、技術、ゲームプレイ/アートワーク,テクノロジー,ゲームメカニクス<br /> ; ゲーム4大要素の表記を統一.これは原著の表記がぶれている.<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 426, 4行目</td> <td>ここまでの章/前章</td> </tr> <tr> <td>Page 441, 14行目</td> <td>新しい仕組み/新しいシステム<br /> ; 単なる仕組みではなく、アルゴリズムからストーリーにおよぶシステム全体の変更を指している</td> </tr> <tr> <td>Page 452, 下から2行目</td> <td>「全種類捕まえよう!」/「ゲットだぜ!(Gotta catch’em all!)」<br /> ; 無理に訳さず日英決め台詞を併記してよいと思います.</td> </tr> <tr> <td>Page 452, 下から2行目</td> <td>アイコン的性質/アイコンとしての質<br /> ; 原文ではiconic qualities.§21.3でnameless qualityを「質」と訳しているのに統一させた.「特質」でもよい<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 479, 9行目</td> <td>社会的地位を利用する/人間関係を意識する<br /> ; インプロではstatusは一般的な日本語で使われる社会的地位ではなく、場面ごとに変わるものです.日本語の社会的地位はその場にいる人によって変わったりしませんよね.そのため社会的地位よりも「人間関係」「上下関係」「社会的ステータス」といった訳が考えられます【影響度: 中】</td> </tr> <tr> <td>20行目</td> <td>社会的地位/社会的ステータス<br /> ; 前項参照</td> </tr> <tr> <td>24行目</td> <td>やりとりの責任者は誰かを交渉しています/その場を仕切っているのは誰かをうかがっています<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>人類が会話能力を身につける前から備えていた能力でできること、即興劇で行われることを指しています.これは責任者が誰かという高度な概念よりももっと原初的な訳を検討した方がよいでしょう</td> </tr> <tr> <td>24行目</td> <td>社会的地位/社会的ステータス</td> </tr> <tr> <td>25行目</td> <td>社会的地位/社会的ステータス</td> </tr> <tr> <td>26行目</td> <td>社会的地位/社会的ステータス</td> </tr> <tr> <td>Page 480, 下から7行目</td> <td>社会的地位/社会的ステータス</td> </tr> <tr> <td>Page 482, 21行目</td> <td>活用/使え<br /> ; 前節でスターウォーズキャラクターの例が出たので、スターウォーズの言い回しを使っている.この節と次の節はスターウォーズ風に「フォースを使え」っぽく訳すとよい</td> </tr> <tr> <td>Page 483, 23行目</td> <td>表情/フェイス<br /> ; 前節と同じくスターウォーズ「フォースを使え」のように訳してはどうか</td> </tr> <tr> <td>Page 490, 下から3行目</td> <td>『マンガ学―マンガによるマンガのためのマンガ理論 』/『マンガ学 マンガによるマンガのためのマンガ理論 完全新訳版』復刊ドットコム 2020<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 本書出版後に新訳がでました </td> </tr> <tr> <td>Page 493 1行目</td> <td>機能的空間/関数空間<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span> ここにでてくる「12章であつかった空間」とは,数学的な抽象化された空間=関数空間です.抽象的で具体性に欠けているので肉付けが必要だと説明していますが、機能的空間と訳すと機能的だから肉付けが必要だという間違った文章になります.</td> </tr> <tr> <td>Page 494, 16行目</td> <td>機能的空間/関数空間</td> </tr> <tr> <td>Page 496, 訳注3</td> <td>; Zorkは14章ですでに言及されているので、訳注をこのページから動かしたくない場合は「14章でも言及」と追記するとよい</td> </tr> <tr> <td>訳注4</td> <td>ボッチェ/ボッチャ<br /> ; リオパラリンピックで日本チームがメダルをとった時や、東京パラリピック報道でもボッチャと紹介されている【影響度: 小】本文・訳注・索引の修正</td> </tr> <tr> <td>Page 498, 10行目</td> <td>生涯を捧げました/生涯をかけています<br /> ; 過去形だと死んだみたいです.現在形で</td> </tr> <tr> <td>脚注: </td> <td>(鹿島出版会刊)/<br /> ; 原著のページ数を書いているのに邦訳の出版社名をいれるのは読者にとって余計です.p.547のように出版社名は巻末の参考文献を見ればわかる.</td> </tr> <tr> <td>Page 499, 下から4行目</td> <td>イテレーションのルール/ループの法則<br /> ; 第8章の正誤表にあわせる.ここでのruleとはローカルルールではなくゲームを超えた普遍的な法則を指している.</td> </tr> <tr> <td>Page 500, 21行目</td> <td>基本的な品質を抽出/基本的な特質を抽出<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 意味が通りにくい </td> </tr> <tr> <td>Page 501, 8行目</td> <td>スポア/Spore<br /> ; ウィル・ライトのSporeは日本語版タイトルもアルファベットです.</td> </tr> <tr> <td>Page 503, 脚注</td> <td>(鹿島出版会刊)/<br /> ; 原著のページ数を書いているのに邦訳の出版社名をいれるのは読者にとって余計です.出版社名は巻末の参考文献を見ればわかる.</td> </tr> <tr> <td>Page 504, 14行目</td> <td>特有の奇習/独特の癖<br /> ; 21.4.2節にも同じ表現があり、訳語を統一する</td> </tr> <tr> <td>Page 513, 章題</td> <td>ビジュアル/アートワーク<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>5.2章と同じく、この章でもサウンドの話がはいっているので、この章でのビジュアルという語が出るたびに混乱を招いています.できれば全部、最低限でも視覚以外の五感で説明している箇所は修正しないと混乱します.</td> </tr> <tr> <td>Page 516, 20行目</td> <td>ゲームシステム/ゲームメカニクス<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>ゲームシステムは通常ではゲームの全体を指すので、この文章の意味が通じなくなっています.5.2章でも指摘しましたが、ゲームシステム全体とゲームメカニクスと区別している本書の書き方ではゲームメカニクスをゲームシステムと訳さない方が混乱を招きません.</td> </tr> <tr> <td>Page 522, 21行目</td> <td>サウンドを利用する/オーディオを使え<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文は「Use Audio」.サウンドにはゲーム音楽や効果音や演奏スタイルなど幅広い意味を持つため,オーディオをサウンドに訳す理由がない.</td> </tr> <tr> <td>Page 523, 4行目</td> <td>カイル・ギャブラー/Kyle Gabler<br /> ; p.102, 147, 353 ではKyle Gablerというアルファベット表記なので表記統一.もしもカタカナにしたい場合の発音は「ゲイブラー」が近い.</td> </tr> <tr> <td>Page 524, 3行目</td> <td>プログラマーのチーム/エンジニアリングチーム <span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 原文はengineering team. プログラマだけでなくシステムエンジニアも含むと考えられる</td> </tr> <tr> <td>Page 524, 5行目</td> <td>プログラマーがアートを/エンジニアがアートを <span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 原文はengineers. プログラマだけでなくシステムエンジニアも含むと考えられる</td> </tr> <tr> <td>Page 526, 1行目</td> <td>1つの例外を除けば,残りの全宇宙はすべて.../全宇宙は他者によって成り立っていますが,ささやかな例外があることを忘れないで<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; oneは数詞の1ではなく,無数にあるものを指していると考えられる.</td> </tr> <tr> <td>Page 527, 1行目</td> <td>人は孤独じゃない/われわれは孤独ではない<span style="color: blue;">[追記]</span> ; 映画『未知との遭遇』のキャッチコピー&エンディングを引用している.当時の日本語訳「宇宙にいるのはわれわれだけではない」を部分的に生かしては</td> </tr> <tr> <td>Page 573, 1行目</td> <td>ゲームデザインドキュメント(GDD)/ゲームデザインドキュメント(GDD)の神話<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文はThe Myth of the Game Design Document.通念を批判しているので省略すべきではない</td> </tr> <tr> <td>Page 575, 6行目</td> <td>種類に合わせて、それぞれ特殊なドキュメントが必要です/それぞれの種類に応じた特有のドキュメントが必要です<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;特殊では意味が通じない</td> </tr> <tr> <td>Page 575, 図26-2</td> <td>プログラム/エンジニアリング<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文はEngineering.システムエンジニアの仕事をプログラマの仕事として説明するのは無理がある</td> </tr> <tr> <td>Page 576, 3行目</td> <td>GDD(Game Design Document=ゲームデザインドキュメント)/詳細デザインドキュメント<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文はDetailed design document.見間違えではないか.GDDの神話を機能ごとに分解したものをGDDと訳すのはおかしい.</td> </tr> <tr> <td>Page 576, 18行目</td> <td>GDDの適切な形式を選択することが重要です/あなたのデザインドキュメントの適切な形式を見つけることが重要です<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文表記に従う</td> </tr> <tr> <td>Page 577, 10行目</td> <td>プログラマーチーム/エンジニアリングチーム<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文はengineering team.図26-2と同様にプログラマ職の仕事にするのは無理がある</td> </tr> <tr> <td>Page 577, 11行目</td> <td>プログラムチーム/エンジニアリングチーム<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文はengineering team.図26-2と同様</td> </tr> <tr> <td>Page 577, 18行目</td> <td>デジタルゲームのプログラムで難易度の高い作業/デジタルゲームのエンジニアリングで難易度の高い作業<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ;原文はengineering.図26-2と同様にプログラミングではない作業をプログラムと呼ぶのは無理がある</td> </tr> <tr> <td>Page 592, 12行目</td> <td>ライセンスゲーム/版権ゲーム<br /> ; 国内では「版権ゲーム」という場合の方が多いと考えられる.</td> </tr> <tr> <td>Page 627, 4行目</td> <td>Susannah Rosenthal/スザンナ・ローゼンタール<br /> ; 一人だけ名前がアルファベット表記なので統一.</td> </tr> <tr> <td>Page 628, 13行目</td> <td>今後の関係性/今後のつき合い<br /> ; この章ではこのあとクライアントとの関係を超えた生涯の友情を獲得する話まででてくるので、請負関係を想像させない単語の方がよいかも.</td> </tr> <tr> <td>Page 637, 3行目</td> <td>プレゼンテーション/訳注 原著では「pitch」<br /> ; 本章は「ゲーム開発資金を得る」プレゼンの話をすると書かれている.なので講演などの一般的なプレゼンではなく、セールスピッチの話だとわかるように訳すべき. 【影響度: 小】しかし正誤表の範囲を超えるので脚注で説明するのが現実的か.これからのゲーム開発者は世界市場に出て行く必要があり、定番教科書で世界の標準語を学ぶという観点からもピッチという言葉をどこかに入れるべき.</td> </tr> <tr> <td>13行目</td> <td>インディーズゲーム開発者/インディーゲーム開発者<br /> ;原文はindie devs , インディーゲームはゲーム販売でも一般的なカテゴリ.訳注で説明してもよい </td> </tr> <tr> <td>Page 657, 下から1行目</td> <td>知的な/意味のある<br /> ; 原文は meaningful</td> </tr> <tr> <td>Page 664, 下から10行目</td> <td>DARK SOULS/ダークソウル<br /> ; 国産ゲームなので英語タイトルにする必要はない【影響度: 小】本文・索引の修正</td> </tr> <tr> <td>Page 669, 下から3行目</td> <td>インディーズゲーム開発者/インディーゲーム開発者<br /> ;原文は「independent developers」.p.637同様カテゴリー名のインディーゲームを用いる</td> </tr> <tr> <td>Page 672, 下から4行目</td> <td>/『私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか―ロジャー・コーマン自伝』<br /> ; 邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>Page 675, 15行目</td> <td>感情のコントロール/感情のメンテナンス<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 原文はEmotional Maintenance. 感情を維持したりリラックスさせるなどコントロール以外の動作も説明している.【影響度:小】章題および目次の修正.</td> </tr> <tr> <td>Page 680, 17行目</td> <td>人間関係の仕組み/複雑な関係性の仕組み<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 人間関係についての記述はない.p.681では複雑な関係性の仕組みと訳しているので統一.</td> </tr> <tr> <td>Page 680, 18行目</td> <td>理論上/まちがいなく<span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 原文はarguably. 理論にもとづいているというよりもむしろ根拠があるという意味に近い</td> </tr> <tr> <td>Page 681, 下から1行目</td> <td>主要都市/大都市<br /> ; 原文はa major city</td> </tr> <tr> <td>Page 682, 18行目</td> <td>パレスチナの大統領/パレスチナ暫定自治政府の議長<br /> ; 日本政府はパレスチナ国を承認しておらず,暫定自治政府の議長と呼んでいる</td> </tr> <tr> <td>Page 684, 下から4行目</td> <td>変化型ゲーム/行動を変えるゲーム<br /> ; ゲームが変化するような誤解を与える.ちなみに教育工学でこの用語は「変容を起こすゲーム」や「行動変容デザイン」として紹介されている https://anotherway.jp/archives/20181124.html 【影響度:小】修正箇所が多いため脚注で原文説明するだけの対応も考えられる</td> </tr> <tr> <td>Page 687, 8行目</td> <td>Papers Please/Papers, Please<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>これは原著の間違いでコンマが必要です <a href="https://papersplea.se/">https://papersplea.se/</a></td> </tr> <tr> <td>8行目</td> <td>1種類の変化/1種類の変化だけ<br /> ; 原文はonly one type of transformation</td> </tr> <tr> <td>下から4行目</td> <td>SME/SME(Subject Matter Expert)<br /> ; SMEは国内教育工学では英語そのままで使う場合が多いので日本語訳にも略さず英語のフルスペルもつけた方がわかりやすい</td> </tr> <tr> <td>訳注3</td> <td>Papers Please/Papers, Please<br /> ; 同上</td> </tr> <tr> <td>Page 688, 1行目</td> <td>非公式/形式を決めずに行う<br /> ; その下の科学的テストに対して科学的手続きではない調査のことを指している</td> </tr> <tr> <td>Page 690, 7行目</td> <td>ディズニークエスト用ゲーム/DisneyQuestのライド<br /> ; 表記を統一</td> </tr> <tr> <td>Page 697, 章題</td> <td>ある種の責任が/必ず責任が<br /> ; <span style="color: red;">【最重要】</span>「ある種の」は a certain だが、原文はCertain Responsibilities .最新の第3版ではこの形容詞は無くなっている【影響度:小】章題および目次の修正.</td> </tr> <tr> <td>Page 699, 脚注</td> <td>/この番組の日本語訳はありません.<span style="color: blue;">[追記]</span><br />この後に製作されたミスター・ロジャースの映画『ミスター・ロジャースのご近所さんになろう』『幸せへのまわり道』は日本語版があります.本発言は本章末の参考文献にも記載されています. </td> </tr> <tr> <td>Page 701, 20行目</td> <td>コミュニケーションの安全措置/通話の防御手段<br /> ; 意味がよくわからない</td> </tr> <tr> <td>Page 704, 最終行</td> <td>; リンク切れ.本章の冒頭にも登場するフレッド・ロジャースによる議会証言はネット上に公開されている<span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 711, 訳註1</td> <td>; 意味不明.著者が意図しなかったことも読者は引き出してくれるかもしれない,それは著者も参考にさせてもらいたいと述べている.<span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 711, 10行目</td> <td>カード型にしたレンズの束/レンズのカードデッキ; 意味が通りにくいので.<span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 711, 10行目</td> <td>artofgamedesign.com / deck.artofgamedesign.com ; 第3版出版に伴うアドレス変更.<span style="color: blue;">[追記]</span> </td> </tr> <tr> <td>Page 713, 8-9行目</td> <td>/クリストファー・ アレグザンダー『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー:建築の美学と世界の本質 ― 生命の現象』(鹿島出版会, 2013)<br /> ; 邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>下から1-2行目</td> <td>/ロジェ・カイヨワ著、多田道太郎、塚崎幹夫訳『遊びと人間』講談社学術文庫, 講談社<br /> ; 邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>Page 714, 7行目</td> <td>/クロフォード著、多摩豊訳 『バランス・オブ・パワー デザイナーズ・ノート』ビジネス・アスキー, 1989.5<br /> ; 邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>12行目</td> <td>フロー邦題/<br /> ; これは本文で引用されている『Flow』とは別の共著書です.第3版では2冊とも別々にリストに入っています.</td> </tr> <tr> <td>下から6行目</td> <td>;フラートン原著は改訂4版 (2018)が出ているので追記するとよい</td> </tr> <tr> <td>Page 715, 15-16行目</td> <td>/ホイジンガ『ホモ・ルーデンス: 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み』 里見元一郎訳. 講談社学術文庫 2018., 『ホモ・ルーデンス』高橋英夫訳, 中公文庫版 2019.<br /> ; オランダ語原著および英語訳からの邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>19行目</td> <td>/ジョンストン 『インプロ (IMPRO): 自由な行動表現 (パフォーマンス)』而立書房2012.<br /> ; 20章には邦訳情報があるが、参考文献には含まれていない.</td> </tr> <tr> <td>Page 713, 21行目</td> <td>Picture This/細谷由依子訳『絵には何が描かれているのか: 絵本から学ぶイメージとデザインの基本原則』フィルムアート(2019.11近刊)<br /> ; p.445にでてくる.本書出版後に翻訳された</td> </tr> <tr> <td>Page 716, 8行目</td> <td>/マクラウド 『マンガ学―マンガによるマンガのためのマンガ理論 』美術出版社 1998. &nbsp; 椎名ゆかり訳『マンガ学 マンガによるマンガのためのマンガ理論 完全新訳版』復刊ドットコム 2020<span style="color: blue;">[追記]</span></td> </tr> <tr> <td>Page 717, 6-8行目</td> <td>; 『ルールズ・オブ・プレイ』はSBクリエイティブ版(2011)が絶版になり、ニューゲームズオーダー(2019-)が刊行中</td> </tr> <tr> <td>10行目</td> <td>/ジヨーヂ・サンタヤナ『美識論』鷲尾浩訳 冬夏社, 1921. 春秋社, 1936. <br /> ; 邦訳あり</td> </tr> <tr> <td>下から7行目</td> <td>; ボグラー 17章には翻訳情報があるが参考文献にはない.なお原著は第3版が2007年にでて10年以上たっているので、そちらも記載した方がよい.</td> </tr> <tr> <td>Page 721, 中段</td> <td>; 索引でのGDDの記載ページが2箇所しかなく少ない. </td> </tr> <tr> <td>Page 729, 中断</td> <td>理想郷  620/理想郷  453, 456, 620, 621, 622, 702 <span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 索引での「理想郷」の記載ページが少ない.「理想郷のレンズ」の間違いではないか</td> </tr> <tr> <td>Page 729, 中断</td> <td>/理想郷のレンズ  622 <span style="color: blue;">[追記]</span><br /> ; 索引での「理想郷のレンズ」がない.</td> </tr> <tr> <td>Page 729, 後段</td> <td>レベルデザイン 510/レベルデザイン 138,151,432,502,510<br /> ; 索引での「レベルデザイン」の記載ページが少ない</td> </tr> </tbody></table> S.Yamanehttp://www.blogger.com/profile/08138892350931505180[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-1952842388533707922019-08-04T17:48:00.002+09:002019-08-04T17:53:01.272+09:00DiGRA2019 in 京都 勝手にプレビュー(後編)<br /> IGDA日本アカデミック・ブログ主筆の山根です.外部の視点から見るDiGRA2019プレビューの最終回は、<a href="https://www.rcgs.jp/?page_id=194" target="_blank">Ritsumeikan Game Week</a>と国際交流について紹介したい.<br /> <br /> <a name='more'></a><h2> ゲームウィークに向けて</h2> いよいよDiGRA2019京都が来週にせまり各国のゲーム研究者が日本に向かっている.8月前半の猛暑の中の国際会議となってしまったが、会場校は<b>夏コミ</b>などの事例を参考にして、救急対応など万全の対応をお願いしたい(特にゲーム研究では北欧や南米の研究機関からの参加者も少なくないので).「京都が猛暑に襲われることはわかっていたのに、なぜこの時期にこの場所に?」と思われるかもしれない.それはDiGRA2019が<a href="https://www.rcgs.jp/?page_id=194" target="_blank">Ritsumeikan Game Week</a>の一つとして設定されたためだ.これはDiGRA2019の前後にIEEEの会議や日本のゲーム史の会議を繋いだものだ.(そして言うまでもなくその後には夏コミがある.)特に、2019 年8 ⽉10 ⽇(⼟)の展示は、国際会議の参加者だけでなく、<a href="https://www.rcgs.jp/?p=874" target="_blank">一般にも公開される</a>.<br />  国際会議DiGRAは単に学術的な議論をするだけでなく、会議室の外でも、その開催地のゲーム文化に触れる場が提供されてきた.たとえば過去のオランダ開催の時には夜になってゲーム研究者がDJをつとめる<span class="ILfuVd"><span class="e24Kjd">レイブ</span></span>「DiGRAVE」が開かれたし、東京ではCEDEC2007と同時開催イベントにするだけでなく<a href="http://www.cofesta.jp/" target="_blank">JAPAN国際コンテンツフェスティバル (CoFesta)</a>の一環としてとしても位置づけられ、会場にはMIT Pressのゲーム研究書展示ブースの隣にCoFestaのブースが並んだ.またスコットランドではゲームの総合研究拠点がその規模の大きさによりヨーロッパ発祥のDiGRAとアメリカ発祥のFDGというゲーム研究の2大国際会議を<a href="http://digra-fdg2016.org/" target="_blank">同時開催</a>したり、イギリス最大のインディーゲームフェスティバル「Dare ProtoPlay」に時期を合わせたりした.ようするに、期間中は<b>都市をあげてゲーム研究者を歓迎するムード</b>をつくりだしている.これを単独大学内で実現した立命館大学はすごい.<br /> <h2> ゲーム研究者との国際交流</h2> 世界から集まったゲーム研究者との交流は楽しい.<br /> <br /> ゲーム研究における国際交流の重要性については、国内大会<a href="http://digrajapan.org/conf2016/" target="_blank">DiGRA Japan 2016</a>の予稿集の企画セッション「ゲーム研究のトップ会議、国際学術出版への道」の渋谷による実体験を読むことができる<span class="st">. </span><br />  ただし、日本のゲームについては海外の研究者の方が詳しい場合があることに注意したい. DiGRA2019の<a href="https://easychair.org/smart-program/DiGRA2019/index.html" target="_blank">プログラム</a>を見ればわかるように、スペインの研究者がシェンムーの横須賀について<a href="https://easychair.org/smart-program/DiGRA2019/2019-08-07.html#talk:109068" target="_blank">発表</a>するなど、日本製のゲームについて論文を書いて審査を通過している(そして日本に渡航する研究予算を獲得している)のは国内よりも海外の研究者の方なのだ.彼らは日本のゲームを研究する際も日本の研究を読まずに、海外の研究予算で日本に調査に来て研究成果をあげている.<br />  国内のアカデミックリーダーの方々には、海外でゲーム研究者を育成し拡大している取り組みにも注目してほしい.アカデミック・ブログの<a href="http://igdajac.blogspot.com/2018/02/2017.html" target="_blank">2017年レビュー</a>記事の中で、ゲーム専攻の大学ランキングが変動していることを指摘したが、そこで新設のゲーム教育機関として言及したマルタ大学やカリフォルニア大学アーバイン校からも早速DiGRA2019に発表に来ている.これは新設のゲーム教育機関がゲーム研究の成果もあげはじめたことを示しており、目が離せない.S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-34250814955316477802019-08-03T10:31:00.001+09:002019-08-07T16:04:16.287+09:00DiGRA2019 in 京都 勝手にプレビュー(中編)<a href="https://igdajac.blogspot.com/2019/06/digra2019-in.html" target="_blank">前編</a>の記事では、2019年8月6日から京都で開催されるDiGRA2019国際会議について、本体のセッション以外のワークショップをプレビューした.本記事では、後編としてその後に発表された情報を日本でゲームに関わる方々にお届けする.<br /> <br /> <a name='more'></a><h2> 前回記事からの変更点: ゲーム展とRPGサミット</h2> まず、前回予告されていた<b>ゲーム展 「Blank Archade」</b>は開催延期となった.詳細は不明だが、DiGRA開催者内で準備が足りなかったのではないかという印象がある.<br />  前回追加されたプログラムもある.それが<a href="http://www.digra2019.org/rpg-summit-will-be-held-on-aug-7th-wed-1500-1920-at-zonshin-207/" target="_blank"><b>「RPG Summit」</b></a>だ.これはJosé Zagalが最初に話すことからもわかるように、彼が中心となってつくられたRPG研究書『<a href="https://www.routledge.com/Role-Playing-Game-Studies-Transmedia-Foundations/Deterding-Zagal/p/book/9781138638907" target="_blank">Role-Playing Game Studies: Transmedia Foundations</a>』(2018)の出版を踏まえたものだ.本書はテーブルトークRPGからCRPG, JRPG, ライブアクションロールプレイング(LARP)まで様々なメディアにまたがるRPGを包括的にとらえた初の研究書で、DiGRAの学会名にもあるデジタルゲームの枠組みに収まらない広い分野にまたがっている.この国際執筆陣の一部がDiGRAに集結したわけだが、そもそもDiGRAはデジタルゲーム研究を扱う場でアナログゲームは主役ではない.そこで最近はじまったアナログゲームの論文誌 <i>The <a href="http://analoggamestudies.org/" target="_blank">Analog Game Studies</a></i>が場を仕切るかたちとなり、DiGRAの本体ではなく同時開催サミットという形で開催されている.こうした構成により、アナログゲームの発表もあるだけでなく、サミット終了後には1時間あまり英語RPGの試遊プレイの時間も設けられている.<br /> <br /> <h2> 大会発表から</h2> 次に、大会の本体とも言える、査読を通過して採択された発表について紹介しよう.(ただし現時点ではまだ論文は配布されておらず、概要だけの速報である.)<br /> &nbsp; まず<a href="https://easychair.org/smart-program/DiGRA2019/index.html" target="_blank">プログラム</a>を見て印象的なのが、発表者が幅広く、特にアジアや旧共産圏からの発表が増えたことだ.世界各地の研究機関でデジタルゲーム研究者が増えるにつれて、従来のゲーム研究ではとらえられなかった領域にも脚光が当てられている.<span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0"></span><span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-vw2c0b r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">共産圏</span><span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">のゲーム産業についてはこれまでにもハンガリーの『<a href="http://6octaves.blogspot.com/2017/07/moleman40x4015-x.html" target="_blank">Moleman4</a>』やチェコの『<a href="https://mitpress.mit.edu/books/gaming-iron-curtain" target="_blank">Gaming the Iron Curtain</a>』が目覚ましい成果をあげている.そしてDiGRA2019ではポーランドからの発表が2件ある.これまでポーランドのゲームシーンは断片的な情報しか伝わっておらず、『ウィッチャー』に代表される<a href="https://jp.ign.com/games/37020/feature/digital-dragons" target="_blank">優秀なゲーム開発者がいる</a>とか、<a href="http://archive.globalgamejam.org/2011/dysc-i-sikawica" target="_blank">Global Game Jamでアタリゲームを作った</a>とか、世界的なeスポーツ大会でアメリカからもeスポーツ 研究者を招いて<a href="https://www.eslgaming.com/news/join-us-women-esports-panel-talk-live-iem-expo-katowice-1095" target="_blank">ディスカッション</a>するなどeスポーツの地位が高いらしい、とか<a href="https://slavicgamejam.org/" target="_blank">スラブゲームジャムを開催した</a>(スラブ主義と関係あるのか?)とか全体像がわかりにくかったので個人的に注目している.</span><br /> <span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0"> またアジア圏の発表も印象的だ.台湾から発表3件、そして大規模デモに揺れる香港からはなんとのべ数十人が発表.それも特定校だけでなく、香港の研究者と中国本土やオーストラリアの研究者の共同研究まである.つまり香港からアジアオセアニアにかけて、<b>大学や行政区域を超えた広域の研究者コミュニティ</b>ができて</span><span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">世界レベルの発表を連発しているのだ.これは10年前には考えられなかった.これは香港の大学の人材戦略の成果だ.日本でもかつて<a href="https://withnews.jp/article/f0170429000qq000000000000000W05x10301qq000015121A" target="_blank">香港の大学への人材流出</a>が話題になったが、ゲーム研究でも香港の大学はイギリスの大学でゲーム博士号をとって国際会議の委員もやっている第一線の若手をリクルートした.彼女は着任していきなりChinese DiGRAをたちあげ(<a href="http://igdajac.blogspot.com/2017/06/2017.html#more" target="_blank">本ブログでも2017年に言及</a>)、ゲーム研究のレベルをアジアトップレベルに引き上げることに成功した.もちろん最先端の若手研究者が</span><span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">国内学会のトップについただけで国内学会のレベルがあがるわけではない.彼女は学会活動だけでなくゲームジャムの伝道師でもあり、Global Game Jam香港会場を<a href="https://globalgamejam.org/status" target="_blank">アジア随一、世界屈指</a>の規模に成長させた.この本人による香港ゲームジャムシーンの<a href="https://easychair.org/smart-program/DiGRA2019/2019-08-09.html#talk:108786" target="_blank">発表</a>は日本の研究者ができなかったことを考えるためにも見逃せない.</span><br /> <span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0"> こうした</span><span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0">アジアや旧共産圏などの地域からの発表が増えると、デジタルゲームはまさに世界共通の文化財で我々もその一部なのだということが実感でき、ビデオゲームはアメリカ発祥とか日本の誇る文化だとか考えることに困難さを覚える.DiGRA2019の発表のなかにも「我が国のゲーム史 」「国民(ぼくたち)のゲーム史」そのものを作る=問題化する<a href="https://easychair.org/smart-program/DiGRA2019/2019-08-09.html#talk:108917" target="_blank">発表</a>もあり、我々のゲーム観そのものを問い直す機会になることを期待している.</span><br /> <span class="css-901oao css-16my406 r-gwet1z r-ad9z0x r-bcqeeo r-qvutc0"><br /></span>S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-66875496772321234932019-06-07T20:12:00.000+09:002019-08-02T17:35:51.212+09:00DiGRA2019 in 京都 勝手にプレビュー(前編) <h3> DiGRAが再び日本で開催</h3> DiGRA(Digital GamesResearch Association)の世界大会「DiGRA2019」が今年2019年8月に京都で開催される.<br /> 「今回はDiGRAの日本語ニュースが少ないなあ」と思われる方も多いかもしれない.たしかに初めてDiGRA世界大会が日本で開催された前回の2007年には日本語ウェブサイトをつくったり、非会員にも日本語ニュースレターを配ったり、CEDECと同時開催にして<a href="http://cedec.cesa.or.jp/2007/contents/digra.html" target="_blank">基調講演をCEDEC受講者特別価格で提供</a>したりした.これは多くの国内関係者の尽力によって可能になった.<br /> <br /> <a name='more'></a><br />  たしかに当時の日本では、ゲーム研究の国際会議に世界の研究者が集まるというのは一般の常識を超えており、日本語での説明がないと意味不明だった.なにしろゲームを学術的に研究するということ自体が疑問視されていた時代である.ゲームを学術的に学び、英語論文を書いてゲーム研究者による査読を受け、ゲームの研究で博士号を授与される、という世界が存在することは国内の想像を超えていた.当時の対談記事「<a href="http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/text/2006/11/game_study.html" target="_blank">発展するゲーム学</a>」はその様子を伝えている.(この記事には伝統的な大学をもとにしたヨーロッパ発祥のDiGRAとアメリカ発祥のゲーム開発者教育機関という二大勢力が説明されており、前者のDiGRA世界大会が今年で2度目の日本開催となり、後者はIGDA教育SIGがはじめた<a ef="http://igdajac.blogspot.com/search/label/GDC" hr="" href="http://igdajac.blogspot.com/search/label/GDC" target="_blank">GDC</a>の教育サミットや<a href="http://igdajac.blogspot.com/search/label/FDG" target="_blank"><http: igdajac.blogspot.c="" label="" om="" search="">FDG</http:></a>といったコミュニティを形成している.)<br />  だが、2007年当時、世界大会の開催と日本国内のゲーム研究シーンの立ち上げという二重のミッションを遂行したことは、若手研究者を消耗させてしまった.それに比べて今回の開催スタッフは国際会議の中身に集中しているように見える.そこで当アカデミックブログとしては、運営スタッフでなくてもできるような、外野の立場からの英語プログラムのみどころの紹介をしていきたい.<br /> <h3> 勝手にプレビュー前編: 同時開催イベント紹介</h3> 本記事は前編として、国際会議の本体ではなく、同時開催イベントを紹介する. <br /> <h4> ゲームキュレーターによるゲーム展 「Blank Archade」</h4> まず、ゲーム展示<a href="http://blankarcade.criticalgameplay.com/">Blank Archade</a>.これはDiGRA2007にはなかった、DiGRA2014からはじまったイベントだ.前回DiGRA2007では学生や研究者の実験作の展示をせず、学者の発表に特化していた.しかしゲーム研究コミュニティは年々拡大していき、美術館の学芸員に相当するゲームのキュレーターが研究コミュニティに加わる.さらにDiGRA2016 in Scotlandではヨーロッパ発祥のDiGRAと北米発祥のFDGが同時開催されるなど、DiGRAのコミュニティは10年前よりも拡大している.このBlank Archadeでは<a href="http://www.digra.org/digital-library/publications/blank-arcade-exhibition-of-games-and-toys-as-art/" target="_blank">キュレーターが図録を作る</a>など美術館の展示を意識した展示が行われ、ゲーム研究コミュニティの新境地を示している.<br /> <h4> 大会前ワークショップから</h4> 初日には外部団体が開催するワークショップの募集が行われ、多くの企画が予定されている.これらは本体の論文発表セッションのような査読プロセスは決まっておらず、扱える範囲が広く、参加者が作業したり講習会をしたり、テーマを決めてより集中的な議論を行うこともできる.<a href="http://www.digra2019.org/workshop/" target="_blank">DiGRA2019のワークショップ</a>で詳細が明らかになっているのは以下のとおり. <br /> <h4> 1時間ゲームジャム</h4> 「One Hour Game Jam &amp; Bitsy Tutorial」<br /> ゲームジャム研究で博士号を取得し、エクストリーム系ゲームジャムや原住民ゲームジャム、ハードコアゲームジャマーなどゲームジャム研究をリードするFinnish Game JamのKultima女史らによるワークショップ. <br /> <h4> ゲーム教育の空間設計ワークショップ</h4> 「Making Space for Inclusivity: Code/Spaces in Informal Games Education」<br /> 学校の教室でゲームを教えるのではなく、誰もが参加できるゲーム教育の場をつくるためのグループディスカッション. <br /> <h4> ゲーム分析ワークショップ</h4> 「Game Analysis Workshop」<br /> 文学研究におけるサイバーテクスト理論で知られるEspen Aarsethらのワークショップ. <br /> <h4> 博士課程院生の手引き</h4> 「“Ex-PhD-ition” – Gameful Support for the PhD Student’s Journey」<br /> これは博士課程の院生や指導教員を対象としたセッションで、国際学会では、博士論文のトピックや研究の進め方、キャリアプランなどの助言をするとともに、旅費の支援までやっており、日本国内では得られない支援を受けることができる.たとえば<a class="twitter-timeline-link" data-expanded-url="https://junkato.jp/ja/blog/2014/07/27/acm-doctoral-symposium-consortium/" dir="ltr" href="https://junkato.jp/ja/blog/2014/07/27/acm-doctoral-symposium-consortium/" rel="nofollow noopener noreferrer" target="_blank" title="https://junkato.jp/ja/blog/2014/07/27/acm-doctoral-symposium-consortium/">ACM Doctoral Symposium (Consortium) 参加のすすめ(2014)</a>が参考になる. かつてDiGRA2007では筆者がユールとアドバイザーをつとめたが、こうしたトップレベルの支援には程遠かった.今回はトップレベルの若手博士人材育成に期待している. <br /> <h4> ゲーム教育ワークショップ</h4> 「Teaching Games: Pedagogical Approaches」<br /> 提案者が世界のゲーム教育機関のトップ揃いで、これだけで国際会議ができそうだが、これは米のゲーム教育機関が加盟する<a href="https://hevga.org/digracfp/">HEVGA</a>(全米ビデオゲーム高等教育連合)が主催するワークショップなので、HEVGA役員が名を連ねている.なのでこのゲーム教育機関オールスターがDiGRAに結集するわけではないと思う. <br /> <h4> 位置情報ゲーム研究ワークショップ</h4> 「The Future of Location-based Gaming Research workshop」<br /> これはゲーム研究の中でも特に位置情報ゲームの研究について集中的に議論するワークショップだ.企画提案は、フィンランドの研究拠点CoE (The Centre of Excellence in Game Culture Studies)に所属するタンペレ大学の研究者グループと、日本各地の研究者グループ.日本の研究コミュニティが企画提案に関わるようになったのは前回からの大きな進歩だ. <br /> <h4> ダイバーシティ(多様性)ワークショップ</h4> 「Diversity Workshop: Social Justice Tactics in Today's LudoMix」<br /> こちらも各地域の研究者によるワークショップ.なぜダイバーシティをゲーム研究で扱うのか、という点が日本の文脈ではわかりにくいかもしれない.この背景には前回のDiGRA日本開催のあとで起こった事件により、ゲーム研究シーンが差別問題やオンラインハラスメント問題の最前線になり、ゲーム研究者の誰もが差別問題に無関心ではいられない状況がある.<br /> ゲーマーゲート事件(<a href="https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/post-5865.php" target="_blank">日本語記事参照</a>)でラディカルフェミニズムがネットで誹謗中傷にさらされ、DiGRAもラディカルフェミニズムの論文を出版している、ラディカルフェミニズムに支配された陰謀集団だという非難にさらされた.この結果、DiGRAはゲーマーゲートに対抗する<a href="http://www.digra.org/digra-and-gamergate/" rel="nofollow noopener noreferrer" target="_blank" title="http://www.digra.org/digra-and-gamergate/">学会声明</a>を出している.また、大会には<a href="http://www.digra2019.org/contact-info/" rel="nofollow noopener noreferrer" target="_blank" title="http://www.digra2019.org/contact-info/">Inclusivity Policy</a>を掲げ、人種差別、性差別、同性愛差別と対決する姿勢を示してきた. <br /> <h4> Twitchでの教育実践ワークショップ</h4> 「Teaching with Twitch: A Practical Workshop」<br /> Twitch.tvはGDCなど各種会議でスポンサーセッションを開催してが、DiGRAにも登場. ゲーム研究の中でもオーディエンス研究は増えており、<a href="http://watchmeplay.cc/" rel="home">Watch Me Play</a>のような研究書も出版されているのでTwitchを学校で使おうというのは効果的な企業活動だ. <br /> <h4> ゲームにおける廃墟ワークショップ</h4> 「Ruins in Digital Games」<br /> 参加者募集にわざわざHaikyoという和製英語を使っている、日本開催を意識した?ワークショップ. <br /> <h4> メディアミックスとフランチャイズ理論</h4> 「Between Media Mix and Franchising Theory: A Workshop on the Theoretical Worlds of Transmedia Production」<br /> DiGRA2019では大塚英志のメディアミックスの基調講演が予定されている.それに合わせて、日本におけるキャラクターのフランチャイズビジネスについて邦訳もあるマーク・スタインバーグらが企画するワークショップ. <br /> <h4> メタファーベースのキャラクターデザイン</h4> 「Metaphor-based Character Design」<br /> シリアスゲームのデザインを含む個人提案ワークショップ.<br /> <h4> ゲーム研究におけるメタデータ</h4> 「Metadata in Game Studies: what it is, what we can do with it, and why it matters」<br /> 大学図書館の専門家(ライブラリアン)が組織するワークショップ.オーガナイザーには日本の研究者も参加. <br /> <h4> IGDAビデオゲーム教育カリキュラムラウンドテーブル</h4> 「The IGDA Building Blocks of a Video Game Curriculum」<br /> かつてIGDAの教育部会(Education SIG)はGDCやSIGGRAPHでワークショップを開催し、さまざまなゲーム開発者教育を収集し位置づけたカリキュラム・フレームワークを発表した.IGDAカリキュラムフレームワーク2008の日本語訳は<a href="https://www.igda.jp/" target="_blank">IGDA日本ウェブサイトのトップページ</a>からもリンクされている.それから10年たち、ふたたびGDCなどでカリキュラムフレームワーク見直しのラウンドテーブルが開催されているが、DiGRAでも開催されることになった.<br /> <h4> 人種・ジェンダー・クィアネスで遊ぶシリアスゲーム開発ワークショップ</h4> 「Playing (with) Race, Gender, and Queerness: A Serious Game Development Workshop」<br /> DiGRAがポリシーとして人種差別・性差別・同性愛差別に反対していることは先に述べたが、研究ではなくシリアスゲーム開発でそれを考えるのがゲーム研究の学会らしい.<br /> <h4> 日本語トラック 「Japanese Track」</h4> DiGRA Japan(日本デジタルゲーム学会)が<a href="http://digrajapan.org/?p=6770">企画する</a>日本語発表セッション. <br /> <h3> 国際学会のみどころ</h3> ここまで<a href="http://www.digra2019.org/workshop/" target="_blank">DiGRA2019のワークショップ</a>など同時開催イベントを簡単に紹介してきたた.国際学会の世界大会では、国際学会だけでなく外部団体の同時開催イベントだけでも幅広い活動を体験できる.これからさらに発表される学会情報に注目したい.S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-57125557504868227262019-03-17T17:08:00.000+09:002019-06-06T02:01:52.321+09:002019年プレビュー後編: 誰が教育者を教育するのか<h2> 新たな動向: 存在意義を発信する教育機関</h2> ブログ主筆の山根です.前回の前編記事では、2000年代にデジタルゲームが学問の対象となり、一部の先進校だけでなく国際学会をあげて整備されてきた歩みを紹介しました.こうしてゲームが人生をかけて学ぶに値する学問になって、ゲーム開発者教育はこの先どこに向かうのでしょうか.まず考えられるのは、本ブログでもたびたび紹介してきたように、各国でゲーム研究を看板にした大学・大学院の競争が活発になる.この競争にもいろいろな評価基準があり、どれだけ人材育成予算を獲得したか(たとえば2019年2月、イギリスでは新たに60人のゲームAIの<a href="https://digitalcreativity.ac.uk/news/iggi-wins-major-uk-funding-become-world-leading-centre-games-research" target="_blank">博士課程の大学院生を雇用する</a>と発表した)、どれだけ大きな研究拠点を作ったか(フィンランドでは公立のCoE (The Centre of Excellence in Game Culture Studies)を設置した)、そして調査会社がつくったランキングの順位を競う競争(昨年の<a href="http://igdajac.blogspot.com/2018/02/2017.html" target="_blank">本ブログ記事</a>でも紹介)もある.しかし、こうした競争だけでは学問の発展は説明できません.競争する一方で、ゲーム教育機関は国境を超えて同じ目標を掲げて足並みをそろえています.<br />  2019年は学問としてのゲーム教育機関がその存在意義を発信し、評価を受ける年になると考えています.この後編の記事では.今年2019年に開催されるイベントから新たな取り組みを展望します.<br /> <br /> <a name='more'></a><br /> <h3> GDC19(3月)教育分野プレビュー</h3> 3月のGDC19では、ゲーム研究を立ち上げた研究者が新たな機軸を打ち出している.<br /> GDC19初日の最初のセッション「<a href="https://schedule.gdconf.com/session/been-there-done-that-lessons-from-developing-1-game-program/865461" target="_blank">ゲーム教育プログラムを複数たちあげた教訓(Lessons from Developing &gt;1 Game Program)</a>」は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパのトップスクールでゲーム教育プログラムを立ち上げた3人が話す.(日本がないと思われるかもしれないが、3人とも、東京大学での講演、MIT出版から日本のゲーム通史を出版、日本でのポスドク勤務をするなど異なる来日経験がある.)彼らは通常、自分が勤務する大学以外のことは話さないが、この場は国際的な高等教育シーンを知ることができる.<br /> <br /> 続いて「<a href="https://schedule.gdconf.com/session/the-game-of-grading-a-discussion-of-grading-and-assessment-in-higher-ed-games-programs/863262" target="_blank">高等教育におけるゲーム教育課程の採点および評定について(Grading and Assessment in Higher Ed Games Programs)</a>」(<a href="https://www.igda.jp/?p=9352" target="_blank">IGDA日本による概要日本語訳</a>)では、カナダ連邦のゲーム研究開発のトップ職(Chair)をつとめる教授と、HEVGA(全米ビデオゲーム教育機関連合) の会長をつとめる教授を含むセッションである.ゲーム教育を立ち上げるだけでなく、教育課程を誰がどう評価しているのかが問われることになるだろう.<br /> 過去に筆者も、調査会社が大学・大学院ランキングを発表すること(そして、その評価項目に重点的に投資する新興国が出現したこと)に対する<a href="https://image.slidesharecdn.com/gdc17report-170321053014/95/gdc2017gdc-8-638.jpg?cb=1490102239" target="_blank">問題意識</a>について<a href="http://igdajac.blogspot.com/2018/02/2017.html" target="_blank">言及した</a>が、学術成果を競いあい、研究者に号令をかけているトップによる知見が注目される.<br /> <br /> そしてこの学術界トップらが登壇するもう一つのセッション、「<a href="https://schedule.gdconf.com/session/how-to-talk-about-games-today/860644" target="_blank">現代においてどのようにゲームを語るべきか(How to Talk About Games, Today)</a>」は、昨年<b>WHO</b>で制度化に向けて動き出したゲーム障害についての学術界の応答も予定されている(HEVGAはすでに声明発表済み).この制度化の動きは東アジアのゲーム依存症研究者が関わっているが、すでに国を超えた国際機関が取り組む問題に発展している.この動きに対する学術界と産業界の初のセッションとなる.<br /> <br />  もちろんGDCでゲーム教育について語るのは組織の長だけでない.GDCでは現場の大学教員によるセッション「<a href="https://schedule.gdconf.com/session/jams-clubs-shows-and-more-an-overview-of-institutional-support-for-game-students/863169" target="_blank">ゲームジャム、クラブ、イベントその他:ゲームを学ぶ学生に対する教育機関側のサポートの全容</a>(Jams, Clubs, Shows and More: An Overview of Institutional Support for Game Students)」も注目される(<a href="https://www.igda.jp/?p=9352" target="_blank">IGDA日本による概要日本語訳</a>).発表するのは、昨年出版された『<a href="http://www.keio-up.co.jp/kup/gift/videogame.html" target="_blank">ビデオゲームの美学</a>』(松永 伸司 著)でも論文が引用されている現役のゲーム研究者だ.これまでゲームプレイの美学や定義のような理論研究で影響を与えてきた研究者が、ゲームを学ぶ学生をどうやってサポートするのかという教育実践を語ることの意味は大きい.しかも、例にあがっているのは彼が大学に就職した後に登場したゲームジャムやeスポーツのムーブメントを通じた学生支援である.<br /> <h3> FDG19(8月)での動向</h3> 2019年をゲーム教育にとって特別な年にしているのは、GDC19のセッションだけではない.3月のゲーム開発者会議GDCに続いて、8月のデジタルゲームの基盤に関する国際会議「FDG」でもこれまでにないゲーム教育のセッションが計画されている.<br />  FDGについては過去に本ブログでも<a href="http://igdajac.blogspot.com/search/label/FDG" target="_blank">参加記事を書いた</a>が、大きな参加者を集めるよりも専門ごとの深い議論を重視してきた会議である.そして今年のFDG19では、ゲームの高度専門家教育について、以下の場が設けられている.<br /> <br /> <h4> (1) Workshop on Tenure &amp; Promotion Practices in Games &amp; Interactive Media (ゲーム専攻・メディア専攻での教員雇用と広報実践)</h4> GDCでも存在感を高めつつある<a href="http://workshop.learnvideogames.com/" target="_blank">HEVGAが主催するワークショップ</a>.国際学会内のワークショップだが、研究について議論する場ではない.<a href="http://workshop.learnvideogames.com/cfp.html" target="_blank">発表募集</a>によれば、ゲーム教育の学部長、学科長、ディレクターらの参加を呼びかけている.いままでに「ゲーム業界から大学教員になろう」というセッションはGDC18で開催されたことがあるが、組織のリーダーが議論する企画はなかった.特色ある組織のリーダーの発表が期待される.<br /> <br /> <h4> (2) FDG Game Educators’ Symposium (GESym) (ゲーム教育者シンポジウム)</h4> こちらも、カリキュラム開発や学生のサポートについて議論するという<a href="https://research.pomona.edu/game-education/call-for-papers/" target="_blank">シンポジウム企画</a>で、デジタルゲームの国際学会が単なる研究発表の場というだけでなく、どうすれば次代を担う学生が最大限に学ぶことができるのかを問う場になっていることが実感できる.<br /> <h2> おわりに</h2> 本記事では、2019年の国際的なゲーム研究機関の新たな動向をとりあげた.ゲームを学問としてたちあげる段階からさらに進んで、入学から卒業までどうやって学生の学びを促進していくか、教室内の学びだけでなくゲームジャムやeスポーツといった課外活動、地域の産学連携からWHOのような世界への貢献まで、幅の広い議題が用意されています.<br /> この世界的な動向の中で、日本のゲーム研究シーンも「世界のゲーム研究シーンの空白地帯」や「留学生の受け皿」にとどまることなく、独自の存在感を示すことが問われるでしょう.そのためには、単なる研究室単位の学びから、教育プログラムのディレクターが組織の長として発信する取り組みや、組織自体の評価を示す取り組みが問われることになりそうです.S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-2161664093993273952019-02-18T02:14:00.002+09:002019-02-18T02:18:24.093+09:002019年プレビュー前編: ゲーム開発者教育とゲーム学の歩み<h2> ゲーム開発者教育の20年</h2> 本記事はGDC19, FDG19から見える2019年のゲームのアカデミックシーンを展望する予定だったが、2019年に起こる試みの新しさを理解するには、まず背景となるゲーム開発者教育が大学そして大学院で高度化してきたこれまでの動向を知っておく必要がある.そこでまず前編として、これまでの過去のゲーム教育の歩みをふりかえってみたい.<br /> <br /> <a name='more'></a><br /> <br /> いまから十数年前の2000年代初頭、多くの国でゲームはまだ学問の対象とは思われておらず、一部の先進校がゲーム開発やゲーム研究を学問として教える一方で、職業訓練校でも高度化大規模化するゲーム開発に対応するために4年制課程の設立を進めていた.これらのバラバラだったゲーム開発者教育の先進校が集まる場をつくったのが、草の根ネットワークのIGDAだ.IGDAは2002-2003年にGDCやSIGGRAPHで先進校のカリキュラムをとりまとめて「ゲーム開発者カリキュラムフレームワーク」初版を発表した.この動きをまのあたりにして危機感をつのらせた日本勢の一部から、本ブログの親団体であるIGDA日本支部の設立へと動きはじめる.その様子は<a class="customTooltip" href="https://www.blogger.com/null" title="新 清士, 国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)">新清士</a><a href="https://doi.org/10.3169/itej.63.925" target="_blank">「ゲーム産業と学術研究機関の関係」</a>(2009)に詳しい.<br /> <br /> そして、この動きが米国だけでなく国際学会を通じて世界の教育機関にひろがったのが2006-2007年だ.<br /> まず専門家協会IEEEの学会誌、その名もずばり『<i>Computer</i>』の2006年6月号の巻頭特集で<a href="https://www.computer.org/csdl/mags/co/2006/06/index.html" target="_blank">「次世代のゲーム開発者教育」</a>がとりあげられた.そして翌年、米国計算機協会ACMの会誌『<i>Communications of the ACM</i>』でも、2007年7月号巻頭特集<a href="https://dl.acm.org/citation.cfm?id=1272516" target="_blank">「ゲーム学の創造」</a>が掲載された.IEEE-CSとACMというコンピュータ系の2大国際学会が学問としてのゲーム(特にゲーム開発必修科目を学ばないと卒業できない大学・大学院)を特集したことで、世界中のコンピュータ専門家がゲーム教育先進校の取り組みを知るようになった.<br /> 当時はこの記事は会員にしか読めなかったが、いまでは公開されている記事もある.IEEE-CS特集はZydaの<a href="https://www.computer.org/csdl/mags/co/2006/06/r6030-abs.html" target="_blank">特集イントロダクション</a>がPDF/HTMLで無料公開されているほか、Fullertonの<a href="https://www.researchgate.net/publication/2956930_Play-Centric_Games_Education" target="_blank">「Play-Centric Games Education」</a>は著者自身が無料公開している.<br /> そしてACM特集については、<a href="https://doi.org/10.1145/1272516.1272535" target="_blank">記事</a>の「Source Materials」をクリックすれば日本支部による日本語訳PDFファイルがダウンロードできる.とくに<a href="http://igdajac.blogspot.com/2009/11/randy-pausch.html" target="_blank">ランディ・パウシュ</a>の共著記事2本はベストセラー『最後の授業』にもでてくるカーネギーメロン大学ETCの話なので興味深く読む読者も多いだろう.<br /> <br /> <h2> 大学間競争の行方</h2> <br /> さて、ここまでは10年以上前の話である.この動向が進んだ結果、ゲーム開発者教育はどこに向かうのかを次に考えてみたい.まず考えられるのはゲーム研究を看板にした大学間の競争である.この競争にも、いくつかの種類がある.<br /> <ul> <li>どれだけ大型予算を獲得したか<br />(たとえば2019年2月、イギリスでは新たに60人のゲームAIの博士課程の大学院生を雇用することを<a href="https://digitalcreativity.ac.uk/news/iggi-wins-major-uk-funding-become-world-leading-centre-games-research" target="_blank">発表した</a>)</li> <li>どれだけ大きな研究拠点を作ったか<br />(たとえばフィンランドではCoE GameCult(The Centre of Excellence in Game Culture Studies)を<a href="https://twitter.com/CoEGameCult" target="_blank">設置</a>し、博士人材が都市計画からポケモンGOの影響まで研究している)</li> <li>調査会社が毎年発表する専攻ランキングで高い順位を得る<br />(昨年に本ブログ記事でも<a href="http://igdajac.blogspot.com/2018/02/2017.html" target="_blank">紹介</a>したように、大きなゲーム産業がない国の大学でも効果的な投資で一躍トップランキングに躍進した)</li> </ul> こうした競争を経て、ゲーム人材育成先進国では博士人材が毎年輩出されている.だがその一方で、ゲーム人材育成に投資しなくてもゲーム産業が発展してきた日本はそもそも競争に加われないでいる.<br />  これから世界のゲーム開発者教育はどこに行くのか? ひょっとしたらゲーム開発者教育は誰もが知るべき基礎教養となり、どの分野でも活躍できる人材を輩出することになるのか.それとも、ゲーム開発者教育機関は最先端のトップスクールと、高い研究能力が求められない教養教育や職業訓練校とに二極化されるのだろうか.<br /> 後編では.こうした学術動向を踏まえて今年2019年の新展開について紹介したい.S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-40593668018853687812018-07-28T16:54:00.005+09:002024-09-18T15:33:52.710+09:00ゲーム研究の重要論文を一望する: Video Games and Gaming Culture (2016) の試みアカデミック・ブログ主筆の山根です.<br />  本記事では、人文科学・社会科学分野の大手学術出版社、ラウトレッジ (Routledge)が出版した全4巻の論文集『ビデオゲームとゲーミング文化』を紹介ます.簡単な紹介のあと、収録論文90本にオンライン版・日本語訳があれば追記し、最後に特徴と活用法についても私見を述べます. <br /> <h2> 紹介</h2> Mark J. P. Wolf 編『ビデオゲームとゲーミング文化』<i>Video Games and Gaming Culture</i>(ハードカバー4巻本)<br /> <div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"> <a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhHpvDls8I108b725oXFFIk1sdlLhlh3jOVnJOpkpk9j-vS06JaSxZHrDCBQPVYRU_EJz366VqH6SeLMarqOeM-vTxWaVtIzNKoNJgCsDoifPFwW3XYh-kRwaccC5_zUL0QDoCVohb5lOQ/s1600/Routledge.jpeg" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" data-original-height="425" data-original-width="284" height="320" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhHpvDls8I108b725oXFFIk1sdlLhlh3jOVnJOpkpk9j-vS06JaSxZHrDCBQPVYRU_EJz366VqH6SeLMarqOeM-vTxWaVtIzNKoNJgCsDoifPFwW3XYh-kRwaccC5_zUL0QDoCVohb5lOQ/s320/Routledge.jpeg" width="213" /></a></div> <br /> 本書は、各分野の重要論文を収録して出版する<a href="https://www.routledge.com/series?title=critical+concepts+in" target="_blank">Crtitial Concepts(重要概念)シリーズ</a>の「Critical Concepts in Media and Cultural Studies」の一冊(4巻本)である.編集しているのは、これまでにもゲーム研究の論文集をいくつも編集しているベテラン研究者Wolfで、本記事執筆時点ではゲーム研究の重要論文集成の決定版と言える.<br /> <br /> <a name='more'></a><br /> <h2> 論文集の役割</h2> 毎年多くの論文が発表され、それをもとにゲームの大学教科書が次々とアップデートされている.だから過去の論文を再録することにあまり意味を感じない人も多いだろう.たとえば2018年から2019年にかけても『Game Engine Architecture』<a href="https://www.crcpress.com/Game-Engine-Architecture-Third-Edition/Gregory/p/book%20/9781138035454" target="_blank">第3版</a>、『Game Design Workshop』 <a href="https://www.crcpress.com/Game-Design-Workshop-A-Playcentric-Approach-to-Creati%20ng-Innovative-Games/Fullerton/p/book/9781138098770" target="_blank">第4版</a>、『The Art of Game Design: A Book of Lenses』 <a href="https://www.amazon.com/dp/1138632058" target="_blank">第3版</a>が予告されており、ここ最近のゲーム研究の成果が反映され効率的に学べるはずだ(ちなみにこうした大学教科書を出しているCRC Pressも、Routledgeと同じTaylor &amp; Francis Groupの系列企業だ).<br />  最新教科書よりも効率は悪いが、論文集が役立つ場合もある.たとえば教科書に載っている重要なアイデアは誰がいつ発表したのかを調べ、それとは異なる自分のアイデアを発表する場合である.また、教科書に載っているアイデアがなぜ提唱されたのか、もっと言えば、なぜその学問が必要になったのかを知ることにもつながる.<br /> <br /> <h2> 目次</h2> 日本に輸入するとかなりの金額になるので、簡単には購入できない.そのため購入の検討材料として、本論集の収録作品やページ数も書店や出版社で公開されている. <br /> <ul> <li><a href="https://kw.maruzen.co.jp/ims/itemDetail.html?itmCd=1018686250" target="_blank">丸善情報</a></li> <li><a href="https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-02-9781138811256" target="_blank">紀伊国屋書店情報</a></li> <li><a href="https://www.routledge.com/Video-Games-and-Gaming-Culture/Wolf/p/book/9781138811256" target="_blank">出版元情報</a>&nbsp;</li> </ul> これを見ると選ばれた論文90本が10の部門にまとめられている.目次からはわからないが、少なくない論文が公開オンラインジャーナルで発表されていたり、著者自身が原稿をオンライン公開しているので、以下にそれらを紹介しよう.<br /> <br /> <h2> 収録論文90本リスト</h2> <h3> 第1巻: 基礎</h3> <h4> Part 1: Defining Video Game Studies </h4> <ul> <li>1. Katie Salen and Eric Zimmerman, “Chapter 7: Defining Games”, <i>Rules of Play: Game Design Fundamentals</i>, (MIT Press, 2003), pages 71-83. <br />邦訳『ルールズ・オブ・プレイ : ゲームデザインの基礎』第7章</li> <li> 2. Miguel Sicart, "Defining Game Mechanics", <i>Game Studies: The International Journal of Computer Game Research</i>, Vol. 8, Issue 2, December 2008, available at <a href="http://gamestudies.org/0802/articles/sicart">http://gamestudies.org/0802/articles/sicart</a> .<br />ミゲル・シカールはのちに書籍『プレイ・マターズ 遊び心の哲学』が邦訳される<br /></li> <li>3. Markuu Eskelinen, "The Gaming Situation", <i>Game Studies: The International Journal of Computer Game Research</i>, Volume 1, Issue 1, July 2001, available at <a href="http://www.gamestudies.org/0101/eskelinen/">http://www.gamestudies.org/0101/eskelinen/</a> .</li> <li>4. Gonzalo Frasca, "Simulation versus Narrative: Introduction to Ludology", in Mark J. P. Wolf and Bernard Perron (editors), <i>The Video Game Theory Reader</i>, (Routledge, 2003), pages 221-235.<br /> <a href="http://ludology.org/articles/VGT_final.pdf">http://ludology.org/articles/VGT_final.pdf</a><br />未邦訳だが同著者の「LUDOLOGY MEETS NARRATOLOGY」は星野訳が<a href="https://web.archive.org/web/20071019155016/http://www.igda.jp/modules/xfsection/article.php?page=1&amp;articleid=49" target="_blank">公開</a>されている </li> <li>5. Juul, Jesper, "Games Telling Stories? A Brief Note on Games and Narratives", in <i>Game Studies: The International Journal of Computer Game Research</i>, Volume 1, Issue 1, July 2001. Reprinted in Joost Raessens and Jeffrey Goldstein (editors), <i>Handbook for Video Game Studies</i>, MIT Press, 2005), pages 219-226.<br /> <a href="http://www.gamestudies.org/0101/juul-gts/">http://www.gamestudies.org/0101/juul-gts/<br /></a>イェスパー・ユールはのちに書籍『ハーフリアル: 虚実のあいだのビデオゲーム』が邦訳される<br /></li> <li>6. Souvik Muhkerjee, "Chapter One - Introduction: Videogames and Storytelling", <i>Video Games and Storytelling: Reading Games and Playing Books</i>, (Palgrave McMillan, 2015), pages 1-20.</li> <li>7. Henry Jenkins, "Games, The New Lively Art", in Joost Raessens and Jeffrey Goldstein (editors), <i>Handbook for Video Game Studies</i>, (MIT Press, 2005), pages 175-189.<br />ヘンリー・ジェンキンズのちに主著『コンヴァージェンス・カルチャー』が邦訳される<br /></li> <li>8. Eric Zimmerman, "Manifesto for a Ludic Century", Kotaku.com, 2013, available at <a href="http://kotaku.com/manifesto-the-21st-century-will-be-defined-by-games-1275355204">http://kotaku.com/manifesto-the-21st-century-will-be-defined-by-games-1275355204</a> .<br />論文1参照</li> </ul> <h4> Part 2: Game Studies Classics </h4> <ul> <li>9. Johan Huizinga, “Chapter I: Nature and the Significance of Play as a Cultural Phenomenon”, <i>Homo Ludens: A Study of the Play-Element in Culture</i>, (Original Dutch edition, 1938; New York: Routledge, 1949), pages 1-27.<br /> 邦訳はホイジンガ『ホモ・ルーデンス : 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み』第1章</li> <li>10. Johan Huizinga, "Chapter XII: The Play-Element in Contemporary Civilization", <i>Homo Ludens: A Study of the Play-Element in Culture</i>, (Original Dutch edition, 1938; Routledge, 1949), pages 195-213.<br />邦訳『ホモ・ルーデンス 』第12章</li> <li>11. Roger Caillois, "The Definition of Play" and "The Classification of Games", <i>Man, Play and Games</i>, (Librairie Gallimard, 1958), pp. 3-11; 11-37.<br />邦訳はロジェ=カイヨワ『遊びと人間』</li> <a href="https://www.blogger.com/goog_1600551541"> </a> <li>12. Clifford Geertz, “Deep Play: Note<span id="goog_1600551543"></span>s on the Balinese Cockfight”, <i><i>Daedalus: journal of the American Academy of Arts and Sciences</i></i>, Vol. 101, No. 1, Myth, Symbol, and Culture (Winter, 1972), pages 1-37.<br /> 原文オンライン版は <a href="http://hypergeertz.jku.at/GeertzTexts/Deep_Play.htm" target="_blank">http://hypergeertz.jku.at/GeertzTexts/Deep_Play.htm</a> 、クリフォード・ギアツの他の著作は邦訳あり</li> <li>13. Brian Sutton-Smith, “Play and Ambiguity”, <i>The Ambiguity of Play</i>, (Harvard University Press, 1997), pages 1-17.<br /> 未訳だがブライアン・サットン=スミスの「遊びの逆は仕事ではない。抑うつだ」という定義は国内でも知られている.</li> <li>14. Chip Morningstar and F. Randall Farmer, “The Lessons of Lucasfilm’s Habitat”, in Michael Benedikt (editor), <i>Cyberspace: First Steps</i>, (MIT Press, 1990), pages 273-301. Reprinted in Noah Wardrip-Fruin and Nick Montfort (editors),<i> New Media Reader</i> (MIT Press, 2003).<br />邦訳は『サイバースペース』(NTT出版, 1994) 「第10章 ルーカスフィルム社のハビタットの教訓」<br /> 原文オンライン版は <a href="http://www.fudco.com/chip/lessons.html">http://www.fudco.com/chip/lessons.html</a> その邦訳は <a href="http://homepage3.nifty.com/%7Etezuka-k/Habingo/LucasHabi.html">http://homepage3.nifty.com/~tezuka-k/Habingo/LucasHabi.html</a>(Internet Archiveなどでみつかる)</li> <li>15. Richard Bartle, “Hearts, Clubs, Diamonds, Spades: Players Who Suit MUDs”, <i>Journal of MUD Research</i>, Vol. 1 (1), 1996. Reprinted in Katie Salen and Eric Zimmerman (editors), <i>A Rules of Play Anthology</i> (MIT Press, 2005). <br /> &nbsp;<a href="http://mud.co.uk/richard/hcds.htm">http://mud.co.uk/richard/hcds.htm<br /></a>邦訳されていないが、リチャード・バートルのオンラインプレイヤー分類はオンラインゲームの多くの論考で言及されている。<br /></li> <li>16. Don Carson, “Environmental Storytelling: Creating Immersive 3D Worlds Using Lessons Learned From the Theme Park Industry”, <i>Gamasutra</i>, March 1, 2000, available at <a href="http://www.gamasutra.com/features/20000301/carson_pfv.htm">http://www.gamasutra.com/features/20000301/carson_pfv.htm</a> .</li> </ul> <h4> Part 3: History and Historiographical Concerns </h4> <ul> <li>17. Steven D. Bristow, "The History of Video Games", <i>IEEE Transactions on Consumer Electronics</i>, February 1977, (1), pages 58–68.</li> <li>18. Carl Therrien, "Video Games Caught Up in History: Accessibility, Teleological Distortion, and Other Methodological Issues", in Mark J. P. Wolf (editor),<i> Before the Crash: Early Video Game History,</i> (Detroit, Michigan: Wayne State University Press, 2012), pages 9-29.</li> <li>19. Kevin Schut, "Strategic Simulations and Our Past: The Bias of Computer Games in the Presentation of History", <i>Games and Culture</i>, 2007, Vol. 2, No.3, pages 213-235.</li> <li>20. David H. Ahl, "Mainframe Games and Simulations", in Mark J. P. Wolf (editor ), <i>The Video Game Explosion: A History from PONG to PlayStation and Beyond</i>, (Westport, Connecticut: Greenwood Press, 2007), pages 31-34.</li> <li>21. Henry Lowood, “Video Games in Computer Space: The Complex History of Pong”, <i>IEEE Annals in the History of Computing</i>, July-Sept. 2009, pages 5-19.<br /> 同著者による特集序文 Editor’s Introduction は無料公開されている <a href="https://www.computer.org/csdl/mags/an/2009/03/index.html">https://www.computer.org/csdl/mags/an/2009/03/index.html</a> </li> <li>22. Mark J. P. Wolf, "BattleZone and the Origins of First-Person Shooting Games", in Gerald Voorhees, Joshua Call, and Katie Whitlock (editors), <i>Guns, Grenades and Grunts: First Person Shooter Games</i>, (Continuum, 2012), pages 25-40.</li> </ul> <h3> 第2巻: デザインと理論 </h3> <h4> Part 4: Video Game Design and Formal Aspects </h4> <ul style="text-align: left;"> <li>23. Greg Costikyan, “I Have No Words &amp; I Must Design”, Interactive Fantasy: <i>The Journal of Role-Playing and Story-Making Systems</i>, Issue #2, 1994.<br /> 邦訳は『言葉ではなく、デザインのみが、ゲームを語ってくれる---- コスティキャンのゲーム論 ---- 』<a href="http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/library/design_j.html">http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/library/design_j.html</a> (追記: 2023<span class="css-901oao css-16my406 r-poiln3 r-bcqeeo r-qvutc0">改訂版『</span><span class="C9DxTc">言葉は無く、デザインはせねばならず: ゲームのための批評的語彙に向けて</span><span class="css-901oao css-16my406 r-poiln3 r-bcqeeo r-qvutc0">』<a href="https://www.newgamesorder.jp/etc/readings/IhaveNoWords2002jp" target="_blank">https://www.newgamesorder.jp/etc/readings/IhaveNoWords2002jp</a></span>) </li> <li>24. Church, Doug, “Formal Abstract Design Tools”, <i>Game Developer magazine</i>, August 1999. オンライン版は <a href="https://www.gdcvault.com/gdmag">https://www.gdcvault.com/gdmag</a></li> <li>25. Marc LeBlanc, "Tools for Creating Dramatic Game Dynamics", Game Developer’s Conference (GDC),1999. Reprinted in <i><a href="https://mitpress.mit.edu/books/game-design-reader" target="_blank">The Game Design Reader: A </a></i><a href="https://mitpress.mit.edu/books/game-design-reader" target="_blank">Rules of Play</a><i><a href="https://mitpress.mit.edu/books/game-design-reader" target="_blank"> Anthology</a></i> (MIT Press, 2005)<br />邦訳は無いが、下記論文26で言及されている。<i> </i></li> <li>26. Robin Hunicke, Marc LeBlanc, and Robert Zubek, “MDA: A Formal Approach to Game Design and Game Research”, <i>19th National Conference of Artificial Intelligence</i>, San Jose, California, 2004.<br />共著者の一人がオンライン公開している <a href="http://users.cs.northwestern.edu/~hunicke/pubs/MDA.pdf">http://users.cs.northwestern.edu/~hunicke/pubs/MDA.pdf</a><br />一部日本語訳(翻訳:ケネス・チャン)は <a href="http://goo.gl/Wojlq">http://goo.gl/Wojlq<br /></a>(追記2022: 日本語全訳が公開されました.ロビン・ハニキ、マーク・ルブラン、ロバート・ズベック「MDA:ゲームデザインとゲームリサーチへの形式的アプローチ」松永伸司訳、9bit、2022年 <a href="https://9bit.99ing.net/Entry/110/" target="_blank">https://9bit.99ing.net/Entry/110/</a>)<br /> </li> <li>27. Karen Collins, “An Introduction to the Participatory and Non-Linear Aspects of Video Games Audio”, in Stan Hawkins and John Richardson (editors), <i>Essays on Sound and Vision</i>, (Helsinki, Finland: Helsinki University Press, 2007), pages 263-298.<br /> 編者により論集全部がオンライン<a href="https://www.academia.edu/241893/Essays_on_Sound_and_Vision_co-edited_with_John_Richardson_2007_" target="_blank">公開</a>されている</li> <li>28. Karen Collins, "In the Loop: Creativity and Constraint in 8-bit Video Game Audio", <i>Twentieth-Century Music</i> 4/2, 2008, (Cambridge University Press, 2008), pages 209–227.<br />著者により<a href="https://www.researchgate.net/publication/231747528_In_the_Loop_Creativity_and_Constraint_in_8-bit_Video_Game_Audio" target="_blank">公開</a>されている。<br />(追記: 邦訳は無いが、カレン・コリンズの業績は2010年代に山上揚平<a href="https://www.repre.org/repre/vol32/note/1/" target="_blank">「ゲームにとって音とは何か」</a>S.Yamane<a href="https://igdajac.blogspot.com/2015/05/blog-post.html" target="_blank">「ゲームサウンド研究の成立」</a>などで言及されている。)</li> <li>29. Ian Bogost and Nick Monfort, "Chapter 4: Pac-Man", <i>Racing the Beam: The Atari Video Computer System</i>, (MIT Press, 2009), pages 65-79.<br /></li> <li>30. Henry Jenkins, "Game Design as Narrative Architecture" in Noah Wardrip-Fruin and Pat Harrigan, editors, <i>First Person: New Media as Story, Performance, and Game</i>, (MIT Press, 2004), pages 118-130.<br />ヘンリー・ジェンキンズについては論文7を参照</li> <li>31. Mark J. P. Wolf, "Theorizing Navigable Space in Video Games", in Stephan Günzel, Michael Liebe, and Dieter Mersch (editors), <i>DIGAREC</i> Keynote-Lectures 2009/10, (Potsdam, Germany: Potsdam University Press, 2011), pages 18-48. Available at <a href="https://publishup.uni-potsdam.de/frontdoor/index/index/docId/5043" target="_blank">https://publishup.uni-potsdam.de/frontdoor/index/index/docId/5043</a></li> <li>32. Alexander R. Galloway, “Gamic Action, Four Moments”,<i> Gaming: Essays on Algorithmic Culture</i>, (University of Minnesota Press, 2006), pages 1-38.<br /> 邦訳はギャロウェイ「ゲーム的行為、四つのモメント」訳・解題│松永伸司、『ゲンロン8: ゲームの時代』</li> <li>33. Rune Klevjer, "In Defense of Cut-Scenes", in Frans Mäyrä (editor), <i>Proceedings of Computer Games and Digital Cultures Conference</i>, (Tampere University Press, 2002), pages 191-202.<br />邦訳は無いが、編者のフランス・マウラの教科書は邦訳あり</li> <li>34. Juul, Jesper, "Fear of Failure? The Many Meanings of Difficulty in Video Games", in Bernard Perron and Mark J. P. Wolf (editors), <i>The Video Game Theory Reader</i> 2, (Routledge, 2008), pages 237-252.<br />イェスパー・ユールについては論文5参照<br /></li> </ul> <h4> Part5: Video Game Theory, Methodology, and Analysis </h4> <ul> <li>35. Bernard DeKoven, "Changing the Game", <i>The Well-Played Game</i> (New York: Doubleday, 1978), pp. 39-59.</li> <li>36. David Myers, "Computer Game Semiotics", <i>Play &amp; Culture: </i><i>The official journal of the Association for the Study of Play</i>, 4(4), 1991, pages 334-345.</li> <li>37. Lars Konzack, “Computer Game Criticism: A Method for Computer Game Analysis”, in Frans Mäyrä (editor), <i>Proceedings of Computer Games and Digital Cultures Conference</i>, (Tampere University Press, 2002), pages 89-100. <br /> 原文オンライン版は <a href="http://www.digra.org/digital-library/publications/computer-game-criticism-a-method-for-computer-game-analysis/">http://www.digra.org/digital-library/publications/computer-game-criticism-a-method-for-computer-game-analysis/</a> </li> <li>38. Espen Aarseth, "Playing Research: Methodological Approaches to Game Analysis", <i>Digital Art and Culture conference</i>, Melbourne, Australia, May 19-23, 2003, and also published in <i>Fine Art Forum</i>, Volume 17, Issue 8, August 2003, and also available online at <a href="http://hypertext.rmit.edu.au/dac/papers/Aarseth.pdf">http://hypertext.rmit.edu.au/dac/papers/Aarseth.pdf</a> .</li> <li>39. Roberto Dillon, "Towards the Definition of a Framework and Grammar for Game Analysis and Design", <i>International Journal of Computer and Information Technology</i>, Volume 3, Issue 2, March 2014, pages 188-193.<br />著者により<a href="https://www.academia.edu/6415416/Towards_the_Definition_of_a_Framework_and_Grammar_for_Game_Analysis_and_Design" target="_blank">公開</a>されている</li> <li>40. David Myers, "Bombs, Barbarians, and Backstories: Meaning-making within Sid Meier’s Civilization", in Matteo Bittanti (editor), <i>Ludologica. Videogames d’Autore: Civilization and its Discontents. Virtual History. Real Fantasies</i>, (Milan, Italy: Edizioni Unicopli, Costa and Nolan, 2005), original vesion available at <a href="http://www.loyno.edu/%7Edmyers/F99%20classes/Myers_BombsBarbarians_DRAFT.rft">http://www.loyno.edu/%7Edmyers/F99%20classes/Myers_BombsBarbarians_DRAFT.rft</a> .</li> <li>41. Thomas H. Apperley, “Genre and Game Studies”, <i>Simulation &amp; Gaming</i>, 2006, Vol. 37 No. 1, 6-23. <br /> 著者オンライン<a href="https://www.researchgate.net/publication/253070922_Genre_and_game_studies_Toward_a_critical_approach_to_video_game_genres" target="_blank">公開版</a>あり</li> <li>42. Will Brooker, "Camera-Eye, CG-Eye: Videogames and the "Cinematic"", <i>Cinema Journal</i>, Vol. 48, No. 3 (Spring, 2009), pages 122-128.</li> <li>43. Brett Camper, "Color-Cycled Space Fumes in the Pixel Particle Shockwave: The Technical Aesthetics of Defender and the Williams Arcade Platform, 1980–82", in Mark J. P. Wolf (editor), <i>Before the Crash: Early Video Game History</i>, (Detroit, Michigan: Wayne State University Press, 2012), pages 168-188.</li> <li>44. Ian Bogost, “Chapter 1: Procedural Rhetoric”, <i>Persuasive Games: The Expressive Power of Video Games</i>, (MIT Press, 2010), pages 1-64.<br /> この章だけサンプル公開されている <a href="https://mitpress.mit.edu/books/persuasive-games">https://mitpress.mit.edu/books/persuasive-games<br /></a>邦訳は無いが、イアン・ボゴストの対談記事は、『美術手帖』72 (1083) 対談 イアン・ボゴスト×吉田寛 「説得的ゲーム」と『あつまれ どうぶつの森』, pp.118-125, 2020-08 <br /></li> </ul> <h3> 第3巻: プレイとプレイヤー </h3> <h4> Part 6: Embodiment and Identity</h4> <ul> <li>45. Torben Grodal, "Stories for Eye, Ear, and Muscles: Video Games, Media, and Embodied Experiences" in Mark J. P. Wolf and Bernard Perron (editors), <i>The Video Game Theory Reader</i>, (Routledge, 2003), pages 129-155.</li> <li>46. Andreas Gregersen and Torben Grodal, "Embodiment and Interface", in Bernard Perron and Mark J. P. Wolf (editors), <i>The Video Game Theory Reader 2</i>, (Routledge, 2008), pages 65-83.</li> <li>47. James Newman, "The Myth of the Ergodic Videogame: Some Thoughts on Player-character Relationships in Videogames", <i>Game Studies: The International Journal of Computer Game Research</i>, Volume 2, Issue 1, July 2002, available at <a href="http://www.gamestudies.org/0102/newman/">http://www.gamestudies.org/0102/newman/</a> .</li> <li>48. Bob Rehak, “Playing at Being: Psychoanalysis and the Avatar”, in Mark J. P. Wolf and Bernard Perron (editors), <i>The Video Game Theory Reader</i>, (Routledge, 2003), pages 103-127.<br /> 著者オンライン<a href="https://www.academia.edu/3751080/Playing_at_Being_Psychoanalysis_and_the_Avatar" target="_blank">公開版</a>あり</li> <li>49. Helen W. Kennedy, "Lara Croft: Feminist Icon or Cyberbimbo?: On the Limits of Textual Analysis", Game Studies: <i>The International Journal of Computer Game Research</i>, Volume 2, Issue 2, December 2002, available at <a href="http://www.gamestudies.org/0202/kennedy/">http://www.gamestudies.org/0202/kennedy/</a> .</li> <li>50. Jennifer Jenson and Suzanne de Castell, “Theorizing Gender and Digital Gameplay: Oversights, Accidents and Surprises”, <i>Eludamos: Journal for Computer Game Culture</i>, 2008, 2 (1), pages 15-25.<br /> 原文はオンライン公開 <a href="http://eludamos.org/eludamos/index.php/eludamos/article/view/26">http://eludamos.org/eludamos/index.php/eludamos/article/view/26</a> </li> <li>51. Anna Everett, "Serious Play: Playing with Race in Contemporary Gaming Culture", in Joost Raessens and Jeffrey Goldstein (editors), <i>Handbook for Video Game Studies</i>, (MIT Press, 2005), pages 311-325.</li> <li>52. Anna Everett and S. Craig Watkins, (2007), “The Power of Play: The Portrayal and Performance of Race in Video Games”, in Katie Salen Tekinbaş (editor), <i>The Ecology of Games: Connecting Youth, Games, and Learning</i>, (MIT Press, 2007), pages 141-164.<br /> オンライン公開版あり <a href="https://mitpress.mit.edu/books/ecology-games">https://mitpress.mit.edu/books/ecology-games</a> </li> <li>53. Anna Everett, "Race", in Mark J. P. Wolf and Bernard Perron (editors), <i>The Routledge Companion to Video Game Studies</i>, (Routledge, 2014), pages 396-406.</li> </ul> <h4> Part 7: Play, Control, and The Magic Circle </h4> <ul> <li>54. T. L. Taylor, “The Assemblage of Play”, <i>Games and Culture</i>, Vol. 4, No. 4, 2009, pages 331-339.<br /> 著者オンライン公開版あり</li> <li>55. Bernard Perron, "Coming to Play at Frightening Yourself: Welcome to the World of Horror Games", <i>Aesthetics of Play: A Conference on Computer Game Aesthetics</i>, University of Bergen, Norway, 2005; available at <a href="http://www.aestheticsofplay.org/perron.php">http://www.aestheticsofplay.org/perron.php</a> .</li> <li>56. Espen Aarseth, "I Fought the Law: Transgressive Play and the Implied Player", <i>Situated Play: Proceedings of DiGRA 2007 Conference</i>, Digital Games Research Association (DiGRA), 東京大学にて開催, 2007, pages 130-133, available at <a href="http://www.digra.org/dl/db/07313.03489.pdf">http://www.digra.org/dl/db/07313.03489.pdf</a> .</li> <li>57. Torben Grodal, "Video Games and the Pleasures of Control", in Dolf Zillmann and Peter Vorderer (editors), <i>Media Entertainment: The Psychology of its Appeal</i>, (Mahwah, New Jersey: Lawrence Erlbaum Associates Publishers, 2000), pages 197-213.</li> <li>58. Alexander R. Galloway, "Allegories of Control", <i>Gaming: Essays on Algorithmic Culture</i>, (University of Minnesota Press, 2006), pages 85-106.<br />ギャロウェイについては論文32も参照。<br /></li> <li>59. Katie Salen and Eric Zimmerman, "Chapter 9: The Magic Circle", <i>Rules of Play: Game Design Fundamentals</i>, (MIT Press, 2003), pages 93-99. <br />邦訳『ルールズ・オブ・プレイ : ゲームデザインの基礎』第9章</li> <li>60. Mia Consalvo, “There is No Magic Circle”, <i>Games and Culture</i>, 2009, Volume 4, Number 4; 408-417.<br /> 著者オンライン公開版あり <a href="https://www.academia.edu/654444/There_is_no_magic_circle">https://www.academia.edu/654444/There_is_no_magic_circle</a> </li> <li>61. Eric Zimmerman, "Jerked Around by the Magic Circle - Clearing the Air 10 Years Later", <i>Gamasutra.com</i>, 2012, available at <a href="http://www.gamasutra.com/view/feature/135063/jerked_around_by_the_magic_circle_.php">http://www.gamasutra.com/view/feature/135063/jerked_around_by_the_magic_circle_.php</a> .</li> <li>62. Laura Ermi and Franz Mäyrä, "Fundamental Components of Gameplay Experience: Analysing Immersion", in Stephan Günzel, Michael Liebe, and Dieter Mersch (editors), <i>DIGAREC</i> Keynote-Lectures 2009/10, (Potsdam, Germany: Potsdam University Press, 2011), pages 88-113, available at <a href="http://pub.ub.uni-potsdam.de/volltexte/2011/4983/">http://pub.ub.uni-potsdam.de/volltexte/2011/4983/</a> [urn:nbn:de:kobv:517-opus-49831].</li> <li>63. Piotr Kubiński, “Immersion vs. Emersive Effects in Videogames”, in Dawn Stobbart and Monica Evans (editors), <i>Engaging with Videogames: Play, Theory and Practice</i>, (Oxford, England: Inter-Disciplinary Press, 2014), pages 133-14, [e-book]. <br /> 著者オンライン公開版あり</li> </ul> <h4> Part 8: Threat, Aggression, and Violence </h4> <ul> <li>64. Julian Dibbell, “A Rape in Cyberspace: How an Evil Clown, a Haitian Trickster Spirit, Two Wizards, and a Cast of Dozens Turned a Database into a Society”, <i>The Village Voice</i>, December 23, 1993, pages 36-42. <br /> 邦訳は「サイバースペースにおけるレイプ--邪悪な道化師,ハイチのぺてん師の霊,2人の魔法使い,そして数十人の役者たちがデータベースを社会に転じた経緯」『Bit』30(3),(4), 1998.</li> <li>65. Gonzalo Frasca, “Ephemeral Games: Is It Barbaric to Design Videogames after Auschwitz?”, <i>Cybertext Yearbook 2000</i>, University of Jyväskayla, pages 172-182. <br /> 原文オンライン版は<a href="http://www.ludology.org/articles/ephemeralFRASCA.pdf">http://www.ludology.org/articles/ephemeralFRASCA.pdf</a> </li> <li>66. Craig A. Anderson and Karen E. Dill, "Video Games and Aggressive Thoughts, Feelings, and Behavior in the Laboratory and in Life", <i>Journal of Personality and Social Psychology</i>, April 2000, Volume 78(4), pages 772-790.</li> <li>67. Craig A. Anderson and Brad J. Bushman, "Effects of Violent Video Games on Aggressive Behavior, Aggressive Cognition, Aggressive Affect, Physiological Arousal, and Prosocial Behavior: A Meta-Analytic Review of the Scientific Literature", <i>Psychological Science</i>, September 2001, Volume 12, No. 5, pages 353-359.</li> <li>68. Craig A. Anderson, Akiko Shibuya, Nobuko Ihori, Edward L. Swing, Brad J. Bushman, Akira Sakamoto, Hannah R. Rothstein, and Muniba Saleem, (2010), “Violent Video Game Effects on Aggression, Empathy, and Prosocial Behavior in Eastern and Western Countries: A Meta-Analytic Review”, <i>Psychological Bulletin</i>, Vol. 136, No. 2, 2010, American Psychological Association, pages 151–173.<br /> 著者によるオンライン公開版あり.未邦訳だが、第2著者(渋谷)は共著「各学術領域の視座からみたデジタルゲーム研究論文」『デジタルゲーム学研究』8巻1・2号合併号(2016)<a href="http://digrajapan.org/?page_id=3254">http://digrajapan.org/?page_id=3254</a> を分担執筆している他、日本デジタルゲーム学会第7回年次大会(2017年3月)の企画セッション「ゲーム研究のトップ会議、国際学術出版への道」予稿がオンライン公開されている.<a href="http://digrajapan.org/conf2016/">http://digrajapan.org/conf2016/</a> &nbsp;また第6著者(坂元)はCESAのゲーム研究者インタビューが読める.<a href="https://www.cesa.or.jp/efforts/interview/researcher/sakamoto01.html">https://www.cesa.or.jp/efforts/interview/researcher/sakamoto01.html</a> </li> <li>69. Bernard Perron, “Sign of a Threat: The Effects of Warning Systems in Survival Horror Games”, <i>COSIGN 2004 Proceedings</i>, (Art Academy, University of Split (Croatia), 2004), pages 132-141.<br /> 著者オンライン公開版あり.</li> <li>70. Andrew K. Przybylski, Richard M. Ryan, and C. Scott Rigby, “The Motivating Role of Violence in Video Games”, <i>Personality and Social Psychology Bulletin</i>, Vol. 35, No. 2, February 2009, pages 243-259.<br />第一著者のシュビルスキー(シュービルスキー)によるオンライン公開版あり.第二著者のリチャード・ライアンは<span>エドワード・デシと提唱した自己決定理論で国内でも広く知られている。</span></li> </ul> <h3> 第4巻: 文化的コンテキスト VOLUME 4: CULTURAL CONTEXTS</h3> <h4> Part 9: Video Games and Education </h4> <ul> <li>71. Mark Griffiths, "The Educational Benefits of Videogames", <i>Education and Health</i>, Vol. 20, No. 3, 2002, pages 47-51.<br />著者オンライン公開版あり</li> <li>72. James Paul Gee, "What Video Games Have to Teach Us about Learning and Literacy", <i>Computers in Entertainment (CIE) - Theoretical and Practical Computer Applications in Entertainment</i>, Volume 1, Issue 1, (ACM, October 2003). [DOI: 10.1145/950566.950595]<br />同名書籍のダイジェスト版</li> <li>73. Kurt Squire, “Video Games in Education”, <i>International Journal of Intelligent Simulations and Gaming</i>, Vol. 2, No. 1, 2003, pages 49–62.<br /> 著者オンライン公開版あり</li> <li>74. Kurt Squire, "From Content to Context: Videogames as Designed Experience", <i>Educational Researcher</i>, Vol. 35, No. 8, (November 2006), pages 19-29. <br /> 著者オンライン<a href="https://www.researchgate.net/publication/251787428_From_Content_to_Context_Videogames_as_Designed_Experience" target="_blank">公開版</a>あり </li> <li>75. Michele D. Dickey, "Game Design and Learning: A Conjectural Analysis of How Massively Multiple Online Role-Playing Games (MMORPGs) Foster Intrinsic Motivation", <i>Educational Technology Research and Development</i>, Vol. 55, No. 3 (June 2007), pages 253-273.<br /> 著者オンライン<a href="https://www.researchgate.net/publication/225160820_Game_design_and_learning_A_conjectural_analysis_of_how_massively_multiple_online_role-playing_games_MMORPGs_foster_intrinsic_motivation" target="_blank">公開版</a>あり </li> <li>76. David Williamson Shaffer, Kurt R. Squire, Richard Halverson, and James P. Gee, "Video Games and the Future of Learning", <i>The Phi Delta Kappan</i>, Vol. 87, No. 2, (October 2005), pages 104-111.<br /> 著者オンライン公開版あり </li> </ul> <h4> Part 10: Video Games and Culture </h4> <ul> <li>77. Adrienne Shaw, "What Is Video Game Culture? Cultural Studies and Game Studies", <i>Games and Culture</i>, 2010, Vol. 5, No. 4, pages 403-424, originally published on-line May 7, 2010.</li> <li>78. Celia Pearce, “Productive Play: Game Culture From the Bottom Up”, <i>Games and Culture</i>, Vol. 1, No.1, January 2006, pages 17-24.<br /> 著者オンライン公開版あり</li> <li>79. Heikki Tyni and Olli Sotamaa, "Material Culture and Angry Birds", <i>Proceedings of Nordic DiGRA 2014 Conference,</i> Digital Games Research Association DiGRA, 2014. <a href="http://www.digra.org/digital-library/forums/11-digra-nordic-2014/">http://www.digra.org/digital-library/forums/11-digra-nordic-2014/</a> </li> <li>80. Mary Fuller and Henry Jenkins, “Nintendo® and New World Travel Writing: A Dialogue”, in Steven G. Jones (editor), <i>Cybersociety: Computer-Mediated Communication and Community</i>, (Sage Publications, 1995), pages 57-72.<br /> <a href="https://web.stanford.edu/class/history34q/readings/Cyberspace/FullerJenkins_Nintendo.html">https://web.stanford.edu/class/history34q/readings/Cyberspace/FullerJenkins_Nintendo.html<br /></a>ヘンリー・ジェンキンスについては前掲論文参照</li> <li>81. Ted Friedman, “Civilization and its Discontents”, in Greg M. Smith (editor), <i>On a Silver Platter: CD-ROMs and the Promises of a New Technology</i>, (New York: NYU Press, 1999), pages 132-150.<br /> <a href="http://www.duke.edu/%7Etlove/civ.htm">http://www.duke.edu/~tlove/civ.htm</a> (Internet Archiveなど参照)</li> <li>82. David Myers, “Social Play”,<i> Play Redux: The Form of Computer Games</i>, (Ann Arbor, Michigan: University of Michigan Press, 2010), pages 116-130.<br />オンライン公開版あり <a href="https://www.press.umich.edu/1611960/play_redux/">https://www.press.umich.edu/1611960/play_redux/</a></li> <li>83. Mia Consalvo, "Chapter 4: Gaining Advantage: How Videogame Players Define and Negotiate Cheating", <i>Cheating: Gaining Advantage in Videogames</i>, (MIT Press, 2009), pages 83-105.</li> <li>84. Gareth R. Schott and Kirsty R. Horrell, "Girl Gamers and their Relationship with the Gaming Culture",<i> Convergence: The International Journal of Research into New Media Technologies</i>, December 2000, Volume 6, Number 4, pages 36-53.<br />共著者オンライン<a href="https://www.researchgate.net/publication/237970073_Girl_Gamers_and_their_Relationship_with_the_Gaming_Culture" target="_blank">公開版</a>あり.</li> <li>85. Mark J. P. Wolf, “Introduction” (抜粋), in Mark J. P. Wolf (editor), <i>Video Games Around the World</i>, (MIT Press, 2015), pages 1-12.<br /> 著者紹介文がオンライン公開されている <a href="https://mitpress.mit.edu/blog/video-games-around-world">https://mitpress.mit.edu/blog/video-games-around-world</a> </li> <li>86. F. Ted Tschang, “Balancing the Tensions between Rationalization and Creativity in the Video Games Industry”, <i>Organization Science</i>, Vol. 18, No. 6, Innovation at and across Multiple Levels of Analysis (November -December, 2007), pages 989-1005.<br /> 著者オンライン公開版あり</li> <li>87. Mia Consalvo, “Convergence and Globalization in the Japanese Videogame Industry”, <i>Cinema Journal</i>, Vol. 48, No. 3 (Spring, 2009), pages 135-141. Reprinted in Patrick W. Galbraith and Jason G. Karlin&nbsp; (editor) <i>Media Convergence In Japan</i>, Kinema Club, 2016, pages 90-98.<br /> 再録された論集がオンライン公開されている <a href="https://archive.org/details/MediaConvergenceInJapan">https://archive.org/details/MediaConvergenceInJapan<br /></a>同著者の論文60,83も参照。著者の日本ゲーム論集は書籍化され、日本語書評も読める<a href="https://sociology-of-games.blogspot.com/2020/03/blog-post.html" target="_blank"> https://sociology-of-games.blogspot.com/2020/03/blog-post.html</a><br /></li> <li>88. Simon Gottschalk, "Videology: Video-Games as Postmodern Sites/Sights of Ideological Reproduction", <i>Symbolic Interaction</i>, Vol. 18, No. 1 (Spring 1995), pages 1-18.<br />著者オンライン<a href="https://www.researchgate.net/publication/249986417_Videology_Video-Games_as_Postmodern_SitesSights_of_Ideological_Reproduction" target="_blank">公開版</a>あり</li> <li>89. Trevor Elkington, "Too Many Cooks: Media Convergence and Self-Defeating Adaptations", in Bernard Perron and Mark J. P. Wolf (editors), <i>The Video Game Theory Reader 2</i>, (Routledge, 2008), pages 213-235.</li> <li>90. James Newman, <i>Best Before: Videogames, Supersession and Obsolescence</i> (抜粋), (Routledge, 2012), pages 149-160.</li> </ul> INDEX 総索引(後述)<br /> <h2> 論文集の傾向と使い勝手</h2><p>&nbsp;ここまで重要論文90本について説明を加えてみた。</p><p>これら90本の重要論文(一部は書籍の抜粋)を集めた本書を従来の論集と比べると、もちろん過去最大の分量である.ざっと眺めてみたところ、個人的には組織学会やゲームサウンドデザインの論文が収録されているのが目についた.だが、それでもカバーしていない分野もある.たとえば過去のゲームデザイン論文を集めた <i><a href="https://mitpress.mit.edu/books/game-design-reader" target="_blank">The Game Design Reader A Rules of Play Anthology</a> </i>に比べると、ゲーム内経済のような社会科学系が薄い印象がある.おそらく経済学の学会で発表されており、ゲーム研究という新しい分野の一部とは言い難いという位置づけなのだろう.<br />  「カイヨワやバートルはもうゲームデザインの教科書に載っているからそれで十分でしょう」、という意見もあるかもしれないが、井上が<a href="http://www.critiqueofgames.net/data/index.php?%A5%AB%A5%A4%A5%E8%A5%EF#y4d8231b" target="_blank">述べているように</a>、日本ではカイヨワが言っていない図式があたかもカイヨワが言ったような誤解が広まっているため、原文に当たることが必須である.また、バートルの図式もYeeをはじめとする社会心理的計量的なユーザ研究が加えられているため、その後の研究の出発点として位置づけることに意義がある. <br />  各巻についている数ページの序文は簡潔ながら、著者が前著の考えを修正したとか、単独で読むのではなく前後の作品と並べている意図が説明してあり、これも読んでおいた方がいい. <br /> &nbsp; そして便利だったのだが、4巻の末尾についている総索引だ.なんと<b>索引だけで50ページ</b>もあり、ゲームタイトルやゲームデザイナの名前で重要論文を検索できるのは非常にありがたい.<br /> </p><h2> さらに続くゲーム研究のために</h2> &nbsp;本書の序文には「stand the test of time」という表現がでてくくる.ある論考が、時の試練に耐え、後世に残るものはわずかだということだ.学問の世界ではたとえ第一人者であっても次の世代に乗り越えられ、過去のものになる.その厳しさについても考えさせられた.<br />  ゲーム研究が世界各地で進められ、国境を超えて議論されるようになったことで、英語でどのような研究があり、それに対してどういう貢献ができるかを英語で説明するのは必須になっている.たとえ日本で大変素晴らしい研究をして日本語で報告したとしても、世界から見るとその研究は存在していないに等しい.すると日本の過去の議論に対してもこうした論集を英語出版する意義はあるかもしれない.また、英語圏ですでに行われている議論を日本国内だけで再発明することも避けたい.本論集がそうした国境を超えた研究のきっかけになることを願っている.<br /> <br /> 謝辞: 岡山理科大学総合情報学部情報科学科ゲームシステムデザイン研究室のゼミ生の協力により、本記事をまとめることができました. S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-38079891763690577782018-02-11T14:33:00.001+09:002024-12-10T00:26:27.531+09:002017年アカデミックレビュー: ゲーム教育への投資アカデミックブログ主筆の山根です. 遅くなりましたが、2017年のゲーム研究シーンをふりかえってみたいと思います.<br /> <br /> <h3> GDC2017とHEVGA (2017年3月)</h3> &nbsp;&nbsp;2017年3月のGDC(Game Developers Conference)にはゲーム研究の大物がかなり集まりました.というのも、GDCの開催に合わせて会場周辺でHEVGA(HigherEdGames.org)の<a href="https://hevga.org/article_writeups/gdc-member-meeting/" target="_blank">会合</a>や授与式が開かれたためです.<br /> <br /> <a name='more'></a>HEVGAは、ゲームの高度教育機関のアメリカの全国組織です.ここでゲーム高度教育機関というのは、ゲーム専攻があり、ゲームの必修科目群を学ばないと卒業できない高等教育機関(大学・大学院のような学位授与機関)のことです.<br /> HEVGA事務局はESA(アメリカのゲーム業界団体.日本で言えばCESA)が負担し、役員はトップ校の教授陣がつとめています.設立当初はアメリカ国内の高等教育機関を網羅した団体だったのですが、新会長は<a href="http://www.rit.edu/news/story.php?id=65121" target="_blank">海外会員の拡充を目指して</a>おり、現在では世界中のゲーム高等教育機関とその成果データを持っている組織です.過去のIGDA日本でも日本語記事として<a href="http://www.igda.jp/?p=508" target="_blank">紹介</a>してきましたが、全米や全世界の教育機関のデータにもとづいた提言が光ります. <br /> &nbsp;&nbsp;北米のトップスクールが参加しているのに、アジアでHEVGAの<a href="https://hevga.org/about/" target="_blank">メンバー</a>になってるのは一校だけというお寒い状況なので、アジアから世界レベルのゲーム学位プログラムを目指す大学をIGDA日本アカデミックSIGでは積極的に応援したいと思います.&nbsp; <br /> &nbsp; 2017年のHEVGAの活動を特別なものにしたのは、GDC Education Summit終了後のEducation MIXER(ゲーム教育交流会)で、ESAスポンサーによるHEVGAのフェロー発表が行われたことです.「フェロー」とは名誉会員のことで、フェローに任命された会員はゲームの学術活動への貢献を表彰されると同時に、ゲームの学術活動を社会にアピールするアンバサダー(大使)の役割も任命されます.1年前のGDC2016でフェローに任命されたのは人文系のMary Flanagan(@CriticalPlay)ほか3名だったのですが、GDC2017では一挙に<b><a href="https://image.slidesharecdn.com/gdc17report-170321053014/95/gdc2017gdc-12-638.jpg?cb=1490102239" target="_blank">20人</a>をフェローに任命</b>! この結果、ゲーム開発者が集まるGDCなのに学会の世界大会を超えるゲーム研究の第一人者が集まりました.人数が多いのでビール飲みながら名前を読み上げられただけでしたが、フェローの新授与者の中はすでに日本語訳が出版されている人たちもいました.日本語訳が出ている新フェローは、私が知っている範囲では以下の顔ぶれです.<br /> <ul> <li>イェスパー・ユール(欠席) 『ハーフリアル』(<a href="http://www.newgamesorder.jp/games/half-real" target="_blank">まえがき、序論、訳者あとがき、正誤表</a>)「<a href="http://www.jesperjuul.net/text/gameplayerworld_jp/" target="_blank">ゲーム, プレイヤ, ワールド:ゲームたらしめるものの核心を探る</a>」(<a href="http://d.hatena.ne.jp/hally/20051102" target="_blank">訳者コメント</a>)「抽象化の水準」『しかめっ面にさせるゲームは成功する』 <br /> </li> <li>ステインクーラー&amp;スクワイア「ビデオゲームと学習」(『学習科学ハンドブック 第二版第2巻』所収)</li> <li>フラートン『中ヒットに導くゲームデザイン』</li> <li>ケイティ・サレン&amp;エリック・ジマーマン『ルールズ・オブ・プレイ』 </li> <li>ヘンリー・ジェンキンス(欠席)(インタビュー数件) </li> <li>マイケル・マテアス(BRUTUS PS4特集号インタビュー) </li> <li>イズビスタ「<a href="http://id.nii.ac.jp/1001/00011933/" target="_blank">仮想空間内でのコミュニケーションを補助する社会的エージェントの設計</a>」 </li> <li>マレー(欠席)『デジタル・ストーリーテリング―電脳空間におけるナラティヴの未来形』 </li> <li>フランク・ランツ『ルールズ・オブ・プレイ』序文 </li> <li>(以上の日本語訳の中には、非研究者が訳したために意味不明になったひどい日本語出版物も含まれています.)</li> 彼らの間には明確なライバル校関係や学説を乗り越えるというライバル意識もありますが、それが一挙にそろったのは壮観です.MIXER会場では、場所と軽食を提供したESAからのスピーチもあり、「ESAとHEVGAは協力して、全米のゲーム学位授与機関の学生数とゲームスタジオの雇用者数をオンラインで公表しました!」「ゲーム研究の成果を社会に発信していきましょう!」というアピールがありました.ゲーム研究の大使役をつとめるフェローを大量に任命し、「雇用者数」「冷静な学術研究にもとづくゲームの意義」をアピールするのは明らかに新政権を意識した広報戦略でしょう(この広報ウェブサイトについては後述します).<br /> <br /> <h3> 日本デジタルゲーム学会年次大会での企画セッション(3月)</h3> &nbsp;&nbsp;GDC2017にゲーム研究の第一人者が結集したように、ゲーム研究は学会だけで行われるものではなく、開発者イベントでも発生しています.しかし日本のゲーム関係学界には、これまでゲーム研究シーンの最前線に出て行く国内の若手を支援する取り組みがありませんでした.このままでは、日本のゲーム研究者は海外のゲーム研究が生まれる場所に立ち会えず、海外のゲーム研究の現地ガイドにはなれても共同研究者にはなれないのではないか.このような問題意識から、日本デジタルゲーム学会年次大会で<b>企画セッション「ゲーム研究のトップ会議、国際学術出版への道」</b>を開催しました.セッション予稿は<a href="http://digrajapan.org/conf2016/" target="_blank">オンラインプログラム</a>で入手できます.<br /> &nbsp; セッションに登壇した第一線の研究者の顔ぶれは、まずゲーム関連研究の重要論文を収録した<a href="https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-02-9781138811256" target="_blank"> Video Games and Gaming Culture (全4巻) </a>の中で唯一の日本人参加論文の第2著者である Akiko Shibuya, そして商業出版社と学術出版社の両方でゲーム研究を出版し、大作英語論文の出版を実現した Nobushige Hichibe (<a href="https://www.slideshare.net/nobushigehichibe/cfp-73125052" target="_blank">発表スライド</a>), 最後に論文検索サービスGoogle Scholarで「Game Jam」を検索するとトップ10のうち2本にランクインするアジア唯一のHEVGAメンバー、Shinji Yamane の3名です(ランキングは大会当時のものです).日本のゲーム研究の現役トップを集めて、これからのゲーム研究を担うであろう若手に対して有益なアドバイスができたのではないでしょうか.<br /> <br /> <h3> 産学連携「ユナイテッド・ステーツ・オブ・ビデオゲーム」(6月)</h3> &nbsp;&nbsp;3月のGDC2017 HEVGA MIXERで発表された全米のゲーム教育機関と雇用者数データですが、それらの統計データを各州・各郡ごとに表示する<a href="https://www.areweinyourstate.org/" target="_blank">ウェブサイト</a>が、アカデミー協会が選ぶWebby賞のベストウェブサイトに選ばれました(<a href="https://www.webbyawards.com/winners/2017/websites/general-website/associations/the-united-state-of-video-games/" target="_blank">「ユナイテッド・ステーツ・オブ・ビデオゲーム」</a>).ただの統計サイトではなく、地区ごとの国会議員のメールアドレスも表示され、それを押すと各議員に地元の学校数・スタジオ数・雇用者数データを送信できます.これはもはや国内雇用保護を主張する新政権に対する<b>教育界と産業界によるロビー活動ツール</b>です.日本のクールジャパン産業振興団体やゲーム産業団体も、他機関と連携して国内にどれだけゲームスタジオや学位プログラムがあるのか、調査データにもとづく戦略が必要ではないかと思わされました. (追記: 5年後にウェブサイトはESA.comに統合され,議員情報を外した「Impact of the Video Game Industry」として残っている.)<br /> <br /> <h3> 大学ランキングの変動(地中海編)</h3> &nbsp;&nbsp;世界の大学は、民間機関によって格付けされランキングづけされており、毎年ランキングが変わります.世界各地のゲームの教育機関も例外ではありません.その<a href="https://www.princetonreview.com/press/game-design-press-release" target="_blank">ランキング</a>で2017年に大きな変動がありました.これまでゲームデザイン・ゲーム開発専攻の大学トップランキングは北米の大学が独占していましたが、2017年は地中海のマルタ島にあるマルタ大学が、初登場でいきなり大学院ランキングベスト23に<a href="http://www.game.edu.mt/blog/princeton-review-idg-in-top-25-postgrad-programmes/" target="_blank">ランクイン</a>するという波乱が起きました.このランキングは、民間業者が40項目の調査項目にもとづいて算出するものですが、HEVGA会合でも他の評価法が必要だとは議論されていました.そしてついに、評価項目に重点投資する新興国が登場しました.国際政治的背景としては、これまでカジノ産業や観光産業のイメージが強かったマルタが、<a href="http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41034145">マルタ自体が魅力的な投資先だと主張する</a>ための政府戦略をうちだします.そこでマルタ大学でゲーム研究をおこなっていた大学院が重点投資先になったと言えます.そしてその投資効果はめざましく、EU各地の若手研究者ポスドクがマルタに長期滞在して研究や講演を行ったり、日本でもCEDECアワードに選ばれた(だが来日しなかった)専門家がマルタ大学を訪問してセミナーを開いています.<br /> &nbsp; また研究開発だけでなく、Global Game Jamマルタ会場は<a href="http://www.indiegamejams.com/" target="_blank">Indie Game Jams</a>共同設立人を招いてインディーゲームYouTuberがテストプレイ実況するなどインディーゲームシーンもカバーしています.政府の戦略的投資があれば、ゲーム産業がなかった国でも世界トップレベルの研究教育拠点ができることがゲーム分野でも実証されたと言えます.<br /> <br /> <h3> 大学ランキングの変動(カリフォルニア編)</h3> &nbsp;&nbsp;さすがにマルタのような国家プロジェクトは巨大すぎて、日本の学術政策では非現実的で参考にならないかもしれません.そこで日本で参考になるようなトップランク外の単独大学の取り組みもふりかえってみましょう.2017年の注目大学は、まだ卒業生もでておらずランキング調査対象外になっているカリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の取り組みです.UCIは地元にブリザードなどのゲームスタジオがあるため、2000年代にゲーム専攻をつくろうとしたことがあります.しかしノーベル賞受章者も輩出した名門校でゲームなどけしからんという学内の反対にあい実現しませんでした.その<b>保守的な大学が十数年を経て2016年からゲーム科学の学生募集を開始</b>します.このときはランキング上位のゲーマーに<b>奨学金</b>を出す制度で話題になりました.目についた変化として、地元のゲームスタジオやLogitechなどのゲーミングデバイス企業を集めて、ゲーム関連の大学イベントにスポンサーロゴがずらりと並ぶようになりました.次にゲーム学界に衝撃を与えたのが大物教授のヘッドハントです.上記HEVGAの前会長かつフェローで、大学教授のかたわら<a href="https://www.inside-games.jp/article/2012/09/05/59470.html">オバマ政権時代にホワイトハウス入りした</a>こともあるゲーム学習効果研究のステインクーラー&amp;スクワイア教授夫妻を、二人同時に引き抜きました.そして移籍後いきなり大学の広報に登場し、看板教授になります(<a href="https://news.uci.edu/2017/06/13/digital-do-gooders/">大学ニュース記事</a>、<a href="https://www.youtube.com/watch?v=rCI80MiK6Jk" outube="">同ニュース動画</a>、<a href="https://www.ocregister.com/2017/08/25/games-are-changing-the-world-just-ask-new-uci-professor-who-worked-in-the-white-house/">地元新聞報道</a>). <br /> &nbsp;&nbsp;特にUCIが他大学の追随を許さないのがゲーマー受験生へのアピールで、2016年度にアメリカの公立大学初の<b>ゲーム競技者を対象とした教育プログラム</b>としてUCIコンピュータゲーム科学専攻が募集を開始し、2016-2017年に学内eスポーツ競技場を開設します.すると早速、高校卒業してから3年間LoLのプロゲーマーだった競技者が<a href="https://www.youtube.com/watch?v=u-Rtq6GFLSo">eスポーツ奨学生としてUCIを受験し、大学生として文武両道に励んでいます</a>.学内の競技場ではプロゲーマーのコーチングを受けられるだけでなく、大学内に高校eスポーツリーグ事務局も設置され、地元の高校のeスポーツチーム(同好会ではなく、学校が公認する高校代表チーム)のリーグ戦も運営しています.こうして学問とゲームの両方が優れた新入生のリクルートに大学をあげて取り組んでいます(<a href="https://www.youtube.com/watch?v=I26nObaRIQo">ステインクーラー教授の高校リーグ広報動画</a>).<br /> &nbsp;&nbsp;日本の大学スポーツ界でも<a href="http://number.bunshun.jp/articles/-/13038?page=2">陸上競技に数千万円投資</a>する大学もありますが、国内大学の多くは人気種目の有力高校生を勧誘することと大学の研究戦略とがバラバラに進められて結びついていません.しかしUCIの場合は、<a href="https://www.youtube.com/watch?v=jiqMq9KYeWA">トーナメント前には選手紹介ビデオが大学から配信され</a>全校をあげて代表選手団を応援するのはもちろんのこと、代表選手は高いモチベーションでコンピュータゲームの仕組みを学ぶだけでなくゲーム研究者の実験に参加し、そして大学研究者はプロゲーマーの高い能力に触れることができるという協働体制ができています.(カリフォルニア大学の公式アスリート学生の場合、成績が落ちたら奨学金や試合出場が停止されるので勉学のモチベーションが低いとそもそも入学できない.)<br /> <div style="text-align: center;"> <br /> <iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="270" src="https://www.youtube.com/embed/jiqMq9KYeWA" width="480"></iframe> </div> <h3> 専門職大学への動き(5月,11月)</h3> &nbsp; 国内に目を向けてみます.IGDA日本のウェブサイトで2017年に一番アクセス数が多かった記事は「<a href="http://www.igda.jp/?p=6785">HALが専門職大学の新設にむけて準備室メンバーを募集開始</a>」でした.開発者団体のサイトで国内学校の記事が注目されるのは珍しいことですが、ここで注目を集める専門職大学については過去の国内報道では<a href="http://www.jec.ac.jp/collegenews/detail.cgi?id=49">既存大学が専門職大学に進出するメリットが少ない</a>と指摘され、専門学校が高度な(4年たっても古くならないような)内容を教えられるのかとも言われ、目指す理想がよくわからない構想でした.しかしその後、11月に文部科学省の説明会資料が<a a="" href="http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senmon/1397422.htm">発表</a>され、専門職大学構想の全体像が明らかになりました.中でも「国際通用性の確保は特に重要」とされたことで、国際的に通用しない大学にはならないだろうと見込まれます.ゲーム分野においても、海外の学位プログラムとの互換性確保が重要になるでしょう.国際的なゲーム開発者教育プログラムの指針としては、10年前の<a href="http://www.dcaj.or.jp/project/report/pdf/2008/dc_08_03.pdf">IGDAカリキュラムフレームワーク2008</a>(日本語訳はデジタルコンテンツ協会「デジタルコンテンツ制作の先端技術応⽤に関する調査研究」付録として収録)が現在IGDAの教育SIGで改訂中ですが、10年前のバージョンでもいまなおカリキュラムの作り方の参考になるところが多いので国内の学校には活用してほしいところです.<br /> <br /> <h3> 世界基準のゲームデザイン授業の取り組み (9月)</h3> &nbsp;&nbsp;こうして各地のゲーム研究教育機関による世界規模の競争が進む中、世界の進歩からとりのこされまいとする現場の教員の努力によって日本のゲーム教育は支えられています.これまでそれらは単発の試みでしたが、個々の教育実践を共有することも進められています. 筆者も、Amazon.comのゲームデザイン分野でベストセラーランキングトップの大学教科書をつかって授業をしています(分厚い英語教科書を翻訳するのは採算上無理でも、ゲーム研究の成果にもとづいて書かれた英語教科書ならば、現役のゲーム研究者・博士人材であればその内容を日本語で講義できます).この授業は講義とeラーニングを組み合わせておこない、eラーニング部分は学外からも参加できるようにしました(<a href="https://www.slideshare.net/syamane/2017-79999216">2017年の案内</a>).その結果、学外のゲーム開発者にも参加していただきました.特に今年度は教科書著者によるVRゲーム『I Expect You To Die』が<a href="http://www.moguravr.com/i-expect-you-to-die-vr/">100万ドルを超える売り上げを記録</a>し、VR業界でも体系的なゲームデザイン教育が注目されたよいタイミングでの開講となりました. なお、筆者の勤務先では、来年度から筆者以外にゲームデザインを教えたいという教員が授業を引き継ぐことになり、著者は勤務先でゲームデザインを教えません.その代わり、各国で使われている大学教科書レベルのゲームデザイン教育を他校にもひろめていきたいと思います.関心のある先生はお問い合わせください. <br /> <br /> <h3> まとめ</h3> &nbsp;&nbsp;国家戦略から産業戦略、学校経営戦略まで、ゲーム研究教育の<b>戦略的投資</b>が各地で結実した1年でした. 研究に携わる者はそれらの戦略に無自覚でいることはできません. IGDAはかつて個々の教育機関の取り組みを共有し位置づけるカリキュラムフレームワークをまとめたが、今後も個々の取り組みを共有していくことが重要になるでしょう. </ul> S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-61180480077356515262017-06-25T17:06:00.001+09:002018-02-12T16:04:39.231+09:002017年度アカデミックプレビュー2017年度の展望として、まずまず日本(もしくは近い時間帯)で開催されるゲーム関連の学術イベントをあげてから、2017年以降の展望を行いたいと思います。<br /> <h3> 国内で開催される主な学術イベント<a name='more'></a></h3> <ul> <li>情報処理学会 HCI・EC合同研究発表会(東京) Jun 1--2, 2017. 東京大学 弥生講堂アネックス </li> <li>Chinese DiGRA 2017(香港) Jun 2--4, 2017. <a href="http://www.chinesedigra.org/conferences/2017conference/">http://www.chinesedigra.org/conferences/2017conference/</a> <br />大会チェアパーソンは北米最大のゲーム国際会議<a href="http://fdg2017.org/" target="_blank">FDG17</a>のゲーム分析セッション座長もつとめており、英語圏の第一線の研究を意識していることがうかがえる。会場建物は東京オリンピックで有名なザハ建築。</li> <li>DiGRA世界大会 3-6 July, 2017. オーストラリア <a href="http://digra2017.com/">http://digra2017.com/</a></li> <li><a href="http://game.geidai.ac.jp/" target="_blank">「東京藝術大学ゲーム学科(仮)」展</a>&nbsp; 2017年7月21日(金)~30日(日) </li> <li><a href="http://cedec.cesa.or.jp/">CEDEC2017</a> Aug 30--Sep 1, 2017. 横浜 </li> <li>日本デジタルゲーム学会 夏期研究大会 Saturday, Sep 2, 2017. </li> <li>情報処理学会 エンタテインメントコンピューティング2017. (東北大学) Sep. 16--18, 2017. <a href="http://entcomp.org/sig/?p=442">http://entcomp.org/sig/?p=442</a> </li> <li>IFIP Entertainment Computing 2017. (筑波) Sep 18--21, 2017. <a href="http://icec2017.net/">http://icec2017.net/</a> </li> <li>IEEE DSAA Special Session on Game Data Science. 東京. Oct. 19--21, 2017. <a href="http://yokozunadata.com/events/GDS-DSAA2017/">http://yokozunadata.com/events/GDS-DSAA2017/</a> </li> <li>インタラクション2018 2018年3月5日(月)--7日(水), 学術総合センター </li> </ul> <h3> 学術イベントの傾向</h3> &nbsp;このように、国際会議から国内大会まで様々な目的の会議が開催される。また日本周辺では、香港やオーストラリアでも英語研究者が集まる場が開かれている。特に2017年度は東京ゲームショウに合わせてIFIPのEntertainment Computingが関東で開催され、IGDA日本SIG-AIの三宅氏が基調講演するというのは新たな傾向だと言える。これまで国際会議の日本の基調講演というと、すでに歴史的評価が定まった伝説的開発者が定番だったが、民間の第一線のゲーム開発者が講演する、というのはゲーム産学連携の深まりを示している。<br /> <h3> ゲーム教育機関の新たな制度改革</h3> 2017年5月24日、今国会において<b>学校教育法の一部を改正する法律案</b>が可決された。これにより、新たに実践的な職業教育を行う高等教育機関「専門職大学(仮称)」の開設が可能になる。この動きをうけて、さっそくゲームの専門職大学開設のための<a href="http://www.igda.jp/?p=6785" target="_blank">教授の募集や博士人材の求人</a>を出しはじめた専門学校もある。これは今年以降の日本のゲーム研究教育機関に対して少なくない影響を与えると考えられる。<br />  これまで日本ではゲームは職業訓練学校はあっても学位プログラムはごく少数しかなかった。(たとえばGDCで存在感を示す<a href="https://hevga.org/hevga2wp/about" target="_blank">HEVGA</a>(HigherEdGames.org)に日本から加入している教育機関は1校だけだ。これについてはIGDA日本による<a href="http://www.igda.jp/?p=408" target="_blank">GDC15報告会</a>, <a href="http://www.igda.jp/?p=6325" target="_blank">GDC17報告会</a>でも当アカデミックSIGから山根が報告している。) 専門職大学の新設は、このゲーム教育の国際ギャップを埋められるだろうか。筆者の見方では、従来の2,3年制のゲーム専門学校に対して4年制で学位審査を行うゲーム専門職大学が現れるという日本の2017年の変化は、2000年頃のアメリカの状況に似ている。その頃、伝統的な大学にゲーム開発専攻は無く、ゲーム開発を専門的体系的にに学べる教育機関はDigiPenのような「大学だとみなされていなかった職業訓練校」だった(<a href="https://www.cgarts.or.jp/report/rep_sin/rep0223.html" target="_blank">参考記事</a>)。<br />  だが近年の北米では大学と高度職業訓練校とが最先端のゲーム開発者人材育成を競いあっており、日本でも専門職大学をきっかけとして、北米でこの20年間に起こった学校の枠を超えた競争が生まれる可能性がある。<br />  なおその20年のあいだに、最先端のゲーム開発者教育は大学設置だけでなく大学院設置の重要性が認識されている。したがって専門職大学は大学院までを構想にいれるかどうかがゲーム分野と他分野では異なっている。大学院レベルでは、<a href="https://www.princetonreview.com/press/game-design-press-release" target="_blank">ゲーム専攻大学院ランキング</a>2017年版でマルタ共和国のマルタ大学がいきなり23位にランクインするというグローバルな大学間競争も起こっている。このような教育機関の国際競争の中で、世界に通用する人材を育成する大学・大学院をつくることは日本の課題と言えるだろう。<br /> <h3> 補足: ゲーム研究の手引き</h3> &nbsp; 昨年度の成果だが、メディア芸術連携促進事業として『ゲーム研究の手引き』が2017年度になって<a href="http://digrajapan.org/?p=4371" target="_blank">オンライン公開された</a>。これは国内大学のゲーム研究者による仕事だが、名前から想像するような研究文献中心ではなく、かなり一般向けや学校教科書レベルの仕事まで幅広く記載している。<br />  特に、ゲームデザイン専攻で使われている英語教科書を「ゲーム研究者にとっても非常に重要な文献」と述べているのは印象的だ。昔はゲーム研究は専門書・学術論文を読みこむことからはじまっていたが、今日では最近のゲーム研究を反映した<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2009/09/blog-post_13.html" target="_blank">ゲーム開発の大学教科書</a>が出版されてゲーム研究の入り口になっている。たとえば物理学を学ぶ学生はニュートンやアインシュタインが書いた文献を読むのではなく、世界的なスタンダードになっている専門の教科書で学ぶ。そのように、どの学問分野でも、研究者を目指さない人も学ぶ価値のある優れた教科書があるものだ。デジタルゲームの分野でも、研究者を目指さない学生でも学ぶ価値のある教科書が注目されている。このことはゲームがすべての人のための学問になりつつあるということではないだろうか。S. Yamanehttp://www.blogger.com/profile/01944183248030555589[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-83744362741900037392016-02-06T17:51:00.000+09:002016-06-11T15:02:03.102+09:002015年アカデミックレビュー毎年1月の Global Gaem Jam も終わり,ここで2015年をゲーム産学連携から振り返ってみたい. <br /> <h4> 学術出版と商業出版のボーダーレス化</h4> 2015年は国内でゲーム研究関係書籍の問題作が出版された変化の年だった.主な書籍をあげてみる。<br /> <ul> <li><a href="http://sociology-of-games.blogspot.jp/2015/04/10.html" target="_blank">『妖怪ウォッチが10倍楽しくなる本: 妖怪ウォッチのゲーム・アニメ学』</a><br /> ゲーム研究の成果を駆使した本がまさかの三才ブックスから出版された.よくある謎本かとおもったら、「イェスパー・ユールの理論に基づく考察」とか「日本でゲーム研究を専攻できる大学院・大学リスト」とか書いてあるギャップがすごい。情報源の記載も充実しており、これは2015年に国内で出たゲーム学・ゲーム研究書でもっとも丁寧に書かれている。<br />海外では、ゲーム研究書を出す学術出版社の競争が活発だ。たとえばMIT出版は,ゲーム研究書や教科書を単発で出すだけでなく、<a href="http://platformstudies.com/" target="_blank">Platform Studies</a>,<a href="http://www.gamehistoriesbookseries.org/" target="_blank">Game Histories</a>,<a href="https://mitpress.mit.edu/books/series/playful-thinking-series" target="_blank">Playful Thinking</a>というゲーム研究シリーズを並行して出しており、それぞれ来年までの刊行予定が組まれている.<br /> これに対して,日本ではゲーム研究の出版を担ってきたのは学術出版社ではなく,ファンブックや雑誌の出版社だった.しかし「ゲームサイド」シリーズが<a href="http://gameside.jp/blog/151007/">休刊</a>したように,ゲーム研究の成果出版はファンに買ってもらうだけでは支えきれなくなっている.この状況で商業出版のカジュアルなパッケージに学術的なアプローチを組み込んだ妖怪ウォッチ本が出たのは注目に値する. </li> <li>『<a href="https://www.borndigital.co.jp/book/5366.html" target="_blank">中ヒットに導くゲームデザイン</a>』<br /> まず邦題がひどい.原題<cite>は「Game Design Workshop: A Playcentric Approach to Creating Innovative Games</cite> 」で、副題もふくめ書名に大胆な味付けが行われている.原著はもともと大学で使われているゲームデザインの教科書だ.翻訳されたのは教科書の新版で、旧版は世界ではじめてゲームジャムについて解説していた先進的な内容だった.新版はそうした先進性は減ったが定番教科書らしい手堅い内容になっている.<br />中心的な著者であるフラートンは,全米屈指のゲーム開発者教育者として<a href="http://herocomplex.latimes.com/games/uscs-game-changer-tracy-fullerton-at-it-again/" target="_blank">ニュースでも報道される</a>超人気教授だ。そして原著副題の「Playcentric Approach」とは、彼女らが<a href="https://www.researchgate.net/publication/2956930_Play-Centric_Games_Education" target="_blank">国際学会で提唱した</a>ゲーム開発者教育のアプローチだ.これは学会を通じて世界各地の教育機関に影響を与えリスペクトされているので、なぜ翻訳しなかったのか理解に苦しむ.<br /> 先に述べたように,日本にはゲーム学の成果の出版は、専ら雑誌の出版社によって支えられてきた.しかしこの体制では、新書レベルならともかく大学教科書を訳すのは難しい.一学期かけて読むような体系的な書物なので、訳す側にも一学期かけて読者に教えるような労力が必要になる。しかし本翻訳では大学教科書をあえて翻訳者一人だけで訳し、学者のチェックなしに出版している。この試みは無謀ではないか.本教科書のアプローチはもともと国際学会で討議されたものなので、ゲーム開発者教育の先駆者をリスペクトしている研究者に相談すれば翻訳の質はかなり向上したはずだ.国内大学でも英語教科書でゲーム学を教えている教員も<a href="http://www.slideshare.net/syamane/cedec2015-52324775">いる</a>ので,IGDA日本などに相談した方がいい.</li> <li>イェスパー・ユール<a href="https://www.borndigital.co.jp/book/5674.html" target="_blank">『しかめっ面にさせるゲームは成功する』</a>、バーナード・スーツ<a href="http://www.nakanishiya.co.jp/book/b194605.html" target="_blank">『キリギリスの哲学』</a><br /> 人文系の学術書が翻訳されたのも2015年に起こった新たな動きだった.この2冊のうち、前者はやはり研究者抜きで翻訳するという無謀な出版だったが,かろうじて「<a href="http://9bit.99ing.net/Entry/70/" target="_blank">類書のなかではかなりましなほう</a>」という評価を得ている.<br />また後者は研究者による翻訳で,欧米のゲーム研究ではよく引用されている書物なのだが、日本語でも議論に使えるようになったのはありがたい。欧米のゲーム研究者は様々な分野の知見も駆使しているが、日本でもそうした分野越境のきっかけになるのではないか。ゲーム研究だけでなく文化面でも注目され、 <a href="http://dd.hokkaido-np.co.jp/cont/books/2-0026891.html" target="_blank">新聞の書評</a>にもとりあげられている.&nbsp;</li> </ul> <br /> <a name='more'></a><br /> <br /> <ul> </ul> 今後も国内のゲーム学においては,学術出版のかわりを商業出版が担う状況は続きそうだが,研究者が商業出版に進出したり翻訳の質の向上といった今後につながる一年だったと言える. <br /> <h4> 大学発,ゲーム業界経由,大臣就任</h4> 2015年新春,経済危機を迎えたギリシャで財務大臣に任命されたのがValve社でSteamのエコノミストをしていたヤニス・バルファキスだった。彼は<a href="http://www.taga-shuppan.co.jp/books/books.php?id=453" target="_blank">経済学の教科書</a>を書くだけでなく,<a href="http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4KGN76KLVR501.html" target="_blank">ギリシャの経済学教育の水準を世界レベルに引き上げた</a>アカデミックリーダーだったが,新政権に招かれるまではギリシャ国内での攻撃を避けてアメリカに渡っていた.<br /> 国際ニュースではその<a href="http://jp.reuters.com/article/greek-finmin-popular-in-germany-idJPKBN0LE0HK20150210" target="_blank">セクシーなルックス</a>だけが<a href="http://greece.greekreporter.com/2015/02/11/artist-makes-poster-of-varoufakis-merkel-showdown/" target="_blank">注目</a>されてしまったが,バルファキスはゲーム産学連携でも重要な役割を果たしている.オンラインゲームのマーケットをコントロールするために経済学の教授を招くのはValve以前にEveOnineでも行われているが,バルファキスは従来の経済学ではできなかった実験やシミュレーションが可能になる場としてゲーム産業を位置づけた.このため,全米のゲーム業界団体ESAも彼を従来の経済学理論に挑戦する者として「<a href="http://www.theesa.com/article/video-games-save-greek-economy/">he may be best positioned to pull Greece out of its financial crisis</a>」と特集している.<br /> ヴァルファキスのゲーム産業関連でのもう一つの功績は,彼がValve社長のゲイブ・ニューウェルからの<a href="http://blogs.valvesoftware.com/economics/it-all-began-with-a-strange-email/">メール</a>からはじまって,Valve社での思索をブログで発表してきたことがあげられる.彼のブログ投稿は<a href="http://www.forbes.com/sites/danielnyegriffiths/2012/06/15/valve-appoints-in-house-economist/">Forbes記事</a>でもとりあげられた他,転職したい企業のトップである<a href="http://arcadia11.hatenablog.com/entry/2015/09/21/210000">Valveの新入社員マニュアル</a>が<a href="http://blogs.valvesoftware.com/economics/why-valve-or-what-do-we-need-corporations-for-and-how-does-valves-management-structure-fit-into-todays-corporate-world/">経営論でも注目されるきっかけ</a>にもなった.<br /> バルファキスは夏にはギリシャ政治の舞台を<a href="http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2015/08/155859.php" target="_blank">退いて</a>次の運動に向かったが,伝統的な学問を変える革新的な人材がゲーム産業に集まり,ゲーム企業の文化が研究対象となりうることを示したといえるだろう. <br /> <h4> ゲーム人材育成の次なる展開</h4> ゲーム産業を支えるのはクリエイティブな人材だが,日本では即戦力の確保が優先されるあまり,将来のゲーム産業を変革する次世代人材の育成が遅れてきた. これまでのゲーム産業にないものを持っている人材(必ずしも従来通りのゲーム会社に就職しようとは思っていない人材)をどうやって発掘し、ゲーム開発者の仲間に加えることができるのだろうか?<br /> このブログの本家である国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)では,東京ゲームショウでの<a href="http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2015/business/sown/">「センス・オブ・ワンダー ナイト」</a>(SOWN)の開催を支えてきた.公式ウェブサイトにも注記されているように、これはGDC(Game Developers Conference)で2001年に始まった 「Experimental Gameplay Workshop」からインスパイアされたもので、選考委員にはIGFの顔役も含まれる国際的な視野に立ったイベントだ。<br /> 昨年のSOWN2015には、上記教科書を書いたFullerton先生も実験作「Walden」を出展するために来日した。こうした実験作を披露する国際的な場としてSOWNは機能してきたと言えるだろう. (余談だが、この来日の際にアメリカ大使館は彼女の<a href="http://www.igda.jp/?p=1834" target="_blank">講演会</a>も主催した。つまりゲーム開発者教育はアメリカから海外に発信すべき文化として位置づけられている。)<br /> <br /> その一方で,世界各地ではさらに人材発掘が進み,「無名の若手開発者がミニゲーム1本で一夜にして脚光を浴びる」という<b>巨大なメディアイベント</b>が起こっている.その代表例がIGFで,IGF2015では学生部門でもっぴんが<a href="http://www.4gamer.net/games/999/G999904/20150306019/">ファイナリスト</a>に進み,日本でも大きな注目を集めた(学生部門ファイナリストは日本人では初.過去のIGFでは日本滞在経験のある開発者が受賞したり、Q-Gamesがノミネートされた例がある).IGF2015一般部門でも大学院発のプロジェクトがグランプリをとった。グランプリを受賞したのは上記のフラートンが教える大学院の<a href="http://www.gamasutra.com/view/news/235008">卒業研究プロジェクト</a>だったOuter Wildsだ.昨年はこうした新人への注目が集まった年だった.ちなみにOuter Wilds開発グループには数年前に<a href="http://scholars.igda.org/reports/gdc-2011-scholar-reports/">IGDAスカラシップ</a>に参加した学生もおり,数年間での成長に驚かされた.<br /> 世界各地ではじまったこうした次世代人材の発掘と日本の課題については次回に改めて展望したい.<br /> <br /> <h4><a name="preview">追記: 2016年プレビュー</a></h4> 2016年のゲーム研究シーンを展望してみると、3月のGDCと8月のDiGRA+FDGに注目している。<br /> <a href="http://www.igda.jp/?p=408" target="_blank">昨年</a>のGDC15では、アカデミックサミット後の夜の部がアメリカのゲーム開発者教育の歩みを振り返る内容だったのが印象深かった。今年も引き続きゲーム研究者の表彰ノミネートがはじまっている。<br /> 日中の講演セッションでも、全講演者が決まったわけではない1月時点で、ネカマ研究など<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2009/09/everquest2.html" target="_blank">オンラインゲーム研究を切りひらいた</a>Nick Yee, MITで<a href="https://www.cgarts.or.jp/report/rep_2011/sin_rep/rep0713.html" target="_blank">ゲームAI</a>のフレームワークを発表したあとゲーム業界で活躍するDamian Isla、さらに<a href="https://mitpress.mit.edu/books/atari-zelda" target="_blank">和ゲー研究を今年出版予定</a>の現DiGRA会長Mia Consalvoの発表が決まっており、それらを一度に見れると言う楽しい場になっている。ちなみにIGDA日本が協力するGDCツアーの募集が2016年2月15日(月)に延長された。興味のある方はお知らせください。<a href="http://www.pts.co.jp/corp/gdc2016/" target="_blank">http://www.pts.co.jp/corp/gdc2016/</a><br /> そして、秋には<a href="http://digra-fdg2016.org/" target="_blank">DiGRAとFDGのジョイント世界大会</a>がある。会場は国のゲーム研究教育拠点(UK Centre of Excellence for Computer Games Education) があるスコットランドの Abertay University 。FDGについては以前<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2013/06/fdg2013.html" target="_blank">参加報告</a>をしたことがあるが、欧州発のDiGRAとアメリカ発のFDGという性格が異なるの国際会議を両方誘致したことで、過去最大規模のゲーム国際会議になるはずだ。<br /> &nbsp;この他にも分野ごとの国際会議が毎年多大な労力をかけて<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2011/04/2011.html" target="_blank">開催されており</a>、国際的なゲーム研究シーンはさらに活発化していくだろう。<br /> <br /> <h3> さらに追記: 2016年国内での国際学会イベント</h3> <br /> 上記プレビューを見て「国内では国際的な学会活動は開かれない!」「海外出張予算の無い人は世界的なゲーム開発シーンに加われないのか!」と思われたら,それは誤解です.以下で,国内で開催される国際学会,国際会議参加支援団体について補足します.<br /> <br /> (1) 国内で行ける国際学会<br /> 今年国内で行われるゲーム関連の国際学会で最大級のイベントは, ICA(国際コミュニケーション学会)の世界大会だろう.これは6月に福岡で開催されるのだが,その前日に都内でもプレイベントが開催される.<br /> たとえば6月8日にICAゲーム部会の<a href="http://game.icahdq.org/ohana/website/?p=58381739" target="_blank">プレコンファレンス</a>(前述のMia Consalvoの日本のゲーム文化についての講演の他,ゲーム展示発表あり,秋葉原で夜の部もあり),同じく6月8日には<a href="http://icacooljapan.blogspot.jp/2015/11/call-for-papers-communicating-with-cool.html" target="_blank">クールジャパンを題材にしたプレコンファレンス</a>が開催される. <br /> ゲーム関連の国際学会は快適な土地や会議場で開催されることが多く,日本では大規模な国際学会を開催するのは難しい.(特に大学のキャンパスでやろうとすると海外からの参加者はかなり苦労する.)この点で,ICA世界大会はメインが福岡の国際会議場,プレコンファレンスを東京の大学キャンパス(と秋葉原)という組み合わせで,新しい試みとして興味深い.<br /> これに次ぐ世界大会としては,11月大阪での<a href="http://ace-conf.org/" target="_blank">ACEカンファレンス</a>もある.これは単発の国際会議ではなく,日本国内学会による<a href="http://ec2016.entcomp.org/">エンタテインメントコンピューティング2016</a>と同時開催されることになっており,世界と日本とのエンタテインメントコンピューティングが交わる場所になることが期待されている.日本のエンタテインメントコンピューティング研究はよくも悪くも独自に発展しており,それが国際的な文脈と接続されることは興味深い.<br /> <br /> (2) 海外渡航旅費支援<br /> 「<a href="http://digrajapan.org/?page_id=1751" target="_blank">ゲーム研究に対する研究助成事業のリスト</a>」などで国際学会参加を支援してくれる団体がある.申請条件はまちまちだが,プロの研究者だけでなく,研究機関の共同研究者や大学院生でも申請できるものがある.<br /> <br /> <br />S.Yamanehttp://www.blogger.com/profile/08138892350931505180[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-51500818570878592292015-05-05T04:35:00.000+09:002015-05-06T13:08:47.571+09:00 ゲームサウンド研究の成立<h4> 新世代のゲーム研究: ゲームサウンド編</h4> 2010年代前半のゲーム研究でもっとも成長したのはどの領域だろうか.数年前には学問として成立していなかったのに,いまでは数多くの研究論文が生み出される分野もある.その代表として,<b>ゲームサウンド</b>研究をあげることができる.<br />  当ブログで2014年の研究シーンを振り返る「<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2015/01/2014.html" target="_blank">2014年アカデミックレビュー: 新世代のゲーム研究(前編)</a>」を書いた時に,後編ではゲームデザインの「ナラティブ」,そしてゲーム音楽の「ダイジェティック」をとりあげると予告していた.このうちナラティブについては昨年に起こった用語の輸入が国内に混乱をもたらしたため,独立して「<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2015/03/blog-post.html" target="_blank">ゲームナラティブ教育の過去・現在・未来」</a>として,ナラティブはバズワードではなく体系的なゲーム開発者教育の中核(必修科目)に位置づけられること,数年前から世界各地の学生がナラティブ分析を競ってきたことを紹介した.本稿では,残りのダイジェティックについてゲームサウンド研究の成長とともに考えてみたい. <br /> <a name='more'></a><br /> <h4> ゲームサウンド研究の発展</h4> 国際的なゲーム研究の論文誌<a href="http://gamestudies.org/" target="_blank"><cite>Game Studies</cite></a>には,研究論文だけでなく研究書のレビューも掲載されている.このレビュー欄で,はじめてのゲームサウンド研究のレビュー記事「<a href="http://gamestudies.org/1401/articles/kjorgensen" target="_blank">Sound in a Participatory Culture</a>」が2014年に掲載された.この記事の冒頭で,ノルウェーの若手研究者Kristine Jørgensenは,10年前の2004年にゲームサウンドの研究をはじめた時には先行研究は存在しなかったと振り返っている.(たしかに東京大学で開かれたDiGRA 2007 Tokyoでも,ゲームサウンドを論じた彼女の発表をどのセッションに割り振るかをプログラム委員が悩んでいた記憶がある.だがその後のDiGRA世界大会や<a href="http://audiomostly.com/downloads/" target="_blank">Audio Mostly</a>会議ではゲームサウンドは独自の研究集団を形成するようになった.)<br /> &nbsp; 10年間でゲームサウンド研究は大きく成長した.このレビュー記事では<a href="https://uwaterloo.ca/english/people-profiles/karen-collins" target="_blank">Karen Collins</a>の書籍がとりあげられているが,彼女は書籍の単独執筆だけでなく論集の編纂などを通じてゲームサウンド分野の理論と研究コミュニティの組織化に大きく関わっている.JørgensenとCollinsに共通しているのは,10年前の大学院生の時点で指導者のいないゲームサウンドを研究テーマに選び,個人の研究歴と研究領域の歴史が重なっているところだ. <br /> <h4> ゲームサウンド研究の拡大</h4> もちろん,ゲームサウンドの研究者(大学院生や若手研究員)がいるだけでは,その研究が社会に影響を与えているとは言えない.この数年間で,主に大学でゲームサウンド研究を学んだ学生が<b>社会で活躍する</b>ことで,ゲームサウンド研究の分析の道具は論文誌や研究書以外にも影響力を持つようになっている.これは日本では起こらなかった現象で,たとえばhally氏は「ダイジェティック/ノンダイジェティック」といった分析尺度を活用した研究が量産されていることに触れて,「<a href="https://twitter.com/hallyvorc/status/508673973878407168" target="_blank">理論武装の面で日本のゲーム音楽研究は完全に周回遅れ</a>」と指摘している.<br /> &nbsp; では,欧米ではどうやってゲームサウンド研究は広まっていったのだろうか.これは,博士課程の学生がゲーム開発系のウェブサイトに解説記事を書いたことが大きかった.特に2008年1月のGamasutra特集記事「<a href="http://www.gamasutra.com/view/feature/131915/ieza_a_framework_for_game_audio.php" target="_blank">IEZA: A Framework For Game Audio</a>」は「ダイジェティック/ノンダイジェティック」分析をわかりやすいフレームワークとしてひろく認知させた.<br /> <br /> <div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="http://www.gamasutra.com/view/feature/131915/ieza_a_framework_for_game_audio.php?print=1" target="_blank"> <img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjqfLpH6GsDhk6SCMujGJq3szmB-fAfs21f7MhaWCCCmKo428A_MFnyhLOVepOgRO6x9iheGlRYjzNs0nJMrRUlVDUeVcLIPcA9FpCMUTS28iQFhKpysnULAjtyMUs3xoPFwY2nqE0FfpI/s1600/index_hulberts_lg.gif" /></a></div> <br />  このフレームワークはわかりやすかった.なにしろ研究書ではまずダイジェティックとは何かという話からはじめて,<b>古代ギリシャ哲学のディエゲーシスの概念</b>にまでさかのぼって説明しており,ゲームの話になるまでが長すぎた.(たとえば2010年の研究書『<a href="http://www.igi-global.com/book/game-sound-technology-player-interaction/41766" target="_blank">Game Sound Technology and Player Interaction: Concepts and Developments</a>』ではキーワードを並べた索引(Index)を無料公開しているのだが,ダイジェティック(diegetic)だけでなくdiegesisやdiégèseまでキーワードとして何度も出てくる.)<br />  北欧やオランダのゲーム研究者が古代ギリシャを語るのは,古典教養をひけらかしているわけではない.博士レベルの研究書では誰がコンセプトを発明したのというクレジットを明確に書くよう訓練されているためだ.特に20世紀ヨーロッパでディエゲーシス概念は文学史文学理論,映画論など幅広い分野で使われてきたので,誰のやり方で使っているのかを確定しないと混乱を招きかねない.それに対してフレームワークではそうしたことは簡略化されたことでうけ入れやすくなっており<a href="http://en.wikipedia.org/wiki/IEZA_Framework" target="_blank">Wikipediaの項目</a>も立っている.) こうして2008年以降,ゲームサウンド研究はコンセプトや理論の段階から評価フレームワークや比較尺度へと落とし込まれ,開発者向けのメディアも研究応用に強い関心を示すようになった. <br /> <h4> まとめ</h4> ゲームサウンド研究は,高名な大学教授が切り開いたものではなく,無名の大学院生がてさぐりで理論化やネットワーキングをすすめてきた.そのためになかなか広がりを見せなかったのだが,Gamesutraが博士人材による入門記事を特集したりして,多くの人が使えるフレームワークとして草の根でひろまっていった.<br /> ゲーム研究はこうした新世代の若手研究者たちの挑戦と開発者との共有によってなりたっている.S.Yamanehttp://www.blogger.com/profile/08138892350931505180[email protected]1tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-3855446251171411812015-03-14T15:11:00.002+09:002020-11-20T19:03:36.816+09:00ゲームナラティブ教育の過去・現在・未来ゲームのナラティブ(物語)についての議論が盛りあがりを見せている(追記: ナラティブの元々の意味はストーリーテリングだが,実際には幅広い意味で使われている.松永<a href="http://9bit.99ing.net/Entry/31/" target="_blank">「ゲーム研究と「ナラティブ」」</a>参照).ただしバズワード化しているためにナラティブ論を敬遠している人も少なくないようだ.本記事ではゲーム教育の立場から,なぜナラティブ教育を避けて通れないのかを考えてみたい. <br /> <h3> ナラティブは最近の流行ではない</h3> まず,ゲーム開発においてナラティブは最近の流行語ではない点を確認したい.オンラインで英語のGDD(ゲームデザインドキュメント)を検索してみると,ゲームデザインの説明でナラティブについて当たり前のように説明されている.つまりナラティブはゲーム研究者だけが使う学術用語でも最新作のゲームデザインでもなく,ゲーム開発で広く使われている一般用語である.そして,この用語がゲームの学校教育や社内研修で教えられるようになったのは最近のことではなく,10年ほど昔のことだ. <br /> <a name='more'></a><br /> <h3> ゲーム教育におるナラティブ重点化: 2008年</h3> 本ブログの親団体であるIGDAは,ゲーム開発者の育成カリキュラムを集めて「IGDAカリキュラムフレームワーク」をまとめている.これは定期的に改訂されており,2008年に出たVersion3.2の日本語訳は「<a href="http://www.dcaj.or.jp/project/report/pdf/2008/dc_08_03.pdf" target="_blank">デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究報告書</a>」の付録として無料公開されている.このゲーム開発者が学ぶべき内容の中に,「ナラティブ」も記載されている.<br /> &nbsp; 上記カリキュラムでナラティブ項目が含まれているのは,どんな職種のゲーム開発者も学んでおくべき「コア科目」の中の「批判的ゲーム研究」分野である.「コア科目」ということは,ようするにナラティブはゲーム開発者育成プログラムの必修範囲だと言うことになる.<br />  この「IGDAカリキュラムフレームワーク」は,ゲーム専攻のある学校で導入されているだけでなく,学校に通わずに自分で学ぶ社会人や学生にも読まれてきた.したがって,10年近く前から世界のゲーム開発者はナラティブについて学んできたと考えてよい.近年ナラティブが話題になっているのは,こうした学校教育でナラティブを習得した世代が第一線で活躍をはじめたこと,また他の要素が成熟期に入ったためにナラティブ要素でゲームの違いを見せやすくなったことがあげられる. <br /> <h3> 誰がナラティブを教えるのか</h3> では,どうやってナラティブ(物語)を学べばいいのか.ゲームナラティブの教育はおおまかに<b>第一世代</b>と<b>第二世代</b>とに分けることができる.第一世代は物語学(ナラトロジー),つまり文学理論で学んだ世代.そして第二世代はゲーム研究成立以後の世代で,文学理論を経由せずにはじめからゲーム研究で学んだ世代である.<br />   第一世代の歴史は古く,ゲーム研究の最初期にさかのぼることができる.IGDA日本ではかつて学生ボランティアがゲーム研究初期の入門記事「Computer Game Research 101(コンピュータゲーム研究入門)」を翻訳公開したことがある(<a href="https://web.archive.org/web/20071022090305/http://www.igda.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=47" target="_blank">当時の記事のアーカイブ</a>).この2004年の「コンピュータゲーム研究入門」の中にその後のナラティブ研究の先祖の文学研究が登場するので,以下に簡単にまとめてみる.<br />  まず,デジタルゲーム研究の最初期に<cite>Adventure</cite>や<cite>Zork</cite>などのテキストアドベンチャーゲームに注目した文学研究者がいた.そして時代を経て同じ文学研究の関心から「インタラクティブフィクション」や「デジタルストーリーテリング」の研究が登場した.これらのポストモダン文学研究者によるゲーム研究は,ビデオゲームをアカデミックな研究対象として論じた最初の事例でもあった.つまり,ゲームナラティブ研究はアカデミックなゲーム研究のはじまりから存在していた古典的な問題である.<br /> &nbsp; 日本ではゲームのストーリーテリング論は単発の新書レベルに止まっていたが.英米では大学出版局からインタラクティブフィクション論やデジタルストーリーテリング論が出版され,それをもとに多くの大学教員が大学でゲームを論じるようになった.たとえば<strike>2006年</strike>2004年出版の<cite><a href="http://mitpress.mit.edu/books/first-person" target="_blank">First Person</a></cite>は,そうした物語論やデジタルメディア論の論客を集めた論文集だが,ナラティブという言葉がキーワードの一つになっている.<br /> &nbsp; こうして物語論でゲームを語れるようになった一方で,文学研究とは異なるゲーム学を構想する学派も登場する.その筆頭がイェスパー・ユールで,彼の修士論文「<a href="https://www.jesperjuul.net/thesis/" target="_blank">A clash between game and narrative</a>(ゲームと物語との衝突)」,そして博士論文「<a href="http://www.half-real.net/" target="_blank">Half Real</a>」はゲーム研究独自の可能性を検討したものだ.これが<b>第二世代</b>の幕開けとなる.こうしたゲーム研究シーンが日本に伝えられたのは国際会議DiGRA2007が東京で開催されたあたりで,当時の状況は<a href="http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/108/" target="_blank">『智場』2006年12月号</a>に掲載された「[研究動向]──発展するゲーム学──」というインタビュー記事をオンラインでも読むことができる.第一世代はゲームをまず物語として(のみ)扱っていたが,第二世代以後の英語教科書では,物語はゲームの構成要素の一つとして教えられている.<br />  ここまで見てきたように,英語圏ではゲーム研究成立以前からゲームのナラティブについて議論されてきた.2008年版のIGDAカリキュラムフレームワークでナラティブが必修扱いになり,多くの学校がそれに対応できた背景にはこのような蓄積がある.それに対して日本では体系的なゲーム開発者教育が進まなかったために,ゲームのナラティブは2013年に出てきた最新のテーマであるかのように広まった側面がある. <br /> <h3> ゲームナラティブ教育の実際</h3> ではゲームのナラティブは学校現場でどのようにして教えられてきたのだろうか.先に述べたように,IGDAカリキュラムフレームワーク(2008年版)では,ナラティブは「批判的ゲーム研究」の課題の一つとして教えられている.この「<b>批判的</b>研究」とはゲームを真似るのではなくゲームについて<b>批判的に思考する</b>ことを学ぶものだ.これを全世界の教育機関に普及させるためにGDCは大きな役割を果たしている.それがIGDA Writers SIGと北米の有力大学そしてGDCとの連携により毎年開催されている学生ナラティブ分析コンテスト「<a href="http://www.gdcvault.com/gamenarrativereview" target="_blank">GDC Game Narrative Review</a>」だ(GDC2015での<a href="http://www.gamasutra.com/view/news/237247" target="_blank">プレスリリース発表</a>).過去には受賞したナラティブ分析が<a href="http://www.gamasutra.com/view/news/116813/GameCareerGuide_Feature_Narrative_Review__Chrono_Trigger.php" target="_blank">Gamasutraに掲載された</a>こともあるが,現在では優秀作は内容をポスター一枚にまとめてGDCで2日間展示発表したあと,分析ドキュメントと発表ポスターとがオンラインで公開されるようになった.<br /> &nbsp; こうして,夏休みの読書感想文コンクールのように,世界各地のゲームデザイン専攻の学生がGDCで発表することを目指して,授業の一環としてゲームナラティブ分析を競っている.このコンテストは各地のゲーム教育を統一する上で大きな役割を果たしてきた.過去の優秀作はウェブサイトからダウンロードして読んでみると,優秀作を参考にしながらいまや<b>どの大学でも分析スタイルが統一化</b>されている.<br /> &nbsp; 著者は大学の今年度授業で<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2014/09/blog-post.html#more" target="_blank">英語教科書を使ったゲームデザインの講義</a>をしつつ(オンラインで学外から受講してくれたゲームデザイナのみなさんに感謝),ゼミでナラティブ分析の受賞作を読んでみたが,同年代による優秀作が公開されているのは非常に学習効果が高いと感じている.<br /> こうしてナラティブ分析のスキルが形式化されることでゲームナラティブはゲームデザイナの職人技から形式知へと変容した.そして高等教育の普及にともなって,ゲーム産業が発展途上の国やゲーム開発実績のない人でも使える概念になっている.(過去のGDCでは,ブラジルの学生による『侍道3』のナラティブ分析も採択されている.) <br /> <h3> ゲームナラティブ教育の今後</h3> 「<a href="http://www.gdcvault.com/gamenarrativereview" target="_blank">GDC Game Narrative Review</a>」を授業に取り入れることでゲームのナラティブ教育は統一化されつつあるが,これにはある程度のバイアス(偏り)がでることも事実である.受賞作を読んでもう一つ気がつくことは,<b>日本のゲームのナラティブ分析が例年のように受賞している</b>ことだ.ペルソナ4,ヴァンパイアセイヴァー,すばらしきこのせかい,ファイナルファンタジー,メタルギアなどジャンルも多岐に渡る.これは日本のゲームをとりあげたいという教育上のバイアスがある.<br />  たとえば教師の立場に立ったとしたら,授業の課題でプレイに時間がかかる超大作は敬遠したいし,批判的分析能力を養うためには(隙が無いタイトルよりも)長所短所をあげやすいタイトルを勧めたくなる.(たとえばGDC2015の受賞作にはGDCゲームオブザイヤーを<cite>受賞したThe Last of Us</cite>のポスター発表もあったが,長所だけが前面にでてしまっていた.)一方これに対して,「この作品にはこういう長所があるかわりにこんな短所もあり,それらの両方から学ぶことができる」といった<b>JRPGの批判的分析の方が読み物としておもしろい</b>.そして分析する学生にとっても,審査員の目にとまりやすい,競合しない作品を選ぼうというバイアスがあると考えられる.<br />  こうしたバイアスはあるにせよ,日本のゲームのナラティブ分析がGDCで例年選出されていることは注目に値する.いわば<b>日本のゲームを解説できる英語ボランティア軍団</b>を海外の大学が育成しているようなものであり,今後日本のゲームがナラティブ要素で付加価値をつけて世界に輸出できる可能性を示している.たとえば<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2015/01/2014.html" target="_blank">2014年アカデミック・レビュー(前編)</a>で紹介したように,国内のゲームナラティブ研究者がIndieGoGoでナラティブ研究の資金を集めることに<a href="https://www.indiegogo.com/projects/video-game-studies" target="_blank">成功</a>したのは,日本のゲームのナラティブへの海外の関心の高さを示している.エースコンバットとかメタルギアといった日本のゲームでのナラティブ研究が国際学会で採択を重ね,学会の外でも多くの人々に支援されたことは心強い.<br /> <br /> <h3> まとめ</h3> 最後に本記事の内容をふりかえる.まずゲームならではのナラティブ論は近年の流行ではなく,前世紀のテキストアドベンチャーの頃から論じられている.最初の世代はゲームを文学理論で(のみ)分析しようとしたが,ゲーム学・ゲーム研究が成立してからはナラティブはゲームの要素の一つとして扱われるようになった.<br />  ゲームナラティブ教育の普及により,ゲームを真似るのではなく批判的に分析する教育が世界各地の教育機関で行われている.この題材として日本のゲームがしばしばとりあげられており,今後も日本のゲームのナラティブを分析することで次世代のゲーム開発者が腕を磨くことが期待される.また,国内大学院生が国際学会で活躍していることから,日本のゲームのナラティブは教科書レベルにとどまらず第一線の研究レベルでも有望な領域だと言える.<br /> <br /> <h3> 追記: GDC報告会</h3> <div style="text-align: left;"> GDC2015が終わったところで,次はGDC報告会・CEDEC発表申込締切りとゲーム研究開発のサイクルはまわり続けます.3月下旬の<a href="http://peatix.com/event/72886/view" target="_blank">GDC報告会</a>では,アカデミックSIGからも当ブログ主筆の山根が<a href="http://www.gamestudy.jp/2015/03/gdc/" target="_blank">発表</a>する予定です.</div> S.Yamanehttp://www.blogger.com/profile/08138892350931505180[email protected]0tag:blogger.com,1999:blog-5874324551118294360.post-15939726043355092512015-02-19T15:52:00.001+09:002021-06-09T12:58:47.165+09:00GDC15 アカデミック・プレビュー<h3> </h3> 世界最大のゲーム開発者の国際会議,<a href="http://www.gdconf.com/index_ja.html" target="_blank">GDC(Game Developers Conference)</a>が今年は3月第1週に開催される. 我々IGDA日本も<a href="http://old2014.igda.jp/modules/pico/index.php?cat_id=12" target="_blank">告知協力</a>を行っており,さらに本記事ではアカデミック関係(教育・研究)の観点からプログラムを紹介したい.<br /> <h3> 産学交流の場として</h3> GDCはゲーム産業における産学連携の場として重要な役割を果たしてきた.特にGDC2002で開かれた「IGDA Academic Summit」はその後のIGDAカリキュラムフレームワークやEducation SIGの立ち上げだけでなく,IGDA日本の立ち上げに大きな影響を与えている(新清士<a href="http://ci.nii.ac.jp/naid/110009669549" target="_blank">「ゲーム産業と学術研究機関の関係」</a>参照).<br /> その後,ヨーロッパ発祥の<a href="http://www.digra.org/" target="_blank">DiGRA</a>世界大会, 小規模会場での開催にこだわる<a href="http://foundationsofdigitalgames.org/" target="_blank">GDCSE</a>(のちの<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2013/06/fdg2013.html" target="_blank">FDG</a>),あるいは<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2009/10/aiide09.html" target="_blank">人工知能のAIIDE</a>や<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2009/12/siggraph-asia-2009-1216-19.html" target="_blank">SIGGRAPH</a>のように分科会から発展した専門性の高い国際会議など,特色ある 学術会議の種類も増えてきた.GDCはそれらの国際学会のように専門家が最先端の発表を競う場ではないが,その一方で,それらの専門分野ごとの集まりでは出会えない業界を越えた交流の場所としてGDCは機能している.<br /> <br /> <br /> <a name='more'></a><br /> <h3> GDC Education Summit</h3> アカデミック関係者の中でも教育関係者がまず参加すべきなのが,前半のGDC Education Summit. このGDC Education Summitは<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2013/03/blog-post.html">GDC2013からはじまった</a>ゲーム教育・人材育成に関する集中セッションである. <br /> <h4> HigherEdGames</h4> このサミットはIndependent Games Summitと重なっていてどのセッションをとるか悩むのだが,まず初日夕方の「<a href="http://schedule.gdconf.com/session/higheredgames-elevating-the-conversation-on-games" target="_blank">HigherEdGames</a>」セッションに注目.これはアメリカ初のゲーム教育に関する高等教育機関の全国組織である<a href="http://www.higheredgames.org/" target="_blank">Higher Education Video Game Alliance</a>のたちあげに関するセッションだ.<br />  この組織は業界団体ESAが出資しているが,<a href="http://www.higheredgames.org/#about_us" target="_blank">役員</a>に産業界の人材は入っておらず,大学(または大学院)でゲーム開発やゲーム研究を推進する現役大学教授によって構成されている.たとえば <a href="http://herocomplex.latimes.com/games/uscs-game-changer-tracy-fullerton-at-it-again/" target="_blank">Journeyの開発者が最大の謝辞を捧げる</a>トレーシー・フラートン教授,<a href="http://オバマ政権のスタッフをつとめた/" target="_blank">オバマ政権のスタッフをつとめた</a>コンスタンティン・スタインクラー准教授,<a href="http://www.google.co.jp/url?sa=t&amp;rct=j&amp;q=&amp;esrc=s&amp;source=web&amp;cd=7&amp;ved=0CEEQFjAG&amp;url=http%3A%2F%2Fwww.accumu.jp%2Fback_numbers%2Fvol12%2F%25E3%2583%2587%25E3%2582%25B8%25E3%2582%25BF%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25B7%25E3%2583%2586%25E3%2582%25A3%25E3%2581%25A8%25E7%2595%25B0%25E6%2596%2587%25E5%258C%2596%25E3%2582%25B3%25E3%2583%259F%25E3%2583%25A5%25E3%2583%258B%25E3%2582%25B1%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25B7%25E3%2583%25A7%25E3%2583%25B3.html&amp;ei=YTzoVJP0K4SQ8QXi2oCAAw&amp;usg=AFQjCNF0A-qEh8zMY1_Y_z3wteKCd-kmUA&amp;sig2=AqYxlVk-q27W74ca3jSRSg&amp;bvm=bv.86475890,d.dGc" target="_blank">デジタルシティ京都</a>などに参加し米国外の研究シーンにも詳しいキャサリン・イズビスタ准教授など実績ある現役教授が並んでいる.その一方で,一般会員は日本の学校関係者でも参加できる.ゲーム教育者によるゲーム教育者の組織だ.<br />  これまで全米でどれだけのゲーム開発者教育・ゲームデザイン教育が行われているのかという規模ははっきりしておらず,業界団体<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2011/10/blog-post.html" target="_blank">ESAが全米の学校ウェブサイトを調べた調査集計</a>しかデータがなかった.だがこうして全国組織ができたことでGDCでもそのくわしいデータが発表される予定だ.これにより,北米の学生はゲームをどの専攻で何年かけて学ぶのかをさらに深く考えることができるだろう.<br />  また,この機関は教育機関の相互交流を促進するだけでなく,首都ワシントンでゲーム研究をプロモーションする団体としての性格も持っている.たとえば昨年,アイビーリーグのエール大学で若者の薬物乱用を防止するためのゲームが開発された.この<a href="http://news.yale.edu/2014/12/16/yale-s-play2prevent-lab-acquires-tunnel-tail-prevent-teen-substance-abuse" target="_blank">記者発表</a>の末尾で,くわしい情報の参照先としてエール大学の開発チームのウェブサイトと並んで,HigherEdGamesのウェブサイトが掲載されている.このように,ゲーム研究機関の最新動向マスコミに提供する取材窓口としても活動をはじめている.<br />   このHigherEdGamesの役員はEducation Summitのスタッフとも一部重複しているため,夕方のサミット終了後にそのまま移動して<a href="http://us9.campaign-archive1.com/?u=7feef9edc4eadb9136ee66e6c&amp;id=55eedfce83&amp;e=8908dbb128" target="_blank">レセプションに参加でき</a>,インフォーマルな学術交流が進められる予定だ.<br /> <h4> 受講者数万人のゲーム学講義</h4> 月曜日午前中の注目は「<a href="http://schedule.gdconf.com/session/encouraging-engagement-in-large-and-extra-extra-large-courses" target="_blank">Encouraging Engagement in Large and Extra, Extra Large Courses</a>」(超大規模科目での参加意欲を高める).これはカナダのアルバータ大学が,地元企業Biowareと協力して受講者が数万人のゲーム教育を行った報告である.これはインターネットを使った大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)で,この科目を含むアルバータ大学のゲーム教育については,昨年の記事「<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2014/09/blog-post.html">大学講義のオープン化とゲーム開発者教育</a>」でも紹介している.<br />  この手のオンライン授業ではゲーム関連の科目で修了証がもらえるプログラムはドル箱になっているが,受講者のやる気を一学期間維持するのが難しい.そのあたりの仕組みを聞いてみたい. <iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube-nocookie.com/embed/oaCbPaNEllY?rel=0" width="560"></iframe> <br /> <h4> 産官学の国際連携報告</h4> 次はSummit2日目の「<a href="http://schedule.gdconf.com/session/how-a-group-of-academics-came-together-to-improve-irelands-institutions-industry" target="_blank">How a Group of Academics Came Together to Improve Ireland's Institutions and Industry</a>」(アカデミックグループがどうやってアイルランドの教育機関と産業に貢献したか).これは米国がアカデミックなゲーム開発者を海外に長期間送りこんだ報告だ.<br /> 発表者は,<b>ブレンダ・ロメロ</b>.本ブログでは,過去に<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2012/02/ggj12_29.html" target="_blank">Global Game Jam 2012の基調講演</a>で,パートナーのレジェンド開発者,ジョン・ロメロと並んで登場している.<br />  彼女は自らのルーツであるアイルランドについて学べるボードゲームを作ったことがある.この経緯は<a href="http://www.ted.com/talks/brenda_brathwaite_gaming_for_understanding?language=ja" target="_blank">TEDxPhoenix</a>で日本語訳も紹介されているが,この当時は家族内でのゲーム開発に止まっていた.だがその後,政府にコネもないゲーム開発者にアイルランドとの国際交流の白羽の矢が立つことになる.<br />   米国のフルブライト財団はアカデミックなリーダーを海外から招いたり,海外に派遣したりする<a href="http://www.fulbright.jp/keikaku/index.html" target="_blank">交流事業</a>をすすめている.その中で,ブレンダが採択されたのは,米国の専門家を海外に最大6週間派遣するFulbright Specialist Programである.このプログラムにアカデミックなゲーム開発者が採用されたということは,米国がこの研究領域での国際的なリーダーシップをとる姿勢を示している. <br />  このフルブライトの制度でアイルランドに長期滞在した彼女は,政府団とともにアイルランドの産業界や大学の指導者と面会し,特にアイルランド各地の<b>大学院のカリキュラム</b>について<a href="http://www.fulbright.ie/minister-education-skills-welcomes-gaming-super-star-brenda-romero-ireland" target="_blank">助言を行っている</a>.今回のGDCでの発表では大学4年間の教育だけでなく,さらに先の大学院レベルへの取り組みが報告されること期待している.<br />  ちなみに,上記アイルランド政府の広報写真でブレンダと一緒に大臣を囲んで写っているが,ジョン・ロメロ.実は彼も<a href="http://www.gamasutra.com/view/news/214228/Romero_awarded_Fulbright_fellowship_for_Irish_industry_work.php" target="_blank">「第2のハネムーン」として仕事を休んでブレンダの長期滞在に同行</a>していた.豪華すぎる付き添い人である.<br />   この他にもEducation Summitでは,<b>ビデオゲーム博物館</b>をつかった授業実践報告,<b>オーディオデザイン教育</b>報告など日本ではまだまだ足りない教育実践についても多くの報告が登場する. <br /> <br /> <br /> <h3> eSportsサミット</h3> Education Summit以外にも注目すべきサミットは多く,Ingress報告やZyngaポストモーテムがあるナラティブサミットなども興味深いが,企業では(利益を生まないので)できないアカデミックな研究者ならではの発表として興味深いのは,eスポーツ社会学だ.<br />   eSportsサミットのセッションの一つ「<a href="http://schedule.gdconf.com/session/carrying-through-college-the-current-climate-of-collegiate-esports">Carrying Through College: The Current Climate of Collegiate eSports</a>」(大学でのeスポーツの現状)は,大学院の学生が行った大学eスポーツ調査についての最新報告が行われる.共同発表者として,<a href="http://www.redbull.com/en/esports/stories/1331677470159/meet-the-professor-of-esports-tl-taylor-interview">プロゲーマー研究書を出版したゲーム社会学の第一人者</a>,TL Taylorが指導教官として名を連ねている.(彼女はヨーロッパで博士号をとったあとアメリカに移り,いまはMITの比較メディア研究の准教授とMITゲームラボの教員を兼務している.) <br /> <br />  日本でも箱根駅伝に見られるように,大学の人気スポーツは社会的経済的な動員力を発揮している.アメリカのカレッジスポーツはさらに極端で,大学が自前のスタジアムを持ち,カレッジスポーツへの投資が巨額の収入を生んでいる.その結果,昨年2014年には「<a href="http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20140903/270735">スポーツ奨学金を得ている学生選手は、連邦法で労働者と認められる</a>」という判断まで出て,現在まで学生選手の労働環境についての議論が続いている.<br />  こうした学生スポーツは社会学や経済学の<a href="http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2554242">研究対象</a>になりうるが,eスポーツの学生選手についてはこれまで調査が行われてこなかった.そのため,今回の大学院生による調査には初公開の知見が多く含まれている. 特に最近は,<a href="http://espn.go.com/video/clip?id=12097064">高校生ゲーマーを強化選手としてリクルートし,奨学金を出す大学</a>が大々的に報道されたことで大学出身のプロゲーマーへの注目も集まっている.こうしたホットな研究に出会えるのもGDCの魅力だろう.<iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube-nocookie.com/embed/bHqCZfXSnf0?rel=0" width="560"></iframe><br /> 学生選手がプロリーグに参加するには大学を退学しなければならないのかという論争まで起こっており,この時期にeSportsサミットが開催されるのはよいタイミングだ.<br /> <br /> <br /> <h3> レギュラーセッション紹介</h3> サミットは同じ部屋で共通のテーマのセッションが続くが,レギュラーセッションでは多種多様で,セッションのたびに会場を移動することになる.以下では,その中から専門性は高くないが高等教育機関だけでなく社会的なインパクトが大きいセッションを紹介する.<br /> <h4> &nbsp;社会派セッション・ホワイトハウス報告</h4> GDCでは昨年に<a href="http://www.igda.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&amp;storyid=1198">福島ゲームジャム報告</a>を採用したように(<a href="http://www.inside-games.jp/article/2014/09/04/80219.html">CEDEC2014での事後報告報道</a>),ゲーム開発者の社会参加に関する発表が毎年入っている.<br />  今年の社会派セッションの目玉は,「<a href="http://schedule.gdconf.com/session/a-view-from-the-white-house-games-beyond-entertainment">A View from the White House: Games Beyond Entertainment</a>」(ホワイトハウスに入ってみた)だ.米国オバマ政権のゲーム開発の活用は目覚ましいものがあり,特に大物開発者がホワイトハウスのシニアアドバイザーに就任したことは本ブログでも報告した(「<a href="http://igdajac.blogspot.jp/2013/07/blog-post.html">オバマ政権を支えるゲーム専門家</a>」).そのゲーム開発者あがりの大統領アドバイザーによる報告である.<br />  彼の仕事の中でも印象的だったのは,昨年2014年にホワイトハウスにトップスタジオとトップスクールの開発者を招いて行われた<a href="http://www.whitehouse.gov/blog/2014/10/06/white-house-education-games-jam">White House Education Game Jam</a>だ. トップスタジオのエース級の開発者を収益の低い教育用ゲームや社外向け活動に参加させるのは企業経営にとっては損失になる.そのために,トップスタジオほどシリアスゲームの開発経験や子供のテストプレイにつきあった経験が浅く,教育用ゲームの担い手はインディーや大学が多かった.<br /> だが48時間のホワイトハウスゲームジャムではこれまで以上の開発者が参加できることが実証された.<br /> &nbsp;<iframe allowfullscreen="" frameborder="0" height="315" src="https://www.youtube-nocookie.com/embed/wMI2WRKsvmg?list=PLhdwy3ASoEfnh2uhlAIND1RgwYXDsJMKP" width="560"></iframe> <br /> <h4> アカデミック系ラウンドテーブル</h4> セッションの中でも,講演形式ではなくラウンドテーブル形式で行われるものは,スライドもなく話題が次々に変わるために英語力がないと厳しい.だが,自分の専門の内容であればぜひ挑戦してほしい.またカンファレンスパスを持っていなくても安価な展示パスで参加できるものが多い.<br /> アカデミック系ラウンドテーブルには,<b>ゲームAI</b>や<b>サウンドデザイン</b>,あるいは<b>Global Game Jamの会場運営者ラウンドテーブル</b>といった専門ごとのラウンドテーブルがある.<br />  今回のGDC2015では,IGDAのゲーム教育専門部会による「<a href="http://schedule.gdconf.com/session/igda-game-education-sig-roundtable">IGDA Game Education SIG Roundtable</a>」に注目している. これはIGDA Curriculum Frameworkがリデザインに向けて新しいサイクルに入ったことをうけて開催されるもので,まずゲーム開発者が社会で活躍できるためにもつべきスキルの調査と分析がはじまっている.日本国内でも現役ゲーム開発者を呼ぶ学校は多いが,その多くは学生向けの講演だけで,複数年カリキュラムの設計に口を出せる例は極めて少ない.展示パスでも参加できるので,ぜひ現役開発者の声を聞きたい.<br /> (IGDA日本も国内の教育担当者からアドバイザーとして呼ばれることがあるため,アカデミックSIGからも参加します.) <br /> <br /> <h3> 参加したあとは情報交換</h3> GDCはあまりに多くのセッションがあるため,誰もその全貌を把握できない.そこで参加者同士の情報交換も重要となる. IGDA日本では,最終日に<a href="http://www.igda.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&amp;storyid=1362">現地参加者交流会</a>を開くほか,3月21日(土)にスクエニ本社で<a href="http://peatix.com/event/72886/view">GDC2015報告会</a>を開催する.(NVIDIAの<a href="http://www.gputechconf.com/">GTC 2015</a>にフル参加される方には厳しい日程になってしまったが,年度末の難しい時期のためご理解いただきたい.)<br />  また,IGDA日本のSIG(専門部会)独自の報告会も予定されている(本アカデミックSIGでは3月4月は学校関係者が多忙のため,SIG報告会は開催しません).さらに,過去には現地で知り合った学生有志により<a href="http://www.igda.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&amp;storyid=1232">学生報告会</a>も行われている.これらはGDCに行っていない人でも参加できる.<br /> <br /> <h3> 追記: 国内の学生も登壇</h3> <br />  学生といえば,GDC会場で行われるインディーゲーム開発者の祭典 <a href="http://www.igf.com/" target="_blank">Independent Games Festival (IGF)</a> の学生部門で,東京藝術大学 (Tokyo University of the Arts)のOjiro Fumoto氏による<a class="ui-link" data-cke-saved-href="http://www.igf.com/php-bin/entry2015.php?id=8452" href="http://www.igf.com/php-bin/entry2015.php?id=8452" rel="external" style="color: #0782c1;"><b><i>Downwell</i> </b></a>が<b>ファイナリストに選出された</b>.<br />  IGF学生部門については過去に受賞者インタビューが国内でも報道されている(小野憲史「<a href="http://www.cgarts.or.jp/report/rep_on/rep0316.html">第7回インディペンデント・ゲーム・フェスティバル学生部門で最優秀賞を獲得したクリエイターとは? リチャード フラナガンさんインタビュー</a>」)が,よい教育機関で学んでいることがうかがえる.これまで日本在住者が関わった多くのゲームがIGFに<a href="http://matome.naver.jp/odai/2138267269334410201" target="_blank">エントリーした</a>が,ファイナリストに選ばれるのは至難の技だった.とくに学生部門では,筆者が知る限り前例がない.それだけに,ゲーム専攻のない芸大の学生が選考を勝ち抜いたのは快挙である.<br /> 本記事ではGDCを交流と学びの場として紹介してきたが,この<a href="http://www.igf.com/" target="_blank">IGF</a>や最終日の Game Career Seminar は学生が社会人とともに作品の評価をうける場所でもある.<br /> <br /> <h3> まとめ</h3> &nbsp; 今年のGDC15は,アカデミック系でも教育面と研究面で興味深いセッションが予定されている.ゲーム教育のさらなる高度化という観点から見ると,全米組織の設立やIGDAカリキュラムフレームワークの改訂など,<b>ゲーム教育の新たなサイクル</b>のはじまりを告げている.<br />  教育以外の<b>ゲーム研究</b>方面では,国際学会のようにゲームの最先端を競う研究成果が発表されるわけではないが,ゲーム社会学などでこれまでにない発表もみられる.またラウンドテーブルのような場も興味深い.これだけの多種多様な研究者と研究成果が一度に集まる場としてGDCは貴重だ.<br /> <br />  <a href="http://www.gdconf.com/index_ja.html">GDC公式サイト</a>ではすべてのセッションが検索できる.直前になって日時がかわったりするので,ぜひチェックしてほしい.2月25日(水) 米国西海岸時間23:59までにオンライン参加登録すると事前割引がある(CEDEC参加者やIGDA日本メンバーには割引情報も告知されている).<br /> <br /> <div align="right"> アカデミックブログ主筆 山根</div> S.Yamanehttp://www.blogger.com/profile/08138892350931505180[email protected]0