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 ジャパンディスプレイ(JDI)が開発した透明ディスプレー「Rælclear(レルクリア)」は、透過率が84%と、既存の透明ディスプレーの競合製品よりも高いのが特徴である。同社はレルクリアの量産品を2022年2月から出荷し始めた。価格はクラウドファンディングサイト「makuake」で、定価は16万2500円、早期割り引きは13万円である。今回、同製品の構造を取材するとともに、量産品を入手し、使用感を確かめてみた。

JDIの透明ディスプレー「Rælclear(レルクリア)」の製品版
JDIの透明ディスプレー「Rælclear(レルクリア)」の製品版
クラウドファンディングサイト「makuake」での支援者向けに出荷されたモデルで、ACアダプターで電源を供給しつつHDMI入力で映像を表示できる。(写真:スタジオキャスパー)
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 レルクリアのディスプレーの大きさは12.3インチで、画素数は1440×540(アスペクト比8:3)、精細度は125ppiで、透過率はガラスとほぼ同じ84%である。光源に赤緑青の3色のLEDを用いており、表示可能な色数は4096色とする。

 レルクリアは、表示部の液晶を2枚のガラス基板で挟み込んだ構造になっている。ディスプレー下部のエッジ部分にLEDを並べて配置して光源とする。発光したLEDの光がガラス基板で全反射を繰り返しながらディスプレー上部まで到達する。

電源を入れた状態のレルクリアを側面から見た様子
電源を入れた状態のレルクリアを側面から見た様子
中央が液晶の層で、左右をガラス基板で挟んだ構造になっている。(写真:日経クロステック)
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側面や底面の通気口から、発光するLEDの様子が見られた
側面や底面の通気口から、発光するLEDの様子が見られた
(写真:日経クロステック)
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 映像を表示する際は、表示したい特定の画素に電圧をかけることで、その点で光が散乱する挙動に切り替わる。すると、散乱した光がユーザーの目に届くことで表示した映像を見られるという仕組みだ。

 このレルクリアのスイッチング制御は、一般的なディスプレーとは少し異なっている。一般的な液晶ディスプレーでは、特定の画素に電圧をかけることで液晶分子の向きがそろい、バックライトの光が偏光板を通るか通らないかをスイッチング制御する。

 JDIはレルクリアの液晶の挙動の詳細は明かさなかったが、電圧をかけると液晶の屈折の状態を変化させることができ、特定の画素でLEDの光を散乱させるようにスイッチング制御しているという。このため、映像を表示しない部分は、電圧をかけなければただ光が通過するだけとなる。

レルクリアの映像表示の仕組みの模式図
レルクリアの映像表示の仕組みの模式図
図は製品を横置きして側面から見た様子。電圧をかけていない状態(a)では光はディスプレー内を通過するだけだが、電圧をかけた状態(b)では、映像表示部分で光が散乱し、明るく見えるようになる。(図:JDIの図を基に日経クロステックが作成)
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 この仕組みを実現できたのは液晶に新たな材料を採用したからだ。ただし「材料については社内でも一部の関係者しか知らないトップシークレットになっている」と同社InfiniTech事業部第3事業統括部商品2部応用技術2課課長の佐藤努氏は話す。

 透明ディスプレーは国内でも数社が提供しているが、他社が提供する透明ディスプレーでは例えば、通常時は外部の光が入射して散乱して暗く見え、電圧をかけると透明化する仕組みを採用しており、レルクリアとは大きく異なるという。